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2012.07.16(月) テーン・レルミタージュ(フランス)
ヴァランス下見と郵便配達員の造った「理想宮」訪問

 午前中、ヴァランスの町にでかけて日本人の伊地知シェフのレストランの下見をしてきた。

 大きな観光の目玉がミシュランの三つ星レストランだろうと思われるガイドブックの書き方から、寂しい田舎町を想像していたら、感じのいい並木道の目貫通り沿いにお屋敷のようなアパートが並び、歩行者天国になっている繁華街にはチェーン展開している洋服や靴のショップが並んでいて、落ち着いたカフェで朝のコーヒーを楽しむ人の姿も見られて、とても感じのいい中都市の雰囲気だった。

 観光案内所で伊地知シェフのレストランの場所を聞き、目の前まで行ってみた。今日はお休みでレストランは閉まっていたがメニューがはりだされていたのでじっくり検討ができた。明日が楽しみだなぁ。

 一度キャンプ場に戻ってサンドイッチでお昼ご飯を食べたら、今度はキャンプ場から15kmくらい北上してからローヌ川を背にして東側の山奥に入って行く。地図で見ると小さな村ばかりが点々とあるこの地域にオートリーヴHauterivesという村があり、そこに郵便配達人のフェルディナン・シュヴァルが33年の年月をかけて造った建築物があるというので訪ねに行ったのだ。

 ローヌ川は両側を丘陵にはばまれた地形で、斜面にはぶどうがびっしりと植えられている。これらがおいしいコート・ドュ・ローヌのワインとなるわけだ。ローヌワインは南部と北部に地域がわかれるが、キャンプ場のあるあたりは南部の北限といった所になる。川を背にして山あいのくねくねした道を進むと、今度はやや平らでオリーブやひまわりが植わった畑の風景となった。途中には教会を備えた小さな村がぽつりぽつりとあった。

 そうした小さな村をいくつか通過した後にオートリーヴに到着。郵便配達人の建築物は「理想宮Palais Ideal」という看板がいくつもあってすぐにわかった。12時半から1時間の昼休み時間で理想宮は閉館していたので、その間に昔の地主の屋敷だろうか大きな邸宅の1階を利用した無料の写真展があったので楽しんだ。Nils-Udoという男性の作品だが、森や砂漠や畑といった自然の風景の中に同じく自然の素材で竹で巨大な鳥の巣状のものを作ったり、岩を積み重ねたり、真っ赤な花弁をおいたりしてアート作品を作り写真にしている。鮮やかな色のコントラストに一見CGかと思うほどのデジタル的な美しさを作り出していて面白かった。

 午後1時半近くになったので理想宮に行ってみると、10人くらいの人が入場を待っていた。まさか、ここを訪ねる人がこんなにたくさんいるとは驚きだった。

 理想宮に至るまでの道にはお土産物屋とレストランが数軒並んでいて、昼休みで理想宮が閉まってしまうことみあり、ここも食事をする人でにぎわっていた。

 入場料金一人5.8ユーロを支払って中に入ると、中庭に彼の理想宮がどーんと建っているのが見えた。2階建の建物で、1階部分にいくつも洞窟が造られて中に鹿やらタコやらヒンドゥー教寺院やら様々な造形物がある。その洞窟と洞窟の間にも犬のような狐のような何か得体のしれない表情の動物の彫刻が貼り付けられていて、とにかく意味不明ににぎやかな建物だった。

 まぁ、正直言って日本からわざわざこれを見るために来るかと聞かれたら答えはNOだ。しかし、ここに来ているヨーロピアンのように数週間の夏休みや夏の週末のイベントとして、この周辺をドライブして田舎の風景を楽しみ、ついでに妙な建物を見物するというのにはぴったりな場所だった。7月と8月の土曜日の夜はミュージシャンを呼んでコンサートも開いているというから、村としての意気込みはかなりあるようだ。

