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2014年
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2013年
1月:1,2,3
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4月:1,2,3,4
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9月:1,2,3,4
10月:1,2,3,4
11月:1,2

2012年
1-1,1-2,1-3,1-4
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3-1,3-2, 3-3
5月:1,2,3,4
6月:1,2,3,4
7月:1,2,3,4
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9月:1,2,3,4,5
10月:1,2,3,4
11月:1
2013.7.15(月) イタリア(フィレンツェ)
新しい住人

 先週一人、そして今週から夫婦二人がアパートの新しい住民としてここにやってきている。

 一人はイタリア人男性でオペラのバリトン歌手。短期の滞在で月末にはパフォーマンスを終えて地元ウンブリアに戻るそうだ。私たちは偶然にも彼が出演するオペラのチケットを買っていて、彼のステージを見ることができる。フィレンツェは規模がそんなに大きな町ではないので、こういう偶然もあるんだなぁ。

 オペラ歌手と同じアパートで過ごすのは初めてだが、普通にしゃべる時でも朗々とした声で話をするのには感心。いい声の人が家にいるって気持ちがいいなぁ。

 今回のオペラではジュピタという神々の王の役という準主役級の役を演じる彼に、恐縮しながら生ごみ当番の話をしたら、短期滞在だとわかって、彼は外すことにした。

 今週から入ってきた住人は、なんと前の家で一緒だったルーマニア人夫妻だった。前の家ではクーデターが起こって、仲介の女性を外して大家さんと直接取引をすると聞いていたのだが、うまくいかなかったようだ。その家は今月から電気が止まり、一人の女性は別のアパートに移り、彼らはここに移ってきた。結局、誰もが仲介の女性の手の内におさまっている。大家がひどすぎるのか、仲介の女性が数枚上手なのか?真相は闇の中だ。あの家には中国人留学生2名もいたのだが、夏休みで荷物をそのままに実家に帰ってしまったそうだ。冷蔵庫には彼らの残した肉類があり、そして電気は止まっている。なんとも涼しくなれないホラーな話を聞かされた。早く出てきて本当によかった。

 ルーマニア夫人は「それにしてもねぇ」と私たちの部屋に入ってきて、ベッドによっこらしょと腰をかけ「この家は人が多すぎて嫌なのよ。でも他に行くところもないし」といきなり愚痴が始まった。そこに旦那も入ってきたので私がベッドに座って旦那さんに椅子を譲り、なぜかこの狭い部屋でルーマニアと日本の二組の夫婦が顔をつきあわせることになった。

 「いや、それでもね、人が多いったって皆昼間は仕事をしていないわけだし、ここには電気も水道もほっとシャワーもあるし」とうちの旦那が言うと、ルーマニア奥さんは「まぁ、楽天的でいいわねぇ」と苦笑い。「それでも、人が少ない所がよくて・・・」とまた始めから繰り返しそうになった時に、ルーマニア旦那が「インターネットのパスワードを教えて欲しい」と初めて建設的な意見を口にした。「そうそう、ネットワーク名はですねぇ。」と私が手帳を開いて説明しようとすると、ルーマニア夫人はいきなり立ち上がって「今は忙しいから、夕方、また、ゆっくり聞きに来るわ」とそそくさと部屋を出て行ってしまった。旦那ももちろん一緒に。

 部屋に残された私たちはボー然として二人を見送った。「ちょっといいかしら」と部屋に入って愚痴を言う時間はあっても、ネットの設定を聞く時間はないようだ。ま、そういうもんだ。「俺、この図を写真に撮りたかった」と夫が言い、私もそれに深くうなずいた。こんな喜劇的な絵は撮れない。写真は午前中のウォーキングのミケランジェロ広場から見た町の絵だ。


2013.7.16(火) イタリア(フィレンツェ)
カッシーネでイタリア語レッスン

 もはや必要な物はそろっていて、欲しい物はないという感覚で訪れたカッシーネ。だが、男性物が少ないのに業を煮やした夫が「昨年の神業よ再び!」と言わんばかりの勢いで私の洋服を物色しだしだ。自分では絶対に選ばない洋服がどんどんと目の前に積み重なって、「これを着よ、あれを着よ」と試着してみると、案外面白いチョイスがあって今日もまた手持ちの洋服を増やすことになった。

