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2013年
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11月:1,2

2012年
1-1,1-2,1-3,1-4
2-1,2-2,2-3,2-4
3-1,3-2, 3-3
5月:1,2,3,4
6月:1,2,3,4
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9月:1,2,3,4,5
10月:1,2,3,4
11月:1
2014.3.31(月) 日本(沖縄)
ドライトマトに挑戦

 今日は作業がお休みの日。ああ、今週も疲れました。

 ウーファーは作業が休みとはいえ、今日はトマトの出荷日。テーブルの上にはまだまだ山積みのトマトが残っていた。農園のお父さんとお母さんには大量のトマトを選別して箱詰めして朝9時半頃にやってくる集荷業者に渡さなくてはならない仕事があり、二人は朝からもりもりと働いている。

 それにしても、製品として出せるトマト以外のいわゆるB品がかなり多い。規格外の大きさ、ヘタが黒いあるいはない、表面に傷や妙な模様のある物はすべてはねられる。中にはA品に劣らぬ味の濃さと甘みを備えているのに見た目だけで製品になれない物もあるともったいないなぁと思う。

 だから、そういうB品を使ってドライトマトが作れないかとここ数日考えていた。近所の農家でまだ試作段階だがドライトマトを作っている所があり、ここは乾燥機を使っているのだが莫大な燃料費がかかり採算がとれないかもしれないと話していた。

 それなら天日ではできないのか?お父さんとお母さんに相談すると、湿気が多すぎて無理じゃないかという返事が返ってきた。

 でもまぁやってみないとね。ということで、休日でもある今日、B品トマトを半分に割って塩を振り天日干しを開始してみた。しかし、人が天日干ししようって日に限って天気が悪い。というか沖縄のこの時期に完全な晴れはあまり見られない。うーん、大丈夫か?

 さて、他ウーファーのDとA。

 Aが以前にいた牧場の旦那さんが仕事途中に立ち寄ったのをチャンスだと、Aは牧場の旦那に頼んで仕事先の近くにある断崖絶壁の景勝地に連れて行ってもらう交渉をしていた。Dの「朝ごはんはまだですか?菓子パンとかではなく、ちゃんとした朝ごはんが食べたいのですが」と言う声はドライトマト作りに熱中している私にも、作業に没頭しているお父さんとお母さんにも、交渉中のAにも無視されて虚しく宙を舞っていた。そんなDに「ほら、一緒にいくから準備して」とAは声をかけ、結局二人はこの日、断崖絶壁を訪れ、牧場主の弟の農園を訪れ、そのまま牧場にもどって牧場の家にあるピアノを弾いたりして一日遊んで歩いて帰ってきた。奔放なAに翻弄されっぱなしのDはそれでもどこか嬉しそうだった。


2014.4.1(火) 日本(沖縄)
事件

 昨日二人で仲良く休日を過ごしたウーファーのAとDは、どうやら本格的に仲良くなったようだった。

 朝、朝食の準備をしようと台所に行くと、お母さんが「ちょっと、大変な事が起こったのよ」と大興奮で私に告げることには、昨晩DはAの個室で過ごしたようだった。まぁ、こんなドメスティックな環境に飛び込んできた日本語もわからないヨーロピアンの元に年相応の同じヨーロピアンの異性が飛び込んできたら、そりゃぁ展開も早いってものだろうなぁ。私はそう思ってお母さんに「やっぱりね。昨日の夜からそんな感じを出してましたよ」と言うと、お母さんは私があまりに驚かない事に更にショックを強めながら「そんな物なのかしらねぇ」と暗い表情で言っていた。

 お母さんの倫理観から見たら、今朝の出来事は第一面カラー刷りの大スクープ級の事件だったろう。「あー、もう、信じられない。いまどきの外国人ってのはそんなんかねぇ」と繰り返しつぶやいていた。

 一方の二人といえば、Dは常と変らない感じで覚えたての日本語で「おはよございます」と挨拶しながら食卓につき、Aは朝食に遅れる事10分。お母さんが部屋に呼びにいってからのそのそと、やや気後れする感じで食卓についた。

 とにもかくにも、男性陣はうっちんの仕分け作業。女性陣はトマト収穫の日だった。

 食事はDが来てからずっと魚が続いている。ドイツ人なのに肉日照りな気持ちにならない?大丈夫?と聞くと「僕は名字がフィッシャーだから大丈夫さ!」と快活に答えていた。Aは魚は食べられるベジタリアンなので、これからも肉は出ないだろう。