 ところで郵便配達人のシュヴァリはなぜこのような理想宮を作ろうとしたのか。日本語に翻訳されたパンフレットには彼が建築物に刻んだ言葉が紹介されていた。「私以上に辛抱強い人にしかできない苦行」「私はこの岩山を作る事で意思とは何か証明したかった」「知恵の泉にこそ真の幸福を見出す」などから彼が生きる中で誇り、幸福を求めるためにこの建築物創作に挑んでいたことがわかる。私も、己の能力を伸ばそうと努力してその結果を実感するのはとても幸福な事だ思う。今の社会では仕事に誇りを持って、己の能力を活かしきって社会に貢献していて、それがまた会社や社会に認められいるなどと言いきれる人は少ないだろう。ましてや不況で給料があがらなかったり、仕事を失ったりする人が多い中、シュヴァリのように「自分の出来る範囲内でもとにかく創造力を使って努力する事で前に進めばいいのだ」という生き方は多くの人の共感を呼んでいるのかもしれない。

 ミュージアムショップにはここを作ったシュヴァリがインスピレーションを得たであろうダリやガウディの写真集も売られていた。また、同様に民俗芸術的なキッチュな生き物を彫刻にして飾った建物ばかりを集めた写真集も売られていて、開いて見るとイタリアのシチリア島にある邸宅や同じくイタリアのボーマルツォにある庭園、オーストリアのザルツブルグにある噴水庭園など、ああ、行った、行ったという場所が5、6ヶ所もあった。私達も意外とキテレツな建物好きってことになるのだろうか?

 予想通り、理想宮への観光はそんなに時間がかからなかったのでキャンプ場に一度戻って今度はWifiがあるというマクドナルドまで車ででかけた。キャンプ場にはネット環境がないからね。ところが、せっかく訪ねたマックではWifiがつながらず。「ネットのためにわざわざ来たのに!」と憤慨したらオランダ人とおもわれる夫妻も「私たちもその目的で来たのに、ひどいわねぇ!」と意気投合。意気投合してもつながらないものはつながらない。ということでコーヒー飲んで帰ってきた。

 キャンプ場は昨日予想した通り、オランダ人のメンツが見事に入れ替わっていた。皆、夕方から夜半にかけてここに到着して朝には出ていくようだ。夕方からざらざらとチェックイン客が入ってきてキャンプ場は急ににぎやかになっていった。おい、少年、人のテントにボールぶつけないように!


2012.07.17(火) テーン・レルミタージュ(フランス)
ラ・カシェットでの素晴らしい食事

 今日のメインイベントはラ・カシェットでのお昼ご飯だ。

 でもその前にインターネットでメールチェックなどしたかったので、午前中はヴァランスのショッピングモールに向かった。ここにマクドナルドがあってWifi無料でつなげられるのだ。ここのショッピングモールにもZARAなどのお馴染みのショップが入っていて、メールチェックの前にちょっとバーゲンでも観察しようかと店に入ったら、たちまち時間がすぎてしまった。

 夫がカーディガン2枚購入して、私の洋服もちらと見てからマックに向かってメールチェック。

 12時半とレストラン開店の時間が近づいてきたので、お店に向かった。ラ・カシェットLa Cachetteは「隠れ場所」というような意味だそうで、たしかにレストランは一見普通のお宅と見まごうような看板がないとわからない造りになっている。扉の向こうの中庭が客席で昼間は屋内の席はなし。木漏れ日の中でお食事ということになる。

 昨日のうちにメニューチェックしていたので心は決まっていた。シェフのお任せコース一人50ユーロだ。他にも20ユーロで前菜とメインのみ、28ユーロで前菜、メイン、デザートセットもあるが、お任せコースにはアミューゼとメインがもう一品つくので、ここは1つ堪能してみようということになったのだ。私に渡されたメニューにはお任せコースの値段が書かれていない。「お支払いは男性がする」という世界らしい。

 お任せコースを二つと告げると、すぐにアミューゼが運ばれてきた。左から玉ねぎのアイスクリーム、スイカ、魚のムース。

 玉ねぎのアイスクリームはローストした香ばしくて甘い玉ねぎの味がするアイスクリーム。これは斬新で先日のフィレンツェのジェラートフェスティバルで食べたパルミジャーノのジェラートに匹敵する。前菜なのにジェラートという新しい発想が驚きだった。

