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2009.01.24
パイネ国立公園トレッキング第四日目
チリ:プエルト・ナタレス

 今日は大きなバックパックはキャンプ場に置いて、軽いリュック1つでフランセス谷の奥までトレッキングして戻ってくる。昨日ずっと荷物を担いで歩いていたので、今日の身軽さが嬉しい。

 キャンプ場は川沿いにあるのだが、左手に川を見て上流へと川沿いの道を歩いて行くと、やがて川は行き止まりとなり目の前に氷河が迫る場所に出る。キャンプ場からほんの10分程の場所だ。

 朝一番の氷河はまだ太陽の日が当たっていなく青く冷たく存在していた。大きな川は行き止まりになっているが、ここに注ぎ込む支流があちらからもこちらからも流れて来ていて、目に見えている静寂さとは裏腹に耳にはとてもにぎやかな場所だった。

 キャンプ場から続くトレッキングパスは途中で右手の山中にあがっていく道と左手の川辺へと降りる道にわかれていて、私達は川辺へと降りて川原沿いに歩いてきてしまったのだが、川原沿いの道は途中で終わってしまう。山中に行く道に合流しようと見上げると、ずっと上の方に人影が見えたので氷河から直角に右折して川原の大きな丸い石がごろごろする斜面をよじのぼってメインのパスに合流した。

 メインのパスに合流してから道は更に右折して、川に流れ込む支流の中でも最も勢いのある川の真横を通る。夏とあって昼間の強いひざしに照らされた氷河が溶けて作り出す川は非常に勢いのある流れになって荒れ狂うように下の川に流れ込んでいる。じっと見ていると飛び跳ね、踊り狂い、逆巻く水の流れ自体に生命があるようにも感じられてくるから不思議だ。

 道はそのまま上って、もう一つ奥の氷河が目の前で見られる展望ポイントに到着する。ここで手を振る青年たちがいるので誰だろうと思ったら、2日前にグレイ・キャンプ場で一緒だったチリ人の大学生たちだった。彼らはサーキットというコースをこなして既にトレッキング7日目で、あと5日かけてWまで終えるんだけど、もう疲れちゃったなぁとか話していた。全部で9人グループなのだが残りのメンバーはイタリアーノキャンプ場でまだ寝ているんだそうだ。英語も話せるし、明るくて好奇心一杯でグレイ・キャンプ場でシャワーの順番を待っている1時間くらいしゃべったんだけど、とっても楽しかった。

 ここから更にフランセス谷の奥へ。平坦な道ではなくいくつもの丘を越えて登ったり下ったりする道。進むごとに谷の一番奥が見えてくる。フランセス谷は高い山に囲まれて行き止まりになった回廊のような場所なのだ。歩き始めて2時間半でブリタニコという無料のキャンプ場に到着。こちらまで荷物を担いで歩いてくるのは大変だからイタリアーノ止まりの人が多いのだろう、人がとても少なくて荒れていない感じがした。キャンプ場を過ぎてから展望ポイントまでは林に川が流れ込んで枯木立になってしまったようなダリのような世界の林を歩く。

 キャンプ場から20分で展望台に到着。目線が高くなって、遠くスコッツバーグ湖まで谷を一望できる。なかなか写真ではその迫力を感じにくいのだが、こんなに遠大な風景を見渡せるというのはなかなかない。かつて出会った旅人でフランセス谷の風景が一番好きだと言っていた人がいたが、ここからの風景を言っていたのかもしれない。


 そんな事を思いながら休憩していると、ヘルメットやピッケルを担いだマウンテニアリングの一団が元気よく上の方から降りてきた。え?まだ上に行けるの?彼らに聞いてみると、「この上にずーっと行くと、ほらあの頂上に近い所があるだろ?あそこまで行くと目の前に湖が見えて、右手にトーレス・デル・パイネのサウスタワーが見えるんだよ」と言う。彼らはその向こうからやってきたのだそうだ。一体どういう人たちなんだろう。「私達でも行けるかしら?」と聞くと「行ける、行ける」と元気よく言われた。それでも、もうここでいいんじゃないかと思って来ていたので展望台でぐずぐずしていたら、先ほどの私達の会話を聞いていた別の一団がさっさと登り始めるではないか。うーむ、それでは私達も行ってみるか。

