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11月:1
2012.08.06(月) アヌシー→レマン湖湖畔(フランス)
雨の移動日

 今日はアヌシーからレマン湖湖畔に移動の日。願い虚しく、空は雲に覆われて今にも雨が降り出しそうな天候だった。

 雨に濡れてまだ乾いていないテントを畳んでキャンプ場を出たのが朝の9時。途中、カルフールが経営するガソリンスタンドで満タンにして出発だ。

 今日の移動距離は100kmくらいだが、だんだんと山がちになっている地域なので有料高速道路を使うことにした。アヌシーからレマン湖に向かう高速道路の行き先はスイスのジュネーブとなる。スイスとフランスの間にはフランス領の緩衝地帯があり高速料金は緩衝地帯に入る手前で支払ったのだが、1時間も走っていないのに6ユーロ以上もかかりかなり割高だった。スイスが近いというだけで何もかもが値上がりするような気がする。

 高速でオランダ国籍の車に乗った夫婦がクラシックカーを牽引しているのを追い越した。追い越し際に、運転している旦那さんに「かっこいいね!」という意味で親指を立てて挨拶すると、「でしょ!」というようににっこりと挨拶を返された。

 キャンピングカーに自転車やバイクを積んでいたり、スマートを牽引しているのは見かけるがクラシックカーは初めて見た。バカンスに行くのにTPOに合わせて色んな乗り物を持って歩くヨーロピアンを見ると休暇の遊び方が上級だという気がする。混雑した新幹線に詰め込まれて実家に帰るのが休暇だという日本人とは大きく違う。

 今日の目的地はエビアンの西10km未満のキャンプ場だ。手前の町を通過している時にポツポツと降り始めた雨はキャンプ場到着時には激しい雨となり、やむ気配がない。

 このまま雨がやむのを待っていたらお昼ご飯の時間もずれこむ。お腹が空いていた私達はとにかく雨が降ろうと何が降ろうとテントを立ててしまえと大急ぎで濡れながらテントを立てた。いつも以上に疲れたなぁ。

 しいたけと白菜と温泉卵の入った出前一丁醤油味でかなり癒されてランチ休憩。

 午後からは一番近いCoraというスーパーに食材調達に出かけた。

 あまり利用したことのないスーパーだし、スイス国境に近いせいもあって趣が違うのが面白い。目を引いたのはスイスチョコレートばかりを集めた棚と鍵のかかったワイン保存棚だった。スイスチョコレートは聞いた事のないメーカーの商品で、様々な種類のリキュールが入ったチョコレートがあった。フランスだとレーズンとかナッツとかオレンジなどが入ったものは多いがこんなにリキュール入りが多いのはスイスならではなのだろうか?鍵のかかったワイン保存棚には有名なワインが入っているようで最高額は910ユーロのボルドーのメドック地区のシャトー・ラフィット・ロートシルトだった。ロートシルトはもちろん飲んだ事もないし、こうして売られているのを見るのも初めてだった。スーパーにこんなに高級なワインを置いているってどういう事?スイスの大金持ちが買うのだろうか。買う人を見てみたいと思ったが誰もこの棚には近づいていなかった。しかし、場所が変わるとこんな事もあるんだなぁ。面白い。

 スーパーを出る頃には天気は嘘のように回復して青空が広がっていた。キャンプ場に戻る途中で渡った川の色を見て、南米のチリとアルゼンチン南部にまたがるパタゴニア地方を思い出した。あそこの氷河国立公園に流れる川の色ととても似ていたからだ。

 アルプスの雪解け水がレマン湖に流れ込んでいるとしたら、これもまた氷河の水。似ているのにもうなずける。また一歩、アルプスに近づいたという気がしてきた。




2012.08.07(火) レマン湖湖畔(フランス)
イヴォアールとエビアンを訪ねて

 レマン湖沿いのフランス側で行きたいと思ったのはキャンプ場から西にあるイヴォアールと東にあるエビアンだ。ガイドブックによればイヴォアールは魅力的だが30分もあれば周れるとあったので一日で両方の町を観光することにした。

 イヴォアールの村の入り口には「美しい村」に登録された村であるという看板(上から3番目)とお花レベル4つ花(上から4番目)の看板がかかっていて、到着するなり期待に胸膨らむ村だった。有料駐車場に車を停めて、観光案内所で地図をもらってみると確かにイヴォアールの村は30分もあれば見て周れるような本当に小さな面積の村だった。レマン湖に突き出した岬にお城があってそこから小さな集落が広がって陸側は城壁に囲まれている。

 港に行ってみると丁度スイス側から定期船が到着したようで、ドイツ語を話す人たちがどっさりと降りてきた。定期船はジュネーブやローザンヌなどスイス側のレマン湖沿いの各街とつながっていて、そこからドサドサとスイス人を運びこんでいるようなのだ。

