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2011.04.15
アンコンビーチへ格安で行ったはいいが・・・
「カリブ海に浮かぶ島」キューバのはずなのにカンクンの日本人宿で出会うキューバ帰りの旅人からビーチの情報があまり得られない。その理由として、一つに海以外の音楽やダンスという文化的魅力の方がインパクトがありすぎて海に行く暇がないというのと、一つにはバックパッカーがアクセスしやすい場所にあまりいいビーチがないのだろうと思われた。
それでも行ってみたいと思って目星を付けていたのが、島の東端にあるバラコアBaracoaかハバナの北東にあるバラデロVaraderoだった。しかしバラコアは時間的に余裕がないようなので却下、バラデロはリゾート地で滞在費が高くなりそうなので予算的に却下となった。キューバから戻ってから、バラコアに行った旅行者から、海がとても美しくてキューバで一番良かったなどと聞かされて、ちょっと無理しても行っておけば良かったなぁと思ったのだった。ま、次回への楽しみとしておこう。
それにしても、折角のカリブ海の島なのに海に行かないのは残念だねぇ。
ってなわけで、じゃぁトリニダの近郊にあるアンコンビーチとやらに行ってみようということになった。宿の人に聞いたら知り合いの運転手を手配しようなどと言ってきてバスがなさそうな口ぶり。街中でタクシー運転手に聞いたらビーチまで片道6CUCもするという。うーむ。往復1200円もかけて行く価値のある美しい海とは思えないので、非常に困ってしまった。
バス、ないのかなぁ、バス。
町を散策しながら色んな人に聞き込み調査をしてみたら、プラザ・サンタ・アナというちょっとしたショッピングセンターに働く女性が、向かいの公園に午後2時20分くらいにアンコンビーチ行きのバスが通るという情報を教えてくれた。アンコンビーチで働く従業員の送迎バスだが有料で誰でも乗せてくれるんだそうだ。聞き込み調査をした時間が丁度午後2時くらいだったので、少し待っていると、大型バスがやってきた。運転手に確かめると一人1CUCでビーチまで行けるという話。おお、ついにバスを発見した。
ということで、昨日のバス調査結果を得て、今日さっそくアンコンビーチに行ってみることにした。昨日と同じくホテルの制服を着たおっちゃんや、ベッドメーキングをしそうなお姉ちゃんたちと一緒にバスを待っていると、やってきた、やってきた。バスがやってきた。
「プラヤ・アンコン?」と運転手に聞くと「そうだ、乗れ乗れ」と言われた。従業員たちはお金を支払っていないようだが、私たちは一人1CUC。しかしタクシー一台6CUCに比べたら安い。
バスは次の町を抜けて、湿地帯の中を走って30分くらいで海沿いのホテル・アンコンの裏口近くで停車して、全員がわらわらと降りた。運転手に帰りのバスは何時かと聞くと「午後4時半」だと言う。昨日のプラザ・サンタ・アナでこのバスの存在を教えてくれた女性は午後5時だといっていたし、一緒にバスを降りた従業員の女性は午後5時半だと言って、誰が正解なのかさっぱりわからなかった。
帰りの事はさておき、とにかく海を見てみようとホテルを回り込んでビーチに向かった。林の向こうに見えてきた海は、なかなか素敵なマリンブルーでカリブ海の色なのだが、昨年訪れたドミニカ共和国のドミニカス・アメリカナスのゴージャスなビーチやメキシコのカンクンの海の色に比べるとかなり見劣りがする。それでも日中トリニダの街中にいるよりも、よっぽど涼しく午後を過せたのは良かった。地元の人と外国人観光客は半々くらいの割合だろうか。ホテルの隣の木陰で寛いでいたら、ホテルの人がカクテルの注文を取りに我々の所までやってきてくれたし、ピザ売り(これはおいしくなかった)が来たり、飲み物の売店もあって、思ったよりもビーチとして成立している場所だった。
涼しくて快適な午後を過してから、午後5時近くになって立ちあがりバスを降りた場所に行ってみるが、全く人影がなかった。近くの駐車場の詰め所にいる青年に「ここにバスがくるはずだが?」と聞いたら4時半のバスがいってしまって次は7時半だという。結局、バスの運転手さんの情報が一番正しかったのだった。
アンコンビーチからトリニダの町までは16kmも離れているので歩いて帰るわけにはいかない。ホテルの表側玄関に行って従業員にバスの事を聞いていたらタクシー運転手たちが寄ってきて町まで8CUCで行くといい始めた。もの凄い観光地値段だ。こんな海から帰るのに800円も払うなんて考えられなかったので、とにかく踵を返して運転手に背を向けて歩きだすと、いくらなら乗るのかと聞いてきたので振り返って「2CUCなら乗ってもいいわ!」というと、「なんじゃこりゃぁ、バカにしとんのかい」と怒りをこめて私を頭のてっぺんからつま先まで見下すようにジロジロと見てきた。先進国からのお金持ちの旅行者に甘やかされているタクシー運転手は本当に横柄な態度だった。このピリピリとした空気の横を一台のサイドカーが通り過ぎるのが目の端に映った。もう、こうなったらヒッチハイクだ。
「おおい!」と声をかけてヒッチハイクのポーズ、左手の親指を上向きにしてサイドカーを追いかけたらすぐに停車して「トリニダ?」と聞いてきた。仕事でホテルを訪れたかあるいはホテルで働いているキューバ人が町に戻る所らしかった。「いくらで乗せてくれるか?」と聞いても答えずに「とにかく乗れ」という仕草をして私達用のヘルメットを出してくれた。向こうではタクシー運転手が怒って何かを叫んでいる。恐らく「俺の客に手出しするな」という内容だろう。そんな状況と悪人には見えないこの人の風貌から判断して、私はさっさとサイドカーに乗り込み、夫はおじさんのバイクの後ろにまたがって、颯爽とホテルを去ったのだった。
キューバに来てから何度も目にしていた、おそらく旧東ドイツ製のこのサイドカーに乗ってみたいと思っていたのだが、こんな形で実現するとは思ってもみなかったので大変に愉快な気分だった。
宿の近くまで乗せてもらって、お礼に2CUCを渡してお別れした。2種類の貨幣が流通しているこの国では外国人の使う兌換紙幣で商売している人の利益と、いわゆる人民ペソで給料をもらう公務員の月給(17-20CUC)とに非常に格差がある。外国人相手に羽振り良く営業しているタクシー運転手に対して、このおじさんの日頃の気持ちのリベンジだったのかもしれないが、私達にとっても、とても好都合なハプニングだった。
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