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2009.11.23 Vol.1
織物と紙漉きのバーンサンコン村とルアンパバーンの町並み
到着して数日は猛暑とも言える好天続きだったルアンパバーンからぱったりと太陽が姿を消し、厚い雲が空を覆う日が続く事6日。乾期に入ったはずなのにおかしい。テレビで見る天気図ではルアンパバーンの上だけぽっかりと雲が浮かんでちっとも動かないのだった。
なんだか浮かない天気だなぁ。このままルアンパバーン去る事になるのかと思っていたら、今日6日ぶりに晴れた。いやー、よかった、よかった。
天気が良くなったらバーンサンコン村に行こうと思っていた。入手した地図にルアンパバーンから2kmとあったので徒歩で行けると思ったからだ。バーンサンコン村は織物と紙漉きが有名な所だそうだ。ルアンパバーン近郊の見所はラオ・ラーオという米から作る強いお酒造りで有名なバーンサンハイ村とか焼き物が有名なバーン・チャン
(Ban Chan)村などがあるが、徒歩では行きにくい。レンタサイクルかレンタバイクで行くか、これらの村や25km離れた場所にあるバークウー洞窟をセットにしたツアーに参加して1日で全てを周る方法もあるが、天気もいいしちょっと歩きたい気分だったので、私達はバーンサンコンだけに行く事にした。
さて、バーンサンコンはどちらの方向に歩けばいいのか?
それすらも定かでなかったので観光案内所で聞こうと思ったのだが、午後1時から開くと思っていた案内所は午後1時半までお昼休みで閉まっていた。やれやれ。開くまでの間、青空背景のルアンパバーンの町並みでもカメラに収めようとメインストリートを歩き始めた。
天気が違うと町並みもぐっと違って見える。特にこうした世界遺産指定都市などは古めかしい建物が多いので曇り空の下では陰鬱で不機嫌に見えて、どうもナイトマーケットに走ってしまった。しかし今日はなんという美しさ!晴れて本当に良かった。
赤い屋根と金色の内装が太陽に光り輝く |
曇天では見る気もおきなかった塔も美しくさえ見える |
真ん中の釈迦像にかけられた傘がボロボロでかわいそう。 |
もと王宮だった国立博物館 |
国立博物館を過ぎる頃から始まるコロニアル調の民家たちも今日はより面白く見えた。
民家といってもメインロードに面した家は1階がお店、2階が宿になっているケースが多いので、玄関脇に美しく鉢植えを置いたり商品を並べてにぎやかにしていて、単に古びた家並みというのでなく新しい息吹を吹き込んでやっているのがここの魅力だろう。しかも、ここの場合は新しいエッセンスとしてフランス風というか西洋風な味を入れているのでアジアとヨーロッパそして新旧のフュージョンがうまい具合に町に味を出して成功していた。
屋根のひしゃげ方が夫の気に入った |
ヤシの木が東南アジア |
旅行代理店の前に白人バックパッカーが座り込んで日向ぼっこ |
お坊さんの袈裟と同じ色のオレンジの糸。 |
プロヴァンスを思わせるクリームの家はカフェ |
ゴージャスな館は今は高級スパ |
こうしてほぼメインロードを端近くまで歩いて行くと両脇にお寺が数軒並ぶ場所になる。その北端にあるのがワット・シエン・トンというお寺で一番敷地が広いし、装飾も豊かな寺だった。
屋根の色が太陽に照り映えて美しい |
観光客もいないガイドブックにも載らない静かなお寺 |
ワット・シェン・トンの入り口 |
さすがに観光客が多いワット・シェン・トン |
ワット・シェン・トンから先のメインロードはメコン川とナムカーン川にはさまれた半島の北端。道はT字路になり本当に先端という場所までやってきた。そのT字路なはずの道の向こう、林の中にある獣道からゾロゾロと観光客が出てくる。何だ?この先に何があるんだ?