 陽気にはしゃぐ観光客に混じって港から城壁内のイヴォアールの村を見学してみたのだが、とにかくどこに目をうつしても絵になる光景が山のようにある村だった。

 そして、このエリアのど真ん中に位置して観光の目玉にもなっているのが「五感の庭」という意味のJardan des Cinq Sensという庭園だった。この庭には「色見る」「香りをかぐ」「音を聞く」「手触りを楽しむ」「味わう」と本当に五感を使えるエリアがある。入場料金一人10ユーロと高いが11時半からのフランス語の無料ガイドツアーに参加して、自分達で周っただけでは気付きにくい変わった花やシダ類の葉っぱの裏や甘い味のする葉っぱなどを見てにおいをかいで触りまくって味わうことができたので、ツアーが終わる頃には大満足となった。ガイドしてくれた女性が英語で「わかりましたか?」と最後に聞いてくれた。2割程度しかわかっていないけれど、それでも多くの発見があってとても楽しかったと答えると「それはよかったです」と嬉しそうに微笑んでいた。なんだかフランスって感じがしない温かいホスピタリティーもとても心地よかった。

ツアー開始

色美しい花

葉の表面の柔らかい綿毛を触ると気持ちいい

水音と鳥の声が楽しめる

食べられる野菜ばかり集められた庭。基本的に食べてはいけないがツアーでは一つだけ甘い味のする葉の試食だけさせてくれた。

 イヴォアールは確かに30分で見て周れる広さだが、庭園に時間を割き朝と日当たりの違ってきた正午の村をもう一回見てまわっていたら3時間以上も滞在することになってしまった。

 村の中にはレストランは多くあるけれどパン屋は一軒もない。一番安いテイクアウトのサンドイッチ屋に行列ができていたが、そこにもパンだけという選択肢はなかった。お花で飾られた昔ながらの風情のある建物という場所に半額くらい支払う18ユーロのランチセットなどは到底食べる気にはなれない。だって、同じ金額でリヨンでハイレベルのランチを体験してきたばかりなのだから。

 仕方なく、イヴォアールの村を後にして近くのキャンプ場の売店でさしておいしくもないバゲットを買って、味気ないスーパーの駐車場でサンドイッチを食べることになった。ここだけは今日の行動の中でプチ失敗だ。イヴォアールがこんなに人気のツーリスティックな場所だと認識していなかったのが原因だ。それにしても予想以上に楽しい村だった。

 お昼ご飯を簡単に済ませて、次の目的地はエビアン。今いるキャンプ場からたった7kmしか離れていないエビアンは言わずと知れたあの名水の「エビアン」を出している町だ。ミネラルウォーターの効用が発見される18世紀に繁栄が訪れて、1870年から1913年のベルエポックの時代に最盛期を迎えたそうだ。温泉保養地としてカジノ、劇場、キャバレーなどの建物が今でも残ってミネラルウォーターの汲める場所以外の見所となっていた。

 ヨーロッパの保養地というと上流階級の社交場としての機能を果たしていた場合が多いが、エビアンもその例にもれず、いまだにどこかしら優雅な雰囲気が町に漂っていた。

 まず訪ねた観光案内所も素敵なソファーとテーブル(普通、観光案内所にはあまりこういうのはない)があってちょっとしたホテルのロビーのようになっているのが優雅だった。

 もらった地図に書かれた歴史的観光ポイントを巡るコースを歩いて1時間ほどで町を散策できるようになっていた。

 歴史の足跡はアールヌーボーに彩られた物も多く、エビアンの繁栄がその時代に集中していた事を物語っていた。

13-15世紀に建てられたゴシック建築のノートルダム寺院

15世紀後半から16世紀初頭に作られた中庭に向かうアーチ

市場が開かれていた広場の斜面をのぼりきった所は
今は歩行者天国の繁華街。

アールヌーボー様式の水をくみ上げていたポンプルーム。今は1階のみ公開されていてエビアン展示場になっている。

展示場にあったポスターはポンプルームの2階の社交場が栄えていた時代をあらわしている。

1900-1902年に建てられたパリの建築家Ernest Brunariusによる建物パレ・リュミエール。当時は社交場、ポンプルームの待合場としてつかわれていたが、今は議会場、文化的な催し場として使われてている。

