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2012.06.25(月) フィレンツェ(イタリア)
散策、そしてオペラ

 この5月にフィレンツェに支店を出したばかりのVenchiヴェンキ。チョコレート専門店だけどジェラートも出している。一番小さなコーンやカップは2種類選んで2.5ユーロとグロムと同じく高価格に設定されているが常に観光客が列を作っていて既に人気店だ。

 私は生チョコを冷やしただけのようなアステカとマスカルポーネに干したイチジクが入ったもの、夫はチョコレートにヘーゼルナッツが入ったのとアステカ。アステカは他の店にはない濃厚さがヴェンキらしくて素晴らしかった。しかし、アステカと合わせたせいかマスカルポーネが水っぽく感じられてNGだった。同じくチョコ系と合わせた夫が正解だったみたい。

 久しぶりにシニョーリア広場に面するロッジアの彫刻を眺めて溜息。題材の功罪はさておき(※)、躍動感にあふれる肉体美を固い石でよくぞここまで表現できるものだと感心する。

(※)写真の彫刻は略奪の一場面を表している。ローマ帝国黎明期、街は兵隊ばかりの男社会だったので、近隣の村に行っちゃぁ女を略奪してきたという史実に基づき、なんちゃら村からの略奪という「略奪シリーズ」作品がいくつもあるうちの一つ。



 シニョーリア広場からウフィッツィ美術館前を通ってアルノ川へ抜ける。美術館の中庭にはフィレンツェゆかりの著名人の彫刻が立っている。ミケランジェロ、マキャヴェッリ、ガリレオ。こうしてみるとルネッサンスが以下にきら星のようなスターを生み出したかが実感できる。

 そんな中に「アメリゴ・ヴェスプッチ」を見つけた。メディチ家銀行に勤めていた彼はスペイン支店に転勤となった際、コロンブスらと共に航海に出て新大陸発見の探検隊の一員となった。コロンブスらの「ここはインドだ」という主張の中、彼だけが新大陸説をとなえて、アメリゴの名をとってアメリカが誕生したという、そのアメリゴ・ヴェスプッチ。今年は彼の没後400周年記念で、フィレンツェでは彼に絡めたイベントがいくつか行われている。

 この近辺のアルノ川沿いの通りもアメリゴ・ヴェスプッチ通りと名付けられている。


 その通りを西に歩こうとしたのだがひざしが暑すぎるので一本裏手の道を行った。マンジャフォーコという食べ物もおいしいワインバーや気がきいたブティックもある通りの中に陶器の置物をショーウィンドーに飾っている店が目に入った。夫が気付いて、「ねぇねぇ、このネコ、見たことないか?」というのを見れば、昨年フランスのナンシーにあるアールヌーヴォーの美術館「Musee de l'Ecore de Nancy」にいたネコとそっくりだった。

 妙に人間味のある表情と、中国の唐三彩のような親しみのある塗りに魅かれる作品だ。


 この道を通って訪ねたのはフェラガモ博物館。ここでマリリン・モンロー没後50周年記念としてモンローゆかりの品々を展示していると知ってきたのだった。フィレンツェに来てからモンローと書かれたTシャツや彼女の顔をプリントしたTシャツを着ているイタリア人を何人もみた。マリリン・モンローは人気なんだなぁと思っていたが、50周年だったからかもしれない。

 特にモンローに思い入れがあるわけではないので、博物館が無料ではなく入館料5ユーロというのを見てあっさり断念。正面玄関のウィンドーで楽しむにとどめた。


 一旦アパートに戻って夕飯を済ませてシャワーを浴び、午後7時半オペラに向けて出発。今日はヴェルディのラ・トラヴィアータ(椿姫)だ。

 フィレンツェの5月音楽祭の最後の大きな出し物として行われるこのオペラは、指揮者こそズビン・メータではないがオケはMaggio Musicale Fiorentino。会場はテアトロ・コムナーレで5月祭の締めくくりにはふさわしい。

 まだ日が高い町中だが、目貫通りの宝石店では顧客を招いてのバンケットが開かれて、華やかなドレスや細身のスーツに身を包んだ男女がシャンパングラスを傾けているのが通行人からも見える。華やいだ夜が始まっている。

 同じオペラに向かうのでも、こういう光景を目にしながら劇場に向かえるのがフィレンツェの良さだろう。夜になるとあちこちにドレスアップした人たちの姿を見かけ、自分もドレスアップしてその一員だという楽しさが味わえる街。やはりここは特別な場所だと思えてくる。

