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2009.05.15
リスボン一日散策
郊外にあるキャンプ場からバスに乗ってリスボンの中心地にやってきた。今日はリスボンの街を一日歩き回ってみよう。
トイレを快く貸してくれたカフェ |
で、おいしそうだったから思わずエッグタルト買いました。
できたてで皮がパリッとしている。スーパーのとは大違いだ。 |
バスを降りたのはPlaca da Figueiraという広場だった。まずねぇ、トイレに行きたくなっちゃったわけですよ、私。
広場の下が公共駐車場になっているので入ってみたがトイレはない。公衆トイレも見当たらない。困ったなぁと思っていたら若い警官が立っていたので公衆トイレの場所を聞いてみた。
しかし、ここら辺にはないのでカフェに入って使うしかないんですよねと言う。「カフェに入って何か注文しないとまずいかなぁ」と聞くと、彼は「ニッコリ笑ってサンキューと言いながら出てくればいいんですよ、あはははは」と教えてくれた。
観光客が団体で押し寄せるピッカピカなカフェは避けて、歩行者天国沿いの地元っぽいひなびたカフェでトイレを貸してくれと頼むと、「いいよ」と言ってくれた。その快い対応に感謝して、というかおいしそうだったからエッグタルトを買って食べることになった。この後、数回カフェでトイレのお世話になるが、何も注文しない客のトイレ利用に関して、たまに渋い顔の人もいたけど断られることはなかった。
先ほどの警官との会話がリスボン人との会話一発目。このユル〜イ感じ、伝わるだろうか。人だけでなく、リスボンは町全体がそんな感じだった。大きくて立派な建物といえばポルトガルが全盛の時代に作られた教会や貴族のお屋敷など古めかしいものが多く、超近代的な高層ビルは見当たらない。お店も昔ながらの店構えそのままで、木の棚なんかに古いポートワインが埃をかぶって鎮座していたりする。
起伏の多い街は石畳が残り、そこをおもちゃのような路面電車が縦横無尽に走っている。立派な大通りに面した建物はそれでもまだ美しいが、一歩裏通りに入るとはがれてしまった壁のアパートがそのまま利用されていて、更に落書きだらけだったりする。でも路上にゴミが散乱しているとか、何か臭うということはないし、時に落書きはアーティスティックなテイストだったりする。町全体にどぎつい色合いがなく、建物も道も曖昧にベージュとグレイを行き来している。全体としてこの町は「汚い」と「古き良さ」の境界線を歩んでいる感じを受けた。この微妙な感じを人は「ノスタルジック」と呼ぶのだろう。
リスボンの町は到着した広場からまっすぐ南に降りる歩行者天国の大通りをはさんで、右側と左側に大別できる。観光に2日必要かなぁと思っていたが、ざーっと歩き回って途中で路面電車を使ったら1日で大半を見ることができた。
低い場所では、エレベーターで昇る
展望塔もある。 |
起伏の多いリスボンの街は坂を上り下りするジェットコースター的路面電車28番で楽しみながら展望台まで上って、ゆるゆると歩きながら下ってくるのがいい。
この路面電車はマストな乗り物だ。話には聞いていたが、一般の交通機関に乗ってこんなにエキサイティングで笑えるのっていうのは他に類をみないと思う。特にエキサイティングな路線が28番だというので乗ってみたが、ちょっと乗り足りなかったなぁ。28番はもっと注目して走っている最初から最後まで乗ってみればよかったとやや後悔した。
町中には7つの丘があって、各々が展望ポイントになっているから展望ポイントを伝って行くだけで知らない間にリスボンの町中をグルグルと散策することになる。そして、ガイドブックにはない中華系商店を見つけて思わずクロックス風サンダルを買っちゃったりできるのが凄い。一足3.5ユーロだった。更に調理用のかき混ぜる棒4種セット1.5ユーロ、ダイヤル鍵2.5ユーロ、ヘッドが回る皮むき器1ユーロなど魅力的な小物が次々と見つかって購入。こういう気の利いた安い商品がスペインでもポルトガルでも普通のお店にはなかなかない。そういう隙間をピチーッと埋めてくれるのが中華商店だ。思えばキャンプ用のガスコンロもまな板もバルセロナの中華商店で買ったんだよね。お世話になっています。
しかし、中国人は凄いよねぇ。言葉も通じない場所で1から商売している。いつも中国人を見る度に凄いなぁと思っているのだが、今回は特にユーラシア大陸の端から端ってことで感慨深い。こちらがそういう思いを込めて話しかけるせいか若い奥さんは親しげにこちらの質問に答えてくれるが、旦那は私たちがどこかの役所のスパイかとでもいうように鋭い視線を投げかけてニコリともしない。甘くない生活を送ってきている人の視線で苦労していることがうかがえた。
