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2014年
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2013年
1月:1,2,3
2月:1,2,3,4
3月:1,2,3,4
4月:1,2,3,4
5月:1,2,3,4,5
6月:1,2,3,4
7月:1,2,3,4
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9月:1,2,3,4
10月:1,2,3,4
11月:1,2

2012年
1-1,1-2,1-3,1-4
2-1,2-2,2-3,2-4
3-1,3-2, 3-3
5月:1,2,3,4
6月:1,2,3,4
7月:1,2,3,4
8月:1,2,3,4
9月:1,2,3,4,5
10月:1,2,3,4
11月:1
2013.6.17(月) オーストリア(ウィーン)
とりあえずシュニッツェルとビールの初日

 夜行バスの中で寝返りを打って薄目を開けたら、車窓からものすごい朝焼けの風景が目に飛び込んできた。時刻は午前5時16分。高速道路はウネウネとして朝日は右に左に動いて木々が邪魔してなかなか撮影できない。格闘するうちに、だんだんと夜が明けてきて正しくまぶしい朝日になるころに、ウィーン南部のグラーツ駅に到着した。

 グラーツから更に2時間半北上して、朝8時。予定通りにウィーンに到着した。

 バスはErdbefgに到着。ここから予約してある宿の西駅WestbahnhofまではU3という地下鉄で一本だ。

 駅で切符を検討した結果、どの路線も2ユーロなので、15ユーロで月曜日から次の月曜日の朝9時まで使える一週間券(U-bahn、トラム、バス共通)がお得だとわかって購入。月曜日着でラッキーだった。これが曜日にかかわらず例えば水曜日から水曜日というチケットになると同じ内容で33ユーロに値段がはねあがる。月曜日開始は労働者用、住民用だから安いのだろうと思う。

 宿はWombat。オーストリアとミュンヘンとベルリンとブダペストに展開しているバックパッカー宿だが、安めで清潔で部屋が広めでウェルカムドリンクがあってと、気が効いているからよく利用する。

 今回のウォンバットのスタッフもご機嫌だった。しかも10人部屋を予約していたのに空いているせいか6人部屋にしてくれて、通常午後3時以降チェックインなのに、丁度掃除が終わっている部屋があるからとすぐに部屋に通してくれた。助かった。

 チェックインして荷物を整理して歯を磨いたら、観光準備完了!

 初日の今日は、有名店にて名物のとんかつヴィーナー・シュニッツェルを食べ、デザートにオーバーラーでケーキを食べ、楽友協会に行ってネットで買ったチケットを受け取るという予定。楽友協会に行く途中でEMIという音楽出版社直営のお店に立ち寄り、夫が捜していたアンドラーシュ・シフのCDとオペラ「ラ・トラヴィアータ」(ネトレプコとヴィジャソン)「セヴィリアの理髪師」(クラウディア・アバド指揮)のDVDを購入。やっぱりウィーンはすごい。クラシックに関しては商品がよく揃っていた。

 EMIの2階がボックスオフィスになっていた。ネットで調べたら21日のオペラ「ロミオとジュリエット」のチケットは既に130ユーロとか高額しか残っていなかったのだが、ここで聞いたら44ユーロのがあるという。出してもらったらチケットには32ユーロと書いてあって、ここではエージェントフィーをのせて売っているんだそうだ。それってダフ屋行為じゃないのか?とかなり腹立たしい気分にもなったのだが、売り場の一角で家族会議を開き、ここまで来て10ユーロけちって見ないのもバカらしいと買う事にした。

 じゃぁ、もしかして22日の「トリスタンとイゾルデ」はどうだろうと聞くと、こちらは119ユーロのチケットしかない。興味が沸いてきてオペラ座のチケット売り場にでむき聞いたら完売だと言われた。当日立ち見券が開演の1時間20分前から売り出されるが「何時から並んだらいいか?」とチケット売り場のじいさんに聞いたら「朝6時からだ」という。「そんなに早く?」と驚くと「トリスタンとイゾルデだぞ、有名なんだぞ、why not?」と言われた。にしても早すぎる。知り合いに聞いても朝6時はおかしいと、今調査中だ。

 そんなんで、ちょっととんかつ食べて散策のつもりが、初日からがんがんと歩きまわる結果になった。

 15- 6世紀のルネッサンスの町フィレンツェから来た目にはウィーンはずっと時代が下って建物も庭園も新しくて立派なフランス風。時代をワープして下って来たような感じで楽しい。

