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2013年
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2012年
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10月:1,2,3,4
11月:1
2013.10.7(月) オーストリア(ウィーン)
ナッシュマルクト、ハイナー、「バレエ・マノン」マスネ

 今日も朝一番で西駅に行ってクロワッサンと卵サンドを買ってきて宿のキッチンでご機嫌な朝ごはんから開始。

 外は曇って寒いウィーンだが、ホステルなどの施設の中はかなり暖房を利かせて断熱もちっきりしてある建物なので、快適な事、この上ない。毎日きっちり掃除が入って、そのレベルはイタリアやフランスのホステルよりもずっと清潔度が高いし、シャワーなどの設備も熱いお湯が湯量も豊富にがんがんと出て快適。ウィーンのホステルライフっていいわ!


 さて、本日のオペラ座は午後7時からマスネ作曲によるバレエ「マノン」。知らなかったのだがバレエの場合、曲はマノン作曲ではあるもののオペラ「マノン」のために書き下ろしたものは一切使われていないのだそうだ。1974年初演のバレエだが、振付師のケネス・マクミラン、ジュール・マスネがバレエとしてふさわしいマスネの曲を持ってきて作られたのだそうだ。

 私たちとしては今日がマスネの「マノン」を見るのが初めてだし、そんな事を言われてもさっぱりわからないのが現状だけどね。

 このバレエも立ち見席を狙うために本日の許された自由行動時間は午後2時まで。昼前にナッシュマルクトという常設市場の立つ場所でランチをして、その後にハイナーでデザートのケーキを食べ、午後2時前にオペラ座前のスタバー入り。ここから実際に何時から並び始めるかの定時偵察を行った。

 まずは、ランチに行ったナッシュマルクト。前回は青空市やアンティーク市も立つ土曜日に訪れたので人とすれ違うのも大変な大混雑だったが、平日のナッシュマルクトは空いていて歩きやすい。観光客なら平日でも常設市でオーストリア、中東、ヨーロッパ他地域の野菜、肉、加工食品(ハム、チーズなど)の店で買い物ができるから楽しい場所だ。ここには各国レストランも何軒もあって、私たちの目的はインドカレー屋さんだった。本日のランチメニューというのがチキンカレーと豆カレーのセットで9ユーロ。オーストリアだから大量で食べきれなかったらどーしよー!なんて勝手に嬉しい想像をしていたら、ものすごくお上品な量しか出てこなくて、「こんなんで足りるかい!」とテーブルをひっくり返しそうになった。そこで、食後に王室御用達のハイナーでお茶するという優雅な企画でケーキにがっつく事がないように、間にトルコのケバブを食べておくことにした。さっきのカレーが9ユーロでケバブは3ユーロ。肉ボリューム的には同じくらいなんだけどなぁ。遠くインドからの参入者はナッシュマルクトでは強気らしい。

 ナッシュマルクトからぶらぶらと散策してシュテファン寺院に向かう途中に王室御用達のスィーツのお店ハイナーHainerがある。

 今回のウィーン訪問で悟ったのだが、私がウィーンで一番満足できるケーキは「トリュフルトルテ」だ。スポンジとチョコーレートの固めのクリーム(トリュフ)が同じ厚さで4-6層になっている。チョコレートがスポンジにも染みているのかスポンジはしっとりとして、頭にくさびを打ちこまれるくらい甘いチョコレートトリュフががっつりと襲ってくるケーキ。

 ハイナーのトリュフルトルテもゲルシュトナーに負けずにどっしりとした満足感を与えてくれた。ケーキ2つとコーヒー2つで12ユーロくらい。このクオリティーのケーキが4ユーロ弱で食べられるのはウィーンならではではずせない魅力だ。

 明るい店内、シャンデリア、赤いビロードをはった椅子、テーブルに薔薇の花。古参の女性ウェイトレスは礼儀正しくきっちりとメイドドレスを着ている。ここに来るとマリアテレジアになった気分が味わえる。ウィーンに来たらカフェ文化を堪能せよ、というガイドブックのアドヴァイスに私も賛成する。

 午後2時に立ち見販売の場所に行くと誰もいない。実はここで今日のプログラムを見て初めて今日の演目がバレーだったことに気付いたくらいの私たちだった。

 バレエだから人がいないのか。

 そう踏んで、思い切って3時まで他で時間を過ごして戻ってきたがまだ誰もいない。ということで更に思い切ってCD屋や土産物屋をぐるぐるして午後4時前にもどったら、やっと1名先客がいた。午後4時に建物の中に入れるので今日は全く外で待つ事がなくてラッキーだった。

