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2008.12.16
バルデス半島1日ツアーに参加
アルゼンチン:プエルト・マドリン

 さぁ、今日はバルデス半島一日ツアーだ。バルデス半島はクジラ、ゾウアザラシ、シャチ、ペンギンを始め、訪れる時期によって様々な野生動物が見られることで有名な場所だ。私達はここでクジラを見たいと思って来たのだが、クジラのシーズンは12月下旬までというのを町に到着してから知った。ガイドブックに書かれていたのを見過ごしていたのだ。

 町に到着して2日目の昨日、いくつかの旅行代理店をまわってそのことを知った。「クジラが見られるんですよね?」と聞くと、どの旅行代理店も歯切れが悪くなるのだ。「12月の半ば過ぎですから、見られるかどうかは運なんですよね」と。ショック。ツアーの価格は180ペソ〜230ペソで、加えてバルデス半島にあるピラミデという村から出発するクジラのクルーズが100ペソの所、12月15日を過ぎたからか代理店によっては半額の50ペソにしていた。そうなると、今宿泊している宿が一番安い。私達の宿ではクジラのクルーズも含めて190ペソだと言われたのだ。


宿のツアーで周遊した場所。青が車、緑がクルーズ。
 あとはツアー内容の比較だ。他の代理店に聞くと島の北半分を周るのと南半分を周るものにわかれていて、半島の先の北端(プンタ・ノルテ)ではもしかしたらシャチが現れるかもしれないと聞いて、北側周遊のツアーがいいと思った。うちの宿KAMARUKOはどこかの代理店に依頼しているらしく「あー、半島の全部に行く、行く」と超アバウトな説明しかしてくれない。どうしようかなぁ。

 しかし、クジラも見られるかどうかわからない、他の宿泊者から聞いた情報ではシャチが見られる可能性は本当に僅からしいので、余計なお金をかけたくないと思った私達は宿の斡旋するツアーに参加することにしたのだった。大丈夫かなぁ?

 ま、結果として大丈夫だった。そして北側周遊のツアーでもあった。宿KAMARUKOのツアーは本当に良心的な価格だった。

 朝8時に宿に迎えに来た車に乗り込んでツアースタート。私達が1番始めのお客で、次々に他の宿から客をピックアップしていく。車も新しくてきれいだし、運転手さんの他にガイドの女性が1人ついているし、他の宿はやや高級なホステルだし。早くも「悪くないんじゃない?」という予感だ。プエルト・マドリンからバルデス半島に向かう道沿いには周辺住民の生活を支えるプラントが立ち並ぶ地帯。ガイドの女性がプエルト・マドリンの産業と最近の人口増加、町の発展などについて説明してくれた。

 8時45分に公園入り口で公園事務所に立ち寄って入場料金を別途支払った。一人A$45(=US$13.05)。ここからの世界は、広い空、枯れたような草原の広がるバルデス半島特有の風景に包まれていった。道中にはグアナコ(別名アメリカン・キャメル)と呼ばれる可愛い動物も見られる。国立公園にもかかわらず水をくみ上げる風車があり、私有地を示す柵囲いがある。そもそも住民がいる場所を国立公園に指定したのだが、住民が留まる権利はそのままにしてあるからなんだって。でも土地を転売することは許されず、その土地で行える事業も規制があるなど縛りは強いようだ。

 公園入り口からほどなくツアー車は停車。ここに小さな博物館と物見塔がある。物見塔からの景色は目線が少し上がるので遠くまで見渡せるという点で面白いが、興味深かったのは少しのぼっただけなのに恐ろしく強く風を感じることだった。塔の下にいるとそんなに感じないのに3階くらいまであがると強風になっている。さえぎる物が何一つない平原ならではである。一番上の階はガラス張りになって風に邪魔されずに景色を楽しめるようになっていた。

 小さな博物館はバルデス半島で見ることのできる動植物の説明パネルなどの展示だが、一番注目を集めていたのはこれから私達が見ることになるだろうクジラの骨の展示だろう。こうして見ると、クジラが哺乳類だというのがよく感じられた。

 博物館から更に30分走るとプンタ・ピラミデの村に到着する。湾に抱かれた静かな村で、ここにも宿泊施設がある。私達の宿に宿泊していた白人バックパッカーの女性はバルデス半島に行くツアー代金は高いので、ピラミデまでローカルバスで行き、ここのビーチでゆっくり滞在すると言っていたなぁ。

