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2011.04.14
到着してすぐに拉致られた!
サンティアゴ・デ・クーバから夜行バスで移動して約12時間。明けて間もないトリニダのバスターミナルに到着した私達に、ある男性が「タケシか?」と尋ねてきた。
なぜ、初めて来た町で私達の名前を知っている人がいるのか?
考えられるのは一つだけ。サンティアゴ・デ・クーバの宿から紹介が行っているということしかない。そういえば、サンティアゴ・デ・クーバの宿を出る直前に、オーナーのジャカリーヌから私達が出発待ちをしていた宿のロビーに電話があった。「ジャカリーヌ、あなた、一体、今どこにいるの?」と聞くと、壁を隔ててすぐ隣の自宅の2階にある居間にいると言う。いくらジャカリーヌが巨体だからといって、こんな近くにいるのに電話ってのは妙な話だ、しかも私のスペイン語なんて全く素人だというのに・・・。そんないぶかしい気持ちのまま、早口で話すジャカリーヌの話の4割もわからずに電話を切ったのだった。私としては6割はお別れのあいさつだと思っていたのだが、4割くらい「何か次の宿の事を言っているんじゃないかなぁ?」という気持ちがあった。この前に、ジャカリーヌからトリニダの知り合いの家を紹介されていて、その人の名前が電話の会話の中に出てきていたからだった。
朝、寝ぼけマナコで到着したトリニダで名前を言われた時に、すぐにこの時のジャカリーヌとの電話が思い浮かんだのは言うまでもない。ああ、やっぱりジャカリーヌは早口で「私の知り合いの家に予約するけどいいのか」と言っていたと違いない。
ちょっと面倒だなぁ。
そう思ったので、「タケシか?」というこの男性の質問には「ノー」とかわしていたのだが、夫がトイレに行っている間に、今度はジャカリーヌの話に出てきていたルイサという女性本人が登場してきてしまった。こうなったら、もう、観念するしかない。ルイサの隣にはネルバという女性がいて妹だそうだ。どうやら、ルイサの家には今、別のお客がいるのでネルバの家に連れて行かれようとしているようだった。ネルバがどうにか英語が通じるので、「とりあえず家を見せてもらうが、宿泊するかどうかは家を見てから決めたい」と言うと、それでもいいから一緒に行こうと言われた。
とにかく、「見るだけかもしれない」という了解を得たので一緒に家を見に行くことになった。
夜が明けたばかりの古都トリニダの石畳をスルスルと歩くルイサとネルバについていきながら、ここはどこなのだろうかと手持ちのガイドブックを開いて現在地を確認しようとすると、ネルバは神経質そうに「家はもうすぐそこだから、近いから、大丈夫だ」と何度も繰り返した。
実は日本人宿の情報ノートで目星を付けていた家があった。その家の通りを過ぎてなおも進むので少し心配になっていたのだった。でも、位置を確認しようとした辺りで家に到着。場所は中心地のサンティシマ・トリニダー教会とサンタアナ教会の中間くらいだった。夜のライブを聞いても歩いて帰れる距離。まぁまぁの場所だ。
部屋を見せてもらったら自宅の2階を全て1組の客に使っているタイプで、なかなか広い部屋と同じくらい広いベランダがついていて、ベランダからはトリニダの赤い瓦の屋根の波が見渡せる。これで一人15CUCならいいんじゃないだろうか。そう思ってここに滞在することに決定した。
主人のネルバ(左)と民宿の先輩で姉のルイサ(右) |
そう告げるとルイサとネルバもやっと緊張した面持ちから解放されて4人でコーヒータイムになった。
後からわかったのだが、キューバでは民宿を経営するのにあたって、客が入ろうと入るまいと部屋数に応じて税金を支払うシステムになっているのだそうだ。1部屋なら200CUC(US$216)、2部屋なら300CUC
(US$324)。サンティアゴ・デ・クーバやトリニダでは一泊一部屋15CUCが一般的なようだから、1部屋だけ持っている民宿なら税金をカバーするだけでも14泊は客をとらなければならない。稼働率50%を年間キープするなんてとても大変な事だ。それが、客が部屋を決める際に彼女たちに緊張の表情をさせる原因になっているようだ。
まだ民宿を初めて私達が4組目の客だというネルバはルイサの指導のもと、戦々恐々としながら民宿を経営しているようだった。だから初日に私達が宿泊を決めた時も明らかにホッとした表情を浮かべていたし、朝食や夕食を家で摂って欲しいという話を必死にしていた。結局、私たちは朝一人3CUC、夜一人平均8CUCは払ったので、4泊で155CUCを支払った。1ヵ月の税金には満たないが4日でかなりそれに近い金額になったので、かなりホッとしているに違いない。
トリニダはサンティアゴ・デ・クーバと違ってとてもツーリスティックな町なので、私達のような外国人がモネダ・ナショナル(人民ペソ)で食事をできるレストランがみつからなかった。外国人客相手のレストランに比べたら、カサ・パルティクラルで出してくれる食事の方が良心的なので、トリニダではカサで食事を注文した方がいいと判断して毎日作ってもらったが、もう少し外で食べてみても良かったなぁというのがやや反省点だ。ついつい、ネルバの泣き落し作戦にひっかかってしまった。ま、分量も多かった(食べきれない!)し、おいしかったからいいだけどね。
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