 中で1時間40分待ってからチケットを買い、午後6時に会場へと入った。私たちは左側から入る列の先頭にいたのだが、会場に入ったら左側の最前列と2列目が「予約席」となって綱が張られて入れない。ここまで待ってきたのにいきなり3列目にさせられるのはあまりに不公平だと、内部で右側へと移動して右側の最前列に場所を確保することができたのだった。

 予約席へと時間ぎりぎりにやってきたのはどうやらバレエ学校の生徒さんらしかった。しかしその中に常連らしいよく見かけるおじさんも紛れ込んでいる。コネ社会でもあるから、そういうのは仕方ないのね。

 マノンは小説「マノン・レスコー」に基づいていて自由奔放なマノンに真面目な学生のデ・グリューが振り回されてさまざまな出来事が起こるが、最終的にマノンは体を壊して死に至るという話。

 一度はマノンを離れて神学の道を志すデ・グリューのもとにマノンがきて、カルメンもまっ青の引き戻しの説得を行うというくだりが一番面白そうだと思っていたのだが、バレエにこのシーンがなくてちょっと残念だった。

 後からバレエの振り付けの解説を読んでなるほどと思ったのだが、このバレエの中には難易度の高い独創的な振り付けが盛り込まれているそうだ。予備知識なく見た私としては、伝統的な衣装や舞台設定なのに時折、モダンバレエのような振り付けが入るなぁという感想を持ったのだが、あながち間違っていなかったようだ。古典的な作品よりも感情とダンスがリンクしている点が面白かった。それに主人公たちの美しい動きにはため息がでる。

 今日の幕間エピソード。

 今日も休憩時間から戻ると、私たちの隣に見知らぬスペイン語圏の親子が立っていた。一応、忠告してみたがあまり英語も通じなく途中から無視するのは昨日と同じ手口。本来そこに立っていたオーストリア人と思われる英語が堪能な若い女性と「係員を呼ぶしかありませんね」と話がまとまったのだが、若い女性はなかなか係員を呼びに行かない。スペイン語圏親子も「ふっふっふ、もう諦めたようね」と不敵な笑いを浮かべかけた開演間近。既に他の立ち見場所には本来の人々が戻ってきて、もうどこにも入る余地がないくらいになった頃に、女子学生は係員を呼びにいった。昨日と同じく「スカーフを巻きつけて場所を確保しているから、あなたたちは後から入れない」との説得に対して、今日の親子はうちの夫のハンカチを指さして「これが私たちのスカーフだ」と言い放った。見事だねぇ。そんなすぐにバレる嘘をよく言ったものだ。そのチャレンジ精神には感服したが、夫に「これ、私のですから」と即刻否定されてしまった。こんなにぎっしりと人が詰まった状況では、もう割り込みはどこにもできない。親子はすごすごとどこかへ去っていったのだった。

 それにしても、ぎりぎりのタイミングを見計らってから係員を呼びに行くあたり、あの女子学生は何度もこういう事を経験しているのかもしれないなぁ。今日も幕間のエンタテーメントを楽しめた。

Kenneth MacMillan Jules Massenet | Komponist
Peter Ernst Lassen | Dirigent
Kenneth MacMillan | Choreographie und Inszenierung
Peter Farmer | Ausstattung
Martin Yates | Musikalische Einrichtung
Karl Burnett | Einstudierung
Patricia Ruanne | Einstudierung

Nina Polakova | Manon
Roman Lazik | Des Grieux
Kirill Kourlaev | Lescaut
Kamil Pavelka | Monsieur G. M.
Ketevan Papava | Lescauts Geliebte
Gabor Oberegger | Der Aufseher
Dagmar Kronberger | Madame
Davide Dato | Der Bettlerkonig


2013.10.8(火) オーストリア(ウィーン)
自炊、ゲルシュトナー、「西部の娘 La Fanciulla del West」プッチーニ

 イタリアと比べると残念ながらウィーンの外食の選択肢は限られている。私たちが気に入っている外食はフィグルミューラーでのシュニッツエルとプラフッタでのターフェルシュピッツだが、それとて一回の訪問で一度訪ねたら満足する。ということで、残りの日々は自炊でもしようかということになる。そこで、今日はランチを自炊して過ごすことにした。朝は再び駅で調達したクロワッサンとカプレーゼサンドイッチ。昼はスーパーで買ってきた豚肉をソテーしてぶどうを乗せ、ザワークラウトとクナックというソーセージときゅうりを添えた。ウィーンでは多数のソーセージがあるから楽しい。

