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2009.10.02
オランウータンに会いに行こう!
ボルネオ島で楽しみにしていた1つはオランウータンを見ることだった。コタキナバルの町中の旅行代理店には可愛い子オランウータンのアップの写真が張ってあり、心を揺さぶられる。
オランウータンが野生で生息しているのを見学するにはジャングルツアーに参加しなくてはならないが、半野生の状態ならばセピロックにあるオランウータン・リハビリテーション・センターに行けば簡単に見られる。ロンリープラネットには、あまりに大勢の観光客が詰めかけツーリスティックに過ぎる点や、多すぎる観光客がオランウータンに病気をもたらしているなどの弊害を挙げてもいて、自由旅行で動いている白人はジャングルで野生を見る傾向にある。しかし、どんなに観光客が多くとも野生で見るよりも確実に近くでオランウータンに会えるという点から、私達は行ってみることにしたのだ。幸いにも風をひいたりしていないので、病をうつす危険性はないようだ。
リハビリセンターに行くにはサンダカンを拠点にすればいいのかとも思ったが、サンダカンの町が美しくない上あまり見所がない、セピロックにいい宿があるという情報を他の旅行者から得て、私達はサンダカンではなくセピロックの宿に滞在することにした。
Paganakan Dii Lodgeというこの宿は朝9時と午後2時の2回、無料で宿からリハビリセンターまで車を出してくれる。センターまではほんの5分ほどだ。帰りは午後2時か4時に車を出してくれるというので、10時と15時の餌付けを見て4時に帰ることにした。
一人RM30(=\900)の入場料金とカメラ持込料金RM10(=\300)を支払って、さっそく10時の餌付けを見学するために森の中に入ろうとすると、一人旅行をしている日本人男性が「この後、ジャングルトレイルするなら、あらかじめ事務所での登録が必要なんですよ」と教えてくれた。リハビリテーション・センターにはいくつかのトレイルがあって無料で自由に散策できるのだが、安全のために事前の登録が必要なのだそうだ。事務所に行くと、今オープンしているトレイルはバードトレイルだけだと言われたのでバードトレイルを登録したのだった。
登録を終えて、森の中へと入った。餌付けのデッキまではボードウォークになっているのでサンダルでも行ける。展望ポイントには既に多くの観光客が鈴なりになっていて巨大望遠レンズを構えている人も何人かいた。餌を持った係員が来る前に子オランウータンが早くも登場。そして2頭目の青年オランウータンもやってきた。
午前中はこの2頭のみだったが、餌付けデッキから別のデッキに渡されたロープにつかまったまま餌を食べる姿や、2頭がロープにつかまったままじゃれあったり、でんぐり返りしたりする様子はとても可愛らしかった。
展望ポイントから餌付けのデッキまではかなり距離がある上に、木陰になっているので私のカメラではよく撮影できないのが残念。超望遠レンズのカメラはよく撮れていることだろう。
オランウータン君達も去っていってしまったので、トレイルのことを教えてくれた村上さんと一緒にバードトレイルを歩くことにした。村上さんは日本から休暇できているということだが、今回はインドとボルネオというマニアックな選択肢だ。ほんの数日前に体験したというデリーでのフレッシュなインド話はかなり面白かった。勝手に旅行代理店に行くタクシードライバー、マージンがもらえるホテルに勝手に連れて行くリクシャー、夜中だからと足元を見て法外な値段を請求するホテル。話としては面白いが、村上さんがどんなにウンザリしたかよぉーくわかる。
そんな話をしながら、私達はバードトレイルを歩いていった。バードトレイルは先が行き止まりになった一本道のトレイルで、片道40分だと聞いていた。途中に看板があって、まぁ、そんな感じだ。
この看板が出た所からはボードウォークもなくなり、本当に森の中を歩くことになるのでウォーキングシューズじゃないと調子が悪い。
トレイルは丘の上に向かって上がる。道はだんだんと狭く急になり、本当にジャングルを歩いているようになった。強いひざしが木の間からちらちらと落ちる森は鳥や虫の声がして緑がムッと香るような湿気に包まれている。
