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2009.01.11
天気がよくって思わず周遊
アルゼンチン:エル・チャルテン

 昨日のセロ・トーレじゃ我慢ができない。天気予報では今日は快晴。私達は早くから起きておにぎりのお弁当を作り、8時15分にトレッキングを開始した。チャルテンの町の上空には雲ひとつなく、野うさぎポイントまでの上り道も草が太陽の光に輝いて見える。8時38分にロス・トーレスとフィッツ・ロイの両方が見えるポイントに到着した時点では、朝日に光り輝く雪化粧の山々がくっきりと見えて思わず歓声を上げた。今日は行けるぞー!

 丘を登って下っていくつかの展望ポイントで休憩しながらどんどん歩く。湿地帯を回りこむような長い平面の道では、湿地帯の緑に取り囲まれた小さな湖に青空と雪山が映りこんで非常に私好みの景色。いやー、美しい。


 途中で後ろからものすごいスピードで歩いている人が来たので追い越してもらったのだが、大きなバックパックを背負ってアイゼン、ヘルメット、ピッケルなどを荷物の横にぶら下げている。氷壁を登るマウンテニアリングの人だ。あんなに大きくて重い荷物を担いでいても私達より歩くスピードが速かった。ベースとなるキャンプ地までは準備、そこから本番と考える人と、私達のようにキャンプ地までが目的と考える人には大きな開きがあるようだった。おいしい味の川で水を飲んだら、もう少しでセロ・トーレだ。

 午前10時35分にトーレ湖に到着。2時間20分だから昨日よりもちょっと速かった。おおお、今日は完璧。本当に雲が一つもない。

 早い時間だと思っていたが湖の左手には10人くらいの団体がいて、川を渡ろうとしていた。氷河湖であるトーレ湖から流れ出している川を渡る橋はない。川に渡したザイル(金属の綱)を安全帯に付けた滑車を滑らせて身一つで渡るのだ。

 このグループは川を渡って山中を歩いて氷河まで行き、氷河上をトレッキングするツアーの団体だ。私達も3年前に同じツアーを行ったのでわかるが、ここの氷河トレッキングはかなりワイルドだ。この川を渡るのもアドベンチャラスなイベントの一つで、この後道なき道を歩いて、氷上では氷壁にアイゼンとピッケルで登るイベントも待ち受けている。面白さ120%だけれど人生であんなに疲れたツアーもなかったなぁ。もっとも、私達はチャルテンの町から出発したから疲れたのであって、今日のこの集団のように近くのキャンプ場から出発してキャンプ場に戻ってくるならそんなに大変ではないはずだ。

 トーレ湖を右手に回りこんでいくと、氷河とセロ・トーレが青空に突き刺さるようにそびえる全貌が見えてくる。いやー、昨日とは全然違う。ついーっと一本の飛行機雲が流れているだけで、背景は全部ブルー。心が晴れ晴れとしていく景色だ。


 セロ・トーレを正面に見ながら、クッキーやチョコレートを食べてしばし休憩だ。この時間帯は湖左手のキャンプ場から次々と氷河トレッキングのグループがやってきた。3年前と違って近くのキャンプ場からアイストレッキングを始めるのが主流になっているのかもしれない。チャルテンの町から始めるのは辛すぎるもんねぇ。

 足元の赤い身を付けた植物に目をやったり、遠くのセロ・トーレを眺めたりしてたっぷり休憩して、さて考える。これからどうしようか。

 湖を右手に回りこんで氷河の正面にもう一度行ってみるか。それとも、ここから横渡りのパスを歩いてフィッツ・ロイまで行ってしまうか。

 フィッツ・ロイ方面に回りこんでロス・トレス湖まで行かずに町に戻る道を取れば5時間くらいで戻れる。現在11時前なので、どこかでランチタイムを取っても行けそうな気がした。途中で見えたフィッツ・ロイの曇りない姿も拍車をかけて、今日は周遊をしてしまおうと決めたのだった。

 トーレ湖を出たのが11時。そこからフィッツ・ロイ方面に行く道と町に戻る道への分岐点に到着したのが11時40分。分岐点からは間に立ふさがる山を越えて湖まで行く。2泊3日で公園をトレッキングする人が多いが、町を出てまずフィッツ・ロイ方面のポインセノットキャンプ場で一泊、そこからトーレ湖畔のキャンプ場で一泊する順路を進められるそうだ。今日、逆行してみてインフォメーションの案内が正しいことがわかった。トーレ湖側からフィッツ・ロイに行こうとすると急な坂道を上がってから緩やかに下るという道になっているのだ。森の中を歩くので直射日光が遮られるからいいとしても、11時40分から12時までの20分間は勾配のきつい坂をのぼりっぱなし。ふー、疲れる。12時に倒れた木に座ってコーラ休憩だ。

