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2008.11.26
観光二発目、火山ラノ・カウの火口湖とオロンゴ
チリ:イースター島


地図左下、火口湖付近の青い線が今日の散策路。
 今日は島の南西にある火山ラノ・カウが作った火口湖付近まで行ってみよう。ここにはオロンゴという鳥人儀式の行われていた遺跡がある。

 地図の上で距離を見ると徒歩でも十分に行ける距離なので、私達は迷わず徒歩に決めた。行った人に行き方を聞くと、宿ミヒノアの海岸側の出入り口を出て左にずーっと歩くと舗装道路に出る。

 舗装道路に出たら右折して道なりにずっと歩いて行くと、途中右手が公園になってくる。公園の中に入ってからオロンゴへの道を指した標識に従って歩けば到着するのだそうだ。

 朝ごはんを食べていると、激しく雨が降り出してきた。海の彼方、水平線と雲の間に立つ虹は怪しくも美しいが、こんな雨が降った後で行けるのだろうか。

 腕にカッコいいマオイ柄の刺青を入れたオーストラリア人の兄ちゃんも今日行こうと思っていたのにと言う。どうする?と私が聞くと、足元が滑りやすいかもしれないから、今日はやめとこうかな、という答え。

 案外弱虫じゃん?と思っていたのだが、後から聞いたら彼はとんでもない冒険野郎で、この日も私達が向かった火口湖から向こう側の海岸までおりて再び岩をよじのぼる、勝手にロッククライミングをやってみようと思ってたんだって。レベルが違う。そんな事も知らずに、私はこの朝彼をキッと見やって「私達は行くけどね」と腰に手をあてて挑戦的に答えていた。

 朝8時40分。天気は火口湖から私達のキャンプ場の方に移動していて、火口湖から順に青空が広がってきていた。これなら行けるだろうと判断し出発だ。宿を出て左側に歩いていくとここにもモアイ像がポツンと一体立っている。その手前では大人しい馬に向かって挑むように吠え立てる野良犬が3匹いた。私達が近づいた時、犬達は丁度馬の後ろ足に蹴られそうになって逃げ出す所だった。それを目撃していた私達に、今度は「お待ちしておりました、ご主人様」と犬達が擦り寄ってきたのだった。結局、彼らは火口湖に到着するまでついてきたのだった。

 舗装道路から右折して歩いて行くと、右手下へと降りていく公園のような場所がある。ここは、ラパヌイの昔ながらの農耕方法を公園という手法で紹介している場所だった。風や日差しがとても強いここでは、石を積み重ねた中に土を盛って小さな円形の畑を作り、その中で作物や樹木を育てるのだそうだ。この公園の一角から右手の丘に向かって伸びる道、これがオロンゴへの道だ。標識も出ていた。

 道はここから緩やかな上り坂になり、やがてやや勾配を急にして丘の上へと向かう。森を抜けるとすっかり野原。一本道を歩いて行ると、彼方に野良牛などが見えている。私達を主人と仰ぎ見る野良犬3兄弟は、意味もなく野良牛を追い掛け回して追い払ってはこちらに得意げにやってきて「褒めてくださいよ」というように見上げる。こいつらはご主人様が欲しいのだろうか。途中の木陰で一息ついて振返ると、出発した宿の辺りが眼下に見える。緩やかながらも大分高い場所までのぼってきた。公園から登り始めて30分、最後に舗装道路を越えて火口湖に到着だ。車で来るには舗装道路でかなり長い距離を迂回してくるのだが、徒歩なら野原を突っ切って歩くので、割合近い印象だ。

 火口湖沿いに右に回りこんで行くと、オロンゴ(鳥人儀礼の地)がある。マケマケ信仰(鳥人儀礼)はモアイ信仰の後に始まったもので、鳥人に選ばれた人は1年間王(鳥人)として洞窟に住み、儀式として食人も行ったそうだ。食事も入浴も自分で行うことは許されず全て他の人に行わせるそうで、自由な実験を握った王のイメージよりは信仰のために神に1年間を捧げるために幽閉されていたという印象を持った(火口湖に到着した時にお金持ちアメリカ人がガイドをつけていて、そこの説明の受け売り)。

 火口湖の右手をぐるっと歩いてオロンゴまで行ってみることにした。この頃になってヤクザな野良犬3兄弟は「旦那、そろそろ餌をくれてもいいんじゃぁねーんですかい?」とサンドイッチの入った私のリュックをジャンプして鼻でつつき始めてきた。かわいそうだがここでお別れだ。君達とはそういう関係ではない。しっしっと追い払ってもついてくるので、最終的には小石を投げてお引取り願った。遠くにうずくまって「何でですかぁ、旦那ぁ」と悲しげに見てくるが仕方ない。

 オロンゴに入るのには入場料が必要。お金払って中に入って遺跡を見たい気持ちはあまりない。私達が見たかったのは観光案内所で見たポスターの写真の景色だった。大きくえぐれた火口湖。その火口湖のすり鉢の外側から一直線に海に落ちる断崖絶壁と、それに続く美しい海。写真はオロンゴとは反対の際から撮影されているものだったが、観光案内所でもらった地図にはそちらへの散策路が描かれていないのでオロンゴから見るしかないと思っていた私達はどうしようかしばし考えてしまった。でもなぁ。こっち側から見ると切り立った崖には見えない構造なんだよねぇ。結局、入り口で断念。そこから引き返すことにした。