 クルーズ船発着地の右隣の狭いビーチに同じような白人バックパッカー女性2人がビキニ姿で寝そべっているのが見えた。海の水はプエルト・マドリンと大差なく、そんなにきれいってわけでもないけど雰囲気はのんびりした場所だ。

 風の強さによっては出航できない場合もあるらしい。今日は少し風がある。もし午前中に出航できないなら他の場所を先に見学して夕方ここに戻ってくるんだそうだ。しばらく待機していたが、どうやら出航できるという判断になり、私達はいくつかあるクルーズ会社の1つに集まって救命胴衣を装着してもらい、強風で水がかかった場合にそなえて防水マントを渡されてからビーチに移動。階段を登って船に乗船だ。

 午前10時半に出航。私達のツアーメンバー以外のお客も乗せてガイドは英語係とスペイン語係の2名が乗り込んだ。浜辺を離れて20分、もうシーズン終了で見られないかもしれないと誰もがうっすら諦めの表情になり始めた時に、かなたに黒い物体2体が見えて船中は一気に興奮状態になった。大きなのがお母さん、小さいのが子供、親子のクジラだった。でも少し遠い。

 すると、更にすぐ近くに1頭で動いているクジラが浮上。おおお、とどよめきがあがった。クジラは船を恐れるでもなく悠々と目の前を泳いでいく。スローモーションのようにゆっくりと背中が前の方から浮き上がっては頭からぐーっと水中に沈んでいく。最後に大きな尻尾が海上に突き出てからそれも海の中に沈む。一連の動きはとても優雅でのびやかで、それ故に迫力のあるものだった。そして10分後、その背後から先ほどとは別の母子がやってくるではないか。

 母子はまっすぐに私達の船に向かってきた。まるで一緒に遊ぼうとでもいうかのように。子供は無邪気に船の下をくぐって向こう側にざっぱーんと出てきたりする。それを追うように母親も船の下をくぐる。今まさにこの瞬間、クジラが自分の足の下を泳いでいると思うと足の裏がくすぐったいような気分になってくるのだった。船の上で立てる足音など大きな物音はクジラを脅かしてしまうので、皆しのび足で船の中をあっちこっちに移動してクジラを観察した。船をくぐる遊びに飽きた母子は、今度は鼻面(というのかわからないが)を船のわき腹につけんばかりに寄って来て波にまかせて浮きながら船に近づいたり離れたりしている。本当に手が届きそうな距離だ。頭の上の部分には藤壺のような固い貝の殻がついていたりして、ムール貝を思い出させる。目がどこにあるのかよくわからないので顔の表情ってのは全くわからないのだが、その動きがユーモラスでこんなに大きな生き物なのにどことなく可愛いと思えてくる。

 2頭の母子が私達の所で遊んでいたら、そこに別の母子もやってきて、視界には一度に2組の母子が入ることになった。これにはガイドも驚いていて、別の母子がこんなに接近するのは非常に珍しいということだった。12月後半でクジラは現れないかもしれないとまで言われていたのに、今日は何とラッキーなことだろう!こうして30分、クジラ見物を堪能してガイドが「そろそろ戻ります」と言った時に船内には「もう帰るのか」とがっかりしたため息が溢れたのはいうまでもない。それでも長い時間、目の前でクジラを見られたので誰もが満足してニコニコのクルーズになったのは良かった。帰りには岩のわずかな窪みで羽を休める鳥たちが群生している場所にちょっと足を止めて帰る。全然クジラが見られなかったら、こういう場所に長くいることになったんだろう。

 さて12時にクルーズを終えて、今度はバルデス半島の一番奥へとひた走り。プンタ・ピラミデから半島一番奥の真ん中あたりにあるレストハウスのある場所までは車でも2時間かかった。バルデス半島の大きさが体感できるドライブだ。道中はそんなに動物を頻繁に見るわけではないが、それでも変わった哺乳類やニャンドゥ(パタゴニア地方に固有のダチョウのような大型の鳥。個人的に名前が気に入っているので覚えられる)を目撃した。

 次の停車地ではお昼ご飯。私達はサンドイッチを持ってきていたので車内でパクついたが、他の皆さんはレストランにてお食事。このレストラン、高いんだよねー。だから絶対にお昼ご飯を持って行けと助言してくれたのは私達の宿のスタッフだった。他の宿は高級ホステルだからそんな事を言われなかったみたいだが、値段の高さに皆神妙にサラダなどをつついていた。やっぱ、安宿は気がきいているよね、こーゆーことに関しては。