 そんな夫の成果は、クーカイのピンストライプのボディーコンシャスなワンピースと、ブランドが切り取られているが生地がいいボディーコンシャスなワンピースと麻のスカートとワンピース。どうもお疲れ様でした。本当は、本人が麻のパンツを探していたので麻に反応していたようだ。それにしても、この時期、女性物の麻製品は死ぬほど出回っていた。

 写真の洋服は買っていないのだが、左でお尻をむけているおばちゃん達に強烈に「あんたねぇ、見て体にあててるだけじゃだめよ。実際に着てみなくっちゃ。ね、わかる?その服の上から着るのよ。ああんもう、何ていったらいいのかしら、そう、試着、試着するのよ、わかる?」とイタリア語でまくしたてられたので、一応義理だてして試着してみたのだった。すごい。あんな風にたたきつけるように何度も繰り返して言ってもらうと、よくわかる。無料レッスンに大感謝だ。

 おばちゃん達は「体が洋服に入る」イコール「カリーナ(可愛い)」という認識で、「カリーナ」「シンパティコ(感じいい)」と盛大にほめちぎってくれた。サクラかと思うほどだが、この人たちもお客さん。おばちゃんも知らないおじさんに「どう思う?」と迫って「可愛い」と言わせて洋服を買っていた。知らないおじさんはお店の人ではなく、また別のお客さんだったりする。

 他の店でもちょっと精神的に参っちゃってるようなおばちゃんが、「これって大きいサイズ?小さいサイズ?」とお店の人に聞いている。店の人は「46だからまぁ、大きい方だ」と答えると、「でもね家の○○は大きいったって、そんなに大きいわけじゃないのよ」。店の人は「そりゃぁ、俺にはわかんねーな」。

 カッシーネには色んなお客さんが来る。中にはよれよれで精神的にも参っちゃったような人も来るが、そんな人でも大量に買い物してくれるから店の人はとても親切に対応している。そういう会話とか洋服を見に来ている奥さん同士の会話とか、ものすごく生のイタリア語が飛び交っている。ここは、そういう意味でも来る価値のある場所だ。

 ってなわけで、本日のここでの出費は28ユーロ、14アイテムだった。

 昼ごはんはイエローカフェという英語名の店名だが案外老舗の店でピザ。Gustapizza一辺倒だったので、新しいピザも面白い。ここのはとても薄くて軽い感じだった。

 午後からは夫のベージュのパンツを購入にZARAへ。カッシーネではひとつも気に入った物が見つからなくて、結局ここに行きつく。バーゲン中だが関係ない秋冬の新作からパンツを一本購入した。それにしてもZARAの製品は股上の深さ、ポケットの位置、大きさ、太ももの太さ、膝下の太さ、腰回り、同じベージュでもトーンの違い。とあらゆる差異でせめてくる。ベージュのパンツだけで3種類。全く異なる仕様で出しているからすごい。男性も思わずファッションに夢中になるのがわかる。パンツ40ユーロ。今朝の出費を軽く超えた。


2013.7.17(水) イタリア(フィレンツェ)
鏡面状のアルノ川

 今日のアルノ川は風がなく穏やかだった。こんなに美しく景色が移りこむ日も珍しい。こういう日に当たると、素晴らしい街に滞在している事をあらためて実感する。

 しかし、太陽は高く照り付けるひざしの中を歩いたり走ったりするのは、かなりきつい日だった。今日も10分弱の走りを入れて10km程のウォーキングを終了。

 観光はまさにピークを迎えようとしているフィレンツェだが、今日の私たちは淡々と日課をこなした。

 夜は、REALITYというイタリア映画を鑑賞。先日、サンタ・マリア・ノヴェッラ駅下のショッピングモール内にあるDVD屋で買ったものだ。

 この作品はイタリア人のマッテオ・ガローネ監督による作品で、2012年に第65回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で上映され、彼の2度目となる審査員特別グランプリ受賞を果たしたという作品。

 国際的な評価を受けている作品だけに英語字幕がある!