手前から劇場、市庁舎、パレ・リュミエールと豪華な建物が並ぶ
湖畔沿い。

エビアン主催のゴルフカップで2009年、2011年と宮里藍ちゃんが優勝しているらしい。カジノ前に大きなポスターが張りだされていた。

 でも、何と言ってもエビアンの観光のメインはエビアン水が汲み放題のカシャの泉だろう。1790年に体内の石に苦しんでいた人がこの泉の水の効用に気付き、1826年にジュネーブのビジネスマンがカシャのポンプルームにミネラルウォーターの会社を作り、1869年にエビアンという会社ができたそうだ。地元の人は何本も空のペットボトルを持ってきていて水を汲んでいてプチ行列ができる場合もあるが、大抵の観光客はちょっと飲んでみておしまいなのでそんなに待たない。私達は1リットル入りペットボトルを持っていたのでそれに汲んで来た。特別においしいかと言われると、ちょっと断言できないけど、まぁおいしい水だった。

 今夜はサラダではなくラタトゥイユが食べたくなり、トマト、ピーマン、なす、ズッキーニ、玉ねぎ、マッシュルームで作ってみた。最初に油で炒めてから煮込んでプロヴァンスのハーブと牛のブイヨンを加えて更に煮込んでできあがり。

 予想以上においしく感じられたのは体がこういう野菜を食べたがってというのがある。これに5ユーロ以下のコート・ドゥ・ローヌで大満足の夕食。いやー、おいしかった。





2012.08.08(水) レマン湖湖畔(フランス)
スイスのジュネーブ観光

 東西に細長いレマン湖の南側の真ん中よりもやや東寄りの場所に滞在している。ここから西に35kmくらいも行くとスイスの首都ジュネーブがある。ニュースなどでよく耳にする「スイスの首都ジュネーブ」がこんなに近いのだ。

 私は学生の時に卒業旅行でジュネーブを訪れ、湖上に巨大な水柱が噴出していたのだけは覚えているがあとは何も覚えていない。ジュネーブに何か見るべきものってあったんだっけ?そんな思いもあったが夫の初ジュネーブ入りという記念的な行事として、ガイドブックもないけれど行ってみる事にした。

 スイスというととにかく物価が高いというのがヨーロッパ在住者や他の旅行者の意見だった。そういう意味では、今日のジュネーブではいかにお金を使わずに楽しめるかというのも一つのチャレンジだった。レマン湖を西に走って行くと途中にかつて国境だったと思われる事務所がある場所を通過して、あれれ?という間にスイス入国。せっかく持って来たパスポートも見せる場所がなかった。

 湖沿いの道路には「○○駐車場はこちらへ」という表示が何回か出されていたのだが、駐車料金が高かったらどうしようかという恐怖で入るわけにはいかないと湖縁を走り続けたらジュネーブの町が終わってしまった。そんなに広い街でもないようだ。そこで、今度は真ん中辺りにある駅から湖を背にして内陸に入って行くと住宅地となり、青い線で引かれた無料駐車場を見つけることができた。フランスでは白い線が無料駐車場だがスイスでは青のようだ。

 駅に行けば観光案内所があるだろうという目論見どおりに案内所を発見して無事に地図を入手することができた。私達の前に地図をもらっていた中国人の学生らしい若い女性バックパッカーが矢継ぎ早に質問するのを聞いていたのだが、観光立国のフランスと比べるとやる気がないというか見所がない所なんだなぁと痛感する対応だった。

 中国人学生が「電車の乗り継ぎで2時間の観光時間しかないのですが、どこを見たらいいですか」という質問に一本の繁華街を紹介して「ここでお店でも見たらどうでしょうか?」というし、チーズフォンデューを食べたいのだがどの店がいいかという質問に対しても、チーズフォンデューは冬の食べ物なので今はあまりレストランでやっていないだろうと答えていた。

 もらった地図を頼りに歩いてみるが、観光案内所の女性が乗り気のしない答えを言う意味がわかるほど町は整然と開発されて、美しいが観光として見るべき古い建物はあまりない。強いて言えば駅近くの郵便局くらいだろうか。

 唯一の見所はやはり私が記憶していた通り、レマン湖の中に立ち上る水の柱だろうと思われる。夏の時期は湖の南側に世界中の様々な国の食べ物屋台が軒を連ね、移動遊園地も出ていてお祭りな雰囲気になっている。まぁ、逆に言えばこういう仮説の屋台に頼らなければならないほど観光資源としては乏しいということが露呈していた。

 まぁ、それならと水の柱のふもとまで行ってみることにした。湖沿いの風景と絡めて水の柱を楽しむというのはジュネーブならではの観光だと思う。水が噴き上げている近くまで行くと130m近くまで吹き上がっているという観測ができる所があり、その先を過ぎて桟橋を歩いてもっと近づくと水しぶきがかかってきてかなり楽しい。ギラギラと光る夏の太陽と水の柱の先端を見上げるとそこだけが別の生き物のように盛り上がっては落ちていく。水が生き物のように蠢いて見える風景にはいつも心をとらわれる。イグアスの滝でもそうだったが、この水柱の先端もなかなか魅力的だった。

