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2009.06.27
旧市街は宮崎駿の世界だ!
クロアチア:ドブロニク

 ドブロニクは大きく分けて3つのパーツに分かれた町だった。1つはバスターミナルやフェリー乗り場のあるGruz。私たちの最初の2泊はこの地域にある。もう1つは明日からの新しい宿もあるLopad。メインランドから突き出た半島になっている場所で住宅やホテルの多くがここに集まっている。Gruzとは海をはさんで東側になる。そしてGruzやLopadから見て南西に海に突き出た小さな半島、これが城壁に囲まれた旧市街となり城壁内は車が入れないようになっている。

 Gruzからバスに乗って旧市街近くのPloceで降りると、ほぼ目の前に旧市街への入り口となる門が口を開けていた。地元のフリーペーパーで見たのだが、今年に入って日本からダイレクト便の就航が始まっているそうだ。この時も日本人の団体観光客を2組もみかけた。世界遺産という意味でここを訪れる人が多いかと思うが、日本人なら宮崎駿氏のアニメーション「魔女の宅急便」に憧れて来る人もいるだろう。

 知り合いのタビゴコローズのあゆみさんは、世界旅行に出る前に会社の同僚から「キキセット」なるものをプレゼントされて、2年近くバックパックに潜ませて旅を続け、ついに先ごろキキの格好でこの旧市街を歩いたという快挙を旅のサイトに掲載していた。彼女たちとは中国で出会い、その後南米で再会したのだが、まさかそんな物を潜ませて旅しているとは思わなかった。彼女にそこまでさせるドブロニクの旧市街はどのくらい宮崎駿の世界なのか、というのも私たちの今回の興味の1つだった。

 門は城壁をくり貫いて作られているのだが、この部分の城壁は特に厚い。6mくらいあるんじゃないだろうか、その厚さを門をくぐることでまず体感できる。因みに午前中はここに衛兵君が2人立っている。別の門にも2人立っていて合計4人の衛兵君を目撃したのだが、4人とも超色白かつ華奢で夏休みのアルバイト学生という感じで弱っちい感じだった。どういう基準で人選してるんだろうか。

 門をくぐって少し歩くと城壁内の奥までを貫くメインストリートのストラーダンStradumが見える。朝日に照らされた通りは石畳で、周囲の建物も相応の古さを見せている。何もかもがベージュに包まれているような雰囲気がいかにも旧市街的で昨日の今日には作れない味を出していた。このメインストリート沿いにほとんどの見所が集まっていて、見所を埋めるように店が並んでいる。旧市街はメインストリートを中骨として左右に碁盤の目上に細い路地が走っていて、とても整然としていた。

1438年造られたドーム型の給水塔
 
(左)給水塔の蛇口の彫刻 (右)1667年の大地震でも残った
St Saviour Church。左の階段を上ると城壁の上を周遊できる。
(有料)

メインストリートStradun。いい感じの古さを醸し出す。
 
(右)ヨーロッパで3つ目に古くて、ヨーロッパで始めて一般向けに
開かれた薬局はFranciscan Monastery & Museumにあった。

メインストリート沿いの教会内部
 
教会の外壁に不思議なでっぱり。よく見たら変な顔だった。

 メインストリートから左手の路地をのぞくとすべからく急な階段で上がっている。カフェが多く出て人のたくさんいる路地あり、植木鉢の多い民家の路地ありと様々な顔を見せる路地をあがってみよう。1段上がってメインストリートと平行に走る道はレストラン街だった。高いだろうなぁと思ってメニューを見ると本当に高い。シーフードの盛り合わせやスカンピの炭火焼などは2人分で3000円以上もするようだ。1軒の店ではちょっとした日本語で話しかけてくる店主がいて自分の店が掲載された日本の雑誌を見せてくれた。別の店では店の名詞にサインして「これを持ってランチタイムに来てくれれば食前酒をつけるから」と耳元で囁かれた。至る所「ツーリスティックでございます」の空気がプンプンとしていて、絶対ここで食事しちゃいけないなぁと思いを強くするのだった。
  
