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2013年
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2012年
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10月:1,2,3,4
11月:1
2013.9.16(月) イタリア(ローマ)
ローマ初めて!の友達と町を巡る

 朝、友達が大家さんに3日分の宿泊費を手渡しすると「車代は?」と聞く。どうやら昨日、空港に迎えに行った礼金を期待していたようだ。友達は10ユーロ相当の手土産をすでに彼に手渡しているのだが、それは全くカウントされていない。私が「車が有料だとは言われていない」というと、彼はうんざりしたように「またか!もういい!」と両手を挙げて「寛大な俺がお前らの不作法を許す」という態度を取った。

 私とした事が。彼にはお菓子などという女子供のプレゼントを与えても効果がない事を見ぬけていなかった。友達に土産を相談された時に「現金で渡してくれ」と言うべきだった。やれやれ。

 さて、気分を取り戻そう。あらたに友達を迎えての今日は、まずは観光の王道「ヴァティカン市国」のサン・ピエトロ大聖堂へ行く。ローマ初めてという友達はここだけはまず行っておきたいとリクエストした場所だ。

 朝10時過ぎに到着すると、大聖堂の入口から広場を左右に取り囲む列柱の右側に沿って伸びる観光客の列は、時計でいったら8時くらいまで伸びていた。しかし行列は案外すいすいと前に進み、10時40分には大聖堂内に入ってすぐ右手の超有名彫刻「ピエタ」が防弾(っぽい)ガラス越しに燦然と輝くお姿を拝めることになった。聖堂内部にはこのミケランジェロの作品以外にもベルニーニ、カノーヴァ、ボッライオーロらが依頼されて制作した壮麗な墓や装飾品が目白押しで、ちょっとした美術館と言ってもいい空間が広がっている。圧巻なのは中央にある巨大なねじれた柱4本による「ブロンズの天蓋」。これもベルニーニの作品だそうだ。

 地上階のほとんどの作品を見てから、中央の中祭壇近くから地下に入る入口があったので入ると、地下は歴代法王たちなどの墓場になっていた。著名な法王の墓の前にはちょっとした解説もある。この地下迷路をたどって行ったら、最終的にポーンと外に出されて大聖堂の見学が終了した。

並び始めて15分で半分ほど進んだ。

ミケランジェロ作「ピエタ」

ベルニーニ作「ブロンズの天蓋」

サン・ピエトロ大聖堂正面

 新しく友達を迎えても、今回のローマ旅のテーマは「おいしい物中心」に変わりない。今日はお昼ご飯に「obika」にてモッツァレラチーズの食べ比べというイベントを据えて、午前中にヴァティカン見学、午後からはパンテオンとトレビの泉界隈でジェラートとカフェを楽しむという計画にしている。

 午前中のイベントを終えた我々は市バスに乗ってobikaのあるカンポ・デ・フィオーレに向かった。obikaはモッツァレラチーズバーとしての利用価値はあるが、その他のピザなどのメニューが少し割高である。コストを下げてもっと楽しむために、obikaに行く前に前菜としてカプレーゼ(トマト、モッツァレラ、バジル)のピザがとびっきりおいしいロッショーリ・アル・フォルノに立ち寄ってピザを食べてからobikaでモッツァレラとワインだけ注文し、足りなければ同じくカンポ・デ・フィオーリのフォルノ・カンポ・デ・フィオーリのカットピザで補充する作戦にしていた。この作戦はよかった。最初の立ち食いカプレーゼなどのピザで一人3ユーロ、obikaでは一人約10ユーロ、最後のパン屋さんでのピザは各自1ユーロも食べずに満腹。ランチセットメニュー並みの値段で有名どころのおいしい物だけをチョイスしてワインも1本飲めたこの作戦は、我ながら満足度高し。人数が4人というのがよかった。

 ランチ後はデザートを絡めての観光を開始した。ランチを食べたカンポ・デ・フィオーリからナヴォナ広場の噴水や教会内の装飾を楽しんでから老舗カフェのジョリッティ―でジェラート、そこからパンテオンを見学してから古いカフェのタッツァ・ドーロTazza D'Oroでコーヒーシャーベットの生クリームのせ(カフェグラニータ・コン・パンナ)。