 ここから先の道は地図に掲載されていない道だ。つまりあまりパスが定まっていなくて獣のように道を探しながら歩く。一度間違って藪の中に入って引き返したりしながら上をめざした。下から見上げて見た時にはわからなかったが、斜面は途中で一度フラットになる部分がある。あのマウンテニアリングの連中が言っていた峰の頂上はこのフラットになる部分から遥か彼方にあるのだった。途中に遮るものがないので実際の所の遠近感がわからない。もしかして近いのではないかという感じもしてきて、少しだけ上方に向かって歩き始めたのが、ここから先は峰の頂上から川というか水の流れが全体を覆い尽くすように流れていて、足場がじくじくと湿地になって歩きにくい。5分ほど歩いてみたが無理だと判断して断念した。ここから一番近いキャンプ場ブリタニコで宿泊して、防水ブーツを履いて朝からアタックすればあまり難しくはない道なので行けそうだなぁ。こちら側からトーレス・デル・パイネのサウス・タワーを見るというのはかなり魅力的なのだが、今からでは無理だった。



 フラットになっている場所からは、下の展望台と比べると更に視界が広がっている。左手にはフランセス谷の回廊のどん詰まりがよく見える。滑らかに斜面を登った先にある硬い岩山がレースのカーテンのようにひだを作って立ち並んで強い日差しを浴びて陰陽を付けている。

 正面には谷をはさんで氷河を乗せた岩山が迫ってくるようにそびえている。

 右手は谷が湖までなだらかに下っていく様が見渡せている。

 これがフランセス谷の全貌。3年前にここに来た人から話を聞いて一体どんな所だろうかと楽しみにしていた場所だった。思ったより以上に地球のダイナミズムを感じられる景色に満足、満足。


 さ、戻ろうか。自分達が立っている背後はトーレス・デル・パイネの裏側になるのだろうか、こちらも屏風のように立ちはだかっていてなかなか迫力ある風景だった。


 ここからどんどん下る。氷河が溶けて作り出す川で喉を潤し、だんだん近づく谷を目指してひたすら下る。

 朝通りかかった時には日が当たっていなかった氷河には太陽に照らされる氷がまぶしく光っていて、多くの観光客が崩落を待って座り込んでいた。ペオエ湖のほとりにあるパイネ・グランデというレフヒオはとても素敵な宿泊施設とレストランがあり、年配の欧米人はこの宿泊施設を拠点にグレイ氷河まで歩いたり、この氷河まで歩いたりしているようだが、この日も多くの年配欧米人が氷河の前に座り込んでいた。見ていると、さらさらと氷が小さな滝になった後に大きめの氷の塊が落ち、それに続いて「ドドドドォーーー」と地鳴りのような音が轟く。待っていた観客は「ホー」っと感嘆の声をあげるのだった。ペオエからここまではかなり遠い。往復したら8時間くらいかかるだろう。その苦労が報われる瞬間だ。私達はもっと手前のイタリアーノ・キャンプ場から来ているから、ここまでは1時間半くらいの距離。ペオエは宿泊施設はいいけれど見所までの距離が遠いから大変だなぁとこの人たちを見て思った。


 氷河が目の前に見える場所から左に目を向けると、雲の形が面白い。空が大きく見えるのもパタゴニアだなぁという感じ。


 キャンプ場までの道のりは、途中から朝と違って川沿いではなく山中を歩くコースを取った。ここが少しわかりにくい。でも、この時間帯には多くの人が歩いているので人の影を追いながら歩いたり、親切に道筋を教えてくれる人がいたので助かる。こういう見ず知らずの人とのふれあいも、町よりも山での方が自然にできてしまう。

 キャンプ場の到着は午後4時半くらい。今日も荷物を担がずに歩いたので気楽なお散歩という気分ででかけたが、全体的に行きは登り、帰りは下りばかりだったので膝が結構疲れた。

 最後の夜の食事はインスタントヌードルの「まるちゃん」。初日はレフヒオの食事で豪華だったが2日目、3日目とマッシュポテトだったので、このまるちゃんが期待以上においしく感じられた。やっぱりスープがあるってのが嬉しかったのか塩分が多いから嬉しいのか、理由は色々あると思うが、まるちゃんは旨かったねぇ。軽いし、作るのにガスもあまり使わないのでキャンプ生活には最適だと思われる。サッポロ一番よりもまるちゃんが旨い。

 これにチーズとサラミをうかべてちょっと温めて、持ってきたワインを添えたら立派なディナー。まるちゃんが2袋だったのだが、こんなに運動していると3袋あっても良かったなぁというのが反省点だ。

 さて、明日はもう町に戻る。このキャンプ場にはシャワーがないのでホッとする反面、いつまでもこの自然の中にいたいような気もする。今宵も雪崩が起こす地鳴りを子守唄に眠りについた。


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