(左)路地の階段の途中の彫刻、(中)民家の多い路地、(右)細い路地を見下ろすと宮崎駿な世界が見えてくる。

 再びメインストリートに下りて一番奥の広場に向かおう。この広場の周囲にもパレスや教会などの見所があり、多くの人で賑わっていた。というか人が多すぎる。ドブロニクがこんなに人気名町だったなんて知らなかった。

16世紀のSponza Palace
 
(左)メインストリートを振り返る、(右)パレスと時計台

St Blaise's church

 クロックタワーを抜けて右手に回り込むとハーバーになっていた。ここからは目の前にあるロクルムLokrum島へのフェリーシャトルが頻繁に出ている。チケット売りの屋台が多く出ている場所でもある。ロクルムはユネスコ保護自然遺産の公園になっていて、手軽に美しいビーチにアクセスできるというので人気だが往復KN80という料金はもっと遠いミレイ島(往復KN50)に行くよりも高いのに納得がいかなくて見送った場所だ。ハーバーはこんなに頻繁にボートやフェリーが出入りしているにもかかわらずエメラルドグリーンの水をたたえて、それが城壁の古いベージュや赤い屋根とマッチして非常に美しかった。

 ここまで歩いてきてお腹が減った。しかし城壁の中はいかにもツーリスティックな店しかなくて値段がとても高くて食べる気がしない。城壁の外に出るしかないとクロックタワーから今度は左手に進んだゲートから出て歩くと、パン屋さんとスーパーが見つかった。これこれ、これでいい。ここでピザパンとパンチェッタとクロアチアでよく見る揚げドーナツを買って600円くらいで済ませた。城壁内で安く食事を済ませたいなら、メインストリートの南側(私たちが見て歩いたレストランは北側にあった)の路地にあるピザ屋などになるだろう。それでも城壁の外よりは200円くらい高いが北側のシーフードよりはずっと安い。

 これまで宮崎駿の世界は北側の路地からメインストリートを見下ろした場所くらいしか見つからなかった。やっぱり城壁に上がって上から赤い屋根を見ないとダメみたいだなぁ。城壁に上るには何ヶ所か入り口がある。クロックタワーの近くにも1つ入り口があったので、私たちはここから城壁周遊を始めることにした。入場料金は一人KN50(=US$10)だった。

 城壁はグルーッと旧市街を取り巻いているので一周できる。全長2km。この時期の午後の日差しは大変に強いので私たちは水を買い込んで城壁周遊へと向かった。周遊は半時計周りの一方通行らしい。逆戻りできないので見落としのないようにしなきゃなぁとこの看板を見て思った。

 城壁に上がるや先ほど見たハーバーが右手に見えてくる。ここから見るとロクルムは本当に近くに見えた。豪華客船も停泊して初夏のハーバーはウキウキするような風景を作り出していた。

 右手には早くも下からはあまり見えなかった赤い屋根が見え始めている。

 半時計周りに今朝私達が入ってきたゲートを目指す道は上り坂になっている。目線が上がる度に赤い屋根がどんどんと眼下に広がってそれはそれは圧倒されるくらいの景色。右手は城壁の外側が見えていて、こちらも幾何学模様の面白い形を見せていた。それにしてもこの赤い屋根の並は凄い。想像していたけれど、それ以上だ。

 とはいえこの中には普通に暮らす人がいる。こんなに世界中から人が見に来ていても屋上でお父さんのパンツをパンパンとはたいて干しているお母さんの姿がまたアニメーションを彷彿とさせた。



 更に城壁は上り坂になって、城壁の中で一番高いポイントMinceta Towerに到着。飛びぬけて高い塔を上る途中には見張り窓が四角く切ってあり、そこを額縁に見える赤屋根群もまた美しい。塔の一番高い場所からの眺めはやはり一番いい。ただし、光の加減で屋根の色が場所によって違って見えて、10分前(午後0時50分)のロクルム島が左手に見える場所が一番美しく見えた。
  



