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2010.03.27
世界遺産「メキシコ国立自治大学の壁画」と週末のサンアンヘル地区
歯科治療の合間を縫って観光。今日は週末でメトロブスMetro Busが空いているんじゃないかという予想を立てて、1号線をずっと南下したDr.Galvezで下車のメキシコ国立自治大学に壁画を見に行くことにした。
治療中なので排気ガスの凄い市内はマスクを着用するように言われ、もともと排気ガス嫌いの夫も便乗して夫婦2人でマスクで歩いた。豚インフルエンザなんて昔のこととなったメキシコ・シティーではマスク姿の東洋人は注目を浴びて振り返る人もいるくらいだ。
メトロブスは専用のプリペイドカードを買って(宿で貸し出してくれている)、それにお金をチャージしてから改札を通るしくみになっている。どこまで乗っても5ペソだ。ところが、先日2回支払う羽目になった。
ある場所まで行こうとしたのだが目的地まで行くバスがなかなか来ないので、頻繁