 実に7年ぶりに見るウィーンだが、相変わらず美しくて清潔感のある町だ。

 マリアテレジアが椅子にどーんと腰掛けている銅像のある公園を横切って地下鉄に乗って宿に戻ってきた。


 ウィーンは今週から30度をマークする猛暑の陽気。ウェルカムドリンクの冷たいビールを飲みながらテラスで夕方を過したが、まだまだ暑かった。

 午前中に誰もいなかった部屋には夜になって中国人の大学を卒業したばかりの男子3名、金髪のとても若い英語を話さない女性1名が入って満室となった。

 暑い。ただでさえ暑いのに満室はかなり暑い。

 セキュリティーも気になるが、こうなったら窓とドアを開け放して寝ようってことになり、ドアを開けっ放しで寝る事にした。


2013.6.18(火) オーストリア(ウィーン)
初めて見る友の姿に感動

 ウィーンに行くに際して予約したコンサート。偶然にも友人が所属しているオーケストラのコンサートだった。直前になって彼女も弾く事になり、それじゃぁ当日会おうと待ち合わせをしたのが今日だった。

 今日の彼女は忙しかった。いつもはリンツに住んでいるのだが、せっかくウィーンに来るのだからとかつて勉強していたウィーンで馴染みの先生のレッスンを午前中に入れていて、それが終わってから私達とお茶して、4時から2時間のゲネプロ(最終通し稽古)があって、本番7時半まで私達と一緒に夕飯。コンサートが終わったらメンバーとバスでリンツに帰るってわけ。聞いているだけで忙しい。

 レッスンを終えてスタバーでお茶している時、今日の演目についての解説をいつもの名調子で面白おかしく解説してくれた。音楽に対する深い知識と専門的な分析力から繰り出される解説は、ユーモアがあっていつも楽しい。が、今日の彼女は本番前とあって今までに見た事がないきりっとした部分があった。おお、Hちゃん、働く女の顔になっている!

 今日はゲネプロも見学していいといってくれていて、ゲネプロまであと1時間という所でHちゃんが気付いた。「おとっつぁん(Hちゃんは夫をこう呼んでいる)、まさかその短パンで来るんじゃないよね」。今日もウィーンは猛暑。どうせ上の方の席だからいいんじゃないかと短パンでやってきた夫に、Hちゃんはきっぱりと「楽友協会で短パンは見た事がありません。入場拒否くらうかも」と脅しをかけてきた。で、ゲネプロに間に合うかどうかわからないけど、即刻、宿に戻って着替えを取ってくることになったのだった。あのね、言いたかないですけど、私は言いましたよ、短パンはやばくないか?と。

 やれやれ。初めてのゲネプロ見学を諦めたくない私は、もう必死に夫と走ったね。途中、信号無視して運転手にどなられたりしたけど命は失わずに着替えを持ってゲネプロ開始5分前に会場に到着。ぎりぎりまで待っててくれたHちゃんに誘われて、汗だくで会場に入った。

 楽友協会はニューイヤーコンサートに使われる会場だ。もの凄く音響がよくて他の会場よりも小さな音で演奏しないとうるさすぎるくらいなんだそうだ。観客がいない会場は更に音がよく響いて、残響音がこだまするのには驚いた。もっとも観客が入ると衣類などに音が吸収されて丁度良くなるんだと、後の食事の時に聞いた。

 今日の演目は、ヘンデル(リンツの少年合唱団の歌)、メンデルスゾーンの「真夏の夜の夢」、後半にハースの「真夏の夜の夢へのオマージュ」、ムソルグスキーの「はげ山の一夜」。

 ヘンデルの合唱でソロを歌う少年はあたかも天使の歌声かというほどに清らかに美しくてゲネプロの時から驚いていた。更に少年が80kgはあろうかという巨漢であることにもびっくり。あの体からあの小鳥のように可愛らしい声!全く、驚きの組み合わせだ。

 友人はメンデルスゾーンから登場。「いよっ、Hちゃん」と歌舞伎なら2階席から声をかけたい所だ。颯爽と演奏する友人はいつもとは別人のように見えた。最初に出会った時から、BBQしたり、キャンプした、ドライブしたり、酒のんだり、メールで愚痴ったりしている友人の顔が走馬灯のように流れては消えていく。色々あるけど異国で外国人と戦いながら必死に演奏しているHちゃんは本当に頑張ってるんだと実感した夜だった。

