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2009.05.17
砂糖菓子のようなお城とユーラシア最西端のロカ岬
リスボンの北西20kmほどの所に位置する標高280mのシントラ。ガイドブックに紹介されているシントラのペナ宮Palacio
Nacional de Penaはまるでおとぎ話に出てくるお城そのもので、見た瞬間に「ここには絶対行きたい!」と思わせる魅力的な写真だった。リスボンから車で1時間もかからない場所なので、ユーラシア大陸で一番西端にあるロカ岬と合わせて一日ドライブに行ってみることになった。
朝10時20分にシントラに到着。日曜日のこの時間でも既に中心地の駐車場は一杯。中心地にあるシントラ城Palacio
National de Sintraまで徒歩5分離れた場所に駐車することになった。その時はやれやれ、もっと早く来るべきだったと思っていたが、この後来た人たちはもっともっと遠い場所に駐車せざるを得なかったので、まだこの時間はましだったと言える。シントラはとーっても人気の場所なのだ。
車を降りた途端に新緑の香りとすがすがしい空気に包まれ、リスボンとは全く違ういかにも別荘地という雰囲気を早くも感じた。
まずは観光案内所に向かうと、シントラ城の模型が飾ってあった。随分と大きなお城だ。しかし、私が写真で見て行きたいのはこちらのお城ではなくてペナ城の方。こっちの内部は見学をしなくてもいいなぁと考えていた。
目的のペナ城はシントラ城のある場所から更に巡回バスに乗って山の上に行くことになる。観光案内所の人の助言では山の上には駐車スペースが少ない上に多くの人が詰め掛けて大変なことになるので、是非バスを利用した方がいいということだった。この助言は当たり。というのもペナ城に向かう道はとても細くて曲りくねった道で、普通の外国人なら山頂に着いただけでかなり神経をすり減らして観光どころではないだろうという道だったからだ。
シントラ城の外観を見てからペナ城に向かおうかと町の中心地にあるシントラ城に向かうと、えらい人気だ。そんなにいいのか、シントラ城。
入り口まで近づいてみると行列までできている。
で、係の女性が「日曜日は午前中だけ入場無料なのでチケット売り場で無料券を入手して列に並んでくださーい!」と叫んでいた。人気の理由はそんな所にあったのだ。
無料。その響きに私たちもつられて無料券を入手してシントラ城を見学してからペナ城に行くことにした(因みに、即刻インフォに駆け込んで確認したがペナ城は日曜日の午前中でも無料にならない)。
あまりに入場者が多いので入場制限をしているので少し行列で待ってから入場。そもそも見学する気はなかったのだが、内部を見ているとどことなく変だ、この城。
この手のお城でよくあるような壁には城主の肖像画が飾られて・・・、ん?肖像画の下の逆台形の模様はアラビック模様ではないか。こんな所にアラビックの趣味が取り入れられている。この発見はまだまともだった。
次の古めかしい木製の棚上には真面目なお城に似つかわしくない動物の頭部。動物愛護団体の非難を受けて剥製からこういう置物に変更したのだろうか。
そして中庭から垣間見える酪農農家のサイフォンのような2つの塔。これは一体何なんだろうか。
数々の疑問を抱えながらも、次々にキッチュな天井の模様が登場。鳥好きだったんだろうか、グロテスク模様っぽい不細工人魚の天井柄もあった。
そして一番の極めつけはこの部屋。ポルトガルではタイルに青のみの繊細な図柄を焼き付けたアジュレホAzulehosが有名な建築物のあちこちに使われている。この部屋もアジュレホが部屋4面を飾っている。
細密な絵柄のアジュレホは15、16世紀のものでポルトガルでも最も古いものの1つと言われているとガイドブックにあった。そんな貴重な歴史的遺産ではあるものの、仔細に図柄を眺めるとみょ〜な絵がある。ぎゃははははは。何度見てもおかしい。人の足のスネについている神妙な顔。耐えているのか悟っているのか。何故こういう図柄になっているのかは専門的な解説があるだろうが、お城を見る楽しみ方の一つにこういうのもあってもいいじゃないかと思った。
見ていくうちに、あのサイフォンのような形の塔はキッチンの煙突だということが判明。こんなに厨房の煙突が目立つ設計のお城っていうのも珍しい。
そんなに真剣に見る気はなかったはずなのに、気が付くとお城見学に40分も費やしてしまった。午前11時半で無料入場時間の制限はあと30分という所。お城への入場者はまだ列をなしていた。
上のペナ城に向かうバスの時刻が12時だというのでまだ時間がある。シントラ城の目の前から町は坂を競りあがって民家やレストランやお店がこちゃこちゃと立ち並ぶ面白い一角になっていたので、そこに迷い込んでいこう。
