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2014年
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4月:1,2,3,4
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2013年
1月:1,2,3
2月:1,2,3,4
3月:1,2,3,4
4月:1,2,3,4
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10月:1,2,3,4
11月:1,2

2012年
1-1,1-2,1-3,1-4
2-1,2-2,2-3,2-4
3-1,3-2, 3-3
5月:1,2,3,4
6月:1,2,3,4
7月:1,2,3,4
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9月:1,2,3,4,5
10月:1,2,3,4
11月:1
2013.9.23(月) フランス(リヨン)
今回の最大量に挑む。「アンメ・フェスキルトゥプレ」

 今日のランチで訪れるレストランは、アンメ・フェスキルトゥプレ(En Mets Fais ce Qu'il te Plait)。リヨンの日本人料理人の中で先駆者と呼ばれている石田克己氏のレストランで、氏の料理をよく知っている友達から「とにかく素材の扱いが絶妙で素晴らしいんだけど、ボリュームがすごいから覚悟しておいてね」というアドヴァイスを受けた店だった。

 晴天の昼間、訪れたレストランは街角に立つ一軒家の一階にあり「いらっしゃいませ」と石田シェフの奥様が迎えてくれて席に案内された。とても気楽な雰囲気のお店で肩の力が抜けているところが逆に先駆者の余裕を見せている感じだった。

 お昼のメニューは「前菜とメイン」あるいは「メインとデザートかチーズ」で24ユーロ、「前菜とメインとデザートあるいはチーズ」で25ユーロと聞けば、当然25ユーロにする。大丈夫。今日のために昨日からあまり食べないように心がけて、朝も少し控えめにしてきたし、胃薬も持ってきてあるのだから。

 前菜4種の中から「サバのソテー、バルサミコ酢のサラダ」と「リヨン地方の野菜の盛り合わせ、ヤギのミルクのカイユ(チーズを作る過程で生成される)、白トリュフのオイル」。メインは6種の中から「豚肉のソテー」と「ラムのもも肉のソテー」を選択した。前菜のたっぷりした量は聞いていた通りだった。ボリュームもさることながら、サバはぎりぎり生から脱したくらいの微妙な火の入れ方が絶妙で、野菜の盛り合わせはブーケのように美しい色合いの野菜がオブジェのように飾られていて思わずため息が出た。この皿は一つ一つの野菜の調理方法が微妙に変えてあって味が一様ではない事にも驚き。見て楽しくて食べておいしい前菜に初っ端から満足指数が急上昇だった。

 メインももちろんボリューム満点のお肉たち。豚肉はあんなに分厚いのに中まで火がちゃんと通っていてしかも堅くなく汁気がたっぷり残っていた。どうしたらこんな風に作れるのか?凝ったソースなどではなく肉そのものの直球勝負の一皿。対してラムはカルダモンとクミンとトマトでカレー風味に仕立ててあった。そもそもラムカレーが大好きな私としてはこちらのお皿もたまらない魅力だった。

 相当の覚悟をしてきたせいか、メインもペロリと胃におさまって、最後はデザート。私は桃のタルト、夫はハイビスカスのジュレ。最後までボリュームと見た目と味の三つ巴で楽しませてもらった。

 昼間の最後の客だった事もあって、食事の後に石田シェフと世間話や料理の話をさせてもらう事ができた。今日使われた野菜は、昨日知り合いの農家を訪ねて石田シェフ自ら摘んできたものもあったそうで、畑の写真などを見せてもらえた。

 私たちがイタリアのしょっつる「コラトゥーラ」とカラブリアの辛い豚肉ミンチ「ンドゥイヤ」の話をすると、まぐろにコラトゥーラを塗ってたたきにしたものに、イタリアの脂身だけの生ハム「ラルド」を乗せたらどうかというのと、食べる時にンドゥイヤを塗ったらどうかという提案を頂いた。プロの料理人の方からこんなアドヴァイスがもらえるとは思ってもいなかったので感激。料理に対する真摯な思いを持っている石田シェフ。こういう人から今日のような料理が出てくるんだなぁと感慨深かった。

 帰りは町をかなり歩き回ってみたものの一向にお腹が空く気配がないので、夕飯はチーズとワインで終了。それにしても今日も満足度の高い経験をさせてもらえた。


2013.9.24(火) フランス(リヨン)
Takano Takaoでランチ、Bernachonでお茶、ボギューズのマルシェで買い物

 タイトルに今日の行動を並べてみると、Figaroの編集かっちゅうくらいにイケてる場所を訪ねた日だった。これも今日一緒に行動を共にしてくれた友達のお陰。

 まずランチに訪れたのはTakano Takaoというシェフの名前が店名になっているお店。ミシュランの星付きのお店でメインシェフをされていたTakanoシェフがご自身の店としてオープンした店で、今後、星獲得もあるだろうから星獲得でお値段があがる前に行っておこうという、庶民の涙ぐましい作戦なのだった。