 後半一曲目は友人が解説してくれたようにウネウネとした超現代曲で「真夏の夜の夢」というより「真夏の悪夢」が言い得て妙だという曲。2階席の客席も皆「何じゃ、こりゃー」という反応だった。が、はげ山の一夜は有名曲なので楽しめて終了。全体としては聞きやすくて楽しかったな。

 コンサート後は着替えてバスに乗る友人を出待ち。イベント後に誰かを出待ちするなんて、メキシコ・シティのルチャ・リブレ以来だなぁ。

 そういうと、友人は笑って「まぁ、うちらもプロレスみたいなもんですからね」と言った。こういうジョークに怒らずに対応してくれる所が、この人のいい所だ。

 超過密スケジュールで忙しい日々を送っているらしいが、こうやって会えたのは本当に嬉しい出来事だった。7月にフィレンツェで再会できたらいいね!


2013.6.19(水) オーストリア(ウィーン)
運動日か?っちゅうくらい歩いた

 宿でもらった地図に歴史的地区を散策するモデルコースがあったので、それをやってみることにした。

 昨日は昼時に友人とチーズケーキとコーヒー、夜はタイ料理でカレーなぞを食べてしまい非常にオーバーカロリーな行動をとってしまった。ということで、今日は朝は宿のビュッフェ3.5ユーロでたっぷり食べるとしても、昼は抜いて散歩に出た。

 散策コースの途中に夫が寄りたいCDショップが3つほどあり、ZARAにも立ち寄って夫がフィレンツェで買いそびれていたパンツを発見して買うなど、散策の最初は進みが遅かったが、それらの用事が終わると、通常のウォーキングをしているかのようにスカスカと歩く事になった。そうそう、因みにウィーンのZARAの試着室はスタッフがしょっちゅう掃除に入ってゴミが1つもない。綿ぼこりと髪の毛が塊になって床を転がり、誤って衣類を落としたら酷い事になるフィレンツェのZARA試着室と大違いだった。

 昨日、着替えを取りに行くのに駅から宿まで走ったので二人とも足が筋肉痛。そこに加えてウォーキングで、更に30度の猛暑。観光なのか苦行なのか。最後はもう微妙な気持になりつつも、あらためて見るウィーンの町は古くても白く輝く歴史的建築物あり、新旧のカフェあり、ドナウ川あり、緑と花々の公園ありで、夜にはクラシック音楽を聞くチャンスも多い。なるほど魅力的な町だと再認識した。

本日のオペラ座

屋根の美しいシュテファン教会は美しく外壁を修繕中

目貫通りにこんなオブジェ

クラシック音楽の専門CDショップの数が多い

ドナウ川沿いには夕方からバーが軒を並べるようだ

フロイトの博物館がある

シュテファン教会よりもきれい!

市庁舎の向かいの建物

 しかし疲れた。暑さと筋肉痛でへとへとだ。宿に帰って夕飯はスイカ、ぶどう、オレンジ。


2013.6.20(木) オーストリア(ウィーン)
ウィーン名物「ターフェルシュピッツ」とベートーヴェン

 昼前までは部屋で作業。あまりに長時間部屋にいる私たちに香港人の男子がついに質問。「そんなにコンピューターを見て何をしているんですか?仕事でもしてるんですか?」

 短期間で嵐のように観光する彼らにとって、部屋でまったり過しているように見える私たちの存在はとても不思議だったようだ。まぁ、こういう質問は時々うける。実はまったりしているようで、コンピュータで次の行き先の予約して、前の滞在先の写真整理して、これから聞きに行くコンサートやオペラの作曲家や時代や内容を調べたりして、私たちなりにめちゃくちゃ忙しく観光しているわけだが、なかなか理解してもらうのは難しい。

 そんな彼らも今日は午前中は部屋でゆっくりしていて、私たちの方が彼らよりも早く部屋を出ることになった。ね、私達も外出してるでしょ?