 スイカは丸くくり抜いて串刺しにしている。

 魚はサーモンかなぁ。薄いピンク色に緑のハーブが入った柔らかい味で下にクリーム、上にいくらのような魚卵が乗せてあって相性は抜群だった。

 このアミューゼを食べながら夫に渡されたのはアルバムのように分厚いワインリストだった。どのワインもお料理と同じかそれ以上のお値段で、場合によっては3桁のお値段のもあった。すごいねぇ。と感心しながら地元のローヌワインの赤をグラスで(10ユーロ)2つ注文した。

 前菜はガスパチョとツナのタルタル。ガスパチョはトマト他色んな野菜が入っていると思われるがどれとして突出していなくて「おいしい」のハーモニーの中にすっぽりと素材が埋まっている。アクセントにケッパーとスライスしたフライドガーリックが乗せてあった。

 タルタルはトマト、玉ねぎ、パプリカ、アボガドが入っていて塩・胡椒とオリーブオイルなどでまとめてある。微かに醤油のような味が感じられたけど醤油は使っていないそうだ。



 魚料理は白身の魚のソテーなのだが、皮に軽く焼き目がついて香ばしくパリッとしているのに身はあくまでジューシーでしかも生にぎりぎり火が入ったくらいで過熱をとめている感じ。一体、どうやったらこんな風に調理できるのだろうか。

 ソースはムール貝とハムとジャガイモとケッパー。従来のフレンチみたいにバターたっぷりではなくあっさりとした味わいで魚をひきたてる。上にカプチーノみたいな泡を乗せて、ギャルソンいわく「モンサンミッシェルにみたてました」とのこと。



 続く料理は2種類あったので一人はラム、一人はポークにしてみた。ラムはトンポウロウを思わせるトローッとした柔らかい仕上がりかつ外側はハチミツを塗って焼いたような甘く香ばしい味になっていた。ポークは子豚肉だそうで、こちらもフワーッと柔らかく味も普通の豚肉とは違う。どちらも野菜の付け合わせとして人参とソラマメといんげん豆と黄色いきのこが使われていた。柔らかいのにジューシーで脂っこすぎない仕上がりがやはり和食のテイストを入れているのかと思わせる。たくさん食べているのに不愉快な満腹感に襲われず、まだ食べられそうな気持でいられるのがマジックだった。

 ここで、直接デザートに行くか間にチーズをはさむかと聞かれ、是非チーズをとお願いしてやってきたのがスマントランだった。私の記憶ではスマントランはエポワスやミュンステルと同様にオレンジ色系統のチーズだったと思ったが今日のは白かった。こういうスマントランもあるのだろうか?でもまぁ、上質な味わいであっという間に全部たいらげてしまったのには自分でも驚き。いやー、おいしいチーズだった。

 後で明細を見たらこれは一人6ユーロで別料金が加算されていた。確かにメニューには書かれていなかったもんね。。でもこれだけおいしかったからよしとする。

 続くデザートは3回にわけて持ってこられた。最初はバジルのソルベ、ルーバーブのコンポート、レモンのメレンゲ。チーズの強烈な味わいがソルベによって洗い流されるようなすがすがしい味だった。しかし、バジルのソルベって初めてだ。ルーバーブとレモンの酸味とメレンゲの甘さで絶妙なバランスを保っている。このバジルのソルベだけがジェラテリアにあって注文するかと言われたらしないだろう味だけど、チーズや肉の後で、この組み合わせだからおいしい。ここで使うってのがすごく効果的なんだなぁ。

 お次はマスカルポーネのアイスクリームとベリー類のムース。文句なくおいしいのに加えて盛りつけ方がキティーちゃんを連想させて「超かわいい!」と叫びそうになる愛くるしさだった。

 ここでコーヒーか紅茶はいかがかと聞かれたが、もうお腹いっぱいなので注文しなかった。ということでお会計かと思ってトイレに立って席にもどったら第三のデザートがきていてビックリ。巻いたガレットにチョコムースが入ったものと、よく熟したベリーの乗ったサブレ、砂糖衣のピーナッツ、マンゴーの切り身が入ったクリーム。どれもおいしかった。

 今日の料理は本当に素晴らしかった。先月、先々月とフィレンツェでのレストラン体験もよかったが、今日の料理は金額も倍くらい支払った甲斐があって、どれ一つとして手抜きな感じがしない。焼き加減、塩味、全体のバランスなどが絶妙に考え抜かれていて、こういう店がミシュランの星を獲得するのかと感心した。ギャルソンの明るい対応などにホスピタリティーはもちろん感じられるが、手抜きのない注意深く調理された料理こそレストランにおけるホスピタリティーの大きな要素になると思った。