 店内に入ると昨日のお店とは違ってピンと張り詰めたような緊張感を感じた。スタイリッシュな内装、礼儀正しく動き回るカメリエレ達、エレガントなお客様。クールだなぁ。

 メニューは28、45、75ユーロのコースで内容は決まっている。28ユーロはお昼のみ出される。私たちは全員28ユーロのコースでお願いすることにした。最初に出たアミューゼは日本の茶碗蒸しの上にグリーンのだしの効いた泡状の物が乗り、サバのほとんど生のような燻製だろうか?一切れが添えられていた。夫はサバが生過ぎて苦手な感じがしたというが、私はかなり気に入った。

 前菜はカモのフォアグラのグリル。ソースは桃のチャツネとビーツの「アシデュレ」って、つまり酸味を利かせたソースってことかな?とにかく赤いソースとフォアグラとグリーンの葉が「秋の庭園みたいだなぁ」と紅葉を思い起こさせる美しさだった。フォアグラに甘酸っぱい味は定番だが、そこをリンゴではなく桃でやっているのが9月な感じでおいしかった。

 メインはタラ科のLieu jaune(Lieuという魚の黄色い奴か?)を蒸した物。Bretonとあるからブルターニュから来たということだろうか?タラ科の白身魚を高さ3cm直径15cmくらいの円柱にして蒸した物に、ブルターニュ地方のPaimpol産の白いインゲン豆、トランペットの形をしたキノコが飾られ、あさりと手長エビのソースにおおわれているという料理だそうだ。こっれがもう、素敵においしかった。あっさりとした魚にサポート達がコクをレイヤーのように折り重ねているのだが、特にあさりの入っただしがおいしい。白身魚に煮詰めたあさりのだし。これは是非、自炊に取り入れたいと思った。

 デザートはチョコレートタルトにレモンの煮詰めたジャムとトンカ豆のアイス。お誕生日付近だった夫のために友達がシェフにお願いしてチョコレートでお皿にメッセージを入れてくれて、サプライズなデザートになった。

 どのお皿も美しくておいしい。そして伝統を踏まえながらのクリエイティブさがある。こういう事をやるから日本人でもリヨンという激戦区でやっていけるのだと納得させられるお料理だった。最後にコーヒーを注文すると出してくれるマドレーヌとクッキーも絶品。友達がシェフ達と知り合いなので出てきて記念撮影をさせてもらった。素晴らしいお料理をだしてくれたシェフの素顔が見られるのも、今回の醍醐味だ。

 さて、食後に向かったのはBernachonというチョコレートで有名なお店のカフェ。あのポール・ボキューズ氏の娘さんがここに嫁いだという縁で、ポール・ボキューズのデザートにもここのケーキが出されているというお店だそうだ。スペシャリテはチョコレートがレースのように薄く削られて乗っているケーキ。ショワショワと口解けする感触が他では味わえない。他にも単品のケーキや銀のトレーに運ばれた中から3つのケーキを選ぶことができるメニューもある。シックなお店で優雅にサーブされる極上のケーキ。それなりにお値段はするが、こういうひと時がたまにあってもいい。

 そして、最後に訪れたのがポール・ボキューズが監修しているレアル・ド・リヨンLes Halles de Lyon。屋内市場という解説がよくされるが、そのスタイリッシュでとりすました店構えは市場というよりもデパートみたいに美しい。扱っている食材はハム、チーズ、肉、魚、野菜、スィーツと一通りあるがそれぞれ最高級の物を置いている。日常のための食材ではなく何かワクワクする物を探すときに使う場所なんだろうな。チーズ屋さんには今まで食べようと思っていてチャンスがなかったバノンというぶどうの葉でくるまれたチーズがあったので買ってみた。この時、Tarentaisというヤギのチーズが試食に出されていたのだが、帰ってバノンを食べたらTarentaisの方が味が濃くておいしかった。次回めぐり逢ったら、そっちを買いたい。ということで、ここに来るとあらたに食べたい物が増えてしまうという危険性がある事を身をもって体験してしまった。