 向かったのは「ターフェルシュピッツ」というオーストリア名物料理の専門店プラフッタPlachutta。フランツ・ヨーゼフ1世の好物として知られている名物料理かつ名店。店内は外国人ビジネスマンの接待ランチグループが半分以上を占めていて、あちこちでもてなす側が得意げに料理の説明をしている様子が見られた。

 この料理は牛肉の煮込みで、肉は部位を選んで注文するのだが一番有名な部位がターフェルシュピッツという部分らしい。メニューの解説図を見ると「尻なのか?」という部分だ。たっぷりのスープに煮込まれた牛肉が入った鍋が卓上に運ばれ、まずはスープを楽しみ、次にトーストに煮込まれた髄をスプレッドして楽しみ、最後に肉にアップルとホースラディッシュのソース、マヨネーズ風のソースをつけ、ほうれん草、ローストポテトなどと楽しむという料理だった。とにかく最初の牛肉スープがおいしい。量も多いがこれは飲み干す価値がある。全部たいらげると8割お腹いっぱいになり肉にたどり着けないくらいだが、肉を残してもスープを楽しむべきだという料理だった。

 お昼ご飯後は再びクラシック音楽CD専門店を訪ねる。実はアマゾンの新中古の価格が安くて、今日確認したがやはり日本でネットで買う方が安いことが判明。何て世の中だ。このクラシックの町で買ったという思い出値段と考えれば、こちらで買ってもいいというくらいの値段の差のものもある。しかし、私たちみたいになるべく荷物を持ちたくないという事情もあれば、ここでは買えない。

 一度宿に戻って衣類の洗濯、シャワーを浴びて夕飯にすいかを食べたら、夜はコンクール見学だ。

 今夜は楽友協会で第14回ベートーヴェン国際ピアノコンクールの最終選考が行われているのだ。38ユーロの席はステージ向かって左手。2階席ながら一番前なのでピアノの真後ろよりも奥から見学することになるから手元が丸見えですごくいい席だった。数日前に行われた2次選考36名から絞られて今日は3名。26歳のロシア人男性、20歳のオーストリア人男性、30歳のロシア人女性だった。1番目と3番目がピアノ協奏曲の第4番、2番目が3番だから4番を2回聞く事になった。オケはザルツブルグ室内音楽というグループだ。

 印象としては2番目のオーストリア人男性が丁寧に弾いていて高感度が高かったが、結果は情熱的だったロシア人女性が優勝。彼女には8000ユーロとグランドピアノ1台が贈られる。その他にもコンサートを開くチャンスが増えたりと、大きな飛躍につながるんだろうな。

 2次まで通った36名のうち日本人は9名もいるのに最終選考に一人もいないのは寂しい結果だった。知り合いが日本におけるピアノ教育を改革しようとしている。ヨーロッパでは通用しない日本独自の誤ったピアノ教育にメスを入れていきたいという友人の言葉を思い出した。

 同じ夜、オペラ座では人気オペラ歌手レネー・フレミングが出るリヒャルト・シュトラウスの「カプリッチョ」が演じられていた。友人は「ベートーヴェンコンクールを見るなんてマニアックだ」という。確かにそうかもしれないが、天才が花開く瞬間に出会えるかもしれないという意味では、若い人の出るコンクールのファイナルは常にドキドキするから魅力的だ。

 夜11時過ぎ、宿の部屋にはシュトゥットガルトから来ているという英語が話せない若い女性だけが帰っていた。さびついているが多少は覚えているドイツ語で「今日はどうだった?」と聞くと「とにかく暑くて暑くて汗びっしょりでもうダメ」とぐったりしている。彼女は仕事で来ているのだが、天気予報を見ていなくて涼しい服を一枚も持ってきていなかったのだそうだ。そいつは大変だね。水シャワーでも浴びたらすっきりするんじゃない?と言うと、素直に水シャワーを浴びていた。そんな会話の後で就寝。


2013.6.21(金) オーストリア(ウィーン)
引っ越しして、自炊して、オペラ

 週末のウィーンは混み合っているようで、宿を予約する時に最初の宿が既に満室で予約できなかった。そこで今日は近くにある別のホステルに引っ越しだ。朝10時のチェックアウトに向けてバタバタと荷造りしていると、香港人3人もシュトゥットガルトのお姉ちゃんもバタバタしている。聞いたら全員チェックアウトするそうだ。というわけで、大騒ぎの室内でそれぞれ荷造り。知らない人でも同室で3日も過したら親近感がわく。「もし、何か忘れ物してたらフィレンツェまで届けてね!」というと香港人青年たちは「よっしゃ、任せて!」と明るく答えてくれた。

 新しく移動してきた宿では、まだ荷物を背負っているというのに「水を飲むか、水を飲むか」と勧めてくる。「それってウェルカムドリンクなの?」と聞くと、そうだと言われた。