 豚肉にはパッケージの目立つ所に「OHNE gen TECHNIK」とあり「遺伝子組み換えを行っていない」肉であると特別表示されていた。BILLAというドイツ系のスーパーを利用しているが、このスーパーは食品安全については厳しいイタリアにも進出していて高い水準を心がけているのかもしれない。

 昼過ぎに街にでたら、今回のウィーン訪問で初めてにして最後の青空が広がっていた。やはり青空バックのシュテファン寺院の方が美しい。うつうつとした曇り空から解放されると、とたんに初秋の本来の暖かい陽気となり、道行く人も活き活きとしてみえた。

 デザートに訪れたのはそんな通り沿いにあるゲルシュトナー。こちらもかつて皇室御用達だったスィーツショップだ。オペラハウス内の軽食カウンターにはここのケーキ屋サンドイッチが入っている。

 今日もチョコレートのトリュフルトルテ。もうひとつはさっぱりとフルーツスポンジケーキ。トリュフルトルテはハイナーとよく似ているが更にチョコレート度合いが濃い気がした。スポンジケーキは日本のケーキのようで間のヨーグルトムースでさっぱりと食べられて、こちらもおいしかった。チョコレートケーキの写真は明日、3軒並べてあげようと思う。

 オペラ座の本日のオペラは「西部の娘 La Fanciulla del West」。プッチーニがアメリカ合衆国のメトロポリタン歌劇場の依頼で作曲したオペラで初演が1910年のニューヨークのメトロポリタン歌劇場、内容もゴールドラッシュに沸くアメリカ西海岸という、通常のヨーロッパ舞台のオペラとは趣が違う作品だった。

 オペラ座が出版している小冊子10月号ではこの作品を大きく取り上げていた。というのも、今日出演する主役級の3名がいずれもスーパースタークラスのオペラ歌手で、しかも指揮は2010年からウィーン国立歌劇場音楽監督を勤めているフランツ・ウェルザー=メストというオーストリア人。2011年、2013年のウィーンフィル・ニューイヤーコンサートを指揮したことでも知名度が高まった人だ。

 スーパースタークラスのオペラ歌手3名のうち、主役のニーナ・シュテンメは今年「トリスタンとイゾルデ」で一度舞台を見ているが他二人は知らなかった。二人の男性のうちの気になるのがヨナス・カウフマン。今回ウィーン市中のCD・DVDショップには彼の等身大イケメン立て看が置かれて、いやがおうでも目に入ってきているのだ。

 イケメンでスーパースター。今日は混む。

 そう予測して午後2時にチケット売り場にいったら既に8人くらいも並んでいた。その後も行列にはポツリ、ポツリと人が加わり午後4時の2時間で40人くらい待ちとなった。

 午後5時40分からのチケット発売では、年間立ち見券を購入している人や知的障害枠で買う人が先行して、私たちはあっという間に23番と24番目の発売チケットになってしまった。

 しかし、会場内手前の左右にわかれる所では左側多数に対して、右側はまだ10人に満たない人数だったので右側に並ぶことにした。これで最前列が確保できる!

 こうして午後6時。係員に案内されて会場内へと入ったのだが何と右側には既に知的障害枠の人が5人くらいいて最前列を占めていた。そこで急遽、左側へと入っていき最前列を確保したのだが、左側に並んでいたオーストリア人夫人が「右に並んでいたら右、左に並んでいたら左。交差するのはルール違反なのよ!」と言い始めてきた。そうかもしれないが、知的障害者枠が常に右側に一定数まで許されているというルールは、どこにも説明されていない。その事が説明されていないなら左は左、右は右も説明されていないのだから、そこは許されているだろうというのが私たちの解釈。実際に今年に入ってオペラ座のこの立ち見席で左と右を順守しない地元民に場所を先取りされた経験を何度かした後の判断なのだ。

 ということで、今日のハプニングの主役は図らずも自分たちになってしまったのだが、注意したオーストリア人女性は係員を呼んだわけではなかったので、私たちはそのまま最前列を確保できる事になった。しかし、オーストリア人はこの彼女の中でのルール違反のアジア人にかなりご立腹なようで、休憩になって外に出ようとしている私たちの前に立ちふさがり「あんたたちみたいなルール違反者は通せないわ!」とかドイツ語で言っているようだった。相手をしていられないので、バーをくぐって後ろの列からさくっと出た。