 お祭り会場になっている湖畔の公園から内陸に向かって大通り3本目が繁華街で、その通りをぶらつきながら相変わらずファッションチェックなどを楽しんだのだが、ジュネーブではファッションというよりもあらゆる人種がビジネススーツをまとって歩いているのが他にはあまり見られない光景だと思った。

 白人、アジア人、黒人と実に色んな人種が入り混じっている様はパリよりももっと均一にミックスされている感じがあり、最近はシンガポールにお株を奪われつつあるとはいえ、ここが世界の金融センターであることをうかがわせた。

 人種や国籍を超えたビジネスマン同士がやたらに陽気に英語でジョーク等を飛ばしながら肩をたたいて笑いあっているのが、逆に不況の虚しさを感じさせない事もないが、まぁそれはあまりにひねくれた物の見方というものだろう。頑張ってるな、という感じは町中に漂っていた。

 時計やアーミーナイフに興味がある人ならこの町はもっと魅力的に見えるのだろう。確かにこの2つの商品を扱うお店は今まで訪れたどこの街よりも数が多かった。アーミーナイフで有名そうなブランドの店に入るとインド人顔の店員が近寄ってきて何やら中国語で話しかけてきた。首をかしげると英語で「アーミーナイフなら地下にございます」と言った。かなり中国人が来ているようだ。フィレンツェのプラダやグッチなどのアウトレットにも中国人がたくさんいたし、景気がいい感じだなぁ。

 私達が恐れていた物価はどうなんだろうか?スターバックスでは普通のコーヒーが5.6フランくらいしてユーロにしたら4.7。フランスなどの約倍額。マクドナルドのビックマックの飲み物とフライドポテトが付くセットメニューは12フラン弱。これも10ユーロとなり、通常7-8ユーロなのに比べると割高だった。

 恐るべし、スイス。

 ということで、私達は無料駐車場に車を停め、フランスのキャンプ場で買ってきたバゲットやサラミでサンドイッチを作ってランチを公園で食べ、一銭も使わずにジュネーブを後にしたのだった。密かなチャレンジは成功。国境ラインで一銭も使わなかった罪で罰金を取られるという事態も発生せずに無事にフランス側に戻ってきた。

 キャンプ場に戻ったその足で、キャンプ場から100mくらい離れたレマン湖畔に行ってみると、湖水浴を楽しむ人がおおぜいレマン湖を楽しんでいた。もう少し早く帰ってきていたらここでレマン湖浴を楽しんでもよっかったかもしれない。

 私達が滞在しているキャンプ場の隣にいるキャンピングカーで来ている親子は、確実に毎日どこにも行っていない。おそらく、ここで湖水浴しちゃぁBBQしているようだ。夏休みだからね、そっちの過ごし方が普通なんだろうな。



 夕飯は、最近気に入っているエビのジェノベーゼペースト和えと温泉卵をポーチドエッグに見立てたリヨン風サラダ。












2012.08.09(木) レマン湖湖畔→シャモニー(フランス)
シャモニーのキャンプ場は驚きの景色

 今日は朝9時20分にレマン湖湖畔のキャンプ場を出発してシャモニーに向かった。レマン湖からほぼまっすぐに南下して高速道路40番に接続する国道902号線の60kmはクネクネと曲がりながらアップダウンする道が両脇を山にはさまれた渓谷を走るというコースで、多くのチャリダー(自転車乗り)やバイカーに人気があるようだった。自転車乗りにとっては、とても長距離の上り坂が続くのでかなり難易度が高そうに思えたが少年からお年寄りまでがチャレンジしていて、感心した。

 レマン湖に近い渓谷では釣り人やラフティングを楽しもうとする人が見られたが、じょじょに周囲の山が高度を上げてくると建物も歩いている人もアルプスをを思わせる雰囲気になってきた。いつくかの村を抜け、いくつかの山をのぼって丘を来えて、最後に大きな谷が見渡せる所をヘアピンカーブで降りて、国道はやっと高速道路に接続した。

 高速道路に入ると更に両脇の山々は険しく立ち上るものになり、とうとう氷河をたずさえて燦然と輝くモンブランの姿が行き先にどっしりと構える道を走ることになった。モンブランは今日これまで目にしてきた山々とは全く異なってみえる。その名が示す通りに氷に包まれて真っ白で、かつとがっていない。だから「そびえる」というよりも「存在している」という重量感のある姿だった。高速道路の途中でモンブランを見渡せる休憩所があったので立ち寄り、その姿をとっくりと見せてもらった。