 今日も正面からではなく脇の入り口から入る天井桟敷の席、ギャレリア(22ユーロ)。2階、3階にはぎりぎりまで人が入らないのに対し、ギャレリアには期待で胸を膨らませたにわかオペラファンの観光客やら、もっといい席が空いていたら即効移動しようとタカのように目を光らせている常連のばあさんらが早い時間からぎっしり入っていた。最近の感想で言えば、下の階はヴィスコンティ―、ギャレリアはフェリーニの世界だ。

 配役はヴィオレッタがSilvia Dalla Benetta、アルフレードがGiuseppe Varano。舞台が始まって初っ端の「乾杯の歌」で驚いた。主役の二人の声が、そして合唱の声が、左上の天井から降ってくるように大音響で聞こえるのだ。最初はマイクをつけているのかと思ったが、野外劇場でもあるまいしそんな事はない。舞台上の音響が天井に反射して降るように感じられるのだ。以前、バイオリンをやっている友人が音の勉強のためにオケを聞くなら天井桟敷の中央がいいという話をしていた。舞台の音が均等に混じりあってベストバランスで聞こえるからだそうだ。今夜はそれを実感した夜だった。

 ヴェルディの椿姫はさすがに有名なだけあって、聞き覚えのある名曲アリアが盛りだくさんだし、音楽でうわーっと盛り上がってアリアに突入して観客が拍手喝采するというウェーブのような流れがたくさんあって、「オペラってインタラクティブなのね」と感じさせてくれる。その名曲にのって歌う主役の二人の力量もまた素晴らしかった。

 8時半に始まってカーテンコールが11時半。今日が千秋楽の主役の二人は晴々した顔で子供のようにとび跳ねながら舞台あいさつを何度も行っている姿が印象的だった。

 もう一度言うがこれでたった22ユーロ。夏のヨーロッパで観光客向けにモーツァルトに衣装とか着て、心がない演奏のモーツァルトを聞かされても同じくらいの金額を支払わされる事を思えば、CPの高さにしびれる。実に素晴らしい。


2012.06.26(火) フィレンツェ(イタリア)
ウォーキング17kmとフェリーニの映画でぐったり

 恒例のカッシーネ市。先週は何も欲しい物がみつからなかったが、今週もまた来てしまった。先週みつからなかったのは、あまりにアイテムを絞り込んだから。今日は意識を解放して気になる物は全てチェックしてみよう!(って、何の修業だ、これは)

 鉱脈と私達が勝手に呼んでいる、一枚3ユーロ、二枚で5ユーロの店で意識を解放すると、欲しい物が出てくる、出てくる。わさーっと選んで次々に候補を肩に乗せていたら、お店のおじさんが透明のビニール袋を渡してくれた。

 ああ、この袋。

 隣で同じように服を漁っている30歳くらいの女性がこの袋を持っていて、買い付けにでも来ているのかと思っていたのだが、自分も同じスタイルになってしまった。

 選んだ洋服を片っ端から試着して残った2着、スカートとTシャツを5ユーロで購入。今日はこれに弾みついて帽子10ユーロ、ブラウス1ユーロ、サマードレス3ユーロと次々に掘り出し物が見つかってしまった。サマードレスはカルバン・クライン・ジーンズの麻で、とても肌触りがいい。もっと細身じゃないと似合わないし、背も足りないが、こういうの着たかったんですよね。軽い気持ちで買えるから嬉しい。

 対する夫は長袖シャツを探すも、丁度いいサイズがみつからない。カッシーネに出ているのは圧倒的に女性物なので仕方ないけれど、来週にリベンジを行おうということになった。

 帰って昼食を食べたら、今日は午後から通常の13kmウォーキングに出かけた。ミケランジェロ広場から左手には、先日日曜日のサン・ジョバンニの祝日に花火を見たヴィッラが見えた。

 近い。

 花火はミケランジェロ広場であげられていたからとても近い。そして、小高い丘の上のヴィッラでのワイン試飲とスローフードの試食の会を甘美に思い出すのだった。

 しかし、午前中にカッシーネ公園までの往復4kmを歩いていたのが、後半になってカウンターパンチのように徐々に効いてくる。いやー、さすがに17km歩くとぐったりと疲れた。