 「夕刻ならワインも出すが今は朝だから水がいいかと思って。」というのだが、荷物を背負ったままで飲む温くておいしくもない水では、ちっともウェルカムされた気がしない。この宿、大丈夫なのか?という不安を最初に覚えさせるウェルカムドリンクサービスだった。

 しかし、館内を見てまわると前の宿よりも使いやすいキッチン、気持のいい中庭、室内には液晶テレビがあってBBC放送もみられ、何よりも気に入ったのは各自にシャワーを出た時に使える足ふきタオルが配られていることだった。足ふきタオル付きバッパーは初めてだ。きれい好き圏(私的にはドイツ、オーストリア)ならではの気のきいたサービスに満足。

 さっそく、近所のBILLAというスーパーでソーセージセットと旬のきのこを買ってきてランチした。ソーセージはイタリアのよりもこっちの方が好きだ。

 RADAZというメーカーのがいい感じの価格でおいしい事は7年前のウィーン訪問の時に知った。RADAZから出ているソーセージセット(チーズ入り、ハーブ入り、チーズ入りベーコン巻)は6本入り400gで3ユーロ。これで混じりっ気なしの正統派ソーセージなんだから食べないという手はない。

 付け合わせは超酸っぱいザウワークラウト。これも食べ慣れるとおいしく感じられる。

 昼食後は部屋にこもってサイト更新作業などをし、夕方フルーツの夕食を食べてからいざオペラへ出陣。

 今日のチケットは下から2番目の価格帯32ユーロをエージェント手数料を支払って44ユーロで買った席だ。一階席から数えて5階左手の手摺から2列目。まぁステージの半分しか見えない。特に今日の「ロメオとジュリエット」は左側で演じられる事が多く、右側だったらよかったのにと思った。

 しかし良かったことは、今日はジュリエットを演じるニノ・マチャイゼNino Machaidzeのここウィーン国立歌劇場でのデビュー公演にあたったことだ。指揮者はかつて世界三大テノーラーの一人といわれたプラシド・ドミンゴ、ロメオ役にはピョートル・ベチャワという円熟味の増したテノールで、ベテランに囲まれてデビューを果たしたマチャイゼさんの弾けるような若さとデビューの喜びが全身からビーム光線のように出てくる迫力ある舞台を楽しめた。
※追記:この日、マチャイゼさんではなくソーニャ・ヨンチェヴァさんに配役が変わっていました。どーも顔が違うと思ったし、随分太ったんだなぁと思ってたら別人だったんですね。でも、ヨンチェヴァさんにとってもデビュー公演ではじけるビームのパワーであることには間違いありませんでした。

 ご存知原作はシェークスピアのこの作品はフランス人作曲家のグノーによってオペラ化された。ウィーン国立歌劇場では英語字幕で内容を知る事ができるのだが、とにかく恋に落ちた二人のセリフの甘い事、甘い事。さすがおフランスな感じがする。最後に神父から渡された薬をジュリエットが飲もうか飲むまいか逡巡する場面で長々と迷うのも物語としては真実味がある。と思うのだが、隣の夫は「はよぉ飲めや」と隣でいらついていた。ロマンスのわからないおっさんと見に行くべきではない作品だ。


2013.6.22(土) オーストリア(ウィーン)
オペラ座の立ち見チケットを買う!

 昨日のオペラを見て、その素晴らしさを再認識した我々は、今日のワーグナー「トリスタンとイゾルデ」を立ち見で見る覚悟を決めた。覚悟というのは、立ち見で見る為には公演の数時間前からチケットを買う為に行列に並ばなければならなく、かつ4時間45分という長丁場のオペラを立って見なければならないという覚悟だ。

 立ち見チケットは3ヶ所で見る事ができる。4ユーロは1階の一番後ろ、3ユーロは5階のステージ両脇の一番後ろと6階となる最上階の正面に立ち見のためのスペースがある。知り合いからの情報で1階で見る人の30番目くらいまでに入れれば前から2、3列目までで見られるのでステージも近く見えていいんじゃないかと言われた。

 開演の1時間20分前から売り出される立ち見チケット。今日の演目は今年生誕200周年を迎えるワーグナーでかつドイツ語圏でドイツ語オペラとなると人気があると思い、発売時刻の2時間前から並んでみる事にした。開演が5時、立ち見チケットの売り出しが3時40分、並び始めたのは1時半。この時点で私達は39番目と40番目だった。