 内容はナポリで魚屋を営む男性がテレビのオーディションを受けた事から始まる。「リアリティー」という見知らぬ素人男女が集まって暮らす様子を放映するテレビ番組なのだが、知り合いの芸能人を通じて何とか頼み込んでオーディションを受けさせてもらったのだ。しかし、待てど暮らせど及びはかからない。そして・・・。

 男が徐々に精神的に壊れてく様を綴った作品だった。

 個人的な感想を言えば、個々の人物の表情や人物設定やカメラの目線っていうんですか?角度なんかはフェリーニを思い出させる雰囲気はあったけど、どうにも内容の展開が少なすぎて、これで終わり?という筋書きにちょっと消化不良。また、男が壊れる必然性がよくわからない。そこまで壊れる納得できる理由が欲しかった。そこまで深い理由もなく壊れるのが現代社会の病という事なんだろうか?うーむ。


2013.7.18(木) イタリア(フィレンツェ)
上質なオーガニック系リストランテ

 今日はあまり食欲もないのでベジタリアン系ランチを探していた。ベジタリアーノにはもう2回行ったので、今日は場所を変えて5 e Cinqueというオーガニック系リストランテに行ってみることにした。

 リストランテというよりは東京の表参道の裏手にあるカフェみたいな雰囲気のお店で、メニューも軽食風な物が多かった。

 最初に出されたフォッカッチャがとてもおいしく、料理も一つ一つ丁寧に料理されていて、上質に扱われている気分がするお店だった。ただし、メニューを見ただけではどんな料理かが想像しづらく、実際に来てみるとどれも一度がっかりする。何だろうか?シンプルすぎるからだろうか?

 私の注文したのは目玉焼きにチーズがかかったものとフォッカッチャ。これで6ユーロ。ものすごくチーズがおいしいから食べるとだんだん納得するのだが、それでもちょっと高いという気がする。

 また、夫の注文した茄子のパルミジャーノとトマトとバスマーティ米。通常の茄子の料理にお米がどう絡んでくるかワクワクしていたら、通常のあの茄子の料理の下にご飯が敷いてあるだけ。食べてみるとこのご飯においしい味付けがしてあるから、だんだんおいしいと思うのだがこれで10ユーロってのはねぇ。

 本当にいい物を使っているかもしれないが、ちょっと高い。それが今日のレストランの印象だ。お客さんはアメリカ人が多かった。それを考えてトリップアドヴァイザーの.comと.itを比較すると英語圏の人が絶賛するのみに対して、イタリア人は質もいいしサービスもいいけど値段が高いという意見が多かった。.itと私は意見が合うようだ。次回からは.itを参考にすべきだというのが、今日得た知識。


2013.7.19(金) イタリア(フィレンツェ)
通常の一日

 午前中にアルバム整理、イタリア語の学習、12時からウォーキング。

 アルノ川が鏡面になるなんて珍しいと一昨日書いたばかりなのに、今日も素晴らしく鏡面。しかも入道雲2本を映し出していた。

 ミケランジェロの丘への登りの途中から頂上まで10分のジョギング。最初に比べると少しは楽になってきたと思いたいが、まだまだ楽しい気分にはなれない。

 丘を下りてスーパーで買い物してアパートに帰ろうとした時、フィレンツェ在住の人がブログで紹介していたレストランを発見。ちょっと立ち寄ってみると、予想以上に素敵で予想以上に人がたくさん入る人気店だった。来週の火曜日にはここでランチする事を即決。

 アパートに戻ってストレッチして仮眠してシャワーを浴びて、現在作業中。何事もなく順調に予定をこなしている日だ。


2013.7.20(土) イタリア(フィレンツェ)
ビステッカ、アペリティーボ、オペラ

 2週間前に中央市場近くのトラットリア・マリオで鉄板でガスコンロ焼きのビステッカ・アッラ・フィオレンティーナを食べた。あれはあれでおいしかったのだが、炭火焼じゃないって所がどうにも納得できず、今日、もう一軒の店で食べてみることにした。

 行き先はAntica Trattoria "da Tito" dal 1913。トリップアドヴァイザーの写真やコメントを見ると、トラットリアというよりはビステッカ屋というくらいに、どうみても訪れる人のほとんどがビステッカを注文している。炭火で焼いているようだし、キロあたりの価格はもっと中心部にあるイル・ラティーノやブーカ・マリオの50ユーロに比べると3割引の35ユーロ。中心部からははずれているが充分に徒歩圏内。

 昼の開店12時半に店に到着し、2番目のお客さんとして入店。コントローリ(Contorori)、つまり本日の付け合わせ(4ユーロ)の中からミックスサラダ、そしてビステッカ・アッラ・フィオレンティーナ(最少1.2kgから。何も言わないと体格を見て勝手に量を判断されるようだ。私たちは1.2kgだった)、ワインは卓上にある半リットルボトル(6ユーロ)を注文した。