 そして、夜はフェデリコ・フェリーニの王道作品「道La Strada」を見た。さすが名作。このDVDには英語字幕がついているので、いつもと違ってセリフの内容がわかる、わかる。内容も他の作品に比べるとわかりやすい。ニーノ・ロッタの物悲しいトランペットの主題歌にのって描かれる2時間弱のこの映画は、心の深い所を付いてくる。薄っぺらな悲しさでもなく、まっこう臭い説教でもない。でも、心に残るセリフや場面がたくさんある。翌日の朝、起きてすぐに思い出して涙が出てくるような心がつかまれているような気分になる映画だった。これが芸術ってことなんだろう。


2012.06.27(水) フィレンツェ(イタリア)
フィレンツェでナポリピザ

 フィレンツェにはいくつものナポリピザを出す有名店がある。大抵はナポリ人がやっている店で前にいたアパートのナポリ近郊出身者から得た情報とか、今のアパート在住の日本人から得た情報とか、ネットの情報を合わせると以下の4軒が噂にのぼるおいしいピザ屋みたいだ。

1 Il Pizzaiuolo(http://www.ilpizzaiuolo.it/
2 O'Munaciello
3 Vico del Carmine
4 Gustapizza

 4はピッティ宮の近くにあり、前回フィレンツェを訪問した時に通りかかって見つけた店だ。レストランというよりはイートインの場所があるテイクアウトピザ屋という方が合ってい。トリップアドヴァイザーという旅行者の口コミサイトでとても高い評価を受けていて、店はアメリカ人を中心に外国人が多い。トリップアドヴァイザーで高い評価を受けているイコールおいしいとは限らないが、ここはちゃんと安くておいしい。

 さて1から3についてだが、1はサンタンブロージョ市場に近い老舗のピザ屋。そこで修業して店を開いたのが3だそうだ。1は日本人の間でも有名らしく日本人によるブログのコメントなども見つかる。2は前のアパートのナポリ出身の住人が別のナポリ人から1を超える旨さだと聞いたという店。3は今のアパートの住民が飲食系のナポリ人から2を超える旨さだと聞いた店。

 総合的に考えると3が一番旨いってことになりそうだ。しかし、トリップアドヴァイザーでのコメントを見ると「イタリア人あるいはナポリ人」ならばいいが、外国人は冷遇されるかもしれないという意見もあって微妙だ。

 で、今日は各店を訪れてメニューと値段と雰囲気を確認したかったのだが、3はメニューを外に出しておらずシエスタ中はシャッターも閉まっていてまるでわからず。2は高級路線を狙っているのかスタイリッシュな店構えでGustapizzaよりもピザの値段が3ユーロから5ユーロも高い。1だけがちゃんとメニューが見られて、雰囲気も値段もいい事がわかり、アパートからも近かった。

 ということで「ピザ職人」という意味の店名イル・ピッツァイウォーロに決定。

 店内に入ると「ああ、これナポリのピザ屋で見たなぁ」というタイルを使った壁とボンボンと火が燃える焼ガマが目に入ってくる。レストランというよりは食堂のような簡素ともいえるテーブルと椅子が並ぶ間を、ポロシャツにジーンズ姿のウェイトレスたちが軽快に動き立ち働いている。午後7時半の開店の店だが、午後7時45分には既に4組も客がいてピザを頬張っていた。ここまでの雰囲気と、隣のテーブルのイタリア人カップルのピザを見て「このお店は当たりだ」とすぐに確信した。

 前菜、ピザ、パスタ、メイン、ドルチェと一通りあるが、ピザだけでもかなりのボリュームなので私達はビール2杯とピザ2枚のみ注文。隣のテーブルのイタリア人カップルは私達と同じくビール、ピザと食べてからデザートは二人で1つ、最後にエスプレッソを飲んでいた。

 もっちもちのいかにもナポリという生地はGustapizzaほど塩辛くなく、トマトソースがとてもおいしい。Gustapizzaよりも種類が豊富で値段は1-2ユーロ高いが(例:マルゲリータ4.5ユーロが6ユーロなど)店の構えからしたら当然だろう。水もパンも出ないのにコペルト一人2ユーロは高いと、その点だけが気になった。Gustapizzaはコペルト取られないからね。こうなってくると他のお店も気になるなぁ。フィレンツェでは、ナポリに行かなくてもかなりレベルの高いピザが食べれられるっていうのはポイントが高い。