 午後2時まで数分という時に、突然列が動き出した。建物の中に列を入れて中で待たせるということらしかった。ぞろぞろと歩いていく途中で人が座っていない椅子が取り残されている。立ち見チケットを早くから並んで買う人の中には椅子を持ってきている人も少なくない。ところがチケット販売までまだ時間があるからと椅子をほったらかしでどこかに行ってしまった人がいるようなのだ。せっかく早く来たのに残念だねぇ。

 因みにこの建物の中に入ったら古参のおじいちゃんスタッフがドレスコードチェックをしてまわる。男性は半ズボンがNG。そんな事もあろうかと着替えを持ってきていた夫は早速チェックされてトイレで着替えてくるように指示されたのだった。ウィーンでの本式クラシックコンサート、半ズボンは絶対にダメらしい。

 建物の中に引き入れられて更に発売時間まで待つのだが、建物内なので床に座れるし風も雨も関係ないしトイレもあるしと快適な場所。ここで残り1時間40分は床に座って壁にもたれて仮眠して待っていたので、かなり楽だった。

 そして3時45分くらいから立ち見チケット発売開始。買ったらそのまま自分の見たい場所へと移動する。この移動で小走りをしたら「ホール内は走ってはいけません」と大人の係員に叱られた。小学校時代を思い出す。

 一階で見たい場合は正面大階段の両脇からアリーナ席に入る入口へと向かう。そこで再びストップ。でもまぁ4時過ぎには会場に入って自分の立って見る場所を確保した。お行儀のいいウィーンでは一番目の人から奥へ詰めていくので望む場所を確保するのが難しいが、私達は幸いにも2列目のど真ん中に場所を確保することができた。この場所で見学する人がとりあえず全員の場所が決まるまでそこに立っている。

 全員の場所が決まった時点でスタッフの女性が、「それでは皆さん、目の前のバーの下の段にスカーフ、ハンカチ、何か紙でもいいので巻き付けて自分の場所だとわかるようにしてください」と説明した。他にも開演15分前に戻ってこいとか、絶対に写真を撮るなとか、荷物は無料で預けられるとか、小学生に説明するように細かくアドヴァイスしてくれた。昨日の席だと荷物は1つ0.7ユーロと有料だったのに今日は無料。立ち見の人は優遇されているが、オペラの常識を知らない子供扱いされている。

 場所を決めて公演まで40分くらいある。オペラ座の地上には向かいにザッハートルテ発祥の「ザッハー」やスタバーもあるが、地下にはパン屋さん2軒、寿司や焼きソバを出すアジア系の店1軒があるので安くお腹を満たす事ができる。私達はパン屋さんでアップルシュトゥルーデルを買ってイートインのコーナーでゆったりと食べて会場に戻った。

 トリスタンとイゾルデは午後5時に始まり、20分ずつ2回の休憩をはさんで午後9時45に終了した。事前にストーリーを読んできたし、立ち見席にも英語の字幕がみられるモニターがあるので、退屈することはない。

 同じオペラというカテゴリーにあって、モーツァルトのオペラとワーグナーのオペラは全然違った。モーツァルトのオペラは「音楽」だ。声が楽器のように使われて音楽的に面白くて、思わず覚えて口ずさみたくなるアリアが次々に出てくる。

 対してワーグナーは「演劇」だと思った。セリフが大切で音楽はそれを効果的に盛り上げる質の高いBGM。メロディーよりは歌詞で語られる内容の方が記憶に残った。特にトリスタンが亡くなって最後にイゾルデ歌い上げる内容は本当に心を打たれる哀しみを表現していて素晴らしいと感じた。

 本日の主役はトリスタン役をペーター・ザイフェルトPeter Seiffert、イゾルデ役をニナ・シュテンメNina Stemme、フランツ・ヴェルザー=メストFranz Welser-Most指揮という顔ぶれだった。トリスタンもイゾルデも堂々たる体格の持ち主で5時間近いオペラにもかかわらず最後まで「イグアスの滝」級の声量で歌い上げる。その力量にも驚かされた。最初は恋に落ちた二人と言われても、トドが抱きついているようでちーっとも美しくないと思っていたが最後には容姿を超えて美しく見えてきた。指揮者はリンツ出身のオーストリア人で2010年からウィーン国立歌劇場音楽監督、2011年と2013年にウィーンニューイヤーコンサート指揮を務めた。そう、NHKのニューイヤーコンサートの放映で見た人だ。ドイツ語オペラでオーストリア人指揮者ということもあってか大喝采のうちに幕を閉じた。