近寄ると看板があり、なんとこの先の橋を渡ってバーンサンコンまで500mとか書いてある。くしくもバーンサンコンへの道を歩いて来た事になったのだ。
未舗装の道の坂を20mも下ると川と川にかかる橋が見えてくる。橋のたもとには小屋があって通行料往復Kip5000=US$0.6を支払って向こう側に渡るわけだが、竹でできた橋は危うく波打ち歩くたびにゆっさゆっさと揺れた。水深はあまり深くなさそうだ、この流れなら泳げるか、幸いにも今日は晴れているなどという考えが川の流れくらいビュービューと頭を駆け巡ってしまった。実際はヨーロッパ人男4人が一緒に歩いても問題にないくらい丈夫だったのだが。
橋を渡って左折し対岸の岬の先に茶屋のような店がある。この店の裏手左にある山道を登り、登りきった左斜め前の道を500mくらい歩くとバーンサンコン村になってくる。橋を渡る手前に「あと500m」と書かれてあるが紙漉きや織物の店が出現してくるのは1kmくらい先だった。
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橋を渡った所からメコン川に向かった風景 |
峠の茶屋はサンセットビューカフェという名前、うぷぷ。 |
本当にこの方向で正しいのか?と不安になる頃、右手の民家の前庭に漉いた紙を干している家が出てきた。それからはもう紙漉きと織物を行っている織物工房兼ショップが目白押しになる。こんなにたくさんのショップがあるとは思っていなかったのでビックリした。ショップになっている家は古めかしい家もあるが、織物御殿かと思うような大きなしかも新築の家もある。それに追いつけ追い越せというわけだろうか、間を埋めるように建設中の家も少なくない。バーンサンコンは思っていたよりもすっと発展しつつある場所だった。
私達が来た道は、観光ツアーなど車で訪れた人からは通りの一番奥ということになる。だから、私達が道を遡るにつれて団体観光客が多くなり大規模な(といっても家内手工業的だが)展示の店が増えてきた。最後の方に観光客が集まっている場所は、ショップ内に設置された「織物ができるまで」を蚕から説明したコーナーだった。ラオスの織物は花や草など天然素材で染色されている。だから柔らかな風合いを出しているのだ。
色だけでなく手触りもツルッと柔らかくて気持ちいい。タイシルクのショップに行った事があるが、もっとゴワゴワとした手触りでこんなに気持ちよくなかった。以前、ネパールのポカラである日本人女性がボランティアで働いているNGOを訪ねたことがある。フランス系のこの団体は地元の女性の自立のために染色と織物と製品作りまで行ってフェアートレード商品として世界中に販売している。フランス留学経験もあるその日本人女性のアイディアで、それまで使っていたどぎつい化学染料とは別に草木染の商品を作ったらヨーロッパで人気が出ているという話を聞いた。今時代はナチュラルだ。それがわかっていて草木染にしているのか、化学染料にする段階まで行かないうちに時代がナチュラルなのでそのままにしているのか。ラオスがどうして草木染なのか経緯は知らないが、ヒットだよね、このシルク。
ほとんど全ての店を見て周ったが、自分達の工房を持っている店の商品はルアンパバーンのナイトマーケットでは出てこないオリジナルなデザインの商品があってデザインも品質も格段に上という感じ。
そういう商品のお値段はUS$18から高い物だとUS$500超。しかしUS$500というのはあまりに高すぎると思うが。
ナイトマーケットで出ているレベルの商品を扱う店もあるが、ナイトマーケットの方が安かった。
一番気に入った工房はPatta textile Gallery。一軒しょぼい家屋に見えるのだが中に入ると抑え目の色合いで伝統的に過ぎないコンテンポラリーな要素も取り入れたデザインと色のスカーフがずらりと並んでいた。一つ一つハンドメイドだという「作品」は日常身につけられるようなものばかりで、前日にナイトマーケットで800円くらいのスカーフを購入してしまった私は「早まったか」と後悔したが、埃まみれになるバックパッカーの生活じゃ800円くらいが妥当だとすぐに思いなおした。この店はルアンパバーンから徒歩で川を渡って行くとショップの並ぶ通りの最初の方の右手、ツアーや車でいくなら通りの奥の方の左手にある。次回買うなら、ここだな。ってやっぱり後悔しているのかい!
バーンサンコン村の訪問は期待以上に楽しかったし、ルアンパバーンからの徒歩が丁度いい運動になった。メコン川とナムカーン川が交わる景色を眺めたり竹の橋をドキドキ渡ったりと面白いコースなのでツアーじゃなくて自分の足で訪れる事をおススメします。
帰りも同じ道をたどって帰って来たが、夕刻のメインロードは今度は反対側の家々を照らしていた。学校の校庭では放課後の遊びに夢中な子供達がたくさんいて低学年は鬼ごっこみたいなのをしていたが、高学年はペタンクをやっていた。ヨーロッパで夏キャンプしているとフランス人の老人が集まって真剣にペタンクをやっているのをよく見る。こんな所にフランスの影響があるんだなぁ。ルアンパバーンは小さい町なので寺院も学校も民家も人がどうやって生活しているのかがよく見える町だ。朝から夕方まで人々の生活を見ているとタイムスリップして自分の子供時代にいるような錯覚に陥り、非常に安らかな気持ちになってくる。特に夕刻、陰が長く延びて遊びに疲れた頃、家々から夕食の湯気が立ち上る時の遊び時間が終わって惜しいような夕飯が楽しみなような矛盾した感情をここにいると思い出した。
中庭が洒落たカフェ |
夕陽に照らされる赤い花 |
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元気に走りまわる小学生 |
アイスクリーム屋台で一息 |
壁のつる草飾りが何ともヨーロピアンなのに屋根がラオス |
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