 そこからトレビの泉を見学して、スペイン広場まで来るころにはローマでおいしいと言われているティラミスを売るポンピは目と鼻の先。ずんずん歩いてきたからティラミスもお腹におさまるってものだ。まぁ、私はポンピのティラミスを食べて、初めて自分がティラミスにそんなに興味がない事を知った。ネットで多くの人が絶賛するポンピのティラミスをおいしいと思えないのは、多分そういう理由だと思う。

 こんなに歩き回って観光スポットが目白押しで、その都度、老舗のおいしい店でちょっとした物が楽しめるローマ。広大な町全体がローマ時代のテーマパークになっているのだから世界中から人が押し寄せるわけだ。人を案内する事でローマの魅力を再認識する事ができた。

 夜はせっかくだから外食しようということになり、素敵なカフェで休憩する友達を残して私と夫は夕方の1時間半ほど界隈のレストラン探索に行ってきた。最初に行こうと思った店は月曜日定休で、開いている方の姉妹店であらためてメニューを見たら友達を連れていくにはマニアックなメニュー。ということで、以前も行った事がありパスタがおいしく値段もそこそこなアル31というスペイン階段近くのレストランで夕食することにした。カフェで休憩していた友達はすまながってくれたが、私たちにとってはレストラン調査をするのは楽しみの一つなので何の苦にもならない。レストランではそれぞれ異なる形状のパスタとソースを注文して食べたが個人的にはポルチーニ茸のトンナレッリ(写真)が一番のお気に入りだ。

 こうして8時過ぎに夕飯を終えて帰宅。よく歩いて、よく見学して、よく食べた。


2013.9.17(火) イタリア(ローマ)
久しぶりのボルゲーゼ美術館にシビレル

 ローマには古代ローマ時代の遺跡だけでなく、バロック時代やその後の時代の美術品を収蔵した美術館がいくつもある。その代表格がヴァティカン市国にあるヴァティカン博物館だろう。展示面積と展示点数と収蔵された美術品の知名度はイタリア随一といっても過言ではない。しかし、本気で見学したら丸一日かかるだろうこの博物館を3泊しかない友達に紹介するのはどうだろうか?しかも、彼女はヨーロッパに住んでいるのでローマは再び訪れる事ができるという。

 ならば、もっと所要時間が少なくて私たちのお気に入りの美術館に一緒に行こうと予約したのがボルゲーゼ公園にあるボルゲーゼ美術館だった。

 今日は朝9時から2時間をこの美術館で過ごし、その後に「ローマで最もカルボナーラがおいしい店」としてガンベロロッソから4年連続で1位を受賞しているというロッショーリでのランチを12時半から予約。午後からはカンピドーリオの丘に登り、フォロロマーノを上から見て、コロッセオまで歩いて外から見学という予定。

 ボルゲーゼ美術館は人数制限をしている美術館である。人数に空きがあればその場で入れるが観光シーズンたけなわの9月は3日先くらいまでは予約でいっぱいのようで予約なしに入るのは難しい。かつ2時間ごとに入場者を完全に入れ替える制度なので、予約なしに入れたとしても11時、13時、15時などの入れ替え時間には外に出される。

 数年前にたまたま予約なしで入れたものの1時間で放り出された私たちは、あの感動的な彫刻ともっと時間を過ごしたかったと常に心残りに思っていたのだった。

 今日は予約をしているので時間はたっぷりある。ここにはベルニーニやカノーヴァの神業的な彫刻があり、カラヴァッジョやラファエッロの絵画もある。作品数は多くないものの、著名な作品のインパクトがとてもある美術館だ。のっけからカノーヴァ作のボルゲーゼ夫人の彫刻で感動がよみがえり、ベルニーニの「アポロとダフネ」と「プルートとプロセルピーナ」に見入った。4、5年前に初めてここを訪れた時は「アポロとダフネ」の作品の精巧さに心打たれたのだが、今回は「プルートと・・」の二人の表情のリアルさに心ひかれた。前回も男性の手が女性の柔らかい肌にくいこむ様があまりにリアルで鳥肌が立つ作品だと思ったが、今回は人物の顔の表情もよく観察できた。一場面ながら多くの物語を想起させるパワーを感じる作品は、やはりローマでの必見だと言える。