 私達は私達でやればできる。と立ち見達成の満足感に自分達に大喝采。次回からはこれで行こう。


2013.6.23(日) オーストリア(ウィーン)
ウィーン最終日は食べまくり

 今夜9時のバスでフィレンツェに出発。朝11時にチェックアウトして宿の荷物置き場に荷物を置かせてもらったら、あと12時間何をしようかということになった。今日はあいにくの日曜日。フランスやイタリアでは日曜日も開ける店が増え始めているが、ここウィーンじゃまだ飲食店以外はビシーっと閉まっている。最終日に西駅のショッピングモールのセールを冷やかそうと思っていたあてが外れてしまった。

 とりあえず昼飯用に買っておいたソーセージとマッシュルームとルッコラとチーズパン、それに朝のうちに西駅見物に行ってみつけてしまったやる気のあるクロワッサンで昼食。あまりの満腹に歩かなくてはまずいと、シュテファン寺院周辺を散策していたらゲルストナーという老舗のチョコレート屋を通りかかった。カフェ併設で先日のオーバーラーに今一つ納得行かなかったので、ここで2種類のチョコレートケーキを食べて鼻血が出そうになるくらいに満足。

 昼食のカロリー消費のために町に出てきたのにもっとカロリーを摂取してどうするんだ!しかしゲルストナーに対して罪はない。本当においしかった。

 そこで中心部から2kmくらい離れた宿まで歩いて帰ることにした。

 マリアヒルファー通りという中心部と西駅をつなぐショッピングストリートはやはりほとんどの店が閉まっているのに、やたらに人通りが多い。そして多くはトルコの国旗を掲げたり身にまとったりしている。

 「トルコのサッカー戦か?」

 家族連れが日曜日の午後にゆったりと国旗を掲げながらマリアヒルファーを歩いている姿には、そんな平和な雰囲気が漂っていた。

 しかし、通りすがりのカフェのウェイターに聞いたらトルコ本国で問題になっている政府の「強権イスラム化」に反対する集会だそうだ。見ればウィーンの警察官も一緒にゾロゾロと歩いている。こんな集団の中を歩いて危なくないのかとウェイターに聞いたら、軽く笑い飛ばされて「ぜーんっぜん平気さ」と言われた。オーストリア国内でのトルコ人の存在は友好的だという認識らしかった。

 騒然とした西駅を通りすぎてひっそりとした宿に戻って休憩。

 見そびれていた「鴨京都へ行く」と「雲の階段」2つのテレビドラマの最終回を見て、最後の食事をしに西駅に行ってきた。

 駅構内にある揚げ物ファストフードのお店でバックヘンデル(ウィーン風鶏のから揚げ)とヴィーナーシュニッツェル、最後のビール「オタクリンガー」を食べた。パン粉のついたバックヘンデル2分の一羽6.2ユーロはまだよかった。酷いのはシュニッツェル6.4ユーロ。たたいて薄くしたシュニッツェルは繊維がちぎれて柔らかいのが特徴なのに、ここのは単なる超薄切り。薄すぎて衣との分離が著しく、かつこんなに薄いのに固い。老舗のフィグルミューラーは値段は倍するが分量も3割は多く、質は100倍いい。シュニッツェルは名店で食べるべしだと最終日に学んだ。

 結局、食べまくりで最終日を終えて午後7時半過ぎにバスターミナルへ出発。チェコのプラハ発のバスはバスターミナルの外のバス停に停まると言われて待っていると、東欧風のパンクロックな感じの若いカップルがいて、女性が私にどこに行くのかと尋ねてくる。9時発でフィレンツェに行くというと、いきなりチケットを手配して彼氏だけをバスに乗せて去って行った。寡黙で屈強な体格の彼氏は小さなリュック一つしか持っていない。あてどのない成り行き任せの陽気な旅行者というよりは、何やら犯罪の香りのする二人でちょっと不気味だった。

 他にはスペイン留学中のブラジル人学生が乗って、既に混んでいたバスのそこここに収まると、バスは定刻通りに出発した。フィレンツェまで約12時間、一人50ユーロの移動が始まった。


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