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2009.10.19
最後の日
今日はシンガマタ最後の日だ。予定通り2回のシュノーケリングも終え、シンガマタ周辺の海もアクエリアムも泳ぎまくり、かなり満足の滞在だった。
ここ数日の変化として、朝ご飯に焼きそばを出してくれるようになった。焼きそばはスタッフ用に作っているのだが、数日前から来ている香港人夫妻が焼きそばをリクエストしたのが始まりで、私達にも振る舞ってくれるようになったのだ。白人にもリクエストがあれば出すのだろうが、リクエストしていないようなので彼らは相変わらずトーストを食べている。
こういう事をされるからアジアが居心地よくなってしまう。食べ物に関して気持ちが通じるというのは百の言葉を費やしたよりも効果的だ。
朝食をしながら、香港人夫妻とおしゃべり。この夫妻は余計な脂肪がついていなくて、よく食べるし、よくしゃべるし、とても健康的だった。毎朝、太極拳もしている。彼らとその話題になって、朝食後に私もちょっと教えてもらうことになった。
旦那さんが教え方が上手くて、どんどんはまっていく。あんなにゆっくりとした動きなのだが、1つ1つの動きに注意を払ってやろうとすると案外体力を使う。1時間くらい教わってやっと基本の動きが1つできる可能性が見えてきた。拳法だから型を体に覚えこませないとだめだな、これ。
いい汗をかいたので海に入ってシュノーケリングしようと思ったら、とてもロータイド。ここに来てから干潮の度合いが日々増しているような気がする。これでは珊瑚礁にあたって泳げそうもないので、反対側のもっと深い方で泳ぐことにした。
シンガマタでの日々はこんな感じだった。ジェネレーターで発電しているので電気は基本的に夕方の6時から夜中までしか使えないことになっているのだが、時に午前中は使えたりした。そういう時は部屋でサイト更新作業を行い、電気が使えない時は外で泳ぐ。気が向いたら旅行者とおしゃべりして、夕方は夕陽を楽しみ、夜は電気が使えるのでサイト更新したり映画を見たり。きれいな海に取り囲まれているという事が非常にアドバンテージが高くて気持ちのいい滞在だった。
白人でここに来る人と話をしてみると、言い方は様々だが要は失業してここに来たという人が少なくない。アメリカのサブプライム問題がヨーロッパにまで広く波及しているのを肌で感じた。もっとも、日本人と比べると失業に対してそんなに悲観的ではなく、「ここ数年一生懸命働いてきたから1年くらい休んでもいいと思う」とか「次はこんな仕事に就きたい」という話が気楽な感じで出てくる。ヨーロッパ人のこういう肩の力が抜けた様子を見ていると、日本人はまだまだ緊張度が高い社会で頑張っているんだなぁと思う。
午後にはカナダ人のダニエラが出発するので見送った。
ところが、30分もしないうちにダニエラが血相を変えて戻ってきた。どうしたのかと思ったら財布がなくなっているのだという。部屋を探したのだが見つからないし、飛行機の時間が迫っているので仕方なくそのまま宿を離れることになった。コタキナバルに戻ってからカード紛失の手配やらいろいろと大変なことだろう。
ダニエラは1年間の予定で旅を始めて2ヶ月経過した所だった。空港で出会ったスペイン人男性と知り合い、安くなるからとこの宿で個室をシェアーしていたのだが、だんだんと気が合わなくなって「今朝早くスペイン人男性はサヨナラも言わずに出て行ったのよ」という話を午前中に聞いたばかりだった。この男性は勤めていた会社が倒産して丁度いい機会なのでアジア旅行に来たそうだ。ダニエラは宿のスタッフを疑う節もあったようだが、私は同室のスペイン人男性を考えた。喧嘩に近い状況、失業して旅をしているという背景、同室で荷物管理が甘かったダニエラ。彼という可能性もある。開放的な気分になっているダニエラは毎回部屋の鍵を閉めている私に「あら、毎回閉めているの?私は面倒だから時々鍵をかけていないのよね」とも言っていたから、誰でも部屋に入れてしまう状況もあった。ダニエラの事件は私達にも再度の警告になった。
ところでダニエラとスペイン人男性はどうして気が合わなくなったか?
スペイン人男性はとにかくマッチョというかレディーファーストを徹底しないと気がすまないタチだったらしい。ドアを開ける、荷物を持つ、女性の後ろを歩くなどなど。カナダ人のダニエラもそういう文化を引いているとは思うのだがもっと現実的で、女性が先を歩いているなら先に部屋に到着するのだから女性が鍵を開けてドアを開ける事になるのが当然だろうし、荷物をバスの荷物棚に上げるのも都合がいい場所にいる人がやればいいので性別は問わないというのがカナダ流なのだそうだ。それをスペイン人男性は、既に部屋の鍵を手に持っているダニエラを制して自分がやろうとしたりするから、ダニエラはだんだんとイライラしてきて言い合いになったというのだ。まぁ、日本人同士でさえも一緒に生活していると自分の思っている習慣とは異なる部分が気に障ってくるものだが、国が違うと更に多くの点で感じるだろうなぁ。それにしてもカナダとスペイン。どちらもレディーファーストなイメージがあっただけにダニエラの話は意外だった。
こんな風に同じ宿に宿泊していても色々な人がやってきて話ができるので、天気が悪くても電気がなくても結構楽しく時間を過ごせた。最後の日になってダニエラに事件は今までで一番騒々しい出来事だったが、それを除けば日々平穏でのんきな毎日だった。
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