 夜は昨日の残りのサン・フェリシアンという地元チーズとバノンで軽く夕食。いはやは今日も充実。


2013.9.25(水) フランス(リヨン)→イタリア(ローマ)
ローマへ帰宅、いきなりジェラート

 リヨンでの滞在を満喫し、泊めてくれた友達に見送られてリヨンを出発。

 EasyJetでリヨンからローマまでわずか1時間半。近いものだ。格安航空会社は荷物の超過料金に厳しい。一人だけ荷物20kgを預ける追加料金を支払っているのだが、チェックインカウンターの預け入れ荷物のベルトコンベアーにスーツケースを置いたら、ぴーったり20kgだった。ここさえクリアできれば格安航空会社は快適なものだ。




 空港からシャトルバスでテルミニ駅まできて、そこからバスを2本乗り継いでアパートに戻れるのだが、バスを乗り継ぐ停留所に私たちのお気に入りのジェラテリアViceがある。

 たった1週間なのにジェラート禁断症状の気配ありの私たちは、スーツケースを押しながら店に入って帰宅前のジェラートとなった。リヨンと比べるとローマは気温も高くジェラートがことのほかおいしく感じられた。

 ただいま、ローマ。残りわずかとなったローマ滞在を楽しむことにしよう。


2013.9.26(木) イタリア(ローマ)
裏通りなのに人気の老舗「ピペルノ」Piperno

 ローマ帰宅第一弾目のランチはユダヤ人地区の裏通りの細い路地をのぼったわずかに丘になった場所に隠れ家的にあるレストランのピペルノPiperno。トリップアドヴァイザーの2012年トラベラーズ・アワードを獲得していることから知った店だ。料理はユダヤ系ローマ料理で、私たちはここで「カルチョーフィ(アーティチョーク)のユダヤ風」を食べてみたいとやってきたのだった。

 カルチョーフィは5月くらいに収穫が終わり、10月近くになると再び新鮮な物が出てくる植物だそうで、8月にローマに来た時は「季節ではないので出せない」とあるレストランで言われて待っていたのだ。

 席について注文したお水をまずは飲みながら、メニューをじっくりとながめる。イタリア式のこの方法もだんだんと板についてきた気がする。カメリエレに確認したらカルチョーフィがあるというので、まずは安心。

 ピペルノは中庭のテラス席のたたずまいがとても素敵なお店で、働いているカメリエレはお年寄りが多く、ゆったりと歩いてサービスしている。このお店の歴史と共に歩んできたカメリエレが店と一体化している様は裏通りのひっそりとしたたたずまいと相まって、タイムスリップして昔のエレガントなリゾート地にでも来たかのような錯覚を覚えさせた。

 今日は前菜に目的のカルチョーフィのユダヤ風を一皿。丸ごと揚げたカルチョーフィが2つ皿に乗って15ユーロ。うーん、高い。パスタ類は全て16ユーロで、ニョケッティという小粒のニョッキのミートソースとキターラという平らな生地を細切りにして日本そばのようにして作る麺のシーフードソース、メインに魚とイカ、エビのから揚げセット(25ユーロ)を一皿、仕上げにエスプレッソを2つ注文した。コペルト(席チャージ)と水代金とパン代金込みで全部で83ユーロ。エレガントにはお金がかかる。

 カルチョーフィは外側がカリッとして芯がユリ根のようにほっくりとしていておいしかったが、一人で1つ食べたら十分。油っこいからね。パスタは普段行くようなお店よりの1.3-5倍の値段だけあって麺がとても秀逸でおいしくコスパとしては納得だった。フリット・ミスト(ミックスフライ)は安いお店で15ユーロからが普通だと思うが、ここのは量も多く何しろ気持よくカラッと揚がっている状態が素晴らしかった。安いお店だとエビとイカに偏りがちだが、ここは小魚の種類も量も豊富で、値段に見合った物がでてきていた。

 ということで、おいしくて高級で優雅な気分を味わえたのだから、総合的に考えるとコスパは悪くない。そういえば来ているお客様はアメリカ人観光客、地元の裕福そうな老夫妻、イタリア人青年実業家風お育ちのよさそうな青年などだった。やはり高級な感じ。

パンもなかなかおいしい。

ここのカルチョーフィは揚げてぺったんこにしてある

この麺はかなり好み

ミートソースのニョッキはもう少し柔らかめが好きだがおいしかった

フリットミストの魚量が他の店より断然多い。25ユーロだからね。

Venchiでデザートのジェラート。

 帰り際にスペイン階段近くのVenchiでジェラートを食べてランチタイム終了。この店はチョコレート屋さんなのだが、フルーツ類もなかなかおいしくて、今日のいちじく(左の上の紫色)もフレッシュな味わいだった。