 さて、オペラだが、プッチーニの他の作品と異なり、超有名アリアというのがない。シュテンメさんとカウフマンさんの歌声はそれは素晴らしいとは思うのだが、音楽がどうにも体に入ってこなかった。難しい音楽だった。また、舞台が西部劇の様相でいわゆるオペラらしいファンタジックな美しさよりも、リアルな荒々しさになっていて、華やかさがない。素人としては、口ずさめるアリアがあり、リアリティーのない夢のように美しい衣装や舞台、あるいは笑える会話などを期待するのだが、そういうものがとても少ないので楽しむ事が難しいオペラだった。最大の裏切りはカウフマンさんの容貌だった。ポスターはイケメン過ぎる。実物も素敵ではあるが、あの写真にはやられたなぁ。

Franz Welser-Most | Dirigent
Marco Arturo Marelli | Regie und Licht
Marco Arturo Marelli | Buhnenbild
Dagmar Niefind | Kostume

Nina Stemme | Minnie
Tomasz Konieczny | Sheriff Jack Rance
Jonas Kaufmann | Dick Johnson (Ramerrez)
Norbert Ernst | Nick
Paolo Rumetz | Ashby
Boaz Daniel | Sonora
Michael Roider | Trin
Hans Peter Kammerer | Sid
Tae-Joong Yang | Bello
Peter Jelosits | Harry
Carlos Osuna | Joe
Clemens Unterreiner | Happy
Il Hong | Larkens
Jongmin Park | Billy Jackrabbit
Juliette Mars | Wowkle
Alessio Arduini | Jake Wallace
Alessio Arduini | Jose Castro
Wolfram Igor Derntl | Postillion


2013.10.9(水) オーストリア(ウィーン)
自炊、デメル、「アイーダ」ヴェルディー

 本日も昼は自炊。鶏胸肉のソテー、チーズ入りベーコン巻ソーセージ、サラダ、ザウワークラウト。鶏胸肉は最初から最後まで超低温でフライパンで焼いてみたらジューシーでとてもおいしかった。しつこいソーセージもぴったり。

 デザート3日目もかつて皇室御用達だったデメルへ。数年前、NIKIという格安航空会社が有料機内食でデメルを出していたことからその名前を知ったのだが、格安航空会社のイメージがあったので、今日初めてお店に行ってゴージャスさにびっくりしてしまった。


 1階奥のティールームからはガラス張りの壁の向こうに工房が見えるようになっていて、若いパティシエさんたちが作業するのを眺めながらお茶できる。

ショーウィンドーは意外にもキッチュ

宮殿サロン風のショップコーナー

 今日もトリュフルトルテ。ハイナー、ゲルシュトナーに続いて3日連続でトリュフルトルテを食べてみたが、デメルのが一番甘さ控えめでお上品な味だった。がっつりチョコレートを脳髄に叩き込みながら味わいたいならゲルシュトナーかな。んー、いや、こうして並べてみるとどれも甲乙つけがたい。値段はデメルが4.5ユーロと他より1ユーロ高い。やはりもう一度食べ比べてみないとわからないな、これは。

ハイナー

ゲルシュトナー

デメル


今日は「アイーダ」。若者が多かったのは演目のせい?
 本日のオペラはアイーダ。ヴェルディー生誕200年にあたる今年はヴェルディー作品が他の年より多く演じられているようだ。人気作品だからと午後1時からコーヒーショップに陣取って15分おきに行列チェックにいっていたのだが、午後1時45分に誰もいなかったのに午後2時にいきなり20人以上並んでいて、慌てて並んだのだが25番と26番目の発券になってしまった。理由は15人くらいの音楽学生の団体が来た事だった。

 私の前にドイツ人でバリトン歌手をしている男性が並んでいたのだが、彼もこんなに並んでいるとは思わなかったと驚いていた。後ろには昨日、下見に来て色々と事情を聴きまわっていたイスラエル人夫妻が並んだが彼らも昨日の情報ではつかみきれなった団体の出現に興奮気味だった。そこで5人の中では一番経験が多い私たちが、中の状況を説明して、全員で下の階に行くことになった。

 午後5時40分にチケットが発売される。発券されるときらびやかな回廊を通って正面大階段の右脇から1階立ち見席用の列にあらたに並びなおすのだが、学生たちは初めて見るオペラ座の正面サロンの豪華さに目を奪われ、足をとめて上を見上げ天井を指さしカメラを取り出して撮影などを始め出した。

 チャーーーーーーンス!君たち、まだまだ試合は終わっていないのだ!