 出てきた肉はマリオよりもおいしい。肉自体がおいしいからか炭火焼だからかわからないが、味が違う。1.2kgなんて食べられるだろうか?と事前に胃薬を飲んでのぞんだが、お陰さまでぺろりといけてしまった。で、肉後にスパゲッティー一皿でしめ。吟味してお店を決めただけあって大満足の結果になった。同じビステッカといっても違うんだなぁ。

 食後はCarbeというジェラテリアでジェラート。シチリア出身のお店で、他にはない「シチリア魂Spirito Siciliano」というレモンとレモンの皮の入ったジェラートと50セント増しになるがシチリア産のピスタチオをチョイス。レモンの皮の苦みがステーキ後にぴったりだった。

 町をぶらついて一度家に戻り、シャワーを浴びてから夜の出動。午後9時半からピッティ宮の中庭で行われるオペラを見る目的で出たが、その前に1時間ほどマンジャフォーコMangiafocoでアペリティーボしよう。

 マンジャフォーコは質のいいグラスワインとつまみを出すワインバー。アーモイタリアで紹介されていて以前に一度行ったことがある。

 今日はトスカーナ産サラミとチーズの盛り合わせの小(16ユーロ)と、キャンティ・クラシコの2007年リゼルヴァ1杯(7ユーロ)とスーパタスカンから1パイ(10ユーロ)を注文した。スーパーで買っているペコリーノチーズはフランスのチーズと比べると味が薄くてどうにも満足が行かなかったのだが、ここのチーズは一つ一つが味がはっきりして濃い。イタリアにもこんなチーズがあるのかと驚くほどおいしかった。マンジャフォーコに行ったら、このセットはお勧めだろう。

 イタリアに限らずフランスでもそうだと思うが、いいレストランに行く醍醐味は、そのレストランで創造された料理や料理人の技術を楽しむ他に、レストラン独自のルートで私たちには買えない素材を使っているという点にある。特に火を入れないハムやチーズやサラミには顕著にその良さがあらわれる。そういう意味ではマンジャフォーコは良い素材を吟味して仕入れているらしいので、このサラミとチーズのセットは価値があると思った。

 思ったよりもたっぷりした量のサラミ・・チーズセットを楽しんでいたらあっという間にオペラの時間が近づいてきた。残りのサラミをワインで流し込み、お会計を済ませてピッティ宮へと向かった。

 今日のオペラは全席20ユーロの自由席。1時間前ではまだ早すぎて中に入れず、少し待って40分前から入れてもらえた。前から3列目の真ん中に席を確保して観劇。本日の出し物はフランス人作曲家オッフェエンバックによる「地獄のオルフェ」。オペラというよりオペラ・ブッフと呼ばれるフランスのコメディーミュージカルだ。今日はイタリア語で上演された。

  この中に出てくる「カンカン(ギャロップ)」は日本の小中学校の運動会でよく使われる曲なので知らない日本人が少ないくらいだろう。パーティーの場面で使われるこの曲はフランスの有名キャバレー、ムーランルージュのラインダンスのテーマソング、そしてそれを下敷きに文明堂カステラのCMで使われていた。初めて見たのだが、オペレッタ同様オペラよりもセリフが多くて演劇的な要素が多かった。その分、役者たちのちゃめっけたっぷりな表情やしぐさが楽しめて、オペラとは違う軽やかな楽しい舞台だった。

 もちろん、同じアパートに住んでいるレオナルドを見るのも今日の楽しみだった。彼の役は神々の王だるユピテル(ジュピター)。神々の王だけれど、主人公の女性に恋してハエに姿を変えて部屋に忍び込んで彼女に迫るというコミカルなシーンには大爆笑。アパートにいる時からいい声だと思っていたのだが、今日は堪能させてもらった。

 真夏とはいえ、夜になって涼しい風が吹きまくる中庭での観劇はかなり寒かった。薄手の長袖と軽いスカーフを持って行っていたが、ユニクロのウルトラライトのダウンジャケットがあったら本当によかった。

 公演は9時半から0時半。冷えた体で早足にアパートまで戻って本日終了。


2013.7.21(日) イタリア(フィレンツェ)
アパート内交流

 最近は週末だけ料理をする。今日は先週の残りの肉を使ってトマトや玉ねぎを乗せて余っているカレーペーストも乗せて、オーブン焼きカレーを作ることにした。

 ここのアパートの特殊事情で、電気オーブンを使うとその上にあるガスコンロを着火する際に、時に軽く感電するらしい。ドリスの息子も徘徊しているし、オーブンで調理する1時間半ほどはキッチンに入り浸って監視した方がいいという状況だった。