 ところで、ある人から「ジャーマンスイート」という菓子パンをもらった。バターカップケーキの上に砂糖煮の刻みココナッツが乗っている。ココナッツが乗っていて何故ジャーマンなのかとDに聞いてみたら、ココナッツではなく砂糖衣のアイシングが乗ったケーキがあるので、それの変形じゃないかということだった。日本に来る前にインド、ネパールにもいたDだが、「ジャーマンベーカリー」というカテゴリーのパン屋さんがあって同様にココナッツ乗せスポンジケーキを見たというのだ。つまり、東南アジアでは「ジャーマンケーキ」という名前でこれを出すことになっていて、それを食べた米軍兵士あたりがヒントを与えて沖縄で作ったのではないかと推測される。見た目もネーミングも「アメリカン」な空気が漂ってるからね。タコライスに続いて、沖縄に米軍経由で伝わるキッチュでクリエイティブでアメリカンな食べ物第二弾だ。


2014.4.2(水) 日本(沖縄)
Aとたっぷりしゃべった日

 今日はAと二人でオクラの種蒔き作業。

 畝に二列、20cm間隔で、たがいちがいに種を蒔いていくので、畝をはさんで二人で向かい合って作業することになった。

 作業手順は畝に生えている雑草をささっと除去して、種を蒔くポイントから畝の外側に向かって水が流れ出すように溝をつくってやり、種まきポイントに深さ1cmの穴を作って、そこに5粒の種を入れて、ソフトに土をかぶせる。

 二人で向かい合って作業を始めたら、Aがどんどんと先に進んでやたらに早い。フランス人が負けず嫌いらしく、人よりも優位に立っている状況を見せたい傾向にあるという事はここに来てから知った。しかし、そのあまりに無意識に手抜きをしてしまうらしい事もわかった。

 案の定、Aもそうだった。

 二人の距離が200mくらいになった時、突然Aは私の所にやってきて私の作業をしばし観察した後に「ああ、私、1cmの穴を作って種を入れる工程をやってなかった!」と告白してきた。水はけ用の溝を作って、そこに種をばらまいて土をかぶせていたようだ。やっぱり。でもまぁ、そうやって告白してくるからAはまだ無邪気でかわいいとも言える。

 手抜きしないと二人の作業スピードはほぼ変わらなくなったので、終始向かい合っておおいにしゃべりながら作業する日となった。

 両親の事、大学の事、先行している哲学の事、両親から影響を受けた新共産主義に自分も傾向している事、どうしてベジタリアンになったのかなどなど。で、ついでに昨日の出来事についてお母さんが大変にショックを受けていることも告げてみると、Aは頭を抱えて「ああ、やっぱり」と言っていた。日本で半年暮らしていたAはDとは違って大分日本の事がわかっている。昨日の朝もどうやってお母さんに対応したらいいか悩んでいたら朝ごはんに遅れてしまったのだそうだ。

 でも半年間、彼女なりに自分を抑えつけて「空気を読む」練習をしていたようだが、ここ沖縄ではもう少し本来の自分を出して、逆に日本人にショックを与える態度でもいいんじゃないかという決断をしたのだと語っていた。フランス人ってのは自己主張が強くて周囲に気づかいなんてしないんかと思っていたから、Aのこういう内面の動きは新しい発見だった。


2014.4.3(木) 日本(沖縄)
ドライトマトはまず失敗

 第一回目のドライトマト作りは3日経過した時点で、曇天続きのためにカビがはえてあえなく失敗という結果で終了。

 やっぱり農園のお父さんとお母さんが言うように湿度が高すぎで沖縄で天日干ししても無理なのだろうか。

 この一回目は塩をぱらぱらとふったので全体的に殺菌されていなかった事も考え、二回目は塩水に半切りトマトをひたしてから干してみることにする。



 作業はトマトの収穫。収穫作業は他の作業に比べると手抜はできない。収穫物という成果がはっきり目に見えるからだ。Aも私もなかなかの頑張りを見せた。

双子トマト

 夕飯はAの「野菜ごろごろなおかずが食べたいです」というリクエストに応えて、お母さんが作った具だくさんのトマトスープと、イカの醤油バター炒めとポテトサラダ。

 野菜ごろごろのスープは汁の多い日本版ラタトゥイユという感じになっていてとてもおいしかった。








2014.4.4(金) 日本(沖縄)
芽かき作業

 終日芽かき作業。以前にいたフランス人とイギリス人への指導が甘かったのでトマト畑がやや荒れている。

 トマトはつる草のようにどんどん芽を伸ばしながら途中に実をつけていく植物。伸びて行く枝を天井から垂らしている網に、なるべく地面と平行になるように低い位置で横へ横へと這わせるようにすべきだと教えられるはずなのに、二人は天井に向かってしまった枝の先だけをちょこんと網にひっかける事で作業を終わらせてしまった。彼らが芽かきをした部分の枝は全て網の高い位置で上に向かって伸びている。

 農作業は一つ一つは単純作業のように見えながら、全てが後に起こる事の原因となる。たった数週間でその手順の誤りが自分に降りかかってくる。やれやれ。

 今回、同じ過ちを繰り返さないようにAには丁寧に教えた。一度手順を説明してから30分、1時間、そして午前中の3時間が終了した時点と3回チェックと指導を入れたのでほぼできるようになったようだ。それに、彼女は実家でおじいさんとお父さんがトマトを育てているそうでなじみもあり、作業は順調に進んだ。