 目指すキャンプ場はシャモニーの手前3kmに位置するレ・ドゥ・グレシエーLes 2 Glaciers。驚いたことにキャンプ場から見上げるとモンブランから流れる2つの氷河がどーんと見えている。だから「2つの氷河」という名前だったのか。それにしても絶景のキャンプ場でインターネットも無料で使えて一泊19.3ユーロ(車、テント、人2人)と安いので感動的だった。

 昼食後に早速車でシャモニーの街を訪れて、町を散策して観光案内所で情報収集してきた。シャモニーの街は村というサイズの小さな所だが、有名アウトドアメーカーのショップが並んでいるのはさすがだ。また、花を飾りたてたレストランや土産物屋が並び、日本人観光客の姿も多く見られてさすがに世界的に有名な観光地だと思わせた。

 観光案内所では街の地図、シャモニー界隈の山々の見所の地図は無料でくれた。お薦めハイキングトップ3を聞いて、各見所に行くための登山電車、ロープウェイ、リフトが乗り放題になるパスのパンフレットをもらったら情報収集終了。

 話を聞いてちゃんとハイキングをしたくなったので一番安い4.5ユーロのハイキングマップも購入した。観光案内所の人はとても的確に質問に答えてくれる優秀な女性で、気持よく短時間で情報収集できた。日本語専門デスクもあって午後4時から担当者がくると手書きの案内看板に書いてあったが時間があわなくて会えなかった。

 シャモニーの街の南側にカルフール・マーケットというこの辺りでは大きめのスーパーがあるので食料品を買い込んだ。レジに並んだ人の買っている商品は、クッキー5種類買う人やら両手のひらからはみ出しそうなサラミの塊を3つも買う人やらといかにも登山の街のスーパーという感じだ。チリのパイネ国立公園に初めて行った時に大量のパンとハムとチーズを買ったっけなぁ。結局、毎食のハムチーズサンド攻撃に食欲が失せていくのを体験する羽目になったんだった。それで、次回にはインスタントラーメンも入れて大成功だったんだ、うんうん。と色々と思い出してきて懐かしかった。

 キャンプ場に戻ると午後4時過ぎの太陽に照らされて氷河がいよいよ白く光り輝いていてものすごい眺めになっていた。

 シャワーを浴びてからラクレットなどで夕食。実はラクレットを初めて食べるのだが、子供の頃に「アルプスの少女ハイジ」で見て以来ずーーーーっと憧れていたチーズだった。ペーターが木の棒にラクレットをつきさして暖炉にかざし、溶けた表面をこそげとってパンに塗っておいしそうに食べる。あの姿が目に焼き付いていた。そのラクレットを今日初めて食べた。溶けるとふわふわに柔らかいのにテフロン加工の鍋には焦げ付きもせずに扱いがいい。トロトロと茹でたじゃがいもに乗せて食べると長く伸びてお餅のようだった。塩味がきいていてジャガイモとの相性は抜群だ。これがラクレットか、おいしい、おいしいと食べていたら突然にして気持が悪くなった。食べ過ぎたのだ。そしていきなり冷静になって考えると他にもっと味わい深いフランスのチーズがあるなぁと思ってしまった。夫にそう言うと「憧れなんてねぇ、無駄に憧れていないでさっさと体験して、こんな物かと知ってしまうべきなんだ」と言われてしまった。まぁ、結論から言うとそうなんだけど、ラクレットに憧れてきたこの何十年かは楽しかったからそれはそれでいいんじゃないかと思えた。

 夕食後は今日手に入れた資料をもとに今後の計画を練った。そうしているうちに、午後8時50分。トイレに行った夫が「夕焼けだ!」と叫ぶ。テントの窓から後ろを見るとモンブランが夕日にうっすらとピンク色に染まっている。外に出てしばし壮大な夕焼けを楽しんだ。陽が落ちたシャモニーはダウンジャケットなしには過せないくらい気温が低い。そうだよね、氷河が見える場所なんだもの。明日からどんな景色に出会えるのだろうかとわくわくしながら天気予報を見ようとネット接続を試みたがつながらず。今日のできごとを日記にまとめて就寝。


2012.08.10(金) シャモニー(フランス)
シャモニー観光 第一弾

 天気がいいので早速シャモニーでのハイキングをがっつりと行うことにした。今日は観光案内所のお姉さんの一番のお薦めコースPlaprazからIndexまでLac Cornu(コルヌ湖)とLacs Noirs(ノワール湖)経由で歩くことにした。Plaparazまではロープウェイで行く。Plaprazから湖まで2.5時間、湖からIndexまで1.5時間と聞いてなぜか物足りないと思ってしまった私達は、PlaprazからLe Breventまでロープウェイで足をのばしてその先にあるLac du Brevent(ブラヴァン湖)まで行ってから、お姉さんお薦めのハイキングコースをこなすことにしたのだが、これを入れたために大変な一日となった。