 ここで立ち止まる学生の脇をすり抜けて15人ごぼう抜きで、今日も立ち見席の最前列を確保する事ができた。2列目でも十分に見えるのだが、発育のいい縦にも横にも大きなこの学生たちに立ちふさがれては見えないと思っていたのだ。事前に色々と話して私たちがここに何度も来ている事を知ったイスラエル人夫妻は、もちろんぴたーっと私たちについてきて最前列を確保。「先生、ありがとうございます!」とイスラエル人旦那は更に興奮して言った。イスラエル人妻は「次はどんなファイティングがあるの?私、蹴るのは得意よ!」と鼻息を荒くして言うのだが、ここから先はもうほぼ順番通りなので焦る必要はない。

 アイーダを最初に見たのはウィーンの夏の間に行われるフィルムフェスティバル。毎晩有名なオペラやクラシックコンサートのDVDが市庁舎前にかかる大きなスクリーンに映し出されて、無料で見られるという素晴らしい催しだ。

 あの時に見たのはどこかの湖畔で行われたアイーダだった。その後、イタリアのヴェローナという街にあるローマ時代のアレーナ(古代劇場跡)で2回。

 つまり、過去3回は広大な野外劇場を舞台にアイーダを見ている。主人公アイーダの恋人であるラダメスがエチオピアとの戦いから凱旋するシーンではメルビッシュでは象、ヴェローナでは本物の馬を使った馬車が登場して、本当の凱旋を見ているかのようなスケールのある演出だった。比べて今日は屋内でのアイーダなので、そこの貧弱さをどうカバーするのかも興味があった。

 ウィーンのオペラ座のステージは中央の一部を下げて舞台を2段のように見せることができる。奥の下の段からスロープで前の上の段に行進を進めることでスケール感を出そうという演出だった。なーるほどねぇ。ちょっと残念だったのは有名な行進の音楽がダン・エッティンガー指揮のもとでテンポが早めだった事だった。もっとゆっくりしたテンポなら狭い行進のシーンにもスケール感が増したのになぁとプチ演出家気分で思った。

 また、アイーダはエチオピアの王女様なのだが今日は初めて黒人歌手でのアイーダを観劇する。物語に即した臨場感と黒人歌手の力量に期待が高まった。容貌に関してはリアリティーが増したのだが、歌手の声量に関しては私が期待した絶叫型ではなく、もっと繊細な歌い方の歌手だった。対するエジプト王女のアムネリス役のオルガ・ボロディナ(ロシア出身)さんは迫力があって、こちらの方にかなり感動した。

 最初に観た野外オペラのアムネリス、アイーダ、ラダメス、アイーダのおとっつあんがど迫力4揃いだったから、どうしてもあれが基準になってしまう。あれ、どこだったんだろう。

Dan Ettinger | Dirigent
Nicolas Joel | Regiekonzept
Carlo Tommasi | Ausstattung
Jan Stripling | Choreographie

Olga Borodina | Amneris
Kristin Lewis | Aida, athiopische Sklavin
Marcello Giordani | Radames, Feldherr
Markus Marquardt | Amonasro, der Vater Aidas, Konig von Athiopien
Janusz Monarcha | Konig
Sorin Coliban | Ramfis
Dimitrios Flemotomos | Bote
Olga Beszmertna | Priesterin


2013.10.10(木) オーストリア(ウィーン)
プラフッタ、「ヴェルディー・ガラ」ヴェルディー

 最終日に「ヴェルディー・ガラ」が来るように予定を調整してここに来たのだが、ここ数日の立ち見チケット行列での聞き込みにより、今日のガラコンサートは有名歌手のアリアの出演は一人もなく全て合唱だということが判明した。ただし、指揮者はイタリア人で人気のあるダニエル・ガッティなので、その部分では人気があるかもれない。

 本当は午後1時からでも並ぼうと意気込んでいたのだが、まぁ2時くらいからでもいいだろうと予測を変更して行動開始。

 今日のお昼ご飯はプラフッタ。牛肉のスープと各部位の煮込み料理の専門店でランプ肉である「ターフェル・シュピッツ」が特に有名なのだが、今日は「タン(舌)」Zungeにしてみた。今日は冷たく強い風が吹いている日だった。こういう日のスープは殊更おいしく感じられる。今日はウェイター達が「スープを注ごうか」「ビールのお代わりはいいのか?」「食べ方はわかるか」「追加のオーダーはないか」とうるさかった。なぜだろうかと考えていたら、開店して一番乗りにお店に入ったものだからレジ前のマネージャーの目の行き届く席になってしまって、マネージャーの目を気にするウェイター達が神経をピリピリさせているからだとわかった。彼らのピリピリした神経が伝わるようなサービスはちょっと痛々しく、こちらも寛げなかった。丁度いい感じのサービスというのは難しい。