色々な展望台から見える風景は赤い屋根で白い壁と、スペインの白い村に似ているのだが、スペインの白い村はピカピカに屋根をメンテナンスしているのに比べて、こちらは新しい屋根とそうでなくて退色した屋根と色々になっている所がまたリスボンで味があっていい。
いくつかの展望台を渡り歩いて、最後に一番高い場所にある展望台のMirador
da Senhora do Monteからお城Castelo de Sao Jorge経由で下町のアルファマAlfamaまで下ってきた。お城も展望台の1つなのだが敷地に入るのは有料なので遠慮して、そのまま下町へ。
ガイドブックおススメのお散歩コースを歩いているつもりだったのだが、下町付近になると全く道が迷路のようで地図をみてもよくわからない。あっちへ迷ったり、こっちへ迷ったりしながら歩いていたら突然繁華街のような場所に出て到着したことがわかった。
この迷路のような道のある下町はノスタルジックなリスボンの中でも特に時が止まっている度合いが強く感じられる場所で、ファドの聞ける店が集まっている場所でもある。ファドというのはリスボンの演歌のような音楽で、ギターを伴奏に女性や男性が朗々と悲しげなメロディーを歌うのが一般的らしい。この町並みとファドの音楽はあまりにマッチする組み合わせだ。
アルファマ地区最後の見所セSeを見物してウォーターフロントの歩行者天国に戻る。坂道の途中でひなびているけれど地元客で席が埋まっているカフェを通りかかる。ちょっとショーケースだけ見ようと入るも、異常にぎっしりとアーモンドが詰まったトルテが1ユーロ。見るだけで終われるわけがない。早速買っておやつタイムとした。うーん、おいしい。
再び歩行者天国に到着。凱旋門ともいうべきArco da Victoriaを通してDom Jose
Tの銅像が見える。この時点で午後5時。そろそろ朝訪ねたBairro Altoが盛り上がっているんじゃないだろうか。
Bairro Altoは歩行者天国大通りの西側にある繁華街で、レストランや洒落たブティックなどが集まっている比較的新しい感じのする場所だ。午前中はまだお店もあまり開いていないし人も少なかったが、今ならいい感じになっているに違いない。
行ってみると、思ったとおり人出が多くなって楽しそう。しかも、メインストリーには午前中にはなかったクラシックカーがずらりと並んで何かのイベントが行われているようだった。一体何が始まるんだろうかと警備をしているお姉ちゃん達に聞いてみたが、「年に一回のイベントでクラシックカーが集まるんです」という情報を得ただけで、集まってどうするのか、もっとイベントはないのか、この先どーなるのかと立て続けに聞いてみたのだが、「あははは、よくわかんなーい」ってどっかの国のアホアホ女子高生みたいに仲間同士で笑いあって更なる情報は何一つ得られなかった。そんな横を車の持ち主が颯爽と係員達に手を振りながら走り去っていく。見ている庶民は何となくうらやましい気分になってカメラを向けている。「金持ちが高級車を見せびらかすイベントかよー、趣味が悪いなぁ」と文句を言いながらも私たちもしっかり撮影するのだった。涙。
ファドの本場はアルファマの店だとはわかっているが、開始時間が遅い場合が多く治安のよくないあの辺りをぶらつきたくないし、第一キャンプ場まで戻るバスが終わってしまう。今回はファドは見られないかと諦めかけていたのだが、このBairro
Alto地区のある劇場で夜7時から1時間のファドコンサートをやっていることがわかった。フナックというフランス系家電製品ショップはチケット販売も行っているので、チケットを買って(一人16ユーロ)会場に向かった。
ここで毎日同じ午後7時から行われているというコンサートは男性歌手と女性歌手が1人ずつ出てきて独唱したり合唱したりするもので、明るい曲が多かったので「むせびなくような」「哀愁漂う」ファドを期待していた私たちにはやや期待はずれだったし、半数以上が外国人客なので「さぁ、皆さんもご一緒に」とマイクを向けられても一緒に歌える人が少ない。にもかかわらず非常にしばしばマイクを向けられるのでやや盛り上がりに欠ける展開になっていた。これで一人16ユーロってのはちょっと高いなぁ。ファドはやっぱりお店でしっとりとお酒を飲みながら聞くのがいいのかもしれない。それでも記念に10ユーロのCDを購入。12弦ギターの音色は良かったからね。
朝10時にリスボン市内に到着して帰りのバスに乗ったのが午後8時15分過ぎ。朝から晩までずっと歩き回って充実した観光日となった。箱庭の中で自分が小さな人形になって遊んでいる気分にさせてもらえるリスボンはかなり面白かった。
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