 不思議な事に満足感はいっぱいなのに、まだまだ食べられそうな、胃が窮屈ではない満腹感で終了。たくさん食べたのにどれもさっぱりとした味わいで胃に優しい食事だったのだ。胃が止まりそうな恐怖感がないのに夕飯がいらないくらい満腹感が持続するというのは、胃があまり強くない私には素晴らしい体験だった。

 お会計は二人で132ユーロ。先日アヴィニヨンで食べた明るくて庶民的なお店への支払いの倍ちょっとだが、価値としては3倍くらいに感じる。フランスではやっぱり名前の通った店に行った方がCPが高いってことになるのか。今日は大成功だった。


2012.07.18(水) テーン・レルミタージュ → リヨン近郊(フランス)
移動してスーツケースを修理

 今日の移動は90km弱と短いので高速道路を使わずに下の道で移動することにした。

 テーン・レルミタージュ界隈はブドウ畑も多いが今はアプリコットも道沿いにたわわになっていて、畑のそばの小屋で直販している農家が多く見られた。昨日からこのアプリコット直販を見続けていた私は、たまらず買って行くことにしたのだった。

 1kgあたり2ユーロとスーパーの3ユーロ近い値段よりも安い上に、どう見ても目の前で採れたてなのがいい。1つ試食させてもらったが甘い汁がたっぷりで大変においしかった。こういうのは高速道路で移動していては見つけられない楽しさだ。早速1kgを購入。

 ひまわりの咲き誇る畑の横を通ったり、昔ながらの古い建物のひなびた田舎の村を通ったりしながらじょじょにリヨンに近づく国道は、常にローヌ川のそばを通っていた。

 満々と水をたたえた悠々としたローヌ川沿いには、昔から栄えているような小さな村がたくさんある。リヨンのすぐ南にヴィエンヌという可愛らしい村も通過してきたが、ここは後でもう一度訪ねてみようと思う。

 リヨン周辺には3つのキャンプ場がある。北西にCamping Indigo International de Lyon、東にCamping du Grand Largeという湖沿いのキャンプ場、そして私達がめざす南西のCamping des Barollesだ。今回はリヨンの町へバスでアクセスできて、遅い時間までバスがあるCamping des Barollesに行くことにした。

 前回、Indigoに滞在していてバスが夜8時半くらいに終わってしまってキャンプ場に帰れなかったことがあるのだ。幸いにもリヨン在住の日本人に知り合って泊めて頂けたからよかったようなものの、あんな事にならないように、今回はバスの時間をちゃんと調べてCamping des Barollesに決めたのだ。

 このキャンプ場は道案内が少し不親切だったのでやや道に迷ったが、2時間ちょっとで到着。いいペースだった。

 新しく到着したキャンプ場は、Wifi無料、保冷剤を凍らすのも無料、電気代金こみで一泊20.64ユーロ。プールはないものの、私達が欲しい機能がそろっていて安めなのでいい。数か所にチェーン展開している大手のInigoは働いている人が組織的というか会社員っぽいのだが、こちらは母と息子で経営しているらしく、あまり広くない敷地はアットホームに管理されているのも気に入った。

 缶詰のパテと余り野菜を使っておおよそ普通の人ならNGのレバー味のやきそばみたいな物でランチ。フィレンツェで食べたレバーパスタを思い出せば、これもありかと思う。

 ランチ後は車で食料を買い出しにショッピングモールに行った。体育館みたいなショッピングモールで、Auchanという大型スーパーをコアにファミレス、衣料品店などが入っている。

 ここで「鍵、靴」修理のお店を発見。先日買ったばかりのサムソナイトのスーツケースの外ポケットのチャックが壊れてしまったのを直せるか聞くとやってくれるというので、一度キャンプ場に戻って再度スーツケースを持ってモールを訪れて修理してもらった。チャックの留めのつけなおし12ユーロ。1時間で修理してくれた。