 途中には猛禽類系の鳥がサーッと飛んでいる。大きな鷲か鷹のような鳥で、こういう鳥って通常高い空の彼方に飛んでいるイメージなのに目の前を飛んでいるからびっくりする。

 野原を風がわたって雲も切れて青空が広がりつつある。オロンゴに向かって晴れも出ておらず太陽も逆光だったのでそんなに美しく見えなかった火口湖だったが、太陽が真上に近づき晴れててきたために湖に浮かぶ水草の緑が生き生きとした色になり、水草の間に見える水面に雲や空が映し出されている。衛星写真で地球を見るとこんな風じゃなかっただろうか。小さな地球を高い宇宙から見ている気分になれるのだった。



 美しい湖を見下ろして、今日の観光はこれで終了かなぁと思っていたところに、再び別のアメリカ人を引き連れたガイドが登場した。

 お客のアメリカ人が自分達の写真撮影に夢中でガイドの手が空いているようなので「いいお天気になりましたねぇ」と話しかけてみると、愛想よく返事が返ってきた。

 もうオロンゴには行ったのか?と聞かれたので手前まで行ったけれど中には入らなかった。切り立った崖が海に落ちる部分を見たかったんだけど、オロンゴ側じゃあんまり見られそうもなかったからね。というと、ガイドは「じゃぁ、ここから左側に回り込めばいいのに」と言う。

 え?行けるの?

 行けるんだって。観光案内の地図には掲載されていないけど見ると獣道のような細い道がずっと続いている。ガイドさんは火口湖の左端から更に海岸沿いに歩いてVin apuというモアイ像まで見て町まで歩ける道があると教えてくれた。親切に教えてくれたガイドさんにお礼を言って、私達は火口湖を今度は左側に向かって歩き始めた。

 火口湖の左側は地図にも掲載されていないせいかちょっと気を抜いていて、遊歩道というか獣道は本当にすり鉢に縁にあったりするので、ぎりぎりの場所に立って下の火口湖をのぞいたりすることができ、よりすり鉢の傾斜を強く感じられた。

 どんどん回り込んで行くと、私達が期待していたすり鉢の切れ目が近づいてきている。すり鉢の切れ目の向こうには青い海と離れ小島が見えていた。

 海岸から2km離れたこの小島は鳥人儀礼には欠かせない重要な役割のある島。毎年1回、すり鉢の上の方にあるオロンゴ遺跡のある場所から崖を下って2kmを泳いで島に渡って、島で産卵されるグンカンドリの卵を割らずに持って帰ってくるという競技を行っていたのだそうだ。この競技で優勝した者のいる部族の部族長が王(鳥人間)になれるということだったそうだ。

 はー、この崖を下り降りて、泳いで島にねぇ。見れば見るほど不可能な競技に思えてくる。小道は最後にクッと登った所に「注意!」の看板を備えて終わっていた。

 「ここから先、断崖絶壁につき立ち入るべからず!」

 しかし、看板の前からは先が盛り上がって肝心のすり鉢が見えない。これを見に来たのに。

 ちょっと看板の向こうがどうなっているかのぞいてもいいんじゃないか。

 恐る恐る看板の向こうに行って見ると、確かにすぐに断崖絶壁になっていて真っ逆さまに落ち込む場所だった。柵も何もないから危ない、危ない。でも目の前には何も遮るものがなく私達が観光案内所で見たポスターどおりの景色が広がっていて、それは息を呑む壮大な美しさを湛えていた。


 ここでお弁当を広げてランチタイム。危なっかしいのでタテカンの手前でお昼ご飯を食べ、時々絶景に足を運んで景色を堪能してからでかけることにした。

 さて、ここから海沿いの道を行けばいいと言われていたが、さすがによくわからない。森の中に続く道を歩いて視界の開ける場所に出ると、どうやら海岸沿いではなくどんどん内陸に入ってしまっていたようだ。今から軌道修正するのは難しいし、どうやら遠そうでもある。

 どうしようかと思いつつ歩いていると、オロンゴから車で町に戻る舗装道路に出てしまったので、そのままその道伝いに戻る事にした。

 町に戻る途中の左手にもう一箇所気になる場所があった。舗装道路から左手に細く入って海へと落ちていく道だ。何だろうかとたどって行くと小さな入り江に洞窟のある場所だった。ふーん、何だろうねぇと一応見学して宿に戻ってきて他の人からこの洞窟がかつて食人の儀式が行われていた場所だったと聞いた。だから、洞窟の入り口に牛の頭蓋骨が置いてあったのかぁ。事前に聞いていたら気味が悪かったが何もしらないので写真もどんどん撮影してしまった。

 こうして、朝8時40分に宿を出て宿に戻ってきたのが午後2時。海沿いのモアイ像まで行ったら丸1日楽しめるコースだ。太陽の傾き、逆光という観点からは火口湖はオロンゴのある側から見るなら午後からがいいし、私達が行った左側から見るなら午前がお勧めだ。両方というなら昼前後で両方見るのもあり。意図したわけではないが私達はそうなった。数あるイースター観光スポットの中でも、私個人としてはこの火口湖の美しさはかなり上位にくる。


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