 それはさておき、初めて試したタンは臭みも少なくとても柔らかくておいしかった。量は二人で一つをシェアしたのだが、相変わらずそれで十分。これ以上食べると、タンの内臓臭さが鼻についてくるという手前で終了。ビール2つを注文して、余計な物は何も注文しなかったので、二人で40ユーロ程度だった。

スープの入った鍋にZunge(タン)のプレートがはまっている

タルタル、リンゴとホースラディッシュ、スープに入っていた野菜、フライドポテトなどと肉を食べる。

 午後2時に立ち見席販売所に行くと既に3人くらいが待っていたので、私たちもその後ろに並ぶ事にした。しかし、今日は寒い。冷たい風が通路を吹き抜けていく。軟弱な私は10月初旬にしてダウンジャケットにウィンドブレーカーをはおり、ニットキャップでフードをかぶるという重装備。これからの季節、立ち見行列の人はどうやって寒さを耐えて行くのだろうか。私には耐えられない気がした。

 ちなみに常連の皆さんは小さな椅子を持参してお尻が冷えないようにしているのだが、私たちはスーパーから段ボールをもらってきてそれを敷いてしのいだ。

 会場で場所を確保してからコンサートが始まるまで、いつも夕食代わりにシュトゥルーデルと白ワインの発泡水割を注文している。いつも同じ白雪姫顔の店員さんにお願いしていたのだが、昨日から「あなたたちの事、覚えたわ!」と言われるようになったが、今日で終了だ。軽食を終えると館内を一巡して正面の大階段で記念撮影して、あとは観客としてきている人のファッションチェックなどをして時間を過ごしている。ウィーンのオペラ座は上流階級の社交場として始まっていて、今でもその名残があると思われる。週末には貴族風な人たちが着飾って挨拶しあう姿が平日よりも多い気がするし、バレエよりはオペラにそういう人たちが多かった。今日は平日でオペラではないので、純粋に音楽好きな人と観光客が多い日だった。観客の見物なら土曜日のオペラが面白い。

 コンサートは、事前の情報通りにソロで歌うアリアは一曲もなく、ヴェルディ作曲のオペラで使われている楽曲と合唱の曲ばかりを集めたコンサートだった。

 そんなので楽しめるのだろうかと思ったのだが、聞き覚えのある曲も多く、さすがヴェルディの曲は有名だし、いい曲が多いと再認識した。

 指揮者のダニエル・ガッティ氏の解釈もいい感じだったと思う。一番顕著だったのは、昨日も観たアイーダの凱旋行進曲。あのシーンはやはり今日のガッティ氏くらいゆっくりと演奏してくれるといい。ガッティ氏の優雅な指揮姿も良かった。

 演奏された曲を以下に挙げるが、タイトルだけ見ても有名なオペラがたくさんある。ヴェルディ、もっと知るべき事がたくさんあるなぁ。

GIUSEPPE VERDI:

aus Luisa Miller
Sinfonia

aus I Lombardi alla prima crociata
Gerusalem...
O Signore, dal tetto natio

aus Macbeth
Ballabili
Patria oppressa!

aus Don Carlo
Spuntato ecco il di desultanza

aus Nabucco
Sinfonia
Gli arredi festivi...
Va', pensiero

aus I vespri siciliani
Sinfonia

aus Otello
Danze

aus Aida
Gloria all' Egitto


2013.10.11(金) オーストリア(ウィーン)→イタリア(ミラノ)
自炊、ライアン遅延で空港泊

 今日はミラノに帰る日。午後8時20分にスロヴァキアのブラチスラバを出発して午後9時45分にベルガモ到着。遅くはなるが、公共の交通機関を使って午前様にならずにミラノのアパートに戻れる予定だった。

 朝のうちにスーパーで昼食の買い物を済ませ、午前11時にチェックアウト。地下のストレージに荷物を預けてキッチンでゆっくりと自炊してゆっくりとランチ。

 スーパーではシュトゥルムSturmを見つけたが、今からじゃ1.5リットルも飲めないから残念ながら断念した。

 シュトゥルムはブドウをワイン用に仕込んで発酵している途中のお酒。白と赤があるがいずれも濁っていて、発泡していて、アルコール度数も4%くらいある飲み物だ。ブドウの甘さのある発泡ジュースのようで口当たりがよく、どんどん飲んでしまううちに嵐のように頭がぐらぐらしてしまう事からシュトゥルム(嵐)と名付けられたと聞いた。