 夕方5時半過ぎにキャンプ場に戻ると、日陰を狙って立てたテントに思いっきり西日があたって灼熱地獄のようになっている。慌てて日よけをはってカバーしたが、太陽がどの方向に落ちるのかを見極めるのは難しいな。

 快適なシャワーを浴びて、夕食はサーモンのタルタルと地元チーズとサラダ。平日はワインをやめようと思っていたのだが、あまりに地元チーズのLe petit tentationがおいしくて昨日買った週末用のワインを開けてしまった。このワインは昨日のレストランでグラスワインで出してもらってとてもおいしかったのを、スーパーでみつけて買ったものだ。ラベルの住所は昨日まで滞在していたキャンプ場のある村の名前Tain L'Hermitageになっていた。お値段は15ユーロちょっと。グラスワインとはいえ、いい物を出しているなぁ。

 午後7時半になってようやく太陽が西側の林に隠れて少し涼しくなってきた。昨日から今週いっぱいは急に暑くなるという予報だそうだ。先週は夜にダウンジャケットを羽織っていたというのに。ヨーロッパの気温は移ろいやすい。


2012.07.19(木) リヨン近郊(フランス)
友と再会、そして素敵なレストランとの出会い

 昨年、リヨンの路上で地図を広げていたら「どちらかをお探しですか?」と親切に声をかけてきてくれた日本人女性がいた。町案内してもらって、一緒にワイン飲んで、終バスを乗り過して泊めてもらって。と短い間に大変にお世話になった人。その彼女に連絡して、リヨンで再会することになった。

 グルメの彼女はランチの行き先に3つのレストランをあげてくれて、その中から日本人シェフによるフレンチのお店に連れて行ってもらうことにした。お店の名前はflair。ワタナベさんという若い日本人シェフがフランス人パートナーと今年の4月に開いたというお店はオープンキッチンの見えるモダンな内装のお店だった。ワタナベさんは日本、スイスのフレンチ、そしてリヨンではミシュラン2つ星レストランのナンバー2として働いた後に独立したということで、若いながらキャリアは長いんだそうだ。

 着席するなりキリッと冷えたアミューゼが出てきた。タラの身をほぐしたものとトマトソース。見た目も美しくトマトソースには魚介風味のブイヨンが使われていてタラとの相性もばっちり。初っ端からレベル高い!

 3人とも今日のランチセット、そしてここローヌ地域で有名なヴィオニエViognierというブドウを使ったワインをカラフェで注文した。丁度、ヴィオニエを飲んでみたいと話していたばかりだったのでいいタイミング。

 ヴィオニエはトスカーナのサン・ジミニャーノのヴェルナッチァほどではないが花のようなハチミツのような甘い香りがするワインだった。

 前菜は牛肉のリエット。リエットなのにさっぱり系で肉の旨みがよく感じられ周囲の甘酸っぱいソースがおいしかった。メインは鮭のソテーにムール貝とあんず茸のソース、そしてココナッツのエマルジョン(カプチーノのような泡)がかかっている一品。これって、一昨日のラ・カシェットの魚料理によく似ている。流行っているのだろうか?鮭は半生くらいの火の通りで、上に海苔とネギが乗っているのがまたいいアクセントになっていた。バターなど重い素材が感じられなくてさっぱりしていた。デザートはピンクグレープフルーツのシャーベットに旬のアプリコットソース。ローストアーモンドスライスの茶色とシャーベットの上に細かくくだいたピスタチオのグリーンが美しかった。もう一つのデザートはクッキーにクリームが乗って上にアプリコットソース?複雑で何が入っているかわからなかったけど、おいしかった。

 お昼のコースは18ユーロ、ワインが460ml9ユーロ、エスプレッソが2.5ユーロ。こんなに手がこんだ料理なのにこの値段というのはかなりお得な感じがする。いやー、素晴らしいお店を紹介してくれた友達に感謝、感謝。

 そうそう、私達が食事をしている間にシェフに対して雑誌の取材が一本入っていたようだ。再来月に発売のマリー・クレールに掲載されるそうだ。


2012.07.20(金) リヨン近郊(フランス)
友と再会、その2

 前回のリヨン滞在中に知り合った友との再会、第二弾。

 昨年出会った時には独身だった彼らは結婚して今日はご夫妻として会いにきてくれた。相変わらず明るい奥さんのしぐさに、出会ってすぐ大爆笑で写真撮影。そういえば、前回も奥さんの手にかかってこんな大爆笑の写真になった。うまいなぁ。