芽かきビフォアー

芽かきアフター

 今日はとても暑い日だった。

 午後ハウス内の温度は30度を超えて、作業をしていたらツーっと汗が体をつたうのがわかるくらいだった。そんな午後4時近くにお母さんが私とAにアイスを持ってきてくれてハウス内で休憩。こういう時のアイスは殊更においしく感じられた。

 夕飯はサバのソテーに大根の炒めとマカロニサラダ、納豆。大根はお隣の方から頂いた物。うちの農園の大根はもう終わったが、隣が作っている別の種類の大根は今、成長中。そんなわけで間引いたベイビー大根が大量に出てくる時期なのだ。「大根葉」とこの辺りの人は呼んでいる。柔らかくて辛みも少ない「大根葉」は市場には出ない。農家ならではのごちそうだ。


2014.4.5(土) 日本(沖縄)
初物いろいろ

 今日も終日芽かき作業。

 同じように作業をしている日々でも小さな新しい発見や出会いがある。そんな今日の初物達。

数日前からつぼみが開いていると思っていたハイビスカスが
ついに全開になった。お見事。

近所の人が庭に生えているぐみの木から実を持ってきてくれた。
強い酸味とほのかな甘みが疲れた作業後にたまらなくおいしかった。
しかし酸が強くて3個食べたのだが翌日舌先がぶつぶつと荒れた。

大根の花が終わった後の種の塩茹で。すでに大根の味がして
ほろ苦く、やや甘い。

ヤギ刺し。現地ではヒージャーの刺身と言う。しょうが酢醤油で食べる。思ったより全然臭みがなく、肉自体の味はあまり感じられず、皮を焼いた時についたという炭の香りで燻製の風味になっている。

 ウーファーのDとAは相変わらず仲良くやっているが、あまりに仲良くし過ぎてDは昼間用のエネルギーをAに吸いつくされているようだ。Dと一緒に仕事をしている近所の人が「僕があんな仕事っぷりをしている下の者を見たら許さないですけどね」というように、少し仕事をしては空を見上げてぼーっとし、また少し仕事をしては辺りを歩き回りと、とにかく仕事をしている時間が少ないようだ。

 そんなDの様子を聞いてお母さんはああ、もう、恋愛禁止にしようかしら」と嘆いているがウーファーは中高生ではなくて大の大人ですから、そういうわけにもいかないだろうなぁ。とはいえ、節度のある体力バランスで恋愛できないくらいの子供であるというのも困りものだ。

 因みにお父さんはお母さんに「我々の時代もあんなに早いことそうなってたっけ?」と聞いたらしいが、19歳で嫁に来たお母さんはそんな経験がない。「お父さん、誰かと間違ってるんじゃないかしら?」とぷりぷり怒っている姿がチャーミングだった。


2014.4.6(日) 日本(沖縄)
はしゃぎすぎた夜

 今日明日と天気がよさそうなのでドライトマト作りに再挑戦してみた。今回は半分に割ったトマトを塩水に30分ほどつけてから天日干し。この時期、雲なく晴れる事がないので曇った時でも太陽熱を効果的に使えるように下にアルミホイルを敷いてみた。さぁ、どうなるかな?

 作業は収穫。作っているトマトは「アイコ」という品種でミニトマトという普通サイズとプチトマトの間の大きさの物だが、ここの所粒の大きめなトマトが出そろい始めている。これが熟したら最盛期になってくるんだろうな。

 先週から月曜日が作業休日となっているので、今日、日曜日がいわば週末の気分。

 夕飯は近海で獲れる大きなイカ「せいいか」の刺身、青パパイヤのしりしり、醤油漬けニンニク、レタスのお味噌汁。どれも地産地消の新鮮な材料でレタスに至っては自分の畑で採れた物だからおいしい。

 週末なのでビールや泡盛も振る舞われているうちにAとDと私はじょじょに盛り上がって気づいたらとても大きな声で話していたようだ。お父さんは「後は盛り上がってくださいね」と部屋にひっこみ、残された夫はテレビの音が聞こえないと腹を立てて大きな音を立てながら部屋に戻っていった。

 完全に酔っぱらった私は夫が怒っている事にあまり気づいてもいなかったが、その場にいたお母さんが大変に心配してくれて、翌朝までも「旦那さんはまだ怒っているんじゃないだろうか、どうしてあんなに機嫌が悪くなったのかしら」と気を揉んでくれていた。翌日聞いたら、3人のあまりにくだらない会話に入る気には到底なれず、かといってテレビの音もかき消されて聞こえないので腹を立てていたのだそうだ。確かにアカデミックな話ではないが庶民レベルでの比較文化的な話は私には十分面白かった。


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