 ベルニーニの感動を胸にバスに揺られてカンポ・デ・フィオーリの近くまでやってきた。

 12時半に予約したロッショーリに入ると、一緒に他2組の日本人客もすぐに着席。一番奥の空間は半分くらいが日本人という感じになった。

 私たちの斜め後ろには5人組の男女大学生らしき若者が座り「カルボナーラを5つ」と元気よく注文していた。私たちはハムチーズの盛り合わせ1つとパスタを3皿。本当はパスタ2皿でいいと思っていたのだが、一人1皿注文しないといけないルールだそうでパスタ3皿にしたのだった。

 料理が出る頃には店は満席で相変わらず大人気のロッショーリだった。私たちは最初のハム・チーズの盛り合わせとワインで大いに盛り上がり、続くカルボナーラ、アマトリチャーナ、ボッタルガ(からすみ)パスタも4人でわけあってワイワイ言いながら食べていたのだが、気づいたら背後の大学生は最初と比べると随分と静かになっている。ああ、またか。前回もロッショーリで目撃したのだが、揚げたグアンチャーレ(豚の頬肉)、卵の黄身、そしてたーっぷりのペコリーノチーズに覆われたスパゲッティーは並みの日本人にはヘビーな食べ物だと思う。一人一皿注文すると、最初は盛り上がって食べるのだが次第に沈黙していく事になるようだ。異なる種類を注文してシェアすればいいのだが、やはりこの店はカルボナーラが有名だからねぇ。

 今回、私たちが連れて行った友達はむしろカラスミの方がお気に入りだったそうで、一位と言えども誰にでも好まれるかと言うとそうでもないようだ。

 それにしても前回のような店員とのトラブルもなく、今日は至極穏やかに和やかに食事をしてロッショーリを出る事ができて何よりだった。

 その後は予定通りにコロッセオまで散策。暑いくらいに太陽がふりそそいでいるとはいえ、8月よりは明らかに過ごしやすくなった晴天のローマを散策するのは気持ちがいい。

 観光地に到着する度にガイドブックを開いて解説を読む。今日巡ったフォロロマーノの解説に出てくる皇帝の名前のいくつかにいたく感動する友達に、古代ローマに興味があるのかと聞くと「テルマエ・ロマエ」というマンガが大好きなのだと答えが返ってきた。古代ローマの浴場設計技術師が現代日本にワープしてきては何かを学んで古代ローマに活かすという話で、映画化もされている。

 入口はどうあれローマの歴史の何がしかを頭に入れてここを訪れると、感動もまたヒトシオになる。

 ここまで歩いて来てもまだ日は高かった。しかし、フォロロマーノやコロッセオの界隈は昨日のナヴォナ広場やスペイン階段付近に比べるとジェラテリアやお土産物屋が少なく、ぶらぶら歩きにはあまり向かない。そこで再び徒歩でパンテオン付近まで戻りジェラート休憩することになった。

 夕方、もう少し見て回りたいという友達は町に残る事にして私たちは一足先に宿に戻って明日からの小旅行の荷造りをする事にした。明日からは今来ている友達たちの住むリヨンへ、今度は私たちがお邪魔するという予定なのだ。ああ、忙しい。

 荷造りが終わった頃、丁度いい時間に友達がアパートに戻ってきて軽くモッツァレラなどで夕食。


2013.9.18(水) イタリア(ローマ)→フランス(リヨン)
リヨンへゴー!

