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2009.01.07
フィッツ・ロイの麓ロス・トレス氷河湖までのトレッキング
アルゼンチン:エル・チャルテン

 国立公園管理事務所での天気予報によれば今日は快晴。移ろいやすいこの地域で快晴は貴重なチャンスなので、エル・チャルテンでのトレッキングのハイライトとも言えるロス・トレス氷河湖までのトレッキングを早速行うことにした。

 お弁当を作って町外れのトレッキング開始ゲートに到着したのが午前8時。エル・チャルテンでのトレッキングは全て、町の裏手にそびえる丘を登るところから始まるので道はどんどんと登って目線が上がっていく。右手の東の山から丁度太陽が顔を見せる高さになっていて気温も体温もどんどんと上昇してくので、15分歩いては1枚ずつ衣類を脱いで、50分後のカプリ湖に行く分岐点に到着する頃には半袖でも汗ばむ状態になっていた。これこれ、この状態になるのが気持ちいいんだよね。ここまでの道のりはお花畑を見ながら眼下に川をながめたり、スーッと涼しい森の中を抜けたりしてきた。そうしてのぼってきた分岐点の森の向こうには、フィッツ・ロイの先っぽがようやく見えてきて私達を誘っていた。


 カプリ湖への道はまずは小山を登ってから湖畔のキャンプ地に向けて下る道だが、分岐点までの上りに比べたら楽勝だ。

 キャンプ場を通り過ぎて湖畔まで降りると右手にフィッツ・ロイの姿が大きく見えた。一部たりとも雲に隠れることなく見えているのは素晴らしいが、欲を言えばフィッツ・ロイの後ろの雲がなければいいし、風がなくて湖面に鏡のようにフィッツ・ロイを映し出されていたらもっと良かったなぁ。こうやって人は何度もここに足を運ぶことになってしまうんだろうなぁ。

 湖を回りこんで更に先に歩くと、道はやがて分岐した道と合流して一つになる。ここから先はずーっとフィッツ・ロイを見ながら歩ける。目的とする山を長い時間見ながら歩けるという点がお隣のパイネ国立公園のトーレス・デル・パイネに向かうトレッキングとの違いで、それ故に私はロス・トレス湖への道の方が好きなんだな。もちろんフィッツ・ロイの山の形もよりカッコいいというのも理由だけど。

低い(といっても140cmくらいある)ブッシュの中の道は
風を防いでくれる道でもある。

途中、川辺に降りられる場所もある。

まっすぐ行くとロス・トレス湖、左に行くとトーレ湖の分岐点。
ここからのフィッツ・ロイの景色が全景でバランスがいい。

空全体にうろこ雲。これも迫力あった。

キャンプ地近くには川がある。支流は枯れた草木が溶け込んで
赤い水になっている。こういう水で頭を洗うとシャンプーなしでも
かゆみがなくなるんだよねー。って洗わないけど。

ポインセノットキャンプ場に10時16分に到着。
町から約2時間半ということになる。

 ポインセノットキャンプ場からリオ・ブランコという名前の通り白い川を渡る。短い橋なのだが「一人ずつでお願いします」という注意書きがあり、すぐ下に氷河溶け水が轟々と流れてスリルを楽しめるポイントだ。川を越えた所のキャンプ場は登山家用。トイレを使わせてもらうためにキャンプ場に入ったのだが、ザイルやアイゼンやヘルメットなど本格的な装備が見えてトレッカーとは全く別の世界。こういうのを垣間見ることができるのも面白い。

 で、ここからが最後の踏ん張りどころ。斜面にそって1時間弱の強烈な登りだ。3年前にも来たことのある私達は、今回は遠くからその斜面をとらえて「ああ、あんな斜面をあがっていたんだ」と確認することができた。確認できてしまうと前回の大変だった思いが増幅されてエライきついような気持ちになってきた。歩けるかしら?

 しかし実際に坂に対面してみるとそうでもなかった。普通に休み休み歩いて45分。今回はスティックも借りていたので前回感じたほど大変には思えなかった。3年老いているのに前回よりも楽に感じるって凄い!と自画自賛しながら登る。前回も自画自賛しながら上がった気がする。急な坂を登るための秘薬は自画自賛だ。

 山道は一旦平面を迎えて、最後に10分ほど急坂になって湖に到着する。ここからの眺めは瓦礫の斜面を下った所に湖があり、その先にフィッツ・ロイ山が見える。遠くからは見えなかった山の麓近くの氷河もよく見えるし、この日は無風で気温も高かったので右手の雪山斜面を登っている登山家パーティーの姿も見えた。

 この時間帯になるとフィッツ・ロイ自体には雲がかかっていないものの背景がほとんど雲に覆われた空になった。鱗雲がフワーッと曲線を描いて薄く青空も見えているのが桃源郷のような感じを表して風景としては面白いし、無風なので氷河の湖への映りこみも湖面の揺れが少ないのできれいに見える。残念なのは太陽光が少ないので全体が淡い色合いになってしまっていることだ。強烈な日差しに照らされるとフィッツ・ロイの岩壁が赤や黄色など色とりどりに反射して湖面も輝いて美しい。前回ここに来た時は天気が良くて全てが輝いて見えた。ただし山頂にかぶる雲がどうしても切れなくて全貌が見えなかったのと、風が強くて寒くてたまらなかったのがマイナスポイント。なかなか難しい。全貌が見えたことに満足したものの太陽光の弱さに満足できない私達は、「今日で終わったと思うなよ!」と捨て台詞を残してこの場を去ることにした。まぁ、結局このポイントはこの時しか来なかったんだけどね。


 湖までの斜面を下って左縁を奥へと回り込むと、時計でいったら10時くらいの所から崖になって下に別の氷河と氷河湖が見える。風の強い日は大変に危険な足場だが今日は無風なので行けた。湖の色は上の湖よりもやや薄くてより美しく見えた。

 12時48分。お弁当も食べたしゆっくり休憩できたので下山開始だ。苦労した後の下り斜面は足取りも軽く景色を楽しんで歩ける。これから上がってくる人もかなりいたが、今日はもう天気は下り坂。私達が1週間観察していた結果としては朝方が天気が良くて午後に崩れ勝ちという傾向があるのでフィッツ・ロイは朝早くから向かった方がいいんじゃないだろうか。とラテン系のチリ人やヨーロピアンに行っても来ないだろうけど。

 この日は帰りながら振返る度に雲が厚くなっていく天気。天気予報では明日は天気が崩れて明後日に回復するというのはどうやら当たっているようだ。午後4時に高台の上から町を見下ろし10分後にトレッキングパスの入り口に戻ってきた。そこから宿までは更に15分。宿に帰るなり「マリアーナ」とスタッフの女性を呼んだ。マリアーナは「どうしたの?何かあったの?」と聞くので「ビール出して!」と言うと宿は笑いに包まれた。「トレックから帰るなりビールって言う人はあんまりいないわね」とマリアーナも大爆笑しながら冷蔵庫からビール、冷凍庫から凍ったグラス。くー、たまらん。今日という一日の頑張りはこの一口にあったに違いない。といつものようにトレッキング後のビールを堪能したのだった。



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