「あっ」と村上さんが声をあげて歩を止めた。どうしたのかと思ったら彼の綿のズボンにヒルがくっついているのだった。幸いにも肌にあたっていないので血は吸われていなかったが綿のズボンはヒルの歯がくっつきやすくなかなか離れなかった。私達のズボンにもヒルが飛んでくるようになったが、トレッキングパンツなのでヒルも食いつきにくいらしく簡単にはずれた。それにしてもヒルが多い。村上さんいわく、ヒルは温度探知機を持っていて熱を持った生物がいると目がけて飛んでくるのだそうだ。だから立ち止まっていはいけないんだって。
バードトレイルの最終目的地はちょっとした高台になっていて、白人グループが固まっていた。彼らはここがデッドエンドだと知らなかったのでどうしていいかわからずに困っていたのだった。来た道を戻ればいいのだと教えてあげて、ついでに立ち止まっているとヒルが降ってくるらしいと村上さんのヒルの温度探知機の話をしてあげたら、みんなクモの子を散らすように下山していった。
高台といっても別に周囲に景色が見えるほど高い場所でもない。とりあえず「ヒルにも負ケズ」歩いてきた記念に村上さんと撮影して、私達も降りることにした。
触れ込みにあるように
「もしかしたらオランウータンに会えるかも?」
「もしかしたらテングザルに会えるかも?」
というのを期待して歩くとつまらないかもしれないが、短い時間だが手軽に本物のジャングルに触れられると思えば楽しいトレイルだ。
この後、お昼ご飯でも食べてサンダカンに戻ろうという村上さんにテングザルのサンクチュアリーを教えたら、面白そうだと早速行くことにしたらしい。手配していたタクシー運転手との値段交渉もうまくいったらしく、親指をグイと突き上げて車に乗って去っていった。
私達はセンター内のレストランでゆっくりとご飯を食べ、午後2時から事務所の向かいの建物で行われるビデオ上映会を見る事にした。
オランウータンの生態についてのビデオなのかと思っていたが、それだけではなくリハビリセンターの活動も紹介するビデオだった。このセンターでは孤児になったり怪我で動けなくなったオランウータンを収容して、野性に戻してあげる活動を行っている。UKのチャリティー団体が母体のこのセンターは団体からの資金とともに、センターへの入場料金とオランウータンの里親制度も活動資金源になっていのだそうだ。とても明確なメッセージのビデオで、可愛いオランウータンのビデオを見せただけで脈略なく資金提供を募るよりはずっと親身な感じがして、UKというのはこういうのがうまいなぁと感心した。
そうこうするうちに午後3時。2回目の餌付けとなったので、再びデッキに行った。午後からの方が見える確立が高いかもしれない、と宿のアントン氏がここに送ってくれる車の中で言っていた。そんな状況を素早く察知しているのか、午後からの観光客は中華系がやたらに多かった。彼らは午前中の白人に比べるととてもにぎやかな人たちで、デッキの上で餌付けをする係員は「SENYAP 請安静」とマレー語と中国語で書いた看板を掲げていた。午前中、この看板はなかったなぁ。
アントン氏の言うように、午後からは3頭のオランウータンと他の種類の猿もやってきて、午前中よりはにぎやかになった。朝よりも太陽光が陰ってコントラストが弱くなるのでデッキの上が撮影しやすいのもいい。中華系の人たちは時間がないのか短時間で去っていてしまうので、あとはゆっくりと少ない人数で見学できる。子オランウータンのあどけない表情やロープで遊ぶ様子が可愛らしくて、午後4時のピックアップ時間ぎりぎりまでデッキで見物したのだった。
2回目の餌付けを一緒に見学したのは日本から短期旅行でやってきた女性だった。コタキナバルのバックパッカー宿では1組しか日本人旅行者と出会わなかったのに、今日だけで2人も知り合うことができた。このセンターはボルネオで一番人気の観光スポット(ロンプラによると、キナバル山よりも人気)だというのも理解できる。
オランウータンとの出会いも面白かったが、久しぶりの日本人旅行者との出会いも新鮮な一日だった。
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