 今の時期はスーパーにも並んでいるが、発酵しているからペットボトルからじくじくと汁があふれて容器がベタベタになっているのが特徴だ。季節ものだからナッシュマルクトのレストランではグラス1杯4ユーロなどで出すが、スーパーでは1.5リットルで4ユーロ。ああ、飲みたかったなぁ。

 シュトゥルムの代わりに飲み物はビール。ソーセージは細くて茶色いフランクフルト、白くて太いヴァイスブルスト、白くて小さめのニュルンベルガーの3種、付け合わせはザウワークラウトとたまねぎ。

 フランクフルトは皮がパキッとして日本でも人気のソーセージだが、中は細かいミンチで日本のように荒挽きではない。

 ヴァイスブルストは子仔牛肉と豚肉ベーコンのソーセージでプリプリとしてハンペンやかまぼこのようなソーセージ。どうしてこんなに柔らかくてプリプリしているのか調べたら、どうやら製造過程で氷をミンチに混ぜ込んでエマルジョン化させているからみたいだ。それは難しいだろうなぁ。

 ニュルンベルガーは荒引き肉でレモンやハーブが練りこんである。他のソーセージに比べると肉比率が95%などと高いのが特徴で一番肉っぽい味がする。

 あー、どれもそれぞれにおいしくて素敵だった。

 ゆっくりとお昼ご飯を食べてスロヴァキアの空港に到着すると、大雨がやんで素晴らしい夕焼けになっていた。余裕で空港入りして待合ロビーで待っている間に免税ショップでスロヴァキア産の薬草種を見つけたので買って飲んだりしているうちに、いい感じに時間が過ぎていった。

空港到着時の素晴らしい夕日

免税店で買った薬草種

 ところが、あと30分で離陸という時になってざわざわと人が騒ぎ始めた。誰かが英語で「出発時間が午後11時に変更になったらしい」と教えてくれた。出発情報の掲示板を見に行ったら本当に午後11時になっている。

 ガビーン!

 これではベルガモに到着してもそこからミラノ市内へ帰るのにタクシーしかない時間だ。こりゃぁベルガモ空港に一泊するしかないな。この時点でそういう事に決定。

 ベルガモ空港ではちゃんと寝られるかわからないので、とりあえず仮眠をとっておこうとすぐに仮眠。午後10時近くにお腹がすいてきたのでバーでビールを飲みながら何か食べようかと考えていたら、航空会社のライアンエアーからサンドイッチ、スナック、お水の支給があり空腹が満たされた。

 格安航空会社なのでそういう手当は一切ないのかと思っていたが、遅延によるミールを出すんだなぁ。ポイントを抑えているライアンエアーに感心した。

 結局、離陸は午後11時35分と3時間15分遅れ。イタリアのベルガモ空港に到着したのは午前1時をまわっていた。

 薄暗い空港にわれわれの飛行機の乗客だけが放り出されるイメージだったのに、到着ロビーには煌煌と明かりがともり、早朝便に備えて前日から空港入りしている乗客で椅子は全て埋め尽くされ、テナントの内装変更や清掃サービスの車が行きかい、果てはトンテンカンとかバリバリバリバリと工事の音が響き渡って、昼間のごとく騒がしい事になっていた。

 椅子どころかロビーの両脇の壁面も宿泊組が大勢いて、私たちはようやく金の自動販売機の前に場所を確保する事ができた。世界一周中のインドでもエジプトでもアフリカでも床に寝た事はなかったのに、先進国イタリアで床に寝ることになるとは!人生とは予期せぬ驚きに満ちている。

 幸か不幸かこの5日間、ウィーンで立ち見席確保のために道に座り続けていた。床に眠るのにあまり抵抗がなかったのはこの5日間の後だったからかもしれない。とうことで、就寝。


2013.10.12(土) イタリア(ミラノ)
朝帰り、市場、家族とランチ

 ベルガモ空港は朝4時過ぎから始発便への人の移動が始まり、ようやく空いた椅子に移動してもうひと眠りしたが、朝6時にはもうざわついて寝ている状況ではなくなった。朝ごはんを食べていると、ミラノ市内へのシャトル便も動き始めたのでさっさとミラノに帰ることにした。

 朝7時過ぎのドゥオーモ近辺は土曜日ということもあり、まだ夜の続きの夢の中のように静まり返っていて、ベルガモ空港とは大違いだった。

 アパートに戻ってシャワーを浴びると、あまり眠気もなくなったので土曜日恒例の市場へでかける事にした。でがけに留学先から歯医者のために戻ってきている家主の息子と我々と家主の4人で、家でランチする事になり、午後1時までに家に戻ってきてくれと言われた。おお、いきなり忙しい。