 今日は二人が開拓したというオペラ座近くにあるブションに連れて行ってもらった。ブションというのはリヨンあたりに特有の定食屋、食堂を指す一般名称。オペラ座の右手の一角にブションが集まる面白い雰囲気の場所があり、その中の1つが今日のランチの場所だった。

 狭い路地は各レストランがテーブルを出して道を占拠している。通り全体が1つの大きなレストランになってしまったような感じが楽しかった。メニューは壁の鏡に書かれた手書きメニューで「これ、何だろうねぇ」と解読するところからお楽しみが始まる。私は実は初体験となるリヨン風サラダを前菜に注文した。お皿一杯に盛りつけられた料理がいかにも「定食屋」的で、ドレッシングのしみた乾パンとサラダとポーチドエッグのとろりとした黄身の相性は抜群。日本の「卵かけご飯」に匹敵するロングセラーを感じさせる料理だった。

 前菜、メイン、デザートで15.9ユーロ。プラス、ハウスワインを500ml程度と食後にコーヒーを注文して一人20ユーロ。値段もなかなかリーズナブルでお腹がいっぱいになった。

 ゆっくりと昼食を摂って二人と別れた後に、川沿いに新しくできたショッピングセンターConfluenceへと向かった。お腹が一杯だったので歩いたら30分くらい。丁度いい散歩になった。

 ショッピングセンターにはカルフールが入っていてここでBBQセットが買えないかと探しにきたのだが、都会人ターゲットのせいかアウトドア用品の品揃えが薄く置いていなかった。

 しかし、歴史的な町リヨンもウォーターフロントを再開発して新しく生まれ変わろうとしているのを見られたのはよかった。ショッピングモールは最新の建物で広々として気持がいい。時間があったら、もう一度ゆっくり訪れたいと思った。

 バスでキャンプ場に戻ったら、BBQセットを求めてちょっと離れた場所にあるカルフール・プラネットまで出発。

 自動車道や高速道路やリヨン環状線道路を乗り継ぐことになり、交通量が多く表示も見逃さないように気を張り詰めるアクロバティックな道のりにもかかわらず、案外スムーズに到着した。フランスの道路標示はイタリアに比べるととてもわかりやすくできていると思う。

 2年前にローマ郊外のキャンプ場からやはりカルフールに行く時にはキャンプ場のフロントの兄さんが事細かに行き方を説明してくれたっけ。イタリアは道路標示が不親切なので、ドライバーはよく道を記憶している。「で、ここで高速に入ったらまず右から2車線目に入って300mくらい走ったら最右車線に移動するんだ」というようなきめ細かい説明は、自分が苦労した経験からきている。道路案内に関してはイタリア人はやたら親切だった。

 さて、カルフールの中でも最大級バージョンのプラネットはニースで体験した。小さな町が入ったかのような巨大なスーパーに感激して、今回も楽しみにしてきたのだが、リヨン南部のカルフールプラネットはニースとは大分趣が違った。ニースよりも所得が低い住民が多い地域のようで、低価格層に偏った品揃えになっているので何となくファンタスティックな気分がそがれるのだ。期待ほど楽しくなかったので、目的のBBQセットを買って帰ってきた。

 夜はワインとサラダ。お昼も飲んだのに夜も飲む。コート・ドュ・ローヌ、おいしすぎるのが罪なやつ。


2012.07.21(土) リヨン近郊(フランス)
キャンプ場でBBQパーティー!

 一昨日一緒に食事した友達と、去年に引き続き第二回BBQパーティーを開こうという話になり、私達がBBQの手配、友達が知り合いに声をかけて連れてくるという手はずになった。

 今朝、人数の最終確認のメールを受け取ってみると総勢7名になる事が判明。学生さんが多く丁度夏休みに入っていることが幸いしたようだ。みんながキャンプ場に到着する12時半まであと3時間。これからスーパーに買い出しに行って、準備して、おいおい、間にあうだろうか?

