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11月:1
2012.07.02(月) フィレンツェ(イタリア)
体に悪そうな美味しい物、そしてウォーキング。

 昼食はフォアグラ、ボッタルガ(からすみ)、サラダとサン・ジミニャーノのヴェルナッチャという濃厚な白ワイン。寝かせるとおいしくなるブドウだというエノテカのアドヴァイスを受けてリゼルバを買っていた。フォアグラは頂き物でフェンネルシードみたいな味がすると思っていたのだが入っていない。カルヴァドスとポルトが入っていて、その香りが甘く感じられるのだろうか?フォアグラだけで食べるのでは感じない、この独特の味がヴェルナッチャのハチミツのような味わいとぐっとマッチしていた。

 ボッタルガは薄切りをルッコラと共に海苔に巻いてオリーブオイルをかけて食べたのだが、ルッコラのゴマのような香ばしい風味と海苔、ねっとりとしたボッタルガのコクが絶妙なハーモニー。家でしかできない贅沢な味わいだった。

 ああ、もうやばい。体に絶対に悪い。おいしいと感じると共に血管が詰まって行くような恐怖に押し出されるかのように、ウォーキングの準備をして照りつけるフィレンツェの街に繰り出したのだった。

 2時間半、灼熱の太陽のもと(木陰もかなりあるけど)を歩くとアルコールも抜けて気分は爽快になってきた。そのままスーパーで買い物を済ませてからアパートに戻ってシャワーを浴びて、サラダで夕食。

 今夜はボッカチオ'70のフェデリコ・フェリーニ監督が担当した「誘惑」とルキノ・ヴィスコンティ監督の「前金」を観賞。

 ボッカチオ'70はデカメロンという100話の話が出てくる小説を書いたボッカチオが1960年代にいたらこんな作品を作ったんじゃないかという発想のもと、当時の4大イタリア映画監督による4つの話が入っているオムニバス形式の映画。うち3人はフェリーニ(「道」など)、ヴィスコンティ(「ヴェニスに死す」など)、シーカ(「自転車泥棒」など)という超豪華メンバーだ。

 話はユーモアに満ちた「なんじゃそりゃ」という感じなんだけど、フェリーニとヴィスコンティの手にかかるとそれぞれがフェリーニ風、ヴィスコンティ風になっている。フェリーニの作品は、常軌を逸した性格の主人公がどなりちらす背景で、美しい赤い衣の神父たちが歩き、白いデザイナーズ風衣装の修道女たちが登場し、シルクのパンツ一丁で踊るダンサー達が美しい。狂気なのか芸術なのかのせめぎあいみたいなのを感じる。しかし、語られているのは普遍的に人間に存在する欲望と理性の葛藤なのだから驚くんだなぁ。ヴィスコンティでも話は常軌を逸しているのだが、貴族の普通生活が垣間見られるのが面白い。やっぱり、このあたりの監督さんはただものではない。


2012.07.03(火) フィレンツェ(イタリア)
カッシーネ最終戦にて大掘り出し物

 今日はフィレンツェ滞在中最後の火曜日となる。

 毎回足を運んだカッシーネ公園の火曜市に挑む最後の日となった。

 朝8時。今までよりも早くアパートを出て市に向かった。晴天にそびえるドゥオーモは朝日をうけて堂々と美しい。このドゥオーモの脇を通り抜け、リップブリカ広場を抜けて、アパートを出てから45分、カッシーネ公園に到着する。

 市はいったい何時から開催されているのかわからないが、既に戦利品を袋に詰めて帰宅する女性の姿も見られた。

 今日は夫のシャツに的を絞って探すことにした。男性物は女性物に比べると圧倒的に店舗数が少ないし、売り出されているシャツはどういうわけかサイズが非常に大きいものばかりだったが、一枚8ユーロで販売している3店舗くらいでいいシャツを見つけることができた。男性シャツでよくみかけるブランドはHugo Boss、Polo、Tommy Hilfigerなど。先週はEtroも数枚みつけたが、全てサイズが大きすぎた。結局、有名ブランドとしてはバナナ・リパブリックから1枚、あとは無名ブランドから4枚の計6枚を4店舗から購入した。