2012.06.28(木) フィレンツェ(イタリア)
ウフィッツィでアペリティーヴォ

 午前中作業して、お昼ご飯はシーフードフライとビールと白ワイン。

 午後から13km歩くからと強気の「揚げ物+酒」メニュー。ん?何か逆効果になっているような・・・。ま、いっか。

 シーフードは軽く塩・コショウして小麦粉をはたいて揚げるだけなんだけど、何度やってもものすごくカラッと上手にできちゃう。なぜかというと、この小麦粉がセモリナという種類の小麦だからじゃないだろうか?セモリナ粉で揚げれば、日本で揚げてもカラッとするのだろうか?日本で試してみたいものだ。

 今日も真夏のようにカッと強い日が差す中、せっせと歩く。ミケランジェロ広場の右端にイタリアでよく見る無料の水飲み場がある。ローマだと水が出しっぱなしの所も多いが、フィレンツェではボタンを押すと水が出るタイプ。ここが私達の休憩所。冷凍庫で凍らせたペットボトルの水にここの水を補充し、顔と腕と首筋を洗ってさっぱりする。ここでリフレッシュしたら、あとは下り坂。今日も爽快なウォーキングだ。

 ウォーキングの帰り道、クローチェ門から町の外側に出てすぐの所にあるCoopというスーパーに寄って買物をする。今日はそのCoopの近くにある質の良いエノテカ「ボナッティBonatti」に立ち寄ってきた。アーモイタリアという情報サイトで紹介されていたエノテカだ。

 通りに面した入口から想像するよりもずっと奥行きが深い店内には、ずらりとワインが並んで壮観だった。イタリア国内の様々な場所のワインのみならず、フランスワインなども置いている。

 30ユーロ前後で今週末飲む為に適したブルネッロ・ディ・モンタルチーノを探しているというと、迷うことなくある1本を勧めてきた。この値段のブルネッロ・ディ・モンタルチーノはこの店にはあと2種類あるのだが、一つは2007年。二つは2006年だった。ブルネッロ・ディ・モンタルチーノは5年間樽で寝かせるので今年デビューしたブルネッロは2007年物になる。今年デビューしたてはまだ若すぎるので2006年を勧める。更に2006年の2つのうち一つはデリケートでソフトな味わいで、もう一つはしっかりとした強い味わいで、個人的には強い味わいの方がブルネッロらしさを感じられるという理由でこれを勧めてくれたのだそうだ。品揃えがいいだけでなく、丁寧に論理的に説明できる店員がいる、非常に好感触なエノテカだった。今週末が楽しみだ。

 今夜は夜9時半からシニョーリア広場で無料のダンスパフォーマンスが行われるというのが情報誌の1つに掲載されていた。しかし、他の情報誌には掲載されていない。今までの経験からこういう場合は開催されない事が多い。ということで9時半のパフォーマンスの前にもう一つイベントを入れることにした。

 ウフィッツィ美術館では4月26日から毎週木曜日の午後7時半から9時半に、美術館内のカフェテリアを利用して「AperitivoAdArte」というイベントを行っている。ブルールームと呼ばれる青い壁の部屋に展示された名画とおつまみ付き食前酒を楽しんで頂こうという企画で、入場料は一人ユーロ。飲み物はソフトドリンクか赤あるいは白ワイン、カクテル数種から一杯選べて、2杯めからは追加料金になる。

 まずは名画を楽しもうとブルールームに足を運んだ。16世紀、17世紀のオランダ、イタリア、フランス絵画が展示されている。最初は聞いた事のない画家の小作品が並んでいるが、後にレンブラント、ベラスケス、ルーベンス、ヴァン・ダイクが出てきて、小さい展示会場なのにビッグネームの作品比率が高い事にウフィッツィの所蔵品のレベルの高さがうかがわれた。

撮影禁止だったようで、この後、注意された。

チケットの女性の絵画もあった

 2階の展示場から4階に移動すると、テラスの向こうにヴェッキオ宮が見える。ここでチケットを見せて飲み物を選び、ビュッフェコーナーからお好きなだけおつまみを取ってきて、暮れなずむヴェッキオ宮を見ながらアペリティーヴォを楽しめるのだ。

