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2009.09.21
キナバル山登山第二日目
キナバル山の二日目は午前1時半に始まる。レストハウスで用意されているアーリーサパーを食べて、午前2時に頂上に向けて出発。日の出を見てから午前7時にはラバンラタに戻って朝食。正午までかけて下山し、麓のレストランで昼食して終了という予定だった。
昨日の久しぶりの大運動で疲れていたので案外すっきりと眠れて、午前1時に目覚まし時計が少し鳴ってすぐに目が覚めた。ところが、外は大雨。というか暴風雨に近い嵐で外に出ることもままならない状況だった。午前2時を過ぎると部屋から人が出てきて、心配そうに外を見ているのだがどうしようもない。午前2時半、下から公園の係員が上がってきて今日は天候不順のために上に上がれなくなったという旨を私達に伝えた。朝7時に朝食に降りてきてくれということなので、各自部屋にあがって再度眠りについた。
午前7時、雨脚は夜中よりも弱まってきたとはいえかなりの大雨が降っている中をレストハウスまで行き朝食。午前2時半の情報と変わらず、ラバンラタから上に行くゲートがクローズされて誰も上に行けないという公園側の判断だった。
山の経験豊富な白人年配者は「仕方ない」と言っていたが、私達とアイリッシュの兄ちゃんは最後まで「どうにかならないのかねぇ」と話し合っていたのだが、どうにもならなかった。
午前8時50分、私達はガイドともう一人の日本人男性と4人で下山することにした。折角ここまで登ってきたのに、ここから視界が開けて楽しくなりそうなのに本当に残念。といっても登れたとしても、今日の状態では何も見えないだろう。
持ってきたウォータープルーフパンツがこんなに役立つとは思わなかった。とにかく下山して2時間くらいずっと雨が降りっぱなしだったからだ。石段も少なからずある道はすべりやすいので慎重さが要求されるのだが、あまり慎重に降りるとこんどは膝に負担がかかりすぎる。ある程度のスピードを上げながらすべらないように下山するのは、なかなか神経がいる作業だった。
雨がやんだ11時過ぎに少しだけ雲間に青空がのぞく天気になったが、それでも雲が多い。それにもかかわらず、日本のシルバーウィークの始まった日だったので登山する多くの日本人団体客とすれ違った。中には80代と思われる女性も見かけた。
後に同じ宿に宿泊していた中国人が、私達が下山したこの日に登山をした。残念ながら翌日の午前2時は同じように悪天候だったのだが、ゲートクローズまでは至らず、経験を積んだ登山者で自信がある人だけ自己責任で頂上をめざしてもいいと言われて数人をのぞいてほとんどの人は諦めて下山してきたのだそうだ。ところが、この登頂をめざした数人の中に80代と思われる日本人女性がいたというのだ。ほえーーー。きっと私達が見かけたお二方じゃないだろうか。中国人の「日本人は長寿だと聞いていたが、あの年であの天候で登頂を目指すような人がいるんだから長寿というのは本当だと思った」という感心のし方が面白かった。
12時に出発地点のTmpohonゲートに到着。下山にかかった時間は3時間10分。70歳だという日本人男性もほぼ同じペースで、この方も素晴しかった。私達は下山のスピードが速すぎると注意を受けていたのだが、あれよりスピードを落としたら足の筋肉がもたなくなりそうだった。
ピョンピョンと飛び降りるように降りてきたので膝には負担がかかったが、筋肉はぎりぎりもった。ストックがあったらどんなにか楽だったろうか。今回は何も支えを使わないでぎりぎり。ゲートにたどりついた時は、正直、悪天候で良かったとさえ思ってしまうくらい限界に達していた。
ここから車で事務所まで戻って昼食はレストランでビュッフェ。ラバンラタで宿泊予約をすると漏れなくこの昼食までの食事全てがついてくる。というか食事全てを買わされるというシステムだ。
頂上まで行けなかったのは大変に残念だったが、それでも久しぶりに激しく運動した後の爽快感は十分にあった。同行の男性はエージェントがお迎えに来ていたのでここでお別れ。私達は公園外の公道まで出てバスでコタキナバルまで帰る。
公道まで出ると、道路の向こう側でニコニコと手を振るバスドライバーがいて、バスは客待ちしている状態だったので簡単に乗ることができた。ポーリング温泉からの帰りだというシンガポール人の夫婦が一緒に帰るようだ。ポーリング温泉から近いラナウという町からこのバスに乗ってきたのだが、ここキナバル公園で客待ちするというので食堂でご飯を食べていたんだそうだ。現地のバスの事情に合わせて臨機応変にゆっくりと安く旅をしているこの夫婦は、肩の力の抜けた感じがして、短い登山の間に出会った日本人旅行者と対照的だった。日本人旅行者は、自分が計画した通りに事が運ばないと我慢がならないようだ。それはそれで、ゆっくりしすぎている国の事情を発展させるのに役立つ場合もある。しかし、我を通すために実は法外な料金を取られている事をご存知なのだろうか。旅のバランス感覚は金銭や時間など様々な要因から構成されているが、異なるバランスの旅を楽しむのもいいんじゃないかなぁとシンガポールの夫妻を見て思った。
ミニバスの車窓から見たキナバル山は巨大に渦巻く綿帽子をかぶっていた。雨季に入ってしまったのだろうかと思っていたが、この数日後からまた天気が良くなってゾクゾクと登頂の報告をコタキナバルで聞くのはちょっと辛かった。山の天気は難しい。何年先になるかわからないが、乾期にストックを持ってもう一度挑戦したい。
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