 無名ブランドとはいえ、細かくプリーツの入った白いドレスシャツやレンガ色のシャツなどプロパーの値段なら買う気も起こらない品物にチャレンジできるのが嬉しい。

 最初の店で3枚買ったのだが、売り子の兄ちゃんは「二枚で15ユーロ、それにもう一枚8ユーロだから24ユーロだ!」って、割引1ユーロが元に戻ってるじゃないか。「え?23ユーロでしょ?」って聞きなおしたら、ボスに確認して「あんた、日本人かい?頭いいねぇ」とお釣りを返してくれた。そして「この1ユーロでカフェ飲んだら俺の事を思い出してくれよ」って3回くらい言っていた。3回目でやっと意味がわかったんだけどね。

 そういえば、ここの市はローカルが多いせいか誰もが平気で私にイタリア語で話しかけてくる。すぐに英語に切り替える人が大半だが、それでも向かいで洋服を漁ってるおばちゃんに「ちょっとあんた、そこのグリーンのワンピース、こっちに投げて!」と言われたり、フィッティングルーム代わりになっているトラックに別の人が入ってきたときに「まだ私の試着品あるけど、そのままにしておいていい?」などというイタリア語は必要になってきて、ちょいちょいイタリア語の勉強になるのも楽しかった。

 今日は夫のシャツ探しといいつつも、男性物と女性物が混在している店ではついつい女性物にも目が行ってしまう。実は夫のシャツ購入の合間合間に私もかなりの戦利品を得ていた。今日は最初の店でStreet Oneというフィレンツェではみかけるブランドの可愛い色合いの刺繍が入ったシャツ3ユーロ、同じ店でマックス・マーラのノースリーブ綿ブラウス3ユーロ、別の店でOVSというイタリアのユニクロのような店のブランド名が入ったシャツ1ユーロ。

 既に今回の市ではジャケットが入ってきて秋の雰囲気を出している。そういえばジル・サンダーのコットン・ジャケットもあったなぁ。本物だろうか?

 そしてある店で夫がシャツを探していると、黒いシルクシャンタンのマックスマーラのワンピースが手に当たったのだそうだ。おお、マックス・マーラでシルクでワンピースが5ユーロねぇ。試着したら胸周りがややきつけど入らないことはない。ええい、買っちゃえ。ということでこの店では夫のシャツ4ユーロとで合わせて9ユーロ払ったのだった。

 しかし、これって本物のマックス・マーラなんだろうかとインターネットで調べたら、楽天のある店で取り扱っているのが見つかり、日本での初期価格は142,800円。もっとも楽天のこの店では38,000円になっていて、「完売」の表示が出ていたけれど、それでも5ユーロよりはずうっと高い。

 家であらためて着てみると、その光沢、ドレープの美しさに本物を実感した。私は別にブランド好きでは全くないが、今回の体験でブランド品の良さを知る事ができた。

 もう今日はお腹いっぱいだ。そう思っていたが最後にのぞいた店でまたもやSisleyの巻きスカート1ユーロを発見してしまった。

 こうして夫はシャツ6枚(40ユーロ)、私はシャツ3枚(7ユーロ)、ワンピース1枚(5ユーロ)、スカート1枚(1ユーロ)を購入してしめて53ユーロ。最後の最後までカッシーネを満喫する事ができた。

 朝8時半から12時半までびっちり4時間服を見続けてお腹がペコペコ。こうなることを予想して、昼はサンタン・ブロージョ市場近くにあるIl Pizzaiuoloイル・ピッツァイウォーロでピザをテイクアウト、家でビールと一緒に食べる計画でビールを買っておいた。

 家まで徒歩5分。帰ってから食べるまで5分。焼きあがってから10分経過してから食べることになった。やっぱりお店で焼き立てを食べるおいしさにはかなわないけれど、好きな種類のビールを安く飲めるし(スーパーで買っているから)追加でルッコラつけたりできるし、この気ままな感じもいい。


 午後からは疲れていたし、暑すぎて外に出る気にならなかったのでゆっくりと部屋内で過した。夕方になってジェラートを食べつつCoopに買物に行き、夕飯時になってもちっともお腹がすかなかったのでパルミジャーノ・レッジャーノの薄切りをつまみにヴェルナッチャというブドウの白ワインで済ませた。