 午後8時のこの時間でもまだひざしが強いが、そのうちにヴェッキオ宮のレンガの色が刻一刻と夕日のオレンジ色に染まるのを見ながら酔いがまわっていく頃には、風も涼やかになってくる。

 フィレンツェで夏の夕刻を楽しむ方法としては、とても優雅で品のいい企画だと思った。


2012.06.29(金) フィレンツェ(イタリア)
電話と印刷、夜は「自転車泥棒」

 午前中作業後、自炊のスパゲッティーでランチ。今日の午後からはフランスに電話して、e-チケットを印刷して、できればバッソ要塞で行われているファッション見本市に行ってみるという予定だった。

 国際電話をかけるのに、最近はみなさん「スマートフォンからスカイプで」というのが一般的になってきたかと思うのだが、私達はいまだに国際電話といえば「電話屋」に通っている。1つにはたいして使いもしないスカイプに預金しておくのが嫌だというのと、各都市の「電話屋」がある界隈はなかなか面白いから行ってみたいという理由からだ。

 フィレンツェに関していえば、町の規模の割には外国からの出稼ぎ人が多くいるせいか電話屋の数が他よりも多く感じられる。特に中央市場からサンタ・マリア・ノヴェッラ駅の間にアジアやアフリカ食品店などが並ぶ中に集まっている。大抵はネットカフェとコピー、ファックス、印刷サービスと一緒になっているので印刷と国際電話は同じ店で行えるのだが、私達が何度か印刷サービスを利用したインド人おやじの店は電話コーナーに一人も客がおらず、電気もついておらず、しかも今日、彼は機嫌が悪そうだった。ということで、この店では印刷のみを行って、別の店から電話をかけた。

 時刻は1時半。フランスのプジョー、ニース店に配車確認の電話を入れたのだが「ただ今、電話に出られません」というメッセージだった。ああ、そうだ。今はお昼休みなのだ。この電話番号はランドラインではなくモバイル。日本だったらモバイルにしていることイコール「営業時間中はいつでもどこでも電話が取れます」というメッセージを含んでいると思うのだが、ラテンの国では昼休み時間は電源切っちゃうようだ。常識が違うよね。あらためて2時過ぎに別の電話屋(市場付近にいたらいくらでも電話屋がみつかった)からかけたらつながった。

 印刷と電話の用事を済ませ、バッソ要塞へ。前回、受付で聞いたら「ファッション業界に関連する人」のみ入れるということで挫折したのだが、今週くらいになったら一般人も入れるかなぁと思って行ってみたのだ。しかし、やはり業界人のみということで入れず。ま、仕方ない。

 今日も非常に暑いので、シチリア出身のジェラテリアCarabeでジェラート休憩。レモンの皮のほろ苦さが灼熱の火照りを取り去ってくれるシチリアン・スピリットは今日は特においしく感じられた。この2ヵ月ジェラートを食べてきて、どこが一番おいしいというのは言えないというのがわかってきた。ここカラベのように糖分控えめでさっぱりしたのが食べたい時もあれば、デイ・ネリのようにこってり気分の時もある。言えるのは、フィレンツェには選べる贅沢さがあるということだ。東京で言ったらラーメン屋みたいな感じだろうか。

 日ざしが強くなるほどに照り輝くドゥオーモは夏に向けて日々輝くように美しくなっている。通りかかる度に思わずカメラを向けてしまう。

 今夜はイタリア映画の超有名作品「自転車泥棒Ladri di biciclette」を観た。さすがに名作だけあって英語字幕が付いているので内容がわかる。ヴィットリオ・デ・シーカ監督は素人をスカウトして起用しているそうだが、主役のお父さんの素人臭さが純朴さ、葛藤、いらだちなどを逆によく表していて観る者の胸を打つ。フェリーニの「道」のように演技派の俳優さんによる物もいいが、こっちもいい。色んな要素が計算されて織り込まれているようなハリウッド映画はエンターテーメントを「提供」されている気がするが、昔のイタリア映画はもぎたての果実を渡されたようにおいしさも苦味も生々しく迫ってくる。聴衆を楽しませようとして、あるいは感動を与えたくて創られた物というよりは、監督の心の中にあるどうしようもない思いを吐露されたような心のざわつきを覚える。