 今日の行程は以下の通り。シャモニー町中からPlanpraz行きロープウェイ、引き続きLe Brevent行きロープウェイ。そこから徒歩でBrevent湖に行って戻り、PlanprazからIndexまで徒歩、そこからリフトとロープウェイを乗り継いでLes Praz、そこからバスでシャモニーの中心部まで戻っていた。青い線はロープウェイやバスなど乗り物を利用。オレンジ、赤、ブルーが歩く道。道の難易度は実線(簡単)、破線(やや難しい)、+マーク(難しい)となっている。線の色は道の種類(赤が高低差のある登山道、青は山小屋への登山道、オレンジは展望のあるバルコン登山道)になっている。同じPlaprazから出発する道でも「地球の歩き方」に紹介されているのはオレンジでFlegereへ行く道で高低差が少なく、今日、私達が歩いたよりは簡単だと思われる。



 まずシャモニーの街に到着してお昼ご飯用のバゲットを購入。中に挟むレタスやハムは持って来たのでバゲットだけは焼き立てを朝、調達したかったのだ。

 そして町中を歩いている時にアウトドア用品の販売とレンタルを行っている店がみつかったので、ここでストックをレンタル。一人1ペア1日3ユーロで貸してくれると言う。買うと最低でも一本13ユーロ、ペアで26ユーロする事を考えればとてもリーズナブルだったので借りることにした。今日はストックに本当に救われた。借りてよかった。


 そしてロープウェイのチケット売り場でマルチパスを購入。これからシャモニーで利用するロープウェイやリフトや登山電車がほぼ乗り放題になる定期券で、昨日、行きたい場所を列挙して交通費を計算してみたらどうやってもマルチパスの方が安上がりになるので買う事にしたのだった。色んなバージョンがあるが私達は今日を利用開始日として、これから15日間に5日間利用できるというマルチパスにした。お値段は一人111.6ユーロだった。この定期のデータを入れるためのプラスチックのカードを3ユーロで買わなくてはならなくて、結局114.6ユーロになった。3ユーロの追加料金に不満顔となった私の気持ちを察してか、このカードは次回も利用できる一生物だから今回だけの出費だからと売り場窓口の英国人と思われる女性は言っていた。世界中から観光客が訪れているシャモニーだが、シャモニーにリピートする人の割合がそんなに多いとは思えない。3ユーロもチャージするなんて詭弁だなあ。説明を聞いても不満は解消されなかったけど仕方ない。

 とまぁ、歩き始める前に細かい事はあったが予定通りの行程をこなして歩いてきた。結論から言えば今日は歩きすぎ。Brevent湖まで歩くのはやりすぎだった。歩いている時間だけで5時間は多過ぎた。しかも、二つの湖を巡るルートはアップダウンが激しく、途中がれきをよじ登ったり山の端の狭い足場を伝って歩いたりとアドベンチャーテイストが満載でくたくたになった。最後はFlegereからのロープウェイの最終便に間に合うようにLacs NoirsからIndexまではやや小走りにさえなって更に疲れた。

 とはいえ、こういうハイキングはいつも終わってみたら「やってよかった」という思い出に包まれる。しかも今日は野生の鹿の親子を見られるというゴージャスなご褒美つき。繰り返すようだがBreventまでロープウェイで行って見学してPlaprazまでロープウェイで戻り、そこからハイキングをしたら体力的にも時間的にもやや上級コースハイキングで私達にはぴったりだった。

