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2010.03.17
ミトラ遺跡など5ヶ所を巡るツアーに参加
宿の壁にいくつかのツアーが紹介されているが、その中でオアハカ東部にある見どころ5ヶ所を1日で巡ってしまおうというツアーがあった。時間をかけてミニバスなどで1つ1つ訪れる人もいるが、ガイドブックの解説を見る限りそんなに時間をかけることもない見どころが多いと思われたので、このツアーに乗って一気に観光してしまうことにした。
ツアー代金は一人200ペソ(1400円)、これとは別に昼食代金、ミトラ遺跡への入場料金37ペソ(259円)、イエルベ・エルアグアへの入場料金が25ペソ(175円)かかる。「地球の歩き方」に掲載の2社にも同じ内容のツアーがあって、安い方が宿の値段と同じく200ペソ、高い方が300ペソだった。ともに昼食代金は含まれていないので何が違いかよくわからない。ということで、私達は宿で申し込んだ。
朝9時45分に宿まで車で迎えに来てくれて、エルトゥーレ→テオティトラン・デル・パジェ→メスカル工場→ミトラ遺跡→昼食→イエルベ・エルアグアと巡って午後7時に宿に到着するというプランで1日めいっぱい連れ回してくれて効率良く観光できるからいい。
お昼ご飯はツーリストばかりが集まるレストランに強制的に連れていかれて一人120ペソ(840円)のビュッフェとなる(飲み物代金別)。これが嫌なら自分でサンドイッチなどを持参してレストランの外の木陰で休憩することもできる。しかし、このビュッフェは食べる価値があるかも。スープ5種類くらい、サラダバー、エンパナーダやエンチラーダなどのスナックコーナー、モレを含む様々な肉の煮込みがこれまた5種類くらい、炭火焼コーナーでは高級牛肉のタンピケーニャと豚肉がいい匂いをあげ、デザートコーナーにはフルーツとケーキとスィーツがたくさん。これで1000円しないなんてすごいじゃないか。他で外食せずにここで一気にメキシコ料理を堪能するのも手だ。
それではこの日見て周った観光地を写真で紹介しよう。
まずエルトゥーレ。アメリカ大陸最大「「幅」の木で有名だそうだ。ガイドが「最高樹齢でもない、一番高いわけでもなく、幹が一番大きいのだ」と自慢なのか自嘲なのかわからない調子で説明しているのがおかしい。5ペソの入場料金を支払うと囲ってある柵の中に入れるが、外からでも十分に見える。ガイドブックにある写真のように全景を撮影してみても、その偉大さはなかなか実感できないのだが、幹の部分だけをすぐそばを歩いている人物と一緒に撮影すると、やっぱりその太さに驚く。幹はカーテンのように内に入り外に出て何本もの木が寄り添ってできたようにもい見えるが1本の木だという点が偉大なのだ。この市では木の寿命を延ばすために周囲にあった建物は全て撤去して公園にし、木に十分な栄養がいくよう配慮しているのだそうだ。その意気込みの割に入場料5ペソ、しかも支払わずに見えてしまっていいのだろうか・・・。
偉大な木のお次は、羊毛織物で有名なテオティトラン・デル・パジェ村を訪れる。村を訪れるといっても1軒の織物工房に連れていかれて、糸の生成から染色、織り方を説明してもらって「さぁ、買った!」ということになる。染色で面白いのはコチニータという虫をつぶして出す鮮やかな赤色だ。
次々と床の上に広げられるカーペットはなかなか素敵で、全く買う気がなかったのだがついついあれがいい、これがいいと選んでいる。しかし日本の住宅の玄関先にピラッと置くような一番小さなサイズで8000円くらいだと言われて、とたんに興味が失せた。
しかし、今日のツアーメンバーの中にメキシコ・シティーから来ているメキシコ人カップルがいて、彼らは本気で買いに来ているようだった。結構大きめのカーペット4枚を選び、支払いは計算機片手にご主人と奥に行ってしまったので最終いくらになったかわからないが双方満足げな顔で握手を交わしていたからいい交渉になったのだろう。後でオアハカ市内にあるMAROというオアハカ地方で民芸品を製作する女性職人組合の直営店で値段を見たら、8000円と言われたカーペットの大きさが2500円くらいから販売されていた。もちろん、村での作品の方が目が細かかったかもしれないし、単純に比較はできないが、もし買う気でのぞむならオアハカ市内の土産物屋やMARO(ちゃんと値札がついている)であらかじめ品質と値段を頭に叩き込んでから行くべきだろうと思った。
