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2008.12.03 Vol.2
魚を巡る冒険
イースター島に来るにあたり、私達が確実に心から楽しみにしていたのはモアイ像よりもむしろ「マグロ」だった。イースター島ではマグロがあがる。それをさばいて刺身が食べられるという情報は何とも魅力的だった。
そこで「観光よりもまずマグロ」を合言葉に到着2日からマグロ探索に乗り出したのだった。初日に調査で私達が宿泊しているミヒノアというキャンピングサイトから徒歩5分の場所に一ヶ所、町中から近い場所に一ヶ所、合計二ヶ所の港があることがわかった。港といっても入ってくるのは小型ボート。何時に出て何時に戻るという明白な時間は決まっておらず、だいたい朝8時から12時くらいに1度、午後3時から5時くらいに1度船が戻ってくるような事を誰もが言っていた。そこで私達は2つの港を行ったり来たりしてマグロが帰ってくる張り込みをすることにしたのだ。他の人は島観光で利用する車の手配やメンバー集めをしているのに、「マグロを食べないうちは観光できない」と宣言している私達はとてもおかしな人に思われていたことだろう。ま、それはともかく。
●マグロ探し開始
午前中は宿に近い方で魚を積んだ船が戻ってくるのに行き当たった。しかしマグロではない。漁師さんがその場で腹をさいて内蔵を取り出し、身の方は車で来ている男性が持っていってしまった。その男性は車に量りを乗せていて魚を量っていたので仲買人だと思われた。
残ったのは漁師さんと私達と内臓。この内臓をどうするの?と聞くと、市場でセビッチェにして売るのだと言う。セビッチェというのは南米でよく食べられる海産物のマリネだが魚の内臓のセビッチェというのは初めて聞いた。これだけ新鮮ならばおいしいだろう。
お昼ご飯を食べてからもあきらめがつかない私達は、今度は町中に近い方の港にアプローチ。待っていると、来た来た!マグロがやって来た。宿にいる日本人宿泊者でマグロの状況に詳しい人がいて、その人に「シーズンは12月半ばからなので無理だろうなぁ、獲れても本土サンティアゴで高値で売れるから空輸されちゃうんだよ」と言われたのだが、幸運にもあがったのを見ることができたのだ。
さっきの量りを乗せた仲買人が再び登場。マグロを船から引きずり出してざっと洗い、頭を落として量りに乗せると25kg。背中に黄色いヒレがついているのでキハダマグロだろうか?仲買人に話しかけようとすると何も言っていないのに「ノー!」と言われた。どうして「ちょっと売ってくれない?」って言おうとしたのがわかったのだろうか。それでも面白いので見ていたら、「頭いるか?」。頭いるか?っていったよねー。よくスペイン語がわからないんだど、とにかく「シー!」と答えるとどーんと頭をこちらによこしてきた。おお、すかさず用意していたビニール袋を差し出して入れてもらう。もしかして買えるかもしれないと用意してきて良かった。
というわけで到着して2日目にしてマグロの頭をメインにしたバーベキューが実現。動き回った甲斐がありました。水でよく洗ってエラの中にあるギザギザしたものを包丁と力を使ってバリバリとはがし、オーナーが縦2つに割ってくれて火にかけた。
あんまり食べる所がないとはいえ、新鮮なマグロの頬肉などにありつけて幸せなスタートだった。
●他の魚への浮気時代
港にあがる魚は全て仲買人が持っていってしまう。じゃぁ、そこから流れて市場に出ないのだろうか。次の日から市場も視野に入れての探索開始。お昼に行った幸太郎という日本料理レストランで出してもらったパッパラーウリが大変気に入って、市場ではその魚も含めて探し始めた。パッパラーウリはハマチに似た味の魚だった。ほんのりとピンクがかった色合いの身身がコリコリとしまった歯ざわりで脂がのっていて旨いのなんの。すっかり気に入ってしまった。市場では1kgあたり4500ペソ(=US$7.14)で販売されていて、写真下段左にある大きさで丁度1kg。3枚におろして刺身で食べた。
もう1つ市場に出ていたのが大きな目玉の金目鯛のような魚。煮付けにしてみたがこちらも身がぶりぶりとしていてゴムのようになってしまう。幸太郎では寿司ネタとして出しているので、こちらも刺身で食べればよかった。
市場で通常出ている魚は2種類。金目風もハマチ風も出ていない日にこちらにも手を出してみた。そのうちの1つは蛇あるいはアナゴのような太くて長い魚。これは好きな長さを切り身で買える。とはいえほんの15cmと思って買ったらそれだけで1kgにもなってびっくり。骨が重いのかなぁ。これも煮付けにしてみたのだが、ブリブリとゴムみたい。ここの魚はすべからくブリブリとした身だ。それにしてもこれは刺身は無理だろう。もっと長い時間につけたらおいしいかもしれない。味は鰻のような脂がこってりした味で濃い醤油煮付けはなかなか美味だった。
最後に紹介するのは宿の宿泊者がお手製の釣り針でも釣ってきたことがある、この島で最もポピュラーな魚。見た目は鯛のような感じだが刺身にしたら青魚のような赤い実で、唯一ブリブリ、コリコリしない柔らかい身で脂ののりはそんなになくさっぱりした味だった。
●そして本命の登場
おいしい魚があることもわかり、マグロについて諦めの境地にもなっていたある日、観光から宿に戻って寛いでいるとオーナーが何とマグロを持って帰って来た。
日本人全員の宿泊客が取り囲む中、オーナーは半身を宿泊客で買いますか?という提案をしてくれたのだった。その場にいた日本人で購入を即決。半分で3万ペソ(=US$47.62)だ。
その場にいた人で購入希望者を募ると日本人15人、アメリカ人1人の計16人。オーナーが半身をそのままBBQにしたいのか、それともSASHIMIにしたいのかと聞いてくるので迷わず刺身だと答えると、その場でサクにしてくれることになった。メンバーの中に瀬戸内生まれで魚をさばく手際が鮮やかな大貫さんの奥さんがいた。彼女が16人分の刺身にしてくれるというので、私は15人から一人2000ペソ(=US$3.14)、彼女は無料でどうかと16人に審議をかけて了解をとり、金を集めてオーナーに支払って金銭関連は終了だ。
通常よりも大きくて皮が厚いマグロは、まず皮をはいで、それから半身を骨にそって切り離して中骨に沿って立て半分にして、あっという間にサクになった。さすがオーナーはマグロ扱いに慣れている。
夕方になるまで冷蔵庫で保管して、午後5時に刺身準備開始だ。筆頭板長大貫さんの奥さん。彼女がいてくれたからこそ16人前の刺身が実現したようなものだ。大トロ、中トロの部分は取りおいて、赤みの部分から切っていくことになった。16個の山を作って切っていく先から山に積み上げていく。16等分にもしたら一人分はそんなにないだろうなぁとおもっていたが厚めの刺身が一人10切れはあたった。それに大トロ、中トロが分配されて、あとは好きな山を持っていってもらうことにした。
全部で40分くらいかかっただろうか。それに合わせてご飯や味噌汁を用意していた我が家は早速夕食だ。
いっただっきまーす!
本マグロに比べたら身は赤さがうすくて淡白な味わいだが、一度も冷凍されたことのないねっとりとした舌触りで味がどこにも逃げていない旨さがある。「ちょっと残して翌日にも食べようかな」という思いが食べ始めの1秒よぎったが、結局全部食べてしまった。
今まで旅をしていて1つの場所でこんなに多くの種類の魚を食べたのは初めてだ。イースター島はモアイだけではない。魚食生活の魅力も満載なのだ。
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