 この場所は細長く伸びた砂州がある風景と、それに続く浜辺にあざらしが昼寝している風景が見られる場所だ。1時間くらい自由時間となって、それぞれ自由に散策した。浜辺と平行して浜辺よりもずっと高い斜面に遊歩道が続いている。そこから浜辺に寝ているあざらしを見物するのだ。でもねぇ、この前にガラパゴスで手が届くほど近くであざらし三昧だったもんだから、ちっとも感動しない。というか、この距離から見たら誰も感動はしないだろうなぁ。今度はレストランから左側の砂州に向かって歩いて行くと、浜辺に向かってベンチが置いてある。一体何が見えるだろうかと目を凝らすと、小さなペンギンがひょこひょこと浜辺から出てきて歩いているのが見えた。と、遠い。こんな大勢の人に見つめられているとは知らずに小さなペンギンが歩いているという事実は面白かったけどね。本土と砂州の間に水が流れ込んでいるあたりで時間切れ。散策を終えて車に戻った。

 さぁ、最後の見学ポイント、プンタ・ノルテに向かおう。途中でラッキーなことにキツネの親子を見ることができた。警戒して足を止めているので簡単に撮影できる。ポツリ、ポツリと面白い動物がいる。それがバルデス半島のようだ。

 プンタ・ノルテにはアザラシ、ゾウアザラシが常駐している。そして運が良ければシャチが来ているかもしれないという場所だ。シャチは浜辺で寝転ぶアザラシを食べに来るんだそうだ。海から浜に向かって勢い込んで泳いできてザザーットと腹をすりながら浜にあがってその勢いでパクっとアザラシを食う。ヒレを使って後ずさりして海に戻って待機し、またアザラシを見つけてはザザーッと来てパク。これを延々と繰り返すんだそうだ。何と恐ろしいと思う反面、見てみたいという気持ちがわく人が多いらしい。私も見てみたい。

 車が到着して、ここはガイドさんと一緒に遊歩道を周遊するスタイルで歩いた。残念ながらシャチの姿は見えない。後に宿に宿泊しているフランス人から聞いたのだが、数日前にここに7頭のシャチがあらわれて5時間も滞在していたのだそうだ。それじゃぁお腹一杯で相当来ないだろうなぁ。ゾウアザラシは遠すぎて肉眼で識別するのは難しいが無料の望遠鏡が設置されているので、そこから見ることができる。望遠鏡のレンズ越しにカメラで撮影したらゾウアザラシの撮影にも成功した。かなり大きいんだろうなぁ。

 こうして全ての見学を終了して帰ろうと車に向かったら、このポイントのアイドルであるアルマジロが登場。彼(彼女?)はこの周辺に生息していて観光客からおやつがもらえるので駐車場にちょっと出てくることになっているそうだ。生きているアルマジロって初めて見た。思ったよりも小さい。そして思ったよりも可愛い。長い毛が少し気持ち悪いが小さくて丸い目、逆三角形の顔、甲冑を着ているのにヨロヨロと弱そうな歩き方などが何ともユニークな生き物だった。

 ここからは一気にプエルト・マドリンまで帰る。もと学校の先生だったというガイドさんは次から次へと知識を披露してくれるので非常に内容の濃いツアーになった。帰りの道中でガイドさんがマテ茶を振る舞ってくれることになり、一同「うわーい」と歓声をあげたのだが、アルゼンチンのマテ茶というのは回し飲みだというのを知るや否や、白人、特にアメリカ人はひっそりとしてしまった。アメリカ人観光客の多いユカタン半島でシュノーケリングをすると、使い捨てのマウスピースを使うくらい経口という点には神経質になってるもんなー。回し飲みなんてゾッとするというのが最近の先進国のジョーシキとなっているのをこのガイドさんは知らないのかもしれない。いや、知っていても敢えてやっているのかもしれない。何せ、さっきは「アルゼンチンは牛肉の国。とーってもおいしいんですよ。この国ではベジタリアンなんてあり得ません!」と言い切ってまたもや白人達を震撼させていたからね。

 だから最初から飲んでいたのは私達2人だけ。しかし、あまりにお代わりしておいしそうに飲んでいる私達がうらやましかったのか、徐々にマテ茶回し飲みに加わる人が出てきてだんだんとバスの中は和んできた。

 宿に戻ってきたのは午後7時半。丸々一日を使ったツアーだった。あーんまり面白くなかったなぁと思っていたが、写真を見返してみるとポツポツと面白い動物も見られているし、ま、クジラがばっちり見られたから面白かった。もしクジラの見られない季節だったら?うーん、クジラなしのバルデス半島ツアーはちょっと行く価値がないなぁ。


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