 夜はボッカチオ'70の最後のエピソード、シーカ監督による「くじ引き」を観賞。主役は若きソフィア・ローレン。ソフィア・ローレンって若い時から肝っ玉母さんみたいなキャラだったんだなぁ。あんなに巨乳でウエストが細くてセクシーなのに、肝っ玉母さん的性格。これがイタリア男の心をわしづかみにする理想の女性像なんだろうか。今回のフィレンツェ滞在で出会ったイタリア人独身男性を心に思い描くと「ああ、そうかもしれない」と思わず頬が緩んできてしまう。ということで、グラッパとアマロも少し飲んでほろ酔いで就寝。


2012.07.04(水) フィレンツェ(イタリア)
戦利品をまとって町を歩く

 昼食はボンゴレ・ビアンコ。

 ムール貝(1kg3〜4ユーロ)に比べるとボンゴレ(あさり、1kg10〜12ユーロ)は高級品。なかなか手が出ない。しかも、こちらは一袋1.5kgくらいあるのを買わなきゃならないときているから、困ったものだ。

 ところがスーパーで400g入り真空パックを見つけた。単価は1kg16ユーロと更に割高だが少量で買えるからいい。このボンゴレを使ってスパゲッティーを作った。

 残っていたアンチョビも加えて更に旨みを強化。久しぶりのあさりはおいしいね。

 今日も強烈にひざしが強い。しかし、昨日買った洋服を着てフィレンツェの街を歩いてみたいじゃないか。ということで、昨日買った戦利品をまとって散策。夫のシャツ8ユーロ、妻のシャツ3ユーロ、スカート1ユーロ、妻の笑顔、プライスレス。お金で買えない価値がある・・・。途中からマスターカードのキャッチコピー。

 いくつかの洋服店をのぞいたら、Sisleyは既に冬物が入りつつあり、去年の冬ものや今年の夏物は密かにバーゲン価格になっていた。男性のラムウールのニットジャケット130ユーロがいい。次はこれを狙うかと妙にハンター目線になりながら店を出た。

 今日のジェラートはこってり系のデイ・ネリでしかも3種盛りの2.5ユーロ。私のは左からマンゴー、チョコ、ピスタチオ。どれもくっきりと素材の味が濃くておいしかった。

 外周の外にあるCOOPで買物を済ませてアパートに戻ったら、もうぐったり。夜はサラダとスイカで済ませ、グラッパとアマロを飲みながらヴィットリオ・デ・シーカ監督の「靴みがき」を観賞した。かなりやるせない作品だったが、その分心に迫った。これもイタリア語映画でイタリア語字幕なので大筋しかわかっていないけれど心に残る。コミュニケーションにおいて言語の占める割合は思っている以上に少ないみたいだ。


2012.07.05(木) フィレンツェ(イタリア)
最大重量の荷物を持っていよいよ移動

 楽しかったフィレンツェ生活も本日にて終了だ。

 カッシーネの市で毎週火曜日に買っていた洋服は予想通りものすごい量になっていて、スースケースからはみ出さざるをえなくなった。また、これからのキャンプ生活にも使える生活グッズは持って行くことになり、これでまた手提げが1つ増えた。とういことで、私だけの担当分でカバン4つとショルダーバッグ1の計5つ。夫もスーツケース1つに手提げ3つとショルダーバッグでやはり計5つ。どうみても、既に旅行の移動とうよりは軽い移住の雰囲気を出している。

 今日は夜行便でフィレンツェからニースに向かう事にしていた。Eurolinesがヨーロッパ内を動くには一番安いと思われる(一人58ユーロ+ネット手数料10ユーロで68ユーロ)。安い上に持ち込み荷物に特に制限がないらしいのが、今回の私達には好都合だった。

 荷物を超過料金なしに運べそうなのはいいが、夜出発して夜中3時15分に到着し、バス到着場所から空港まで移動して朝8時まで空港で仮眠という行程を、盗難などの事故なしに乗りきらなくてはならない。旅始まって以来の最大重量の荷物を抱えての移動に、久しぶりに緊張が走っていた。

