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2010.03.13
土曜日の静かなサンアンドレス・ララインサール(刺繍の織物村)
サンクリストバル・デ・ラスカサスの周辺には先住民の住む村がたくさんあり、それぞれに織物が得意だったり陶器が有名だったりして、先住民同士も行き来するし、観光客も訪ねているようだ。特に日曜日にはティアンギスと呼ばれる定期市を開く村に人が集まり、売っている品物というよりは集まる人々の民族衣装が観光客の間では人気だ。
明日、そういうティアンギスの見学をするとして、土曜日の今日はどこに行こうか?
特にティアンギスがあるとも書かれていない刺繍の付いた織物で有名な村、サンアンドレス・ララインサールが適当な距離にあるので、行ってみることにした。
サンクリストバル・デ・ラスカサスの町北部にある市場から更に2本くらい通りを北上して西に2ブロックそれた所からララインサール行きのバスが出ると宿の人に教えてもらった。
市場付近まで行くと他の村に行くバスへの呼びこみはあるがララインサールの名前が聞こえてこない。人に聞きながら探し当てた場所は「TERMINAL」と書かれた立派な建物で、ここからタクシーあるいはトヨタハイエース型のバスが出ているのだった。サンクリストバル・デ・ラスカサスに近づくバスやこの町の景色から「メキシコというよりはグアテマラのような感じだなぁ」と思っていたのだが、この交通機関を見る限り、やはりここはメキシコだと実感した。グアテマラではチキンバスとよばれるオンボロバスにそれこそチキンも人もいっしょくたにギュウギュウに詰め込まれるのだが、ララインサール行きのバスはとても美しい新しい車で、人数もそんなに詰め込むことなく5人くらいを乗せてすぐに出発した。料金は一人片道17ペソ(119円)だった。
街を出るとすぐに緑の風景となる。サンクリストバル・デ・ラスカサスを出てしばらく行くと驚くほど整備された新しい広い2車線の道路ができていて、周囲の景色にそぐわないというか、いきなりヨーロッパかと思うようだった。まぁ途中までしかできていないけどね。
所々に村があり、民族衣装を着た女性が頭の上に野菜を乗せて歩いていたり、はだしの少年がヤギを追っていたりする風景の中を45分走ってララインサールに入った。
幹線道路からまっすぐに入ってきた道がそのままメインストリートとなり村の中心で停車した。中心にはソカロとよばれる中央公園があり、教会と市庁舎がある。メインストリートはもっと奥まで続いてちらほらと店が100mほども続くがその先は民家がまばらに続くばかり。ソカロから右手の坂を少し上がった所にメルカド(市場)があるが、平日の昼間であまり売買もなく人も少なかった。メインストリートもちらほらと人は見えるがいわゆる商店街の活気のようなものはなく、音楽も聞こえず、ひたすら静かな村だった。
メインストリートから脇道に入ると民家の庭先で屠りたての豚を解体している男性がいた。この肉は冷凍される前に村人の口に入るのだろうか。現代ではともすると田舎暮らしの方が高品質の食品を食べている。サンクリストバル・デ・ラスカサスの市場内の食堂の鶏肉も味わいが深くてとてもおいしかったもんね。
「オラー」と声をかけると男性は顔をあげてにっこり「オラー」と挨拶を返してきた。「先住民の村に入る時は単独行動をしないこと」などとガイドブックにあると、戦々恐々としてしまうのだがララインサールくらいサンクリから近い場所だと、人々も外国人慣れしているようで対応は悪くなかった。ただしサンクリの市場でも感じるのだが彼らは本当に写真が嫌いだ。だから写真撮影だけは人物が中心にならないように、なるべく遠目から風景を撮影するように気を使った。メキシコではないが、かつてグアテマラで遠慮なく写真撮影を行っていた観光バスの団体が住民から石を投げられて死傷者が出たのは有名な話だからだ。
さて、町の概要はわかったのだが有名な「刺繍の織物」というのはどこに行ったら見られるのだろうか。ここに来るバスの中から村から1kmほど手前に左に折れる道があり「お土産センターはこちら→500m」みたいな看板を見かけた。団体観光客はそちらで用事を済ませてしまって村まで来ないのかもしれない。村には外国人相手の派手なお土産物屋がない。
メインストリート沿いにわずかに2軒、非常に控えめな看板に「ARTESANIAS民芸品」と書かれた家があり、部屋の内部に刺繍の衣装が飾ってある。一軒に入ると、お母さんが出てきて「これはお花の刺繍でね、こっちはカエルの模様でね」と急に説明を始めた。控えめな看板だったけど内部はやる気があった。壁には白人さんとお母さんが一緒に写った写真が貼ってある。あれ?写真OKなの?
置いてある商品はサンクリのサントドミンゴ寺院の周囲の屋台で販売されているようなややローレベルの品質から手の込んだ刺繍のものまであってバラエティーに富んでいる。刺繍糸で地の生地が見えている部分の方が少ないんじゃないかというようなランチョンマットは1枚で300ペソ(2100円)とかいう値段で、実用と言うよりは額縁を付けて壁に飾った方がいいんじゃないかという作品だった。お母さんがせっかく説明してくれたので、私達も小さなポシェットを購入。黒地に水色の糸でカエル模様の刺繍がついている物だ。屋台に出回っているような工業規格のポシェットは20ペソで買えるから、80ペソという値段は結構高級。試しに「あのー、記念撮影をお願いしたいのですが」と言ってみると了解を得られた。やった!
いやー、いい思い出ができた。お昼ご飯でも食べて帰ろうかとソカロ前のレストランを覗いたのだが、どうにもやっている気配がないのでサンクリの戻る事にした。
午後1時過ぎにサンクリに到着して市場を通りかかると、もの凄い混雑ぶり。ララインサールのお母さんと同じ民族衣装の女性もたくさん出てきている。どうやら土曜日はサンクリの市場に集結することになっているようだ。
ここの市場はとても充実していて、野菜、果物、肉、魚、食堂、雑貨と何でもある。特に今の時期はマンゴーが最盛期らしくバケツ一杯10個くらいマンゴーが入って10ペソ(70円)だ。知り合いの日本人旅行者からはマンゴーを食べ過ぎて顔にブツブツができてしまったという幸せなのか不幸なのかわからないメールが来ていたっけ。
結局、サントドミンゴの土産物屋台のある場所でお昼ごはんを食べ、そのまま再び土産物屋物色の午後を過ごして今日は終了。さて、明日はティアンギスを開く別の村に行ってみよう!
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