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2009.01.21
パイネ国立公園トレッキング第一日目
いよいよ今日からトレッキング開始だ。事前に荷造りして宿の量りで重量計測したら夫の荷物が17.5kg、私のが13.5kg。おかしい。二人とも10kgくらいでおさまるかと思ってキャンプ用具を背負っていくことにしたのに、いつの間にかこんなに重い荷物になってしまった。昨日の晩に荷物を計測してからややブルーになってしまった。歩けるんだろうか。
宿のオーナー、オマールの心のこもったパワーブレックファストを終えるとJBAというバスが7時45分に迎えに来てくれた。ここの宿(Backpackers
Kawashkar)でパイネ国立公園までの往復バスチケットを買うとJBAという会社のバスになるのだ。愛犬のアヤックスがお見送りに出てくれて(カメラ目線ははずしているが)出発。
町外れの湖の向こうに雪山が見えているものの、どうにもまだすっきりと晴れてはいない。新月の1月26日をめざして好天になると睨んで出てきたがどうだったのか。色々な宿を巡って客を拾い午前8時に国立公園に向かった。1時間後の午前9時、チリとアルゼンチンの国境にあるレストランで休憩。ここでトイレ休憩、コーヒー休憩、買い忘れたナッツ類、スナック類、酒なんかも調達できる。もちろん値段は町で買うよりも高いけれどね。
レストランの前にはパタゴニアの名前の由来となった足の大きいパタゴンという原住民の彫刻が飾ってある。足が大きいのではなく病で大きくなってしまっていたという話を聞いたことがある。
レストランで20分ほどの休憩を経て、バスは国境で左方向に向きを変えた。ここからはパタゴニアらしい平原の風景になり時々グアナコも見られるようになった。グアナコはアメリカン・キャメルとも呼ばれて駱駝の種類らしいがどちらかというと鹿のように見える。レストランを出て午前10時近くなるとトーレス・デル・パイネの3本の塔が山間に見えてきた。湖の手前でバスの運転手が「写真を撮りたいか?」と聞いてきて答えを聞く前にバスを停車させた。あまり天気が芳しくないのでバスを降りる人が少なかったのだが、真っ先に飛び出した夫につられるようにどんどんとバスから降りて写真を撮り始める。ひとしきり写真タイムがあった後に走り出し、15分後の午前10時15分頃に公園の入り口に到着したのだった。
ここ数日の雨でトーレス・デル・パイネに向かう道は水没していた。宿にいてパイネ国立公園の様子を聞くと「大雨でトーレス・デル・パイネへの橋が決壊した」とか「雪でフランセス谷に入れなかった」などの話を聞いていたが、まだその名残があるようだ。車は半分車体を水に埋めながら通っているが数日前は不通だったとも聞いている。天気が上向きになるのを祈るばかりだった。ここで一旦全乗客が降りて国立公園への入場料金(CLP18000=US$30.06)を支払うことになっている。ここから別の車に乗ってトーレス・デル・パイネに登る入り口まで行く人もいるが、私達は同じバスに乗り込んで次の停留所まで向かった。
午前11時15分にサルト・グランデの近くの停留所に到着。ここから500mくらい先にフェリー乗り場があり、フェリーは12時に出発するというからサルト・グランデまでの軽く1時間ほどの散策を大急ぎでこなしてからフェリーに乗ろうと滝に向かって歩き出す人もいた。私達といえば、大きなバックパックを担いでみてあらためてその重さにブルーになり、500m先のフェリー乗り場さえ遥か遠くに見えてサルト・グランデへの散策どころではなかった。一歩ごとに足が地面にめりこむ思いをしながらフェリー乗り場に到着。行列を作って待っている間に持ってきたサンドイッチで昼食だ。
11時45分になるとフェリー乗り込みが開始された。チケットはどこで買うのかなぁと思いながらチケットなしで乗船。美しいエメラルドグリーンの湖面のはずだが、あいにくの曇り空で鉛色になっているが、目の前に広がるパイネの角やパイネグランデの姿には迫力があって大写真撮影大会となった。