シャモニーの町中からPlanprazへ出発。後ろにモンブラン。

Brevent、2525mから向かいのモンブランをのぞむ。

BreventからBrevent湖をのぞむ。

途中から急な坂道となり最後に少し手を使う激しい岩を乗り越えて到着。Breventから湖まで下り約50分。

山の裏手に入っているので湖面にモンブランなど雪山の写り込みがなかった。

湖からBreventまで1時間かけて戻り、午後1時にモンブランを見ながらお昼ご飯。

2525mのBreventから下界のシャモニーの街をのぞむ

午後2時、2000mのPlanprazからハイキング開始。

途中、激しい登りに泣きそうになる夫。引き返してくる人には多くすれ違うが向かう人の姿を見なくて不安が募る。

2406mのCornuに到着。午後3時11分。ここで人を発見して安心。

Cornu湖に到着。午後3時21分。湖の縁までは時間も体力もなくて行けず。

まじすか?またもやガレキを登るノワール湖への道。

遂に雪の残る場所まで到達。

ノワール湖到着、午後4時7分。この湖も縁までは行かず。

ここで野生の鹿?の親子に遭遇。

モンブランを背景の野生の鹿。今日、一番嬉しいショット。

午後4時25分。ノワール湖から下山してPlanprazとIndexの分岐点でまたもや別の親子の鹿を目撃。

狭い足場の急な下り道は左側の岩に手すりが打ちつけてある程でちょっとスリリングだった。

下り坂で一気に挽回を計ろうと小走りになる。

しかしIndex手前でまたもや激しい上り坂。最後にヒーヒーと言わされた。

Index(2396m)到着。5時17分。6人掛けリフトで下る。

5時31分、FlegereからロープウェイでLes Prazというシャモニーの隣村まで下山。最終5時45分という状況で、ロープウェイいは混んでいた。

夕方のシャモニーの街のにぎわい。

午後8時43分。キャンプ場から見上げるモンブランの夕景。


2012.08.11(土) シャモニー(フランス)
シャモニー観光 第二弾

 今日はシャモニーを初めて訪れる人が行う王道の観光コースに行ってきた。

 シャモニーの町中からロープウェイで2317mのプラン・デゥ・レギュイPlan de l'Aiguille、別のロープウェイに乗り換えて、最後にエレベーターで100m近く上がって3842mのエギュイ・デュ・ミディAiguille du Midiへ。エレベーターで降りてから、別のロープウェイでイタリアとの国境ぎりぎり手前までのポワント・エルブロンネPointe Helbronner、3462mまで行って引き返してくるというコース。最後のポワント・エルブロンネは到着地でロープウェイを降りることなくそのまま引き返すことになっていて、この乗り物だけはマルチ・パスが使えず別途一人24ユーロ程度を支払った。


 昨日出会ったドイツ人女性のアドヴァイスでシャモニー出発は朝8時。これ以降になると人が増えすぎて待ち時間が多くなるのと、写真撮影の景色の中に他の人を入れざるを得ないということだった。彼女の助言で全てスムーズに観光できたし、天気もよくて最高の観光日和となった。

 四半世紀も前に一度来た時は真冬で寒いのと富士山の頂上よりも高度のある場所が初体験だったので、とにかくフラフラしながら一面の銀世界を見渡してさっさと下山したのを覚えているが、今回は季節も夏だし高度に対する経験もあるのでゆっくりと時間をかけて見てきた。そして、あらためてこんなに簡単にこんな場所まで到達できる先進国の技術に感動。モンブランの頂上がこんな楽に見られるなんて!ネパールでのトレッキングを思い出すと夢のように思われた。

3842mの展望台からのモンブラン。手が届きそうなほど近い。

シャモニーの街を見下ろす。エレベーター下の展望台の向こうに昨日歩いた山が小さく見える。

 せっかくここまで来たのだからと、えいやとお金を支払って乗ったポワント・エルブロンネへのロープウェイは氷河の上をずーっと渡って行く。雄大な氷河の全貌を見ながら眼下にはクレパスや青い水たまり、氷河トレッキングをする人々の姿を間近に見られた。時々、数分間停止してこの高さからゆっくりと氷河を観察できるようになっているし往復1時間の素晴らしい体験はやってよかったと満足。

ロープウェイは3つひと組となって動く

24倍ズームでクレパスを渡る人を目撃

向かい側に反対方向に動くロープウェイが見える。

氷河の真上を通過。

 エレベーター下の3776m地点の展望台の1つには、ここから登山、氷河トレッキング、ロッククライミングに挑戦する人の玄関口がある。ここから下った場所にテントが張られた場所があり、モンブラン登頂へのベースキャンプになっているようだ。よく見たらモンブラン頂上へ向かう人影もあって思わず興奮していたら、隣に立っていたフランス人のお父さんが双眼鏡を貸してくれた。またミニ博物館ではビデオを駆使して様々な新しい山のスポーツを紹介してるし、レストラン、土産物屋まであって思わず長時間を過してしまった。

氷のトンネルの向こうにある展望台。

この展望台の先に幅50cmくらいの雪道が急な角度で下へと向かっていて、ここから皆出発。両側は断崖絶壁だ。

ミニ博物館のビデオから。モモンガみいたいな装束で崖から飛び降りて落下し、途中でパラシュートが開くスポーツ。恐怖だ。

眼下に小さくテントが見える。ここからモンブラン登頂にアタック。よく見るとモンブランの頂上に向かう人影も確認できた。

 8時25分に3776mに到着してから色々と見学して持参のサンドイッチを食べ終えたのが12時半。4時間以上も滞在してしまった。さすがに少し頭が重くなり高山病の軽い症状が感じられてきたので2317mのプラン・デゥ・レギュイに下りる事にした。

