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2009.07.09
ニュー・シネマ・パラダイスを彷彿とさせるフバールの町
クロアチアで今一番ホットな島フバールに到着。ロンリープラネットにも人気があると書いてあったし、ここまでで出会った他の旅行者もフバールが一番楽しみだと語っていた。何がそんなにいいのかフバール。
朝早くにフェリーでコルチュラからフバールに到着し、宿に9時前に入ったものの部屋に入れるのは12時以降だというので、荷物を預かってもらって早速食料調達と町巡りを開始した。
フェリー乗り場のある湾から急な斜面を埋めるように赤い屋根の家が立ち並び丘の上に城塞がある風景は、コンパクトなまとまりのある景色で心地いい。斜面の上の方にある宿から中央広場に向かって降りる道中は車が入れない小道で、この島やコルチュラ島で採取されるトラバーチンという大理石が階段などにふんだんに使われているので何気にゴージャスなことになっていた。
階段を降りきってたどり着いた広場には野菜と果物を売る市場があり、それを取り巻くようにパン屋が2軒、肉屋が1軒、魚屋が1軒、スーパーが1軒ある。規模は小さいがなかなか活気に満ちた場所で、これなら自炊生活も楽しそうだ。市場とスーパーの品物を比較検討すると市場は鮮度が高いが値段も高い。市場は雰囲気がいいので観光客向きになっているようだ。スーパーで十分だと踏んだ私たちはほとんどの食材をスーパーで購入した。
市場のあたりからメイン広場に出て見ると、まばゆい石畳みの広場と石でできた建物がずらり。全体が白く輝いてひなびた風景がイタリアの田舎、そうニュー・シネマ・パラダイスに出てくるような風景に似ているのだが、それを彩るレストランやカフェやブティックが近代的な演出をしているので単なる田舎とも違う。ノスタルジックなのにカッコいいっていう所がフバールの人気なんだろうと思われた。歴史が作り上げたこういう町並みは短い時間では真似できない重みと魅力がある。
広場からフェリー乗り場に周りこんでみると、朝は見なかったゴージャスなクルーザーが停泊して人々の注目を集めていた。この晩、他の宿泊者とクルーザーの持ち主について話が盛り上がった。やっぱり皆気になっているらしい。ある宿泊客はしたり顔で「これは聞いた話なんだけど、あれはロシアンマフィアが持ち主らしいよ」と語っていた。私たちが見た時には美女たち(夫は美女ではないというがスタイルは皆よかった)が上のデッキに出てきて、クルーザーを見上げる下々の民衆をバックにお互いに写真を撮りあったりしていたから、このマフィア説に私も大きくうなづいたのだった。どーでもいいっちゃ、どーでもいい話だが。
このハーバー沿いには旅行代理店とレストランが並んでいて、石作りの家のベランダに花を飾ったり、島内で取れるのだろうかラベンダーの香水やドライフラワーを売る洒落た屋台が出ていたりして、フバールの表玄関としての通りを飾っている。フバールの目の前には無人島が点々と存在しているのでそこに行くボートタクシーもここから出ているようだった。私たちはフバール発のVIS島にある「青の洞窟」へのツアーに参加する予定だったので価格調査もこの辺りでできた。因みにVIS島の「青の洞窟」へのツアーは1社しか行っていなくて一人KN350(7000円、昼食付き)だった。同じ宿に宿泊している白人カップルから青の洞窟には行かないがVIS島方面にセイリングする帆船ツアーが一人KN580であると聞いたが、青の洞窟に行かないのなら興味なしと却下した。他にはフバールの目の前に横たわる無人島へのボートタクシー(乗り合いで時間が決まっている)が一人KN35だった。
町を見て人の流れを見ると、みんながどんな過ごし方をしているのかが見えてくる。この町では朝は遅く起きてボートタクシーで向かいの無人島に行くか近所のビーチに寝転び、夕方からレストランやカフェで夕食、夜はクラブで踊ったりしゃべったりして夜中まで遊ぶ。これがフバールのライフスタイルみたいだということが見えてきた。