この中にCasa Piriguitaというやたらに観光客で込み合ったお店があった。ガイドブックにも掲載されているこのカフェの名物はケイハダスqueihadasという甘いチーズケーキだそうで、見ているとほとんどのテーブルでこのケーキを食べている。
一個0.8ユーロのこの焼き菓子を私たちも買って食べてみた。チーズの味はあまりしない、しっとりとした甘い焼き菓子でフランスのフィナンシェによく似ていた。
バスはシントラ城のある町と上のペナ城を巡回していて、遠くに駐車せざるを得なかった人も拾って見所に行けるようになっている。ペナ城に行く途中のCastelo
dos Mourosにも下車できるけれど、ペナ城との単純往復バスチケットを観光案内所で買っていたので私たちはそのままペナ城に向かうことにした。
ペナ城に向かうバスのナンバーや運行スケジュールは観光案内所で教えてもらえる。
間違ってCastelo dos Mourosで降りちゃった私たちは、あとどれくらい歩かなくちゃいけないのかと一瞬青くなったのだが、そこからお城まではほんの数十mの距離だった。お城入場のチケットは城外観、城内部、庭園にわかれていて各々のコンビネーションチケットもあるから悩ましい。
チケットの種別の説明を聞いて、どれにするか悩んで買うので時間がかかるのだった。
私たちは全部混みのチケット11ユーロにした。外観のみ見学の人も多いようだが、せっかくだから内部も見学しようとするともれなく庭園見学付きのチケットになるのだ。
中に入って坂道を上がっていくと写真で見たお城が見えてくる。レモンイエローとローズに塗り分けられた壁といい、窓の形、塔の先の飾りといい本当に絵本の中に出てくるお城のようだった。
このお城をおとぎ話チックにしているのは、その色と形だろう。ディテールにアラビックな要素を取り入れたり、門の頭上に悪魔のような彫刻を施したり塔の下の部分が逆ソフトクリームの形にしているのがとってもメルヘンな感じだし、やっぱり壁の色がとてもメルヘンっぽさを出していて、遠くから見ても近くでながめても面白いポイントが満載だった。
更に、お城は尖った岩山の頂上にへばりつくように作られているので眺望が素晴らしい。内部のベランダから見るとずっと下にシントラ城などがあるシントラの町とそのずっと先まで見渡せて、まさに王様の気分になれる。そういう地形に建てられているので小さな階段であちこちに段差があって、それが面白い空間を作り出している。この面白さはスペインのアンダルシア地方でやはり山の斜面に作られた白い村にも共通することだが、ちょっと階段をあがって後ろを振り返ると空間が交差したり、小さな塔があちこちにあって上れるようになっている景色もミニチュアのお城にいるようで面白いのだ。ところで内部を見学できるチケットも買ったのに、誰もチェックしなかったような気が・・・。もしかして外観だけのチケットでどこまでも行けてしまったのかもしれない。
砂糖菓子の内外を堪能していたら庭園を見る時間がなくなってしまった。庭園はとても広いのでちょっとしたハイキングレベルになるだろう。シントラ城、ペナ城の両方をじっくり見ようと思ったらシントラだけで1日必要だった。庭園は自然の森を活かした野趣あふれるものだったので、今回は見学を見送って、私たちは次の目的地ロカ岬に向かうことにした。
シントラからロカ岬への地図はシントラの観光案内所で入手した。見るからに曲りくねった細い道。走ってみると曲りくねっている上にアップダウンもある道でなかなか運転するのが大変そうだった(夫が)。
お城の区域を抜けて海に近くなると道は広くなり大分走りやすい。目的地のロカ岬までは30分強で到着した。
ロカ岬も人気の観光スポットで個人の車も大型バスもどんどんやってきていた。日本人の団体観光客ももちろんここで見かける。真っ赤な可愛らしい灯台の足元から遊歩道を歩いて行くとユーラシア大陸最西端のロカ岬が見えてくる。一番端にあるというだけでなく、ここのランドスケープのダイナミックな感じと足元の美しい水の色、そして断崖の上に広がる草原が素晴らしい色合いで目においしい景色。いやー、気持ちいい。狭い曲りくねった道のフラストレーションがすーっと解消されていくようだった。
ロカ岬からリスボンへはややこしい内陸の道は通らずに大きな道を走って帰れるので50分でキャンプ場まで戻ってこられた。シントラでもらった地図にはロカ岬よりも北側に見所の場所がマーキングされていて、シントラで1日、ロカ岬とその北部で1日と2日にわけても十分に楽しめるみたいだった。
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