 ここから道は時々野原に出ながら進む。強い太陽光に照らされて変わった形の植物が見られて楽しいお散歩コースだ。一番変わっていると思ったのは黄色い袋のようになった花を付けた植物。この可愛い花が一面に咲いているお花畑のような中の道を通ると、再び森の中を歩き、次の野原では猫じゃらしのような柔らかい暗紫色の穂先の植物やピンクの刺がついたぼんぼりのような植物がたくさん見られる。町からフィッツ・ロイに行く道と町からトーレ湖に行く道にはこうしたお花畑のような場所はなかったような気がするから、これらの植物を見られるという点ではこの渡りの道を歩く価値がある。

 こうして間を遮る小山を乗り越えて湖に到着したのは12時38分だった。悪くないペースだ。

 ここから2つの湖が並んでいるのだが、これらの湖は色も透明度も感動的というにはちょっと遠く、まぁまぁきれいだというくらい。トレッキングのパスは湖のかなり上の方になっているので、見えてくるフィッツ・ロイが湖に映りこむ姿が見えるという角度でもないし、私としてはあまり魅力を感じない湖だった。

 湖自体というよりは、むしろこの道沿いの風景の方が魅力的だった。朽ちて倒れた木々を覆うように新しく草や木が生えている。プロのガーデニストたちが都心の中に必死に作り出そうとしている癒しの風景が、当たり前のようにあっちにもこっちも見られた。

 湖脇の道が終わると、フィッツ・ロイがだんだんと大きく見える平原脇の道となる。ここまで来たらもう見知った道。2日前にお昼を食べた場所ほぼ同じ所で午後1時半近くにランチとした。朝全く曇りがなかった空には薄っすらと雲が出てきてしまった。しかし全体が見えていて光も強いのでなかなか美しい。


 午後2時に帰途につく。お昼ごはんを食べていた場所からポインセノットキャンプ場と町への分岐点はすぐだった。分岐点を過ぎた所で同じ宿に宿泊していた日本人旅行者2人組みに遭遇。彼女達はキャンプ道具と食料を背負って今日から2泊3日のトレッキングにやってきた所だった。

 ニュージーランドのワーキングホリデーで知りあったという二人はそれぞれオーストラリアとニュージーランドで定職を見つけて4年以上になるそうで、今回もオセアニアからやってきたんだそうだ。こういう装備を担いで歩いたことのない私達にとっては、気軽に荷物を背負っている彼女達は尊敬に値するのだが、彼女達いわく「いつも背負っているバックパックより軽いですから」。なるほど、バックパッカーは日頃から鍛えているから突然の宿泊トレッキングにも耐えられるんだなぁと妙に感心した。

 分岐点から5分くらいの左手には湖というより沼といった方がふさわしい小さな水溜りがある。もしかしたら、とこの沼の向こう側に回りこんでみると思った通りにフィッツ・ロイが写りこんでいた。やったー!映りこみが大好きな私は早速撮影。ちょっと風があるって湖面が揺れてしまっているが、どこかでフィッツ・ロイの写りこみが撮影できないかと探していたのでとっても満足。


 ここからフィッツ・ロイを背にして歩くのだが振返る度に雲の形が違って、周囲の雰囲気が違って何度もシャッターを押してしまうのだった。同じような写真かもしれないが捨てがたいので何枚か掲載してしまおう。




 午後2時半にはエル・カラファテで年末年始を共に過ごしたミッチーと再会。1日のトレッキングで2組もの知り合いに出会うなんて、やっぱりハイシーズンだ。彼女はエル・カラファテからチャルテンを見ずにウシュアイアに行ってしまったのだが、他の人にチャルテンが良かった、良かったと聞かされてブエノス・アイレスに戻る道中にチャルテンに立ち寄りに来たのだという。特に今日トレッキングできたのは本当に運が良かったね。

 エル・カラファテからの日帰り組みも訪れる展望ポイントは今まで見たこともない程の大勢の観光客で賑わっていた。今日は本当に天気がいいので、こうして多くの人が出てきているのもうなづける。

 この道は今回チャルテンに来てから5回目にもなる。道なりも覚えてきて気楽に歩ける場所になった。山際の道で右手の眼下に川が見える場所も今日は日の光が良く当たって、今まで一番美しく見えた。


 最後になって天気大当たりの一日。トーレ湖だけ見に行くつもりが思わず周遊してしまったが、これまでの数日のトレッキングで足が鍛えられていて全く辛さはなく楽しいだけだった。人間の体ってすぐに鍛えられるもんなんだなぁ。今回のエル・チャルテンのトレッキングはこれにて終了。いやー、歩き回って大満足の訪問となった。


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