2013.9.27(金) イタリア(ローマ)
サルディーニャのSella e Moscaにラブ

 北部のリヨンから戻ってローマのボルゲーゼ公園でウォーキングしていると、ローマはやはり南ヨーロッパであると実感する。

 自分たちの発汗度も激しいが、道行く人もまだ夏の名残りがある服装で歩いているからだ。

 今日は運動デーなので昼抜きで夕飯はフルーツだが、明日からの「お楽しみの週末」に備えてスーパーでワインを買ってきた。




 一つはサルディーニャ島のワイナリー「Sella e Mosca」が出しているロゼ。もう一つはプーリア州のマルヴァジーア・ネロというぶどうを使った赤ワイン。今年はSella e Moscaを知ってもう何度お世話になったことだろう。ここのワイナリーのワインがイタリア版ミシュランのガンベロ・ロッソから賞をもらっているのでついつい選んでしまうというのもあるが、今のところはずれがない。安価なのにしかりした味わいの白、ロゼ。このロゼもフランスのコート・ド・ローヌのめちゃ濃いロゼTavelを思い出させる力強さですっかり魅了されてしまった。

 サルディーニャ島ではコート・ド・ローヌで使われているブドウのグルナッシュがカンノナウと名前を変えて使われている。グルナッシュはそもそもスペインのブドウでピレネー山脈を越えてフランス南部のラングドック地方に入って世界に広まったそうだ。

 ここからは私の推測だが、サルディーニャ島はカタルーニャに支配を受けていた時代があり、イタリアで最もスペイン的な街と言われているアルゲーロを擁していることから、グルナッシュはスペインから持ち込まれたというのは想像に難くない。

 コート・ド・ローヌのTavelはグルナッシュから作られるのでサルディーニャのロゼがTavelに似ているのは当たり前なのかもしれない。面白いなぁ。


2013.9.28(土) イタリア(ローマ)
昼はリヨンの復習、夜は週末のローマの街へ

 今回のリヨン旅行で出会ったお料理をヒントに自炊をしてみようと、午前中は市場へ食材調達へ出かけた。作ってみたかったのはLe Canut et Les Gonesでのランチで出たイカのソテーとルッコラ、トマト、ピンクグレープフルーツのサラダ。もう一つはEn mets fait ce qu'il te plaitの石田シェフと食後のおしゃべりでヒントを頂いたマグロのたたき。生のマグロの切り身の表面にコラトゥーラというイタリアのしょっつるとおろしにんにくを塗りつけて30分おいた物を強火で両面10秒くらいずつ焼き、一つはプーリア産のンドゥイヤという豚肉ミンチのトウガラシ漬をちょっとつけて食べ、一つはラルドというイタリア産の脂身だけのハムを乗せて余熱でラルドを溶かしながら食べるというものだ。

 甲殻類は生野菜と合わせるとさっぱりと食べられるが、そこにフルーツの甘みと酸味が加わると複雑な味になるし、コレステロールを摂取した時に感じるキンキンととがった感じがフルーツで抑えられる気がする。本当はもっと凝った工夫がされていると思うが、私の場合は材料に塩・胡椒とオリーブオイルをかけただけ。それだけでも組み合わせの妙で今までにない一品になった。マグロのたたきは火にかけた時間が短かったのでフライパンの中でまぐろの上にラルドを置くべきだった。皿にあげてから置いたのでラルドが解けなかった。でもラルドの濃厚さが赤みのさっぱりしたマグロにコクを与えて今までよりも進化したバージョンになった。ンドゥイヤも豚肉とマグロという異種の組み合わせだが意外にもよく合う。ンドゥイヤは豚肉というよりは辛みソースの役割になるからだろう。

グレープフルーツの苦みもいい感じ。

左の切り身の上の白いのがラルド、右端のオレンジ色がンドゥイヤ。

 もう一つの実験はナポリ近郊のパスタで有名なグラニャーノで作られているパスタだが、イタリア全土のスーパーで気軽な値段で買えるGAROFALO社のキターラという麺を試食すること。

 具はあさりとからすみという間違いなくおいしい組み合わせにしてみたから純粋に麺の真価がわかるだろう。

 日本人のとある調理人が言った話の伝え聞きだが、「「パスタの袋の裏にある成分表示でprotein(プロテイン)が高いほどもちもちする、13%以上を買えば満足度が高い」そうだ。グラニャーノ産のパスタを名乗る3つの条件の一つがプロテイン13%以上なのでこれは間違いない。茹で時間も長いキターラは乾麺の時よりもかなり太くて、むっちむちの麺にできあがった。500g入り3.5ユーロや5ユーロというグラニャーノ産のパスタがある中、これは1.2ユーロだったかな。かなり安い。厳密には味が落ちるのかもしれないが、普通に食べるには十分においしかった。

