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2008.12.22
ペリトモレノ氷河の展望台へ
ペリトモレノ氷河の展望台への往復バスはバスターミナルから出ている。3社が午前中と午後の日に2回くらい出しているのでよほどハイシーズンでない限りふらっとバスターミナルに出かけて時間のバスに乗って行く事ができるから気楽だ。
私達はハイシーズンの年末近くに行くということで、一応宿を通じてバスを予約してもらっておいた。朝8時半の出発でターミナルに行くと既に長蛇の列。今日は満席だって。予約しておいてもらって良かった。カラファテは野良犬がたくさんいる。飼われている犬も自由奔放に歩いているので自由犬の割合はかなり多いのだが、バス停にも常駐している犬が数匹いて、大勢の観光客がいるにもかかわらず段差を枕にしてグーグーと寝ていた。首輪をしていないので野良犬のようだ。
バスは定刻に出発。ここから展望台までは1時間の道のりだ。進行方向右手に座席を取ったのは正解。右手にはアルゼンチン湖が見えて美しい。町中では少し水の色が濁っているのだが、先に行くに従って美しい色合いが間近で見られるようになる。遠くに雪を抱いた山も見えてくる。町からほんの数十分走っただけでこんな素晴らしい景色が見られるのがエル・カラファテの魅力だ。
9時18分に公園入り口を通過。バスの中に公園スタッフが入ってきて入場料を徴収する。私達外国人はA$40(2009年1月からA$60に値上がりしている)なのだが、各国のバックパッカーは学生証やら教職員証やらあらゆるIDカードを取り出してディスカウントを試みようとしていた。大抵は「ノー」と首を横に振られる。なかなか審査は厳しいようである。何といってもここはアルゼンチンにとって観光のドル箱、いやペソ箱なのだからそうそう簡単にはディスカウントに応じられないってわけだ。
料金を支払ってバスは更に快調に進んでいた。ところが氷河まであと15kmという地点の午後10時、バスが路肩に停車。さっきから運転席の方でピーピーと何かの警告音が鳴っているのは気づいていたが、どうやらそれが原因らしい。運転手が降りてタイヤ付近を見ていたがどうしようもないらしく、ここで代車が来るのを待つということになった。英語とスペイン語のできる人が何も事情を説明しようとしない運転手から情報を聞き出して「15分後にバスが来るそうです」と伝え、バス内の乗客はぞろぞろとバスを降りたのだった。
降りた場所は通常では停車しない地点なのだが、景色は悪くない。「こんなアクシデントも悪くないねぇ」なんていう気分で草むらにトイレしにいったり、写真を撮影したり、リンゴをかじったりと休憩を楽しんでいた。左側の湖の先にはもうペリト・モレノ氷河がチラリと見えている。氷河が近いためか町中よりも風が冷たいのだが、それでも夏を迎えているこの地域には赤い花や白い花がとりどりに咲いて夏景色を作り出していた。野原を歩き回っているとつま先にトゲトゲの奴がくっついてきたりする。
こうしてつかの間の休憩を楽しんで、さぁそろそろ15分経ったかなぁと思ったのに代車はちっともやってくる気配がない。30分を過ぎて運転手に「一体いつになったら来るんだ」というと、あと20分で来ると言われてハッと気づいた。最初の男性が15分と50分を聞き間違えていたのだ。どうやってどこに何を連絡したのかと、スペイン語と英語がわかる人の通訳を解して運転手に聞いた所、この場所は携帯が通じないので先ほど追い越していった別のバス会社の運転手に展望台まで行ったら会社に連絡して代車をよこすように頼んだということだった。町からここまで1時間くらいかかるので、50分じゃ来ないよなぁ。説明しない運転手や整備不良のバスに腹は立ったが、だいたい代車が来る時間がわかっただけでも大分落ち着いたのだった。
結局10時半から遅れること11時半に展望台に到着。5時間滞在が4時間滞在になったくらいだし、代車を待っている間に悪かった天気が展望台に到着してから上向きになってきたし、なによりも皆アルゼンチンだからと皆諦めて到着だ。
バスが停車した駐車場にはレストハウスとトイレ、お茶好きのアルゼンチン人らしく無料でお湯を出してくれる販売機のような機械も置いてある。ここから階段を下って左右に伸びる氷河にそって遊歩道が続いているのだ。右端から左端までゆっくりと氷の壁を見ながら歩くと小一時間かかる長い遊歩道で、ここを一通り歩いたら大きな氷の塊が落ちそうな場所を狙って崩落をじっくりと待つという作戦で、私達は右端のベンチに陣取ってお昼ごはんを食べたり欄干越しに氷河を見物して残りの3時間を過ごすことにした。以下がその3時間に撮影した写真。日の光に青く輝くペリト・モレノ。3年前には生まれて初めて見た氷河としてとても印象深かった。あれから他の国でもいくつの氷河を見て再びここに戻ってきたが、やはりペリト・モレノの青さ、美しさは他にはないとあらためて感動しながらの見物だった。
まずは、正面から全景。
展望台右端から更に右をのぞむ。
展望台の右端から正面をのぞむ。
氷壁に沿って遊歩道を左方向に歩いて行くと次々と異なる氷壁の部分を間近に見られる。
展望台遊歩道の左端から左をのぞむ。
右端の展望台で見ていたら、おおおーーーっとどよめきが左手からあがった。左手で大きな氷塊が崩落したのだった。その瞬間は見逃したが音と水面に巨大な波紋ができあがるのは見ることができた。崩落の直前にはパキーンと森にこだまするひび割れの音が入って、音もなく(光の方が速いからね)氷塊がどどどーっと落ちるのに続いて遅れて音がゴォォォォーーーっと響く。この目に映る像と音のズレが見ている景色の巨大さを感じさせる瞬間でもあるのだ。今回はそんなに大きな崩落を目にすることはできなかったが、内部で崩壊するパキーンという音は何度も聞こえた。
4時間、5時間もこんな所に滞在して退屈かとも思ったのだが、崩落を待ちながら見ているとそうでもない。ただし、風は常に氷河側から来る。まるで冷蔵庫の中にいるようなので時間がたってくると体が芯から冷えてくるのだ。持ってきたウィンドブレーカー、中綿のジャケット、中綿パンツ、ウィンドブレークパンツ、手袋、帽子は天気が良いにもかかわらず結局全部使うことになった。それに日焼け止めとリップクリーム。できればマテ茶を入れたカップもあればお茶を飲みながら見ることができたなぁ。
帰りのバスは定刻通りにやってきて故障もなく町まで帰れた。お手軽、気軽に氷河を長時間観察できるので、崩落に焦点を絞っている人には都合がいいバスだと思う。
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