 今日からフランスのリヨンへ1週間の小旅行。今までローマに一緒にいた友達の家にお世話になるのだ。

 というわけで4人でローマのアパートを出てテルミニ駅からシャトルバスに乗ってフイミチーノ空港へ。空港までのシャトルバスは数社から出ているのだが、テッラヴィジョンという会社がイタリアの他の町でも空港とのシャトルバスサービスを行っていて知名度抜群、かつネットでチケットも買えるせいか、一人勝ちの状況を作っている。

 横柄な態度が気になる係員もいるものの、状況としては一番人気だ。

 ネットでチケットを購入した友達は往復8ユーロという値段だったが、当日往復を買った私たちは11ユーロ。ローマのもう一つの空港であるチャンピーノ空港への往復は当日バス発着所で買ってもネットと同じ8ユーロだったのだがフイミチーノ空港はそうではないようだ。もっとも、私たちがネットで購入するとなるとプリンターがないので駅前のネット屋まで来て印刷しなければならないからその労力と印刷代金を思えばその場で買った方がましだ。

 フイミチーノ空港はLCC丸出しのチャンピーノと比べると、さすがにイタリアの玄関の風格があり、かっこいいお店がたくさんある。しかも、ワインとつまみのバーカウンターなんてほれぼれするデザインなのにグラス5ユーロからワインが飲めちゃって夢のような素敵な事になっていた。移動中は安全を考えて飲まないけどね。相変わらずお水などは高価なのだが、エスプレッソなどコーヒー類はそんなに馬鹿高くない。空港内だから高くする傾向に歯止めをかけてきているイタリアは偉い!

 機内はローマ観光に来ていたリヨン人とこれからリヨンに向かうイタリア人観光客が入り混じっているようだった。友達の後ろにはイタリア人には珍しく体格の良い汗っかきのカップルが座っていたのだが、明らかに「エスカルゴ」と連呼しているのが聞こえ、グルメの町リヨンへ期待感を高めている高揚感は伝わって来たそうだ。そう。リヨンはグルメの町として有名な場所。「エスカルゴ」と連呼はしないが、実は私たちも相当鼻息荒くリヨンに入ろうとしていた。私たちの目的もグルメ一本勝負。リヨンにはフレンチで勝負している日本人シェフが数多くいて、その繊細さと創造性に比してお値段が控えめで、ものすごくコスパの高いフレンチが味わえる。そこで今回はオール日本人シェフのレストランでの食事をめざしてのリヨン入りなのだ。

 ローマからリヨンへ1時間半のフライト。イギリスのLCCイージージェットのお陰で往復のフライト二人分と20kgの預け入れ荷物の往復一人分の合計金額は202.42ユーロ。一人片道約50ユーロ程度で行けることになった。今のレート1ユーロ133円で換算したら6731円だ。

 リヨンの空港から市内まではバスがなくなって今はこのローヌエクスプレスという電車しかない。片道13ユーロだったかな。ローマから比べるとかなり高い。これに乗って約30分で市内に到着し、そこから別の交通機関を使って20分ほどで彼女たちの家に到着した。

 しばらくローマの古びた町並みに目が慣れていたせいで、リヨンの新しい建築物がとても美しく近代的に見える。空気はやはりやや涼しいがひざしは強く、北ヨーロッパにやってきたという感じがした。

 最近リノベーションしたばかりという快適に美しい内装の友達のアパートに到着しホッと一息。日本人ばかりでルームシェアしている上に大家さんとも全員が知人だという良好な関係の家なので、私たちのアパートのように友達は一泊一人いくらなんて事はいわれない。まぁ、こっちの方が普通だと思うけどね。友達はローマで宿泊料を払わされて私たちは無料で宿泊というのはあんまりなので、ローマでの滞在費を半分負担してこちらにお邪魔させてもらう事になった。

 さっそく近所のスーパーでイタリアにはあり得ない臭いの強烈なエポワスという赤かびのチーズとクミンの入ったシェーブルのチーズを買ってきてコート・デュ・ローヌの赤ワインで夕食。誕生日を迎えた夫は友達からシャンパンを贈ってもらって近来まれにみる華やかなお誕生日を祝ってもらった。それにしても久しぶりのエポワスは旨い。


2013.9.19(木) フランス(リヨン)
ル・カヌ・エ・レ・ゴンLe Canut e Les Gonesでランチ

 朝8時前。昨日教えてもらったパン屋さんに朝ご飯のパンを買いにでかけた。

 フランス滞在の楽しみの一つは朝の焼き立てのパン。朝7時から開いているこの店で初日の今日はクロワッサン、パン・オ・ショコラ、バゲットを調達。香り高いバターがぐっしょりと生地を湿らす程に入れこまれているクロワッサンを一口かじると至福の稲妻が脳天を突いた。

 これが今日から毎朝続く。なんという喜びだろうか!