 まず、第一関門は歴史あるこのエレベーターのない建物の5階から荷物を下ろす事だった。二人分の荷物を3往復で下におろしたのだが、日頃歩いているせいか足はなんともないのだが、肩と腰の筋肉がヒーヒーと悲鳴をあげている。これは筋肉痛になるな。

 次にアパートからatafという市バス(チケットは事前に近所のキオスクなどで購入。1.2ユーロ)でサンタ・マリア・ノヴェッラ駅近くにあるSITAのバスターミナルまで行った。これで第二関門通過。公共のバスなので荷物が多すぎると乗車拒否を受けたらどうしようかと思っていたのだ。なるべく多荷物に見えないように素早くスマートに乗りこんだのがよかったのかもしれない。しかし、このスマートさを演出するために激しく筋肉を使った。

 さて、ターミナルのベンチで夜9時半の出発を待っていたら、午後9時前になってバスターミナルは夜間は閉鎖するために出て行ってほしいと言われた。同じバスを待つ人たちは「何だ、何だ」と外に出されることになった。夜間はユーロラインはバスターミナル前で客の乗降を行うのだそうだ。バスが午後9時に来てわかったのだが、最終目的地はフランスのトゥールーズで途中、ニース、マルセイユなどに停車するようなのだ。

 マルセイユがハブターミナルになっているようで、マルセイユ乗り換えでスペインに行くスペイン人、学生で遊びにきていたらしいフランス人、遊びに行くらしいイタリア人に混じって私達がいる。中にはここでお別れするカップルがいて、彼女はバスの外で号泣していた。移動の場は常にドラマチックで旅を感じる。


 乗車作業はとても時間がかかった。各乗客のチケットを運転手の手元にあるリストと照合してストレージに預ける荷物の数をいうと、預ける荷物の1つ1つに番号付きのシールをつけてその半券をチケットに張って返してくれるという作業をしているのだ。

 以前にドイツのデュッセルドルフからベルギーのブリュッセルに乗った時はこんな厳重な荷物管理はなかった。やっぱりラテン系は気を許せないものがあると思った。

 一番最後に乗車となった私達。バスはほぼ満席で最後尾から2列目の左右に一席ずつ空いているのみだった。バラバラに座ろうとしたらアラブ系の男性が席を移動してくれて私達が並んで座れるようにしてくれた。アラブ系の男性達は最後部の2列を占拠してゆったり座ろうと思っていた5人組だった。突然のアジア人にとまどいを感じながらも、出稼ぎのような私達に同情を寄せてか席を譲ってくれたり、なぜかクッキーを振る舞ってくれたりとなかなか親切だった。

 出発して1時間後くらいにピサに到着して客を拾ってから午前2時にドライブインに立ち寄るまではノンストップ。ここで睡眠をとる事ができた。それにしても、調味料などの入った手提げ袋を膝の上に置いているのがだんだんと辛くなる。午前2時までの間にうつらうつらしながら「江戸時代の拷問に正座させて石を乗せるというのがあったなぁ」という妄想が何度も頭の中をよぎった。


2012.07.06(金) ニース(フランス)
怒涛のキャンプ初日

 どうにか苦痛に耐えながらも午前4時半にニース到着。我々の他には男性2名の客が降りてバスは更にマルセイユに向かって走り去ってしまった。降ろされた場所は空港第一ターミナルまで800mくらいの地点。地方のバス停みたいに小さな屋根のついた3人掛けのベンチがあるだけの停留所だった。他の男性二人はモバイルで誰かと連絡を取りながらいずこかへ歩いて去っていった。さて、私達は、一体どうやって空港まで行くのかというのが次の関門だった。

 すると、バス停の横に立て看板があり朝4時半始発で空港ターミナル1と2と周辺の駐車場やこの国際バス停留所をループする無料シャトルバスがあると書いてある。ふー、よかった、よかった。