 そこで料理を待ちながら、ワインとチーズを楽しんでいると、だんだんと興が乗ってきてテーブルを叩いてリズムをとりながら盛り上がるという、昼間の酔っぱらい状態になってきた。それに応じてくれたのがジョシュアだった。我々がドンドンとテーブルを叩いて床を足で踏みならしていたら、手をたたき首を振ってだんだんと興奮してくるのだ。おお、ジョシュアよ、アフリカの血が騒ぐのか。と、夫がどんどこ、私もどんどこと机をたたいていたら、ジョシュアはふっと冷めて首を横に振って立ち去ってしまった。アフリカのDNAは日本のリズム感では満足できないようだった。師匠は厳しい。

 オーブンを使って、他の電気機器を使おうとしたらブレーカーが落ちてしまうというアクシデントが起こった。ブレーカーを戻して事なきを得たのだが、たぶん、それと関連しているのだろう、流しのお湯が出なくなった。ブレーカーの一件を知らないルーマニア夫人が来てお湯が出ないとなると、夫に向かって「何故出ない?」と聞く。夫が「いや、知らないし」と答えると、ルーマニア夫人は不満げに文句を言いながら水でお皿を洗い始めた。しばらくして私に「この問題をどう解決するつもりなのか?」と聞く。いやー、基本的にそこのお湯、私は使ってないので問題はないんですけど。というと、しばらく黙ってから「でも、誰かが誰かに言わなくてはならないでしょう」と言う。面白いなぁ、ルーマニア。どうにかして人に問題を解決してもらおうと必死なのだ。「ああ、私の50有余年の人生で台所の流しのお湯が出ないなんて初めてだ、今年の私は本当に運がない」と仰るので、もう楽しくなってきて「では私がオーナーにメールするので、あなたもクレームの電話をしてもらえますか?」というと、それで納得してくれた。

 そうこうするうちに、レオナルド登場。

 昨日の舞台を楽しませてもらったお礼でひとしきり話が盛り上がった。彼は日本へも仕事でちょくちょく訪れるそうで、次回は日本で会おうってな話になった。それにしても昨日の舞台での華やかな衣装とメイクの姿はいつものこのリラックスした格好からは想像もつかない。

 と、そこへルーマニア人若手カップルも登場してきた。彼らは内向的であまりしゃべらないので、私も必要事項だけ話すことになってしまう。この瞬間も、彼の当番としてのゴミがベランダに昨日から放置されているので、今日中に片づけて欲しいとだけ言うことになってしまった。にこやかに「もちろん、今片づけますよ」と言っているが「うるせーなー」と思われている事は確実だろう。やれやれ。子供がいなくても姑になることはできると実感。

 夜。キッチンでサラダとハムなどでワインの夕食をしていたら、ドリスが教会から戻ってきた。

 ジャーン!

 今日もカメルーンの正統ファッション。日本でいったら着物を持っているようなもので、こういう洋服をたーっくさん持っているんだって。ま、私は一着も着物を持っていないけど。

 今日はいちじくの甘さと生ハムの塩気が絶妙な上品な旨みを出していて、是非、ドリスにも経験してもらいたいとドリス分を残していた。ところがドリスは「生」というものに対して社会的に「危険だ」という刷り込みがあって、世界的には生あるいは生に近い食品がおいしいとされているのは頭じゃわかっているのだが、食べると吐いてしまうんだそうだ。

 ここフィレンツェでもビステッカといったらレアに決まっていて、その生肉だけでなく、皿に残った血までイタリア人がパンで拭い取ってまでして食べるのが「アンビリーバブル」に見えると言っていた。確かに国によっては生で食べる事が生命を脅かす事にさえなるから、ドリスの危険回避本能は当然なのだろう。

 しかし、子供の頃からの刷り込みに疑いを持って、それを打ち壊しながら新しい世界を体験する事で人は発展するのではないだろうか?ドリスはすでに国を出てイタリアという異文化の中で生活している。生きていくため、稼ぐために仕方ないというが、反面、自国では体験しえない素晴らしい思いもしているはずである。そちらに目を向けてより前向きに自分を変えて行けたらもっと楽しめるのになぁ。

 まぁ、生ハムはハードルが高いので、次回はとりあえず生野菜フィノッキオのサラダを試食させてみようっかな。

 キッチンにいる時間が長かったので、色んな人と交流した日曜日だった。

 今日は日本で参院選。ネット上で旅仲間が活発に議論している。


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