じゃぁ、その皆が泳いでいるフバールの海はどんなものかと海岸線に行ってみた。ここもコルチュラと同じようにビーチといっても岩場が多い。水はこうして写真で見るときれいなのだがコルチュラと比べると汚れている。あの美しい水質で泳いできたばっかりの私たちはどうにも入る気分になれなかった。
さて、旧市街をぶらついて海岸も見学したら残す見学場所は丘の上の城塞だけだ。午後2時、日は高く暑さもピークを迎えていたが頂上めざしてちょっとしたハイキングを開始。
中央の広場から丘に上がる階段沿いには細い路地沿いに日陰のレストランがあったり、小さな教会が見えたりして趣のある通りだった。
やがて城塞の足元ともいえる地点で左右に分岐していて右手が近そうに見えたので右に坂道を登っていくと、どんどん眼下に景色が広がって美しいフバールを堪能できた。
とーこーろーがー。せっかくたどり着いた城壁の門は固く閉ざされていて、それどころか門に至る階段も崩れて門に近づけない。あー、さっき分岐点で路上にバッテンが書いてあったんだよねー。もっと言葉でわかるように書いてくれないとぉーーー。
私たちの先を歩いていた白人カップルも門の前で愕然。4人で指示看板の悪さを呪う悪口で妙に盛り上がりながら、来た道を戻ったのだった。
分岐点から左への道はさっきと比べると各段になだらかな登りで、大きな木の陰があって涼しくて歩きやすい。最初からこちらに来ていればどんなに楽だったか・・・。しかしながめが良かったのは苦しい方の道からだったことを思えば、あの過ちも無駄ではなかった、と思うことにしよう。
正しい城門に到着。クロアチアに入って2週間が経過しようとしている。こういう場所でKN20(400円)くらい入場料を取られそうだなぁと予想していたらぴったりKN20の入場料だった。ここまで頑張って炎天下を登ってきたら、踵を返す方が勇気がいる。クロアチアの作戦勝ちだ。やれやれ。
料金を支払って入った城塞は何よりも景色がご馳走って場所だった。クロアチアの赤い屋根、エメラルドグリーンのハーバーと白い軌跡を描いて走るボート、ダルメシアン地方特有のポコポコと海に浮かぶ島々など夏のすがすがしい景色が遮る物なく見られたのは本当に良かった。
ところで、とにかく喉が渇いていた私たちはこういう場所でアイスクリームでも食べたらさぞやおいしいだろうとそれを目標に頑張ってきた。見回すとアイスの絵のあるカフェの看板発見。とーこーろーがー。7月に入ってもうハイシーズンだというのにカフェはクローズ。ごめんなさいという感じで無料のミネラルウォーター10リットルとプラスチックカップが置いてあるのみだった。しかも、誰もがこの水をめがけてくるので冷水部分は既に終了して出てくるのは生ぬるい水ばかり。何故、繁忙期にカフェを開けない。クロアチアの不思議の1つだ。「いずれここにも中国人が来て24時間カフェを開けたらいいのだ」と又もや呪いの言葉を吐いたのだった。
景色以外で見るものといったら、牢獄跡。この城塞の基礎部分に罪人を閉じ込めていた場所が見学できる。
「俺は気持ち悪いから行かない」と夫が言うので私一人見に行ってみたが、石に囲まれてヒンヤリした場所で、小さな個室の窓から海が見える。計らずも「悪くない」と思ってしまった。
1日歩いて見てフバールはなかなか魅力的だと感じた。メインランドのスプリットからフェリーで約1時間という地の利の良さに加え、かっこいい町並み、洒落たレストランやカフェ、大変すぎない丘への散策と丘からの景色などその場に身を置くと自分がかっこよくなった気分になれるスポットがたくさんある。だから、コルチュラなんかに比べるとヒールのサンダルとサマードレスとつばの広い麦わら帽子なんてファッションの人が多く、これが又、町並みに華やぎを加えていた。もっとも旧市街の石畳っていうのはピンヒールがはさまりやすい。アイスをかじりながら気取りかえったお姉ちゃんのピンヒールが石畳にはさまっちゃうのを見学できるのもフバールの楽しみの1つといったら意地悪?ま、色んな意味で楽しい。
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