 この朝食を済ませて午前中は通常モードで写真整理や日記更新にいそしみランチへの出発を虎視眈々と待つのだった。

 今回リヨンで訪れる4軒のチョイスは全て友達に任せた。1軒目の今日はル・カヌ・エ・レ・ゴンでのランチ。前任の日本人シェフ時代にパティシエとしてお店で働いていた日本人男性ジュンゾーさんが最近シェフとしてお店を継いだという経緯のレストランだそうだ。

 レストランは観光地からバスで20分もかかるクロワ・ルスCroix Rousseという丘の上の別の町にあった。バスの中で友達は、この丘の上の住民が絹で財をなして以来、丘の下の人たちと自分たちを差別し始め丘の下に降りることなく丘の上に留まっていくことで町ができたと教えてくれた。このレストランの名前にLe Canut「織り手,織工; 編む人」というのが入っているのはこの事に由来するそうだ。

 午後1時近くに入店すると、空き席は1、2テーブルだけでレストランはランチを楽しむフランス人たちのにぎやかな会話に包まれていた。可愛らしい装飾の店内は気軽な食堂風で全く堅苦しい所がない。ランチメニューはメインだけで10ユーロ、前菜とメインで15ユーロ、メインとチーズかデザートで15ユーロ、前菜とメインとチーズかデザートで18ユーロ。うーん、いい値段だ。

 イタリアと違ってフランスのメニューは創造力をかきたてる。様々な素材の調理法とソースと副菜の説明が細かく書かれているからだ。イタリアでこの手の説明をしているレストランはミュランの星付きくらいからしかないんじゃないだろうか。もっとも、最近の新しい傾向のイタリアレストランでは、素材の原産地の説明が細かくていかにいい素材を使っているかをアピールして食欲をかきたててくれる所もあった。イタリアは素材、フランスは調理法という図式は現在においても基本的に同じなのかもしれない。

 前菜もメインも3品からの選択なので3人で訪れた私たちは全種類を注文して楽しんだ。前菜のコウイカのソテーに生のピンク色のグレープフルーツ、ハムとポーチドエッグに生のいちじく、メインの仔牛のステーキにソテーしたいちじくとミラベルのソースが使われており、ふんだんにフルーツが使われているのが印象的なメニューだった。

 私のメインのステーキはトリュフ入りのポテト、甘みのイチジク、酸味の玉ねぎの赤ワインソテー、甘みのミラベルソースと色んな味がとてもバランスがよく一つのお皿におさまっていて、気づいたら夢中で食べていた。

 私と夫はデザートも頂いた。一つはチョコレートブラウニーにフワフワのクリーム。こんなにしっとりしたブラウニーは既にブラウニーじゃない。一つはいちじくの輪切りに乗ったシャーベット。淡いいちじくの甘さと酸味のシャーベットと上に乗った板キャラメルがいいバランス。

 前のシェフと知り合いだった友達がいるので、現シェフがテーブルに挨拶しにきてくれた(写真右から2番目)。

 今日は旬のいちじくがたくさん手に入ったので、ふんだんにお料理に使ったのだそうだ。パティシエからの転向でまだまだ勉強中だと腰の低い感じも好印象で爽やかなキャラも魅力的な人だった。当日写真を撮り忘れていたら、数日後にショッピングモールでお買い物中のシェフにばったり遭遇して撮影させてもらったので、こんな写真になった。