2012.06.30(土) フィレンツェ(イタリア)
一流品三昧の土曜日

 平日に比べて週末は多少多めに食べてもいいという、緩やかなルールが暗黙の了解のもとにある。

 ということで、今週末はブルネッロ・ディ・モンタルチーノ2006年と2007年を飲み比べようと2本購入し、料理は4種の牛肉(子牛のカルパッチョのゴマ油味、子牛のカルパッチョの温泉卵添え、子牛の薄切り肉のソテー、牛フィレロッシーニ風)。ロッシーニ風に使った頂き物のフォアグラはアニスかフェンネルシードが入ったちょっと変わった味付けで、淡白なフィレ肉へのいいアクセントになった。

 ワインは最近の暑すぎる気温の中では少し冷やした方がいいということで冷蔵庫に入れていたが、室温に近くなってくるとフワーッと香りが開いてよりおいしくなってきた。このレベルのワインになると「酸っぱい、甘い、渋い」などがどこも一つも突き刺さったりとがることなく、渾然一体となってシルクのようにスルーっとおいしさだけが感じられる。スルーっスルーっと楽しんでいたら、やや飲み過ぎてしまった。

 食後は酩酊しながらも明日のラーメンスープの準備を行い、やや酔いが覚めてきたのでデザートを食べに町に出た。

 肉料理と赤ワインのこってりさを打ち消すには、やっぱりこってりしたジェラートがいいだろうということで向かったのはデイ・ネリ。ここでチョコレートを固めたような濃いココア味と抹茶ジェラートでフィニッシュ。

 デイ・ネリではまた新しい組み合わせのジェラートを出してきている。この店は来るたびにいくつか種類を入れ替えているから、ついつい何度も足を運んでしまうのだ。

 町をぶらついていたら、人だかりがしている街角からいきなりすごいスポーツカーが角をまがってきた。おっとー、フェラーリじゃないか。するとこの車の後ろから角を曲がってきたのもまたフェラーリ、そしてまたフェラーリ、フェラーリ。

 調べてみたらイタリアで開催されるクラシックカーのレース、ミッレ・ミリアの開催時期に合わせてフェラーリが企画する新しいイベントCavalcadeが行われていたのだった。6月28日から30日の3日間、世界中からフェラーリをお持ちの方が自車を持ち込んでイタリアの街から街を駆け抜けるそうだ。

 シニョーリア広場にはまだ出発していないフェラーリが3台くらい停車していて庶民はこれ幸いにと「自分とフェラーリ」の記念撮影したり、車の中をのぞきこんだりした。ものすごい大きなエンジンが入っているのが見えるガラス窓に周囲のレンガの建物が映し出せれて、イタリアの歴史の合作にくらくらする。かっこいいなぁ、イタリア。

 こうして図らずもたくさんのフェラーリを見学してからアパートに戻って休憩。夕方になっても全く空腹感がないので夕飯はとらず、午後8地に無料コンサートを見学するために再び出発した。

 今日の無料コンサートはドゥオーモの脇に設置されたステージで午後9時半から1時間強行われた。オーケストラはOrchesta e Coro del Maggio Musicale Fiorentinoで指揮者はズビン・メータ氏。そう、これはフィレンツェ5月音楽祭の一環なのだ。1時間半前から陣取っていただけあって、ズビン・メータ氏までの距離10mという場所で聞けた。本当は最前列にいたのだが、常連のフィレンツェ人の老人達が椅子を持ってやってくる度に前へと譲っていたら6列目くらいになったのだ。それでも前は全員座っているのだから視界はばっちり。メータ氏の優雅な指揮をこんな近距離で見られるなんて感激ものだった。

 曲目はビゼーのカルメンから数曲、聞いた事あるけど曲名が思い出せないある曲、ヴェルディの「椿姫」からプレリュード、第一幕の最後のヴィオレッタとアルフレッドのアリア、第二幕から「おれたちはマドリードのマタドール」、マーラーの交響曲第五番からヴィスコンティ―が「ベニスに死す」で使った曲、トスカからバリトンのアリア、最後にリムスキー・コルサコフの「スペイン奇想曲」。アンコールにはヴェルディの「ナブッコ」から第三幕第二場の「行け、我が想いよ 、金色の翼に乗って」だった。

 椿姫のソプラノとテノールは先日観劇した椿姫の、私達が見ていない日の歌手たちだったと思われた。ソプラノはマリーナ・レベッカMarina Rebeka、テノールはジュゼッペ・ジパリGiuseppe Gipaliかなぁ。これだけの近距離で聞くレベッカさんの声量、声の艶、コロラトゥーラっぷりはものすごいインパクトで私達含め全員が大興奮となった。

