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2008.11.19
ワイナリーのコンチャ・イ・トロへ
チリのワイナリー、コンチャ・イ・トロは日本でも有名だから知っている人も多いだろう。私も旅に出る前からサンライズSunriseというブランドのワインをよく飲んでいた。当時は一本1160円だったかな。カヴェルネソーヴィニヨンのどっしりと豊かな香りと味が十分に楽しめて値段の割にお徳感がある。
コンチャ・イ・トロではサンライズは下から3番目くらいのブランドだ。今回はチリでサンライズの下のランクのフロンテラ(1本250円くらいで買える)をテーブルワインとして飲んでいるが、それでも満足できる。しかし、せっかくサンティアゴまで来たのならワイナリーに足を運んでもう少し上質のワインを買ってみようではないか、そしてそれを日本に送って家族でわっはっはと飲もうではないかというのが今回のワイナリー訪問の目的だった。
コンチャ・イ・トロのワインはもちろん町中の酒屋でも販売されている。サンライズの上のクラスで現地価格で一本3500ペソ前後(店によって値段が異なる)、つまりUS$5.56くらいで買える。わざわざ地下鉄とバスを乗り継いでワイナリーまで行かなくてもいいんじゃないかと思われるかもしれないが、あのカッコいいワイナリーのショップから日本に送ってみたかったのだ。
3年前と比べると地下鉄が延長されてコンチャ・イ・トロへは行きやすくなっていた。それでも市内の宿からは小一時間かかる。バスは郊外の町を抜けるとブドウ畑が垣間見える街道になり、それからすぐにコンチャ・イ・トロに到着。あいかわらず美しい中庭、清々とした街路樹など来るだけで気持ちが高揚するワイナリーだ。
ここに来る人の大半の目的はワイナリーツアーだろう。入り口でUS$12あるいは7000ペソを支払って先に進むとガイドが待っていて1時間20分に及ぶワイナリー内のガイドツアーとワインの試飲、お土産にワイナリーのロゴの入ったワイングラスがもらえる。このワイナリーの成り立ちと歴史、オーナー達の住んできた住居と素晴らしいワイン畑、そして有名なディアブロ・デ・カッシーロ(ワイン倉の悪魔)のショーアップされたエピソードを体験し、もちろんワインテイスティングもある。特にヨーロッパから来たカメリエーレという品種のブドウは、オリジナルのヨーロッパで病気によって株が全滅してしまいオリジナルは今やチリにしか残っていないという稀少品種。これもテイスティングできる。時間が経つとチョコレートの香りになるという特徴が体験できるのだ。US$12は高いとバックパッカーは引き気味だが、なかなか楽しい。
しかし、今回はツアーには参加しない。入り口でその旨を告げると「free」と書かれたショップとワインバーへの訪問のみが許されたグリーンのステッカーをもらえる。それを胸に貼って入場だ。
どれを買おうか。ディアブロ・デ・カッシーロくらいを買おうかと思っていたのだが、見ているうちにどんどん高いレンジのが欲しくなってくる。以前買ったのはUS$15くらいのMarques casaというブランドだった。今回はディアブロとマルケスとあと1本。うーむ、どれにしようか。そして店内を歩き進めると、とうとうコンチャ・イ・トロのフラッグシップワイン、数々の国際的アワードで高ポイントを受賞したチリご自慢の「ドン・メルチョ 2005」のコーナーに来てしまった。輝かしい経歴を紹介するパネル、そしてうやうやしく半透明の白い薄紙に包まれた姿を見ているうちに、やっぱり記念的にこれを買うしかないという気分になってきてしまった。買うか?どうしようか・・・。ええい、買ってしまえ。
ということで、ドン・メルチョ2005に手を伸ばして購入決定だ。
3本のうち1本を日本にいる弟夫婦に送ろうとしたのだが、ここでは発送業務を行っていないという。今まで訪ねた世界の他のワイナリーでは「もう好きなだけ世界中に送りまっせ」という所が多かったので、これだけ有名なワイナリーで発送業務を行っていないのはおかしいなぁと思いながらも、発送できるよう空気のはいったクッションケースを1つ購入した。
「日本に送るのは当然ドン・メルチョですよね?」と店の人に聞かれていや違うと答えると、「どーして?」と店員全員が大ブーイング。一番高いのを送るべきだとか、チリが誇るドン・メルチョを送らないでどーするとか、ドン・メルチョは日本では買えないとか口々に言う。客が何をどうしようといいじゃないかと思うのだが、予想もしなかった店員の攻撃にあらためてドン・メルチョに対するワイナリーで働く人の思いの強さが露呈した出来事だった。
宿まで戻って荷物を置いた私達は日本に送るワインを引っさげて郵便局へ直行。スペイン語で郵便局はCORREOSだ。
「これを日本に送りたいのですが」
とクッションケースとワインを差し出すと、係員はこれではダメだという。チリの規定ではワインは木箱に入れてクッションに包まれた形でないと送れないという。
じゃぁ、木箱を用意したとしていくらかかるのかと聞くと、係員はどこやらに電話を始めた。長い会話の末わかったことは、木箱に詰めて木箱内の容積10リットル(これが送れる最大容量だそうだ)を日本に送ると「米ドルで300ドルでございます」だって。木箱要領10リットルってことはせいぜい4本くらいしか送れないだろう。一本6ドル、つまり24ドル相当のワインを送るのに300ドルも払えない。そんなに払うならドン・メルチョ4本買ってここで飲んだくれる方がましだ。
やれやれ。
諦めるしかない。結局購入した3本とも自分達で飲むことになった。これが日本で飲めたらねぇとネットで検索してみると、なーんだ、あるわ、あるわ。楽天ショップではチリの店で購入するのとほぼ変わらない値段で今日購入した3本とも簡単に買える。大量に購入すれば送料さえもかからないではないか。どういうこっちゃ?ということで無駄に送料をかけて送らずに済んだということで超割高のワイン送料設定には逆に感謝する羽目になった。よーし、今度日本に帰ったらさっそく楽天から注文しよう!
そして夕飯にははやくもドン・メルチョ。
デキャンティングもしていないのにコルクを抜いた瞬間からただならぬ香りが強く漂ってきた。グラスに注いだ濃いルビー色からは更に強く香る。口に含むと、どこにも角が感じられずにひたすら丸い感覚がずっしりとやってくるのだ。違う、ぜんぜん違う。最近は3ドル弱のフロンテラを飲んでいたので更にその差は歴然だった。
それもそのはず、このワインは一本70米ドル以上するのだ。日本の楽天でも7300円くらいで買えちゃうってのが解せないのだが、ワイナリーに直接行って、ちょっと変わった形とはいえドン・メルチョを購入したことに対する賞賛を浴び(あの出来事は賞賛だったと思おう)て買ったのは記念に値する。今回のコンチャ・イ・トロへの訪問は前回とはまた一味違った経験になった。
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