この村から幹線道路に出てすぐの場所に次の目的地のメスカル工房がある。本当に小さな工房で敷地の一番奥の庭で原材料のアガベの球根部分を燃やしているのが見え、その手前の樽ではブクブクと発酵していて、お店の入り口で試飲及び販売ということになっていた。オアハカ市内のメスカル店で試飲した時に、テキーラと違って燻したようなスモーキーな香りがあると感じていたのだが、今日製法を見てわかった。テキーラはアガベを単純に蒸すのだが、メスカルは土中に埋めて木のチップなどで燻製にしているのだ。柔らかくなったアガベの球根を絞って液を出して発酵させ、蒸留して作るのでスモーキーな味になるのだった。
車中から見えたアガベ畑。 |
アガベの葉を切り取った球根。8年物以上が使われる。 |
裏庭でスモークされるアガベ。 |
すっかりと柔らかくなったアガベ。 |
左からスモークした試食用アガベ。とても甘くてジューシー、石臼で挽いて、樽で発酵し、最後に蒸留する。 |
簡単に説明された後は、お楽しみの試飲会。
テキーラと同じくメスカルも蒸留したての無色透明なブランコ、3年未満寝かせたレポサード、それ以上のアニェホになる。これに加えて、ここには8年寝かせたグランレゼルバもあった。ここまではアルコール度数が40度。メスカルにココナッツ、マンゴー、コーヒー、アプリコットなどのリキュールを加えてアルコール度数19度にしたものもおいしかった。
ガイドさんが飲み方を教えてくれる。グラスを掲げて「アリーバ(上に)!」、下に降ろして「アバッホ(下に)!」、そして中央にもってきて「アル・セントロー(中央に)!」と言ってからグイっと一気に飲み、手の甲に置いた塩をぐっと舐めてライムを一かじりするのだそうだ。メスカルにはグサノと呼ばれる芋虫入りもある。つまみは通常の塩ではなくグサノを乾燥させてすりつぶしたものと塩を混ぜたオレンジ色のグサノ塩になる。ちょっと芋虫風味になるが、そんなに嫌な味じゃない。まぁ、ない方が好みだけどね。
ブランコ、レポサード、グサノ入りレポサード、そしてアニェホとツアーメンバー全員で「アリーバ!アバッホ!アル・セントロ!」と何度も繰り返してやっていると、だんだん愉快な気分になってくる。
いやー、楽しい!ビバ・メヒコ!
そして、最後の8年物が振る舞われて、皆で「アル・セントロ!」と飲みほしちゃってから、外で同僚と話し込んでいたガイドが慌ててやってきて、「ありゃりゃー、8年物はもっとゆっくりと舐めるようにチビチビ飲まないとだめだったのにー!」と額に手を当てた。私は何だかそんな気がしていたので飲みほしていなかった。ゆっくりと喉に流し込むと、それまでに試飲していたのとは格別に違うシルキーな酒だった。買った!これ、買った!
先ほどのカーペット工場では貝のように固く沈黙を保っていたツアーメンバーはここではバンバンと買い物した。もちろんカーペットを買ったあのカップルも含めて。
すっかり陽気な気分の一行を乗せて、次はミトラ遺跡。時刻は既に午後1時なんですけどお昼ご飯に行く気配がない。アルコールも入っているし、お腹は空いてくるし、あんまり遺跡という気分ではないのだが、中南米ではツアーのお昼ご飯が遅いのは常だから仕方ない。チリやアルゼンチンなんてお昼ご飯が午後2時過ぎなんてこともあったからなぁ。
ここでは英語ガイドグループとスペイン語ガイドグループにわかれて解説を受ける。因みにツアーについてくれているガイドさんは英語もスペイン語も話せるのでここまではバイリンガルでやってきてくれた。ミトラ遺跡はサポテコ人の宗教の中心地だったもので、マヤ文明ともアステカ文明ともまた異なる雰囲気の遺跡だった。何といっても興味を引かれたのは壁面に横に細長く彫刻されている幾何学模様の装飾だ。様々な文様があるが中にはとても複雑な連続模様もあってじっくりと見てしまった。
遺跡の外側には教会があり、教会裏にも遺跡があるのだがあまり石が残っていない。教会の建造には遺跡の石が使われてしまったのだそうだ。ミトラ遺跡だけでなく、こういう話はユカタン半島のチチェンイツァーでも、またメキシコ・シティーの市内にあるメトロポリタン・カテドラルでも聞いた。もっともチチェンイツァーの場合は、近隣のホテルを建てるのに使われたとかだったなぁ。
こうしてやっぱり午後2時半にやっとお昼。サンドイッチやタコスなど軽い食事の選択肢を期待していたのだが、がっつり食べるビュッフェだけしかないレストランに連れていかれてしまった。こうなったら食べるしかない。