 幸いにもバス到着が1時間以上遅れたために、5分と待たずに無料シャトルバスがやってきて簡単に空港第一ターミナルに向かう事ができたのだった。

 これから午前8時に車のリースを予約しているプジョーに電話連絡して、ピックアップしてもらい、車を受け取ると言う作業が待っている。


 それまでの3時間くらいはとりあえずターミナルの椅子で仮眠をとることにした。

 全ての荷物に自転車ワイヤーを通してひとまとめにした。この方法で盗まれたことは今までにない。

 各椅子に肘掛がついているのにどうやって眠れるのか?先に眠っていらっしゃる先輩を監察すると肘かけを腹に抱き込むように「く」の時になればいいとわかり、さっそく先輩の真似をしてみると、途端に睡魔が襲ってきてぐっすりと寝込んでしまった。

 朝7時、さわやかな朝日の中、タクシーやバスで普通に空港に到着したバカンス客は、労働移民者のような私たちをみてちょっと驚いたかもしれない。私もあまりに自分と違う爽やかな観光客を見て思い出した。「ここは、ニースだった」。

 空港では1つ別件の用事があり、探ってみるとターミナル2に行かなくてはならないようなので無料シャトルバスでターミナル2へ移動したのが午前7時半。朝早すぎて用事は明日送りになったので、今度はプジョーに電話だ、電話だと公衆電話を探し始めた。

 昨今では空港を利用する人の大半がモバイルフォンやスマートフォンを持っていて公衆電話の利用が減っているせいか、公衆電話はテレフォンカードかCBという所が発行したクレジットカードしか受け付けないものばかりで、唯一コインでかけられる公衆電話は壊れていた。約束の午前8時がせまっているのにプジョーに連絡できない。

 困ってインフォメーションに行き、かくかくしかじかと事情を話したら近場への電話ならかけてあげましょうと、インフォメーションの電話を使ってプジョーに電話をかけてくれた。かくして、無事にプジョーと連絡が取れてすぐに係員がインフォメーションまで迎えにきてくれたのだった。

 アイテム君は若くてエネルギッシュで超おしゃべりの可愛い青年だった。

 「アイテムって名前はチュニジ系の名前なんだ。英語のアイテムはIから始まるけど僕のはHね。ああ、でも自分はヨーロッパ生まれでフランスとドイツに住んだことがあって、アラビア語と英語を合わせると4カ国語は話せるってことになるんだけどね・・・」

 アイテム君のおしゃべりと快活な歩きについて行っていたら、夫が後ろで行方不明になっていることに気付いた。実は荷物を入れ過ぎたスーツケースの車輪がついに壊れて回らなくなって往生していたのだ。

 アイテム君がカートを用意してくれて、ようやくスムーズに動き回ることができた。

 今回利用するのはプジョーのオープンヨーロッパという新車リースのサービスだ。フランスのプジョー、ルノー、シトロエンの3社はEU圏外の国籍を持ち、EU圏外に居住の人を対象に最低3週間以上の期間で新車をリースするサービスを行っている。借りる側にとっては税金優遇で安く新車を使え、料金には保険も入っていて傷つけても追加料金がいらず、新車のオーナーとはいえ返却時に売却先の心配なくレンタル感覚で使えるのがメリット。自動車メーカーとしては外国人に自社の車の良さを有料で試乗してもらえて、中古車市場にいい状態の中古車を供給できることなどがメリットだろうな。今回のリース価格は1日あたり23ユーロ強。通常のレンタカーよりもずっと安いし新車なのが嬉しい。

 3社とも同じような車を出しているので同種で見積もりを出してもらったら、今年はプジョーが一番安かったので決めた。去年は同じくニース発でルノーを利用している。

 車の受け渡し方法についてはルノーの方が好きだ。理由は2つ。1つはルノーは連絡先電話番号にフリーダイヤルを設置してくれているので、今回のような電話探しの苦労がないこと。もう1つはルノーの方が荷物を持って歩く距離が短い事だ。ルノーのオフィスは空港の外、車で5分ほどの場所にある。だから連絡すると車で迎えに来てくれて、オフィスで車の受け渡し手続きをして目の前にある新車に乗りこむ。ところがプジョーはオフィスがターミナル1の向かいに入っていて、車は同じ建物内の上の階の駐車場にあるので、私達は荷物を持って車まで移動しなければならないのだ。車入手までの時間を考えたらプジョーの方が早いが、荷物が多い私達には歩く歩数が少ない方が好都合だった。