12時40分。相変わらず天気は悪いが夢のようなエメラルドグリーンの湖水に浮かぶ桟橋に到着。ずっとフェリーの屋上にいた私達は気づかなかったが、途中から船内でチケットの販売を行っていたようで船から降りる前に買わなくてはならなかったようだ。フェリーを降りようとする人の流れに逆行して船内に入ってチケットを買うのにかなり時間がかかってしまった。
フェリーを降りて左手にパイネ・グランデという素敵なレストランと宿泊施設とキャンプ場になった場所がある。私達はそちらではなく右手のグレイ氷河に向かうトレッキングパスに向かった。看板にはグレイ氷河まで3時間半とある。こんな大きな荷物を背負ってそんな時間で行けるか不安だが、とにかくトレッキングの開始だ。まずは谷あいの野原の道。風もなく雨も降っていないし日差しもないので歩きやすいと言えたが、とにかく肩に重量がかかって調子が悪い。何度も肩紐を調節するために立ち止まって大分時間がかかってしまった。
谷あいの平原を渡って午後1時半くらいから登り道になる。登りつめた所に湖があるのだが、そこはグレイ湖ではなく遠くに雪山は見えるものの氷河のかけらも見えない。バックパックは途中からウエストをきつく縛って腰に重量をかけるとかなり楽になることがやっとわかったのものの、慣れたという感じはしない。いやー、大変な事を始めてしまったなぁ。やっぱりキャンプ用具を担いでのトレッキングは無理だったんじゃないかなぁとそんな後悔の念が頭をぐるぐると巡り余計に疲れてきた。しかも道はずーーーーーっと登り。どこまで登るんじゃい!と文句も出てくる。そんな中で出会ったのは日本人でボリビアに駐在して海外青年協力隊員をしているという二人の女性だった。「久しぶりに日本人に会えた、そして今まで悪天候だったのに今日は雨も降っていない。素晴らしい!」と彼女達は心の底からこのトレッキングを楽しんでいるようだった。聞けば悪天候だったのでグレイ氷河に行くのも今日で2回目なんだそうだ。初日にして文句タラタラだった私は、彼女達にかなり勇気付けられて後の行程をこなす勇気が出てきたのだった。
この二人に出会ってすぐの午後2時45分ごろ。歩き始めて2時間の地点で始めて氷河が見えてきた。おおー、もうすぐだ。ここからはかなりの下り坂。こんど戻ってくる時にこの坂を全部登ってこなければならないということは考えないようにして、どんどんと下った。近くに見えているようでなかなか遠い。まだか、まだかと思いながら歩いて、キャンプ場に到着したのは1時間45分後の午後4時半近くだった。とにかくビール。テント設営もチェックインも後回しにしてそのままレフヒオ(山小屋)のレストランに向かった。ビール一缶CLP2000(=US$3.34)。山小屋で高いとは思っていたが予想以上に高い。勢い込んで入ったものの値段の高さに臆して一本だけ購入して二人であっという間に飲み干した。くー、旨い。一気に今日の疲れが吹き飛ぶようだった。
有料キャンプ場なので1日分の宿泊費(CLP3500=US$5.85)を支払ってテントを張る。ここのキャンプ場はまさにグレイ湖が目の前で浮いている氷河を拾ってこられるような場所だった。氷河側はちょっとした丘になって直接氷河を見ることができないのだが、その分、氷河を渡ってくる冷たい風を防いでくれる地形でキャンプ場にふさわしい場所といえた。
今日は初日ということもあり、シャワーを浴びてからレフヒオのレストランで夕食。さっきビールを飲んだ時に予約をしておいたのだ。お値段は一人CLP9000(=US$15.03)、スープ、メインにお肉、デザートにモモの缶詰、ジュースがたっぷりついて充実した内容だった。このレフヒオには英語圏の60代くらいの白人集団が宿泊していて同じように食事を楽しんでいる。聞くと、フェリーでグレイ湖を渡ってここに来たのだそうだ。苦労して歩かなくても簡単にここまで来る方法があることがわかったが、あのビールの旨さ、この食事の旨さを感じるためには歩かないとね。
荷物を担いでの初日、どうなることかと思ったが何とか目的地に到着できた。明日はここに荷物を置いて散策するだけなのでかなり気楽だ。もう少し天気が良くなってくれるといいのだが。
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