 塔を降りてから更に城壁も下り坂になる。左手には今度は城壁の外の海が見えてくる。時刻は午後1時過ぎ。こんな暑い場所にいるよりは、あの海にスッポリとはまっていたいという時間になってきた。うー、エメラルドグリーンの色が私を誘う。
 

 右手を見ると、朝の出発点の給水塔、そこから続くメインロードが時計台まで見える。午後1時を過ぎたというのに観光客の数は減るどころかむしろ増えているようだ。こうして遠くから見ていると、人々の服装がよく見えないので古い町にタイムトリップして昔の活気のある町を見ているような気分になって、また宮崎駿の世界にいるような錯覚が襲ってくる。

 塔からまっすぐに海に伸びる城壁は一旦下ったものの、曲がる手前で再び上りに転じる。右手には岬の上に立つ城塞と美しい海が全容をあらわしていた。こちらはそんなに高い位置ではないので目の前の民家がよく見える。城壁の中だけれどちゃんと庭もあって花が咲き誇っている。城壁の下は石畳に覆われていて土があることを感じさせなかったので不思議な気がした。家と家の間の狭い路地は北側と同じく急な階段で中央に向かってくだっている。今にも家と家の間に洗濯物がスルスルと出てきそうな、あるいは宮崎氏の描く少年や少女がそこら辺を走り回っているようなイメージの沸く場所だった。城壁の外は今度は岬の一番出っ張った部分を利用して、白いパラソルを立てたお洒落なカフェが出ている。カフェは椅子だけでなくビーチベッドも用意していて、ここから海に入れるようにもしていた。いかにもヨーロピアンリゾート名この風景は、数メートル離れた城壁の中の生活感あふれる風景と真逆にあって不思議な対比をなしていた。

 ところで、このカフェの数メートル手前に肝試しに丁度いい岩のでっぱりがあり、10代と思われる男女が次々にそこから海に飛び込んでいる。しかし、中に一人どうしても怖くて飛び込めない男子がいる。年齢はグループの中でも最長に近く、背も高くてカッコ良さそうな彼。しかしずっと小さな小学生さえも飛び込んだというのに彼一人進んではあとずさり。とうとう彼以外の全員が飛び込んで海の中で囃しながら彼を待った。城壁の上にも観光客が集まり、上からヤジを飛ばしている人もいる。行けー!行けー!しかし、結局彼は勇気がなくて断念した。あーあ、2009年夏の失態は何年も語り継がれてしまうのか。時に子供の世界は残酷だ。
 

 こうしてようやく最初に上ったクロックタワーの出発点に戻って城壁周遊が終了。途中のカフェでアイスクリーム休憩したり、海に飛び込む子供を見物したりしてゆっくり見ていたので全部で2時間かかった。夏の午後に回る人は大量の氷水でも持って行った方がいい。




 城壁を降りてからは午前中に見残していたメインストリートの南側を回った。メインストリートの厳しい教会や宮殿に比べると、こちらはもっと庶民的なエリアでメインストリートの半分の幅ほどの通りには気軽なカットピザの店やちょっとしたブティックなどが並んで、涼しいこともあってこちらの通りに人が集まっているようだった。

 途中の教会では週に3回夜クラシックコンサートを行っているようなので、最後に城壁内のインフォメーションに立ち寄ってチケットの値段を聞くとよくわからないけどKN100あれば足りるという話だった。そんなアバウトでいいのか、インフォメーション。ロンプラには50とか書いてあったけど結局行かなかったので正しい値段が分からずじまいだった。

 ロンプラの地図を見て、旧市街の観光は半日くらいあればいいなぁと思っていたがどうして、どうして、あっという間に時間がたって丸一日楽しんでしまった。町自体が世界遺産という場所は世界の他にもあるが、これほどきっちりと古い建物に囲まれるとそういう遊園地にいるようでついつい長居してしまうのだ。旧市街の中を歩き回って、更に町を城壁の上から見るのが楽しい。


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