 そんな私の頭の中はよそに、アイテム君は書類手続き、主要な車の操作方法の説明、現在地の説明を終えていた。せっかくなので記念撮影を撮ろうというと、「じゃぁ、僕も撮りたい!」と自分のスマートフォンでも撮影していて、何だかお友達みたいで面白かった。

 こうして無事に車を受け取り、まっさきに向かった先はニース北部にある大型ショッピングコンプレックス。

 今日からキャンプ生活!といったところで、まだテントさえもないのだ。これから一切合財を購入してキャンプ場に向かってテント設営というところまでぶっ通さなくてはならない。

 午前9時半前にショッピングコンプレックスに到着。

 ここにあるカルフールという大型スーパーでまずは食器、電器コンロ、鍋類、皿、コップ、皿洗いスポンジ、皿拭き用布など生活必需品を購入した。

 ここのカルフール、昨年来た時よりも売り場面積が増えて、カルフールの中でも最大規模を誇るカルフール・プラネットというランクに昇格していた。生鮮食品売り場は個別の店が並んでいるようなマルシェの構えの部分もあり、市場が入りこんだような雰囲気を出していた。フランスの流通業界はものすごく進歩している。

 カルフールでの買い物を済ませて一度車に戻り、車内でカルフールで買ったニース風ピザとパン・オ・ショコラで昼食。車で次の買い物先のデカスロンに移動した。

 世界的な常識として、「車を離れる際には車内の見える所には何一つ置かない。そうしないと車上あらしにあう。」というのがある。大きなハッチバックがあるとはいえ、そもそも多荷物な上に鍋釜を入れたらどうしてもリュック3つがはみだしてしまった。仕方なく、リュック3つを背負ったり抱えたりしてデカスロンの店内に入った。

 デカスロンはフランスのアウトドアメーカーかつ小売のチェーン店だ。ここで、テント、テントの下敷き、中敷き、日よけ、テーブル、椅子、寝る時のくるくるマットを購入。

 昨日、バスの中で作成した買物リストで手に入らなかったのは包丁のみとなった。ま、とりあえず手持ちのナイフでしのげるので今日はここまでとして、いきつけのキャンプ場に向かった。

 キャンプ場到着、午後2時半。なかなかいいペースで事が運んでいる。

 受け付けは午後4時からしか開かないが、先にテントを設置していてもいいとキャンプ場の男性が場所を与えてくれたので、さっそくテント設置にとりかかる。

 同じテントをもう何度も買っているので手順は迷いがない。職人のようにもくもくとテントを立てて荷物を運びこんで生活の準備をしていたら、受付の女性が私達のテントまで来てあと5分でフロントを開けるからとわざわざ知らせにきてくれた。あっという間に午後4時になっていたようだ。

 フロントで宿泊費を支払って、ようやく昨日の夜からの緊張を解く事ができた。いやー、長い移動作業だった。

 さっそくプールにざぶんとつかって、温まったプールサイドのタイルの上に寝そべったら猛烈な睡魔が襲ってきた。ここで夜明かしするわけにはいかないと、シャワーを浴びて夕飯。久しぶりにボルドーを買って、うまいうまいと飲んでいたら酔いが回って、疲れも手伝って二人とも早い時間に就寝となった。


2012.07.07(土) ニース(フランス)
雑用いろいろ

 キャンプ生活に必要な道具であと1つ揃っていないのが包丁だった。カルフールにも包丁はもちろんあるのだが、安いものになるとグリップと刃が直線になっている、あるいは刃の出っ張りが少ない。肉を切る文化なら問題ないが、野菜を細かく切る作業になると使いづらいのだ。

 そこで、包丁だけはニース市内の駅の北側にある中華系食材店に買いに行かざるを得なくなった。

 キャンプ場から車で無料駐車場へ。そこから1ユーロのバスに乗って市内に入れるのだが、その前に1つ空港に立ち寄ってやるべき事があった。

 実はネット上でフライト予約をしたのだが、誤って予定より一ヵ月前の日付けのフライトを買っちゃったのだ。幸いにもニース空港内にカウンターを構えている航空会社だったので変更してもらえた。ただし、予約変更手数料一人100ユーロ。アホな間違いの代金は高かった。