 あまりに上で長時間過してしまったので、2317mのプラン・デゥ・レギュイからメール・ド・グラスまでのハイキングは明日することに予定変更して、今日はここから片道15分のブルー湖Lac Bleuまで行って終了。湖までの道のりは緩やかな下りでお花も咲いていて気楽なハイキングコースだった。

モンブランが向こうに見えるが写り込みはあまり厳しい角度。

色とりどりのお花が可憐。

 予定していた長距離ハイキングを割愛したので早く観光が終わってしまった。

 ってなわけで、モンブランを見ながらカフェテリアでコーヒーブレイク。

 私達の年代では子供の頃にオードリー・ヘップバーンのシャレードとか007でヨーロッパ人が雪山を見ながらお洒落なカフェでコーヒーを飲むシーンを見ていた。当時の日本のイメージでは雪山というと「猟師、いろり、吹雪、マタギ」などとお洒落とは程遠かったので映画でのヨーロッパの雪山は遠い憧れの世界だった。それが今、こうして気楽に楽しめる時代になったんだよねぇ。感慨深くコーヒーをすするのであった。

 といっても全然お洒落な洋服は着てないんだけどね。

 今日は週末、土曜日だ。最近は、週中少し食事を節制して週末楽しもうという生活習慣にしているので週末が楽しみ。ちょっと小学生にでもなった気分だ。

 本日のメニューは各種ソーセージ系のBBQ。リヨン風、チョリソー(ピリ辛)、内蔵系(アンデュイエット)、ハムステーキ、サヴォワ系と様々な種類を焼いて楽しんだ。が、最終的に食べ過ぎて嫌になり、食べきれずに翌日回しが大量に発生。いつまでたっても、こんな事をしているのはやめようと二人で反省したのだった。



2012.08.12(日) シャモニー(フランス)
今日はちょっと休憩モード

 日曜日はスーパーが午前中しか開いていなくて食材の買い出しをしなくてはならなかったので、今日は午前中に買いだし、午後からはシャモニーの村を散策することにした。

 昨日の反省をこめて今夜は野菜のBBQを行うことにして、昼は昨日の余りのソーセージ。

 真ん中の薄いピンク色のが内蔵の腸詰アンドゥイエットなのだが、昨日火を通しておいたので今日はそのまま冷製で食べた。炭火の匂いが強く冷たいので内蔵の臭いも抑えられていて、さらにイタリアのジェノベーゼをつけて食べたらめちゃいけた。ホウレンソウ入りソーセージも、チョリソーもあれよあれよとなくなって余り物が終了。量が少なければおいしく食べられる。図らずも昼食は昨日の反省会の続きとなった。


 シャモニー散策にあたってPC持参。キャンプ場でインターネットがさっぱりつながらないので、そろそろメールチェックしなければと、ネット出来る場所をさがしに来たのも目的の1つだった。

 アギュイ・デュ・ミディのロープウェイ乗り場建物内のカフェにもWifi環境がある事を知ったが、試したら電波が弱すぎて使えず、観光案内所内の無料Wifiではfacebookは使えたがネット上のメールは「ポータルサイト、アダルトサイト」のカテゴリーに入るからとアクセスできず。

 最後ののぞみのマックでやっとメールチェックする事ができた。

 ところで、ここのマックで私がネットをしている間に夫がコーラでも買おうとカウンターに行ったのだが若いアルバイトは夫を無視して他の客ばかり対応するそうで、夫は気分を害して何も買わずに帰ってきた。そもそもネットがしたいだけなので、これ幸いにと何も買わずにメールチェックして店を出た。

 私達が滞在するキャンプ場の奥さんと娘も、滞在当初にスーパーの場所を聞いたり、クーラーボックス用の保冷剤を凍らせられるか聞いたりしたかったのだが、確実に無視された。昼時のレストラン対応が忙しいからというだけの理由ではなく、ここの村はフランス語が話せない人やアジア人に対して億する人がいるんだなぁと感じていた。

 これだけ世界的に有名な観光地になっても体質というのはなかなか変わらないものだ。フランスのキャンプ場でのフランス人の横柄さについてはオランダ人から耳にしているので、別に何とも思わない。シャモニーの観光案内所では素晴らしく英語ができる的確な情報をわたしてくれる女性にも出会ったし、色々あるわけだ。マックについては逆にラッキーだった。

 無事にネットもすませ、お店なども冷やかして夕方、キャンプ場にもどった。

 野菜のBBQには塩・こしょう・オリーブオイル。これに先日のラクレットの余りをかけて食べた。

 最近はフランスのスーパーでシイタケをみかけるようになった。今日もシイタケがあったのでBBQにしたら、これがまた旨い。ヨーロッパに数々あるキノコ類と比べても負けていない。どころか絶対に勝っていると思うな。






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