同じツアーに参加しているドイツ人女性と我々3人でテーブルに着き、下を向けないくらい食べに食べた。
最後の見所はミトラ遺跡から山道を南下するイエルベ・エルアグアという石灰石地層の場所だ。高台から流れる川が滝となり、長い時間をかけて石灰石が積って風変わりな風景を作りだしている。このツアーに参加した一番の目的は、このイエルベ・エルアグアにあった。この場所だけは公共の交通機関では行きづらそうだったのだ。
途中までは新しくできたバイパスの素敵な道路を快適に進むが途中からは未舗装の村の中を走る細い道になる。両脇はアガベの畑で道を牛が横切るのを停車して待つような牧歌的な場所だ。こんな平和な雰囲気の村だがイエルベ・エルアグアの両脇にある村には関所があって観光客はここでいくらかの通行料を支払わなくてはならないことになっている(ツアー代金に含まれているの)。大した金額ではないそうだが、この関所の在り方と料金を巡って両村の間では死者が出るほどの争いがあったのだそうだ。今は均衡を保って平和に運行されているらしいが、関所のバーの付近に5〜6人もの男たちが番をしているのを見ると観光資源が村にゆがんだ経済をもたらしてしまっているのを目の当たりにした気分になった。
イエルベ・エルアグアはかなり標高の高い場所にあった。出発地点のオアハカが既に標高2000以上の場所で、ここは更に辺りを睥睨する高台にある。しかも今日は曇って陽がさしていない。車を降りた途端に皆手持ちの長そでを着こんだ。実はここには天然のプールがあると書かれていたので朝から水着を着てスタンバッていたのに、全く泳ぐ気がなくなってしまった。車を停車した場所の眼下に天然プールが見えているが、ガイドの提案ですぐにプールまで降りてゆっくりしたい人とプール右手の散策ルートに行く人に別れることになった。泳ぐ気もなくなったので、私達は散策ルートに参加。このコースは急な坂や階段があって全て未舗装なのでシューズを履いてきて正解だった。
到着した場所の眼下に天然プールが見える。 |
散策ルート沿いの巨大なサボテン。 |
天然プールを横から見ると石化した滝が巨大な滑り台のように
なっているのが見える。 |
寒いけれど天然プールに入っている人の姿が見られる。
まぁ、日がさせば入れないこともない。 |
更に下っていくと巨大な崖に近づくルートになる。 |
見上げると、のしかかるような石のカーテンに圧倒される。 |
案外ひょいひょいとカーテンのふもとまで登れるので記念撮影。 |
この崖がこんなに巨大だとは思ってもいなかったので、これは感動的な期待の裏切りだった。天然プールで泳げない不満もここですっかり解消された。
ここからは同じ道を引き返し、途中から右手にそれて行くと別の滝に行きあたった。といっても水が枯れつつあって既に滝の様相を呈していない。かつて滝だった所は滝型に石が固まって滝の落ち口に薄く水が残っている風景だ。それでも空を映す水面とその向こうに山並みが広がる景色は面白かった。
ここからは再び天然プールのある場所がもっと広い範囲で見えた。滝の形のままに石化した下の方は段々になっている。
ガイドがここで「世界中でこれに似たものではトルコのパムッカレという場所があります」と言っているが、かたやパムッカレは世界遺産で、もっと一段一段が広く棚田のようになって、そこに水色の水がたたえられて美しい。パムッカレと並び称するとは大きく出たものだなぁ。
こうしてなかなか楽しい散策ルートを終えて、天然プールのある場所に到着した。大急ぎで水に入る人もいたが私達は見るだけとなった。水はそんなに冷たくないそうだ。天然プールの先は滝になっているので、眼下の景色がプールに入りながらにして楽しめるのはいい。プールに入っている人も入っていない人も景色に見惚れていた。プールの手前にはもう水が流れていないが棚田状の広い石段があり、確かにパムッカレっぽいのだった。
こうして午後5時40分に車に乗り込んで帰途についた。宿に到着したのは午後7時。この頃になってあまり雨が降らないというオアハカが土砂降りになってきた。ツアー中に降らなくて良かった。今日のツアーは買い物、お酒、遺跡、自然の風景とバラエティーに富んだ内容で非常に充実。安い方のツアーだからガイドさんがスペイン語のみなのかと思ったら、ペーラペラと英語も話せるしジョークも飛ばすし、全く問題なかった。
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