 用事を済ませて、あらためて空港前の道路から運賃1ユーロのバスに乗って市内に向かった。海沿いに走るプロムナード・デザングレには土曜日とあって観光客に交じって、走ったり自転車に乗ったりする地元民の姿も多く見られて賑やかだった。


 せっかくだから、ニースで活躍する日本人シェフ松嶋さんがお勧めする(彼のブログ内で)下町のレストランに行こうと訪ねたのだが、土日は休みで閉まっていた。コンビニのサンドイッチでは味気ないので「ソッカ」でも食べようと下町の奥深くに潜入していった。一番奥の方にいつも行列ができているソッカ屋がある事を思い出したのだ。

 ソッカとはひよこ豆をすりつぶしたペーストを鉄板にしきつめて厚めのクレープ状にしたニース名物。ほんのりとした豆の味がおいしい。行列のソッカ屋に行きつく前に別の行列の店に当たったので、ほうれん草のキッシュとソッカと水で手軽なランチをした。

カラフルな建物が並ぶ旧市街

曲がりくねった細い道沿いに店が並んで楽しい裏通り

ソッカと奥にキッシュ。

行列ができているソッカの店はいくつかある

 ランチの後、目的の中華食材店に到着したら正午から14時半まではシエスタ休憩。そうだった。以前もシエスタでよそで時間つぶしてきたのだった。今回はシエスタがあることは思い出せたが午後2時からシエスタだと勘違いしていたのだ。

 お店が開くまでの1時間、周囲をぶらついていたら3つ発見があった。

 1つはPlanet Sushiというチェーン店らしい寿司屋との出会い。

 店内はピンク色がアクセントの内装でポップな雰囲気は寿司屋というよりキャンディーショップみたいだ。メニューは巻物が多くて、海苔だけでなく、ハーブ、薄焼き卵、裏巻き、アボガドとエビ巻き、ラディッキオ(紫チコリのような野菜)巻き、ライスペーパー巻きと外側の色ごとにメニューを展開して、テイクアウト用にボックスに詰められた様子はマカロンかと思うほどに色鮮やかで楽しかった。

 太巻きの外側をエビとアボガドでうろこのように飾って蛇行させてドラゴンと名付けた商品があるあたり、中国人の知恵が入っているのかなぁ?このドラゴンと同じものを今年メキシコの高級和食店が出しているのを見た。誰かのアイディアを皆が少しずつ真似しているようだ。

 2つめの発見は、移動野菜売りのおじさんが仕事を終えて帰ろうとしている現場に行きあたった事だった。キャンプ生活にいつも使わせてもらっているのが、こういうマルシェで野菜や果物が入っているベニヤ板でできた箱とプラスチックの箱。ベニヤ板の方は地面に敷いて物を置く時の足場に便利だし、プラスチックの箱は食器洗いに行く時のカゴとして便利なのだ。

 プラスチックは貴重らしく1ならいいよといってくれて、ベニヤは捨てていくので好きなだけどうぞということだった。外国人でキャンパーでとつたないフランス語で説明したのが逆によかったのかもしれない。どこのマルシェで見つけようかと思っていたのだが、案外早く入手できてよかった。

 3つ目はジェラート屋の発見。当たり前だがフィレンツェに比べたら格段にジェラート屋が少なくなった。が、駅の北側にたまたま一軒発見。

 1スクープで2ユーロってのはイタリアじゃあり得ない高値だが、マロンというメニューはフランスならではだったので面白い。味もなかなかよろしかったし、コーンが厚めの2重巻きでおいしかった。

 ニースはフランスにありながらイタリアとスペインの食文化の影響も受けて独自の進化をしている。イタリアじゃないのにジェラートがおいしいなんて貴重な場所だ。

 そうこうするうちに午後2時半。予定通り包丁が見つかって、他にも魅力的なカレー粉、味噌、醤油も買いそろえて無事にキャンプ生活に必要な物が調達できた。

 町はSoldesの文字が踊り、今日から夏のバーゲンに入ったようで買物袋を抱えた人が町中にあふれている。私たちもショッピングしたかったけど、野菜用の木箱とプラスチックケースを持ってZARAには入れないなぁ。