 充実の実験ランチ後は部屋でおとなしく休憩してから、夜は夜でローマの週末の喧騒を見物にでかけることにした。

 土曜日の夜のローマの下町、トラステヴェレ地区のピザ屋IVOに午後8時に到着。テラス席から満席になる店だが今日は店内も既にかなりのお客さんで埋まっていた。広い店内はたった二人のウェイターが切り盛りしている。ロイヤルホストだってここまで過酷じゃないよなぁ。文字通り走りまわって汗だくで仕事をしているのをみたら、イタリア人は注文したものがこなくても黙って待っているようだ。こういう所は下町だなぁ。ローマではピザは夜の食べ物、そしてピザの前菜は揚げものが定番となっている。何て消化に悪いんだと思いながらビールと揚げものでピザを待ち、夜の8時半にピザを食べてしまった。ローマでの最後の週末だもの、食べてしまえ!旨っ!

 食後は更にディープなエノテカ「Goccetto」へ。場所も観光客があまりいないディープさもさることながら、お店の入り口の上には「vino e olio」としか書かれておらず「Goccetto」の「ゴ」の字もないのもディープだ。しかしながら、ここにはスーパーでは見つからない質の高い値段の安めなワインをグラス売りしてくれるという素晴らしさがある。2回目の今回はチーズセットも注文して、またまたディープな体験をした。しかし、この臭い発酵したディープさはフランス産のチーズだけどね。

 こうしてローマの夜はあっという間に更けていった。終バスを逃したら大変だと午後10時半に店を後にしたが、次回ここに来ることがあったら、最初からここでハムチーズやつまみの盛り合わせで楽しむのもいいと思った。


2013.9.29(日) イタリア(ローマ)
ローマ最終日にスリに会う!

 ローマ最終日は残念ながら憂鬱な曇り空となった。しかし、日曜日でポルタ・ポルテーゼの定期市があるので最後のチャンスだと市に出かけたのだった。

 最近はコートを探しているので1ユーロではなく、もう少し金額の高い3ユーロから10ユーロくらいの店も見てまわった。

 目的のコートは見つからなかったが、これから寒くなる季節にむけて使えそうなニットなどが数点見つかって買う事ができた。毎週毎週、こちらの心の中を見ているかのような商品展開をしてくるから、思わず買ってしまう。誰が指示しているのかわからないが、やるなぁ。

 途中で雨も降り出したので市場を切り上げて、混雑するトラムに乗って移動し、ジェラートでも食べて帰ろうとジェラテリアのジョリッティに入ってリュックから現金を取り出そうとした夫が「あっ!」と声をあげた。

 リュックの外側ポケットを財布代わりにしていたのだが、そこから札だけなくなっていたのだった。

 日本円にして3万円くらいだろうか。久しぶりのこうした被害に二人とも大ショックで、ジェラートを食べる気分も失せて家に帰ることにしたのだった。

 帰宅してからの猛烈な反省会で明らかになったのは、スリは混んだトラムの中で行われたのだろうという事だった。今まであまり混んだトラムに乗る事がなかったのでついつい油断してリュックを前がけにするのを忘れてしまったのだった。定期市はスリが多いので前がけにしているのだが、トラムでは油断した。

 また、今日は服装がまずかった。定期市に行く時はジーンズかぶかぶかのアウトドアのパンツに古いTシャツ、帽子はアウトドアのつばのある使い古しが正しい。つまり、定期市に洋服を買いに来るイタリアに出稼ぎに来ているアジア人に見える服装を心がけるのが正しい服装だったのに、今日は夫は白いパンツにZARAで買った小洒落たTシャツを着ていたのだ。思えば今日の服装だと物乞いも近寄ってきていた。いつもなら物乞いは、私たちの前では他の人には差し出しているカップや帽子を下げる傾向にある。つまり、私たちに物乞いしても無駄、あるいは逆に手を伸ばして小銭を取られるとでも思っている感じ。これが市場へ行く時の正しい服装をしているかのバロメーターにもなる。

 小さい頃、歌謡曲に「ボロは着てても心は錦」という歌詞があった。また、日本の学校でも「人を外見で判断してはいけません」と教育されてきた。これは個人のあり方としては本質的に正しいと思う。しかし、世界的に見ると多くの人は外見で判断し、多くの人に外見で判断される。イタリアの高校生の教科書には過去の統治者を例に挙げてリーダーの条件として5つをうたっているのだそうだが、その一つに「信頼される外見」も入っているそうだ。私たちはこの年になって実践的な「外見処世術」を高い授業料を支払って学んでいる。と、思う事にする。


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