 市ではウィーンに行く前から探していたトレンチショートコートがマックス・マーラで見つかり、旦那もZARA MANのパーカーとSisleyのタートルネックの厚手のセーターなどがみつかった。

 10月のミラノが予想以上に寒くて、市でこうした暖かいセーターなどが見つかって本当に助かった。

 午後1時には帰宅しなければならないので、今日は大急ぎで全体を見て帰る事にした。一緒にお昼ご飯を食べるにあたって、てぶらというのも申し訳ないので、チーマという菜の花のような野菜のお浸しでも作ろうと、家に戻って湯を沸かしていたら、家の人たちが食材を市場で買って大荷物で戻ってきた。

 今日のメニューはプーリア州のチーマとアンチョビとトウガラシのオレキエッテだそうだ。私たちが偶然にもチーマを茹でていたら、じゃぁそれを使っちゃいましょうってな事になり、チーマを茹でている鍋にオレキエッテも投入し、別のフライパンにオイルとトウガラシとアンチョビとにんにくを放り込んで弱火でソースを作って、茹であがったパスタと野菜を投入して強火で水気を飛ばしたらもうパスタが一品できてしまった。

 早い。うちの大家さんはとにかく仕事が早い。

 真空パックで半生タイプのオレキエッテはとてもおいしくて息子も含め我々もあっという間に食べてしまった。

 次に馬の横隔膜のステーキ。市場で買えるそうで、馬はプーリアの地元料理だそうだ。メキシコで牛の横隔膜であるアラチェラは何度も食べた事があるが、馬は初めて食べた。

 焼き加減はレアで柔らかくて臭みが全くなく、内臓というよりは肉の感覚でとてもおいしかった。

 これもあっという間になくなり、サルシッシャ(イタリアンソーセージ)も食べようという事になり、焼いて出してくれたのだが、これは表面から1mmくらいしか火が通っていない本当にレアで出された。サルシッシャもこんな生で食べるとは思っていなかったので非常に驚いた。最も、このサルシッシャは豚肉ではなく牛肉のだったかもしれない。

 パスタにせよ、お肉にせよ、素早くおいしい火加減でどんどん出してくれる。いつもは大家さんとイタリア語でかなりトンチンカンな会話になっているが、今日は息子さんが英語で話せるので大分ちゃんとした会話も成り立って、それもあって食欲に拍車がかかってしまった。

 気づいたら4人とも超満腹。大家さんも「こんなに大きな食事になるとは思ってもいなかったわ」と笑ってしまうくらいによく食べて、よくしゃべった。本当のイタリアンママの料理を見せてもらえて、私としてはそれも大変に素晴らしい経験になった。

 食後は消化を兼ねて街へ繰り出して、あちらこちらをほっつき歩いた。帰ってきたの陽が落ちてから。帰宅途中に水たまりに映し出された遺跡の夜景が美しく、夜もまたいいものだと思えるミラノだった。











2013.10.13(日) イタリア(ミラノ)
日曜日の過ごし方

 この家に来て初めて過ごす日曜日。

 大家さんは午後1時からお友達を招いて昼食会をするそうで、私たちも誘ってもらったのだが、既に食材を買ってしまった後だったので、今回は遠慮した。

 私たちは11時くらいから準備して午後1時を少しまわった頃に食事を終了。その頃にはもうお友達が来て大家さんが調理を始めたので、キッチン・ダイニングはにわかに忙しくなった。

 大家さんは塩・コショウした子牛の薄切り肉にパセリとパルミジャーノ・レッジャーノを入れて包み、パンツェッタを十字がけにしている。聞いたら「ボンベレッタ」という料理だそうで、これをフライパンで焼いて食べるそうだ。

 大家さんの出身地の伝統料理なのかと思ったら、息子さんがネットで見ておいしそうだから大家さんにレシピを紹介して作ってくれと頼んだのだそうだ。

 私たちが夜焼いて食べられるようにいくつか残しておいてくれて食べたのだが、コンビネーションがいいからとてもおいしかった。

 午後からは街に出てしまったのだが、大家さんは友達を招いて昼食会をして2-3時間を過ごし、少し休憩してから今度は別の友達との約束ででかけて、夜遅くに帰ってきた。

 私が日本で働いた時は日曜日の夕方からでかける気分にはなれなかった。翌日からの仕事に備えて体力を蓄えるのが日曜日の午後からの過ごし方だったからだ。しかしここでは日曜日はゆっくりと起きて、お昼から友達と会ったりして夜までみっちりと遊ぶ。そうやって精神的に充電して翌週への活力を養うようだ。


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