 フルーツの甘みや酸味を活かしたバランス、配色がよくて、料理のボリュームも他の日本人シェフのお店より多い点もグルマン(大食い)体質の私たちにはぴったり。今回のリヨン訪問一発目にしてかなり満足度が高いお店に出会えて、友達に感謝。


2013.9.20(金) フランス(リヨン)
ルルソン・キ・ボア L'Ourson Qui Boitでディナー

 ここの所、私たちとしてはやや観光めいた日々が続いていたので、小旅行中ながらも今日は夜まで休憩と事務仕事日と割り切り、部屋の中でゆっくりと過ごした。

 今夜のお楽しみは地元フランス人に大人気の日本人シェフのお店「ルルソン・キ・ボア」でのディナー。「酔っぱらいの小熊」という意味の可愛いレストラン名は、ここのシェフが修行した京都の同名のレストランから取ったと聞いた。繊細な味と盛りつけそしてさりげなく取り入れられているアジアのテイストが、フランス人シェフには真似のできない領域を確立している。ここは予約必須だそうで、夜8時に予約を入れてもらった。

 ディナーは28ユーロで前菜とメインとチーズあるいはデザート。チーズとデザート両方の場合は4ユーロプラスになる。前菜の選択肢とメインの選択肢は各々2品。食前酒は3-6ユーロ、ワインはグラス4ユーロ〜。

 今回のリヨン滞在で唯一のディナーの日なので、ちょっと優雅に食前酒を飲みながらメニューを検討。そうしているうちに、まずはアミューゼ(お口のお喜び)の登場。

 ズッキーニの仲間のつぶれたカボチャのような形の黄色い野菜の薄切りを柔らかく茹でた上に、マグロと、ホタテに似た貝の貝柱のマリネとにんにくチップ。マリネはバルサミコとオリーブオイルとちょっと醤油が入っているようで、これからの食事に向けて食欲がぐーんとアップする一品だった。

 前菜の2品は、サバのフライかブレス鶏のラビオリだった。

 サバはペルミジャーノチーズ入りのパン粉をつけてカラリと揚げられた下にそうめんカボチャが添えられ、上にグリーンの葉とチェリートマトが乗って見た目も美しく、食べておいしい揚げものになっていた。

 ラビオリとして出てきたのは、ブレス鶏の餡を中華風の皮に包んで焼いた物を乗せた野菜スープだった。淡いだしにはワカメ、人参、セロリと大根だろうか白い根菜が入っていた。こちらはまさにアジアな感じだ。

 メイン2品は、あんこうか牛肉のチョイス。

 あんこうのソテーはマッシュルームのカプチーノ仕立ての下にソテーと、フォアグラの脂でソテーしたエビ。味が濃いあんこうに別の濃厚さを持つエビとフォアグラが絡み、全体をキノコの風味が包みこんでいた。

 まさにフレンチ的な味の共演にしてバターがあまり使われていないあっさりした食べ心地。「ルルソンキボワここにあり!」というメッセージを感じる一品だった。

 もう一品はナスのグリルを薄切り牛肉で巻いてソテーしたもので、ソースはマルサラ酒を使った甘酸っぱいソースとアーティチョークのソース。ここにジロール茸としめじのソテーが付いていた。私は特に見た目の可愛らしさとマルサラ酒のソースがとても気に入った。

 デザートはチョコレートのテリーヌとソルベとフルーツが一つ、もう一つはフルーツサラダとバニラのメレンゲとソースアングレーゼとアールグレーを使ったソルベにアーモンドのマドレーヌ、チーズはフロマージュブランあるいはサン・マルセラン。

 3人いたので二人はデザートにして私はサン・マルセランのチーズにしてみた。トリュフのオイルと甘酸っぱい果物を煮詰めた物が添えられていて、これをチーズにつけて食べるとまたおいしい。

 少食な友達はデザートはいらないくらいお腹いっぱいと言っていたが、通常量を食べる私にはこのデザートでぴったりお腹いっぱい。夫はパンを大量に食べてお腹いっぱいになるくらいだった。デザートが全体のバランスから見て多めだから、最後に満足度が高まって終わる。こういうバランスも他にはないユニークな点だと思った。