 アンコールにイタリア第二の国家とも言われる合唱で気分が盛り上がった聴衆は「もっと聞きたい」とアンコールの嵐を浴びせたのだが、ズビン・メータ氏が「明日のヨーロッパカップでイタリアは優勝だ!」と叫ぶと皆、そうだ、そうだ、明日は大事なサッカーの試合があるから帰ろうとでも言わんばかりにそそくさと椅子を畳んで立ちあがった。サッカーの事を言われると素直になってしまうイタリア人国民のツボをついた作戦は、なかなか賢い戦略。そのやり口のスマートさが「ズビン・メータ氏はインド出身だったなぁ」と思い出させた。そんな戦略にまんまと乗ってアンコールを諦めて帰るのが、いかにもイタリア人的で面白かった。

 今日は昼からワイン、ジェラート、スポーツカー、クラシックと各界の一流に触れ合う事ができた素晴らしい日だった。


2012.07.1(日) フィレンツェ(イタリア)
EURO決勝の日のフィレンツェ

 昨日の素晴らしいコンサートを思い出しながら、昼食は久しぶりのラーメン。

 昨日から煮込んだ鶏モモと手羽と野菜のスープに本だしと醤油を加えて汁完了。具はチキンの香草蒸し、温泉卵、のり、ネギ。麺はバリラのスパゲッティーNO.7を予定時間より1分多めに茹でたもの。

 欲を言えばきりがないが、これでかなり満足できるラーメンになった。

 午後からはデザートを求めて町に出た。


 いつもは日曜日と言うと繁華街には観光客のみならず地元民もショッピングに繰り出してくるものだが、今日はどうにも町が震撼としている。非常に暑いのでそのせいもあるかと思うが、おそらく今夜のEURO戦に備えて英気を養っているんじゃないかと思われた。今回初めて知ったのだが、4年に一度ワールドカップのの2年後にヨーロッパチャンピオンを決するEUROというサッカーの大会が行われているそうだ。

 ここ数日、フィレンツェの町中ではレストランやバーがしつらえたテレビモニターの前に多くの人が集まって観戦する姿が見られていた。ドイツ戦に勝った時は、マルクス・アウレリウスもこんな風だったかと思うほどの興奮が町を包んでいて、次は決勝だと鼻息を荒くしていた。その決勝戦が今日行われる。相手はスペインだそうだ。

 ま、それはさておき、カッと暑いひざしの日のラーメンの後には軽くさっぱりしたジェラートが食べたい。私は先日バルディーニ邸で食べたカラピナに行きたかったが、旦那はカラベCarabeを希望したのでカラベで2.6ユーロ3種盛りを食べた。その後、ぶらぶらと歩いてZARAなどで試着を楽しんでいたらカラピナの近くまできてしまった。行きましょう、はしごしちゃいましょう。ということで、カラピナで2ユーロ2種類盛り。先日食べたのと同じ「モモ」を食べたのだが、フルーツそのものの旨みを感じる。ピスタチオもそのものを食べているようだ。ここもあっさりして食べやすいジェラートだ。

 アパートに戻ってから試合の時間をチェックすると、ここの時間で夜8時45分から開始とのこと。寝室にあるテレビをつけてみたら試合が見られるようだった。

 午後8時過ぎ。まだ日のある夕暮れ時は近所の住民の笑い声や犬の鳴き声なんか聞こえるはずなのに、今日は本当に不気味に静かだった。そして試合開始。どうみてもスペインが攻撃する場面が圧倒的に多く、前半で2点、後半にも2点入れられて、町に何の歓声もあがることなく試合終了。私のような素人から見ると拮抗することなくあっさりとやられてしまったようで、なんとも面白くなかった。スペインってそんなに強いのか。試合が終わるとバールで見ていたらしい群衆が道に吐き出されて、アパートの外が今日初めてがやがやとしてきた。やがて、試合中には一度も聞こえてこなかった応援用のラッパが「パーパー」と少しだけ聞こえてきたが、まわりに気兼ねするようにすぐにやんでしまった。こうなるとラッパの響きもエジプトのロバの鳴き声くらい虚しい。大騒ぎで今夜は寝られないかもしれない、という予想を大きく裏切って、静かで涼しい風の吹く寝やすい夜となった。


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