 今日はおとなしく帰って、またプールに入って夕飯、シャワー、日記や写真整理と穏やかな夕べを過ごして就寝となった。

 旅仲間でタンデム自転車で世界を巡った青木夫妻というのがいる。彼らのキャンプ生活の知恵として昨年授かった情報があった。テントの中に裏地に断熱の銀色のシートをはったマットを敷くと断然暖かいというのだ。カルフールでそんな物をみつけたので昨晩から使ってみたのだが、夫妻がいうように効果は抜群だった。昨年は空気を入れて膨らますエアーマットレスを使っていたのだが、エアーの空気が地面で冷やされて寒かったのだ。今年はエアーマットレスをやめて断熱マットとクッションに同じく銀色シートを張ったくるくると巻けるマットを使っている。

 断熱効果によって暖かさは確保できているのだが、どうにもエアーマットレスと比べると体が痛い。これをどうやって解消するかが今後の課題だ。


2012.07.08(日) ニース(フランス)
ニースでバーゲンチェック!

 昨日から始まったらしいバーゲンのチェックにニースの町に繰り出した。

 午前中はキャンプ場で今後の旅の手配などで時間を使っていたので、ニースに到着したのは午前11時半になっていた。昨日訪れたレストランは週末の為に閉まっていたので、今日は同じく日本人シェフお薦めの、旧市街の花市場の奥に進んで最奥左手にあるLe Safariに行ってみると、日曜日のマルシェが立って人通りも多くレストランも営業はしているのだが、午前11時半では昼ご飯に早すぎた。マルシェの中にはおいしそうなパンを売っている店もある。空腹に負けて、レストランではなくマルシェでパンを買って食べる事にしてしまった。いや、おいしかったから問題ない。

 フィレンツェを見慣れた目にはニースの町はとてもカラフルに見えた。1つにはフィレンツェは石を積んだ建物が多いので町がシックな色合いなのに対して、ニースは後の時代の建築物でレンガ積みなので壁をしっくいで化粧して淡いピンクや水色などのパステルカラーに塗っているせいだ。そしてもう一つには目の前がビーチのため、肌の露出が多い洋服の人が多いせい。「夏だ!バカンスだ!リゾートだ!」という陽気な空気が漂っている。

 広場の適当な場所に腰かけて昼食を済ませたら、バーゲンチェック開始だ。

 トラムで駅まで移動して、そこからトラム沿いに繁華街を海方面に向かって歩くと、あるわ、あるわ、Soldesの看板がそこら中にみつかった。

 最初に入ったUndizという下着専門店は超奇抜なデザインとカラーの下着がある。イタリアでは見なったお店なのでフランス発かもしれない。

 ここでかねてからポール・スミスばりのカラフルストライプパンツが欲しかった夫が半額セールで一枚をゲット。

 私もストラップが見えても許される系ブラジャーを半額でゲット。

 ここで重大な発見があった。私の胸のサイズがフランス表示だとワンランク下がるということだった。通常のサイズを試着するとカップの中が空いてしまう。巨乳大国フランスでは、日本と同じサイズ展開するとアルファベットが足りなくなるのか?まぁ、それは冗談としても、ワンランク下がったという事実はちょっとショックだ。

 次に買ったのがモノプリというスーパーで見つけたアンチエイジングのニベアの基礎化粧品。

 近くにいた英語ができるマダムに聞いたらニベア商品から2つ買ったら値段の安い方が半額になるというセールだと教えてくれた。

 「Moitie」はフランス語で「半分」。

 利益に結び付くと言葉は覚えやすいね。

 結局、購入したのはこんな物たちだったが、バーゲンチェックした店舗数は10軒くらいになるだろうか。フィレンツェでもよく見ていた中級ブランドのお店が多かったので、プロパーで出ていた商品との違いがよくわかった。結局、いいなぁと思っていた商品はバーゲンでは既に売り切れているか、価格が下がっていなかったりして、バーゲン品で欲しい物を見つけるのが難しいということが、今日一日の収穫。

 余力があったら海に入ろうと水着も用意してきていたのだが、結局バーゲンチェックで時間切れとなった。ニースは世界的にチェーン展開している店が多かったが、もっとフランス発のデザインの服も見てみたくなった。次の街に期待しよう。


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