 今日のメニュは、サラダ、オリーブ、ポテトチップスでビールで乾杯、それからイカ、ソーセージ、スペアリブ、味付き鶏手羽、鶏ドラム、最後に牛ステーキ、デザートはメロンというラインナップ。飲み物は各自持ってきてもらうようにしていたが、一応ワイン5本と飲料水は用意してあるからもう買わなくていい。材料を見ながら買い物を済ませてキャンプ場に戻ってきたのが11時半過ぎ。お皿やグラスを洗ったり、サラダの準備をしていたら皆がやってきた。どうやら間にあったようだ。

 まずはビールで乾杯。初めて会った人もいるので自己紹介を兼ねてさっそくおしゃべりに華がさいた。


 我が家のBBQとしての今回のニューポイントは着火剤を固形から液体に変えたことだ。メキシコのカンクンの日本人宿ロサスシエテでBBQをした時に、オーナーがこういう液体をかけて盛大に火をおこしているのを見てとても楽だったので私達も液体にしようということになったのだ。

 今までにも液体の着火剤があるのは知っていたが、何となく燃えすぎて怖いような感じだったので避けていた。しかし、固形だとなかなか火がつかず鎮火しそうになるのでフイゴで風を送ったりして面倒だったが液体はその必要もない。液体にして成功だったようだ。


 学生さんもいて私達よりも全員若いけれど、それぞれのバックグラウンドが違うので知らない経験や知識がいっぱいあって、どの人の話も面白かった。

 今日のワインはコート・ドュ・ローヌの異なるAOCから選んできた。人数が多かったので、どんどん新しいワインを出して地域ごとの飲み比べができたのがとても楽しかった。もっとも、最後の方は酔っ払って味が定かではなくなってきたのだけれど。

 キャンプ場からの最終バスが午後8時ちょっと過ぎ。気付いたらもう最終に近い時間になっていたので慌てて会計をしてお開きとなった。まさかリヨンでシェア飯するとは思ってもいなかった。とても楽しいパーティーになって大満足だ。


2012.07.22(日) リヨン近郊(フランス)
エルミタージュに浸る一日

 昨日のパーティーで体力を消耗したので今日は休憩日。といっても今日のお楽しみとしてコート・ドュ・ローヌのエルミタージュHermitageという地域のワインを買っちゃったんだよねぇ。肝臓君にはお休みがあげられない。

 コート・ドュ・ローヌは南部と北部にわかれている。南部はアヴィニヨン周辺になりアヴィニヨンにいる時に赤ワインのChateauneuf du PapeやGigondas、ロゼのTavelを楽しんできた。赤ワインでは私達がよく飲んでいるチリワインやイタリアのキャンティには感じられない、若草のような青いすがすがしい香りと味を感じられるのが楽しかった。

 北部はリヨン南部のヴィエンヌからヴァランスの間に広がり、ここに来る前に滞在したキャンプ場のあるTain L'Hermitage村も含まれる。この村のあるHermitageが北部の中でもグレードの高い赤ワインを産出しているというので、スーパーで20ユーロ以上出して1本買ってきたのだった。

 お昼ご飯に栓を抜いてグラスに注ぐ。

 香りが立ち上ってくるがすぐには飲まずにグラスで回しているとだんだんと香りが変わってきて、ちょっとチョコレートのような香りも感じられた。ブドウはシラーとルーサンヌとマルサンヌを使っているはずだけど、南米のカルメネーレのようにチョコレートの香りもするのが面白かった。

 で、ようやく一口飲んでみたらスルスルスルーっと入っていく。昨日の余りのワインと比べて飲むと差は歴然とする。昨日のも決してまずいワインではないが、今日のと比べると酸味が強すぎたり、渋すぎたり、何かしら口の中でひっかかるものがあるのだが、このクラスのワインになると引っかかりがない。イタリアのブルネッロ・ディ・モンタルチーノを飲んだ時もこういうスルスルした感じだったなぁ。ブルネッロと同じくらいおいしい。しかもあっちよりも10ユーロくらいも安い。

 夕飯はサラダとチーズにしたが、Epoissesという癖のあるこの赤かびチーズとの組み合わせもとてもよかった。

 というわけで、今日は一日ゆっくりとしながらワイン飲んでネットしてという休憩の日。


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