 食事を終える午後9時半にはお店は満席。予約がないと夜は入れないというのは本当だ。体格のいいフランス人がここを訪れるのは、少量であっさりしていても満足させてくれる料理が食べられるからかもしれない。

 そういう切り口でもルルソン・キボアはリヨンに立ち位置を確立していると思うと、なかなかやり手だ。

 夜風に吹かれながらリヨンの夜景を楽しみつつの帰り道もまた一興。大きすぎない町だから、ぶらぶらと歩いて家まで帰れるというのも魅力的だ。



2013.9.21(土) フランス(リヨン)
市場で食材調達してホームパーティー

 既になじみになりつつあるパン屋に朝行くと土曜日はいつもより1時間遅い8時の開店で開いていなかった。

 そこで、もう少し先に歩いたら開いている店があったので買ったらPaulだった。日本で見かけるPaulは値段が高いこともあって、ちょっと取り澄ました印象があるが、ここでは地元に根付いた普通のパン屋さんの1つだ。

 クロワッサン、パン・オ・ショコラ、砂糖の乗ったブリオッシュ。いつものパン屋のブリオッシュは手の平に乗るくらいのサイズだが、ブリオッシュ特有の生地が薄く剥がれる感じがなくて不満足だった。Paulのは大き目で剥がれる感じの生地になっていて満足。ブリオッシュがブリオッシュらしい生地になるにはある程度の大きさが必要なのだろうか?

 因みにクロワッサンはいつものパン屋の方がバターがたっぷり入っていてリッチだった。

 さて、今日は夕方から友達がホームパーティーを開催。というか、私たちで普通に自炊の夕食という計画だったのだがパリから共通の知り合いが来る事になり、だったら他の人も呼ぼうという事で、総勢7人の会になった。私としては久しぶりのシェア飯気分。といってもバックパッカーではないからシェアではなくホスト側が提供するタイプのパーティー。ってことは、逆に予算にしばりがないから自由度もある。さーて、どんなメニューにしようかと昨日から夫と友達とでメニュー会議を開始していた。

 とりあえず朝は土曜市が開かれている広場で食材調達。このエリアで造られている青かびチーズを紹介してくれたり、料理に使うモモの試食を促してくれたりと、やはりフランス語ができる友達が一緒にいると違うわぁ。

 チーズ、テリーヌ、各種パン、様々な野菜と相変わらずフランスのマルシェは魅力的だ。本当なら片端からチーズを試したいところだが、そうもいかないので青かびチーズとシェーブルだけ購入。うーん、シェーブルは買ったそばからいい感じにヤギ臭いねぇ。


 ランチは市場で買ってきたチーズといちじくと、パン屋で買ったバゲット。それに友達が買ってきてくれたフランスで5本の指に入ると言うパン職人の店で買ってきてくれたフカフカのパン。あ、あと茹で卵。

 火を使ったのは茹で卵だけなのに、こんなにもリッチな気分の食事になれる。日本で言ったら炊き立てご飯とおいしい漬物があればご飯が成立する感覚だ。質の高い加工食品がある国は素敵だ。




 午後は少しドラマなどを見て、夕方から夜のホームパーティーの準備開始。友達が野菜のピザを作ってくれるというので、私たちは野菜のグリルのオリーブオイル漬けを前菜に、メインは先日訪れたレストランからヒントを得てポークソテーのフルーツ添え、デザートはフルーツとチーズ。飲み物はビールとワインを用意した。もう一人の年若い友達が高級ワイン「シャトー・ヌフ・ドゥ・パップ」を提供してくれるという。本当は家族へのお誕生日プレゼントとして買ったそうだが、日本へ配送しようとしたら30ユーロだとかワインよりも高い金額を言われてお蔵入りになっていものを出してくれるという。ありがたや、ありがたや。

タヴェル、シャトー・ヌフ・ドゥ・パップ、コート・ドル・ローヌ・ヴィラージュ

女子会ムードでパーティー開始!

野菜のピザ。友達がフランス人宅のパーティーで学んだ一品だそうだが、これが実においしい。

奥にモモの赤ワイン煮(砂糖なし)とぶどうとイチジク、真ん中にトリュフと黒オリーブ入りマッシュポテト、手前はマッシュルームソテー。

 友達の器もいい物がたくさんあるので料理が映える。特にこのデザートを乗せた黒い板状のお皿はレストランみたいで、何を乗せてもかっこよかった。

 この日は、くるくるととても忙しかったので何をしゃべったのか正直、覚えていない。でも久しぶりに女子が多くて華やかではしゃいだ雰囲気の夜だったなぁという思いはある。

 日本人宿でバックパッカーと行うシェア飯に比べると素材や器が違うので雰囲気は異なるけれど、「同じ釜の飯を食う」というのはどこでやってもいいものだ。


2013.9.22(日) フランス(リヨン)
半絶食を志すも難しい。それがリヨン

 今日はやはり2年前にリヨンで知り合った日本人夫婦と再会の日。インターネットのお陰でお互いの近況がよくわかっているとはいえ、やはり顔を合わせて話せるのは貴重だから誘いに応じてきてくれて本当に嬉しかった。

 ここの所の食べ過ぎを考え、今日はできるだけ食べない「半絶食」をこころがけようとしていた。待ち合わせも昼ご飯時を避けて午後にしてみた。しかし、待ち合わせ場所は観光客でにぎわうVieux Lyon駅前で、少し早めに到着した我々は近辺を探索して既にめぼしいケーキをみつけてしまった。

 駅前のLe Castelという店は(店名に自信なし)、外にテーブルと椅子を出しているカフェ兼ケーキ屋さんで、日本のショートケーキのような柔らかそうなスポンジにイチゴと生クリームがはさまれたボリュームのあるケーキがあって一目で食べたくなったのだ。

 中国人経営なのだろうか?ウェイトレスが3人とも中華系の若い女性の店で、日本人が種類豊富なケーキを全員がばらばらに注文して路上のテーブルに並べたものだから目立つ、目立つ。道行く人が振り返る一群となった。


 ケーキの味比べが一巡して、今日新しく知り合った人との挨拶があって近況報告していたらあっという間に時間がたっていった。ケーキは思った通りの味わいで大満足だった。イタリアはこういうしっとりしたスポンジケーキが見当たらない。かりっと乾燥したクッキー状のものか、お酒やシロップにつかってぐっしょりしたケーキはあるのだが「しっとり」がないので時々「しっとり」が恋しくてたまらなかったのだ。

 お腹がいっぱいになってしまったので、散歩しながらおしゃべりの続きをしようと川沿いまで歩き始めると道路を封鎖してローラーブレードの大会が行われている場所に出た。リヨンを走る川の中州にある広場を利用してローラーブレードの様々な競技が開かれていたのだ。エントリーしている選手の参加国のアナウンスを聞いていると隣国ドイツや遠くはオーストラリアなどからも参加しているようでなかなか国際的な雰囲気を出している。人工的に作った傾斜を上り下りしながらスピードを競うローラーブレードのオフロード競争みたいなのも見ていて面白かった。お天気がよくていかにも初秋の日曜日という日だ。

 散策の途中でトイレに行きたくなった私を、夫妻はアラブ系男性がたむろする広場の裏手の超穴場公衆トイレに連れて行ってくれた。他のメンバーは夫妻より長くリヨンにいるが、この公衆トイレの存在は知らなかった。こういうマニアックなポイントを押さえているのがこの夫妻らしい。

 トイレから川沿いに戻るとパラソルの下でビールが飲めるお店が目に入り、「飲んじゃう?」ってことでビール・ブレイクとなった。NINKASIという地ビールメーカー直営のビアーカフェで、ピッチャーの2リットルが気持ちよくなくなるころには、二人のなれそめエピソードも話題にあがって大笑いの連続となった。

 何だかもっと飲みたい気分にもなったが、明日からのための体調調整もあり、この辺でお開き。今回も夫妻には楽しませてもらったし、新しい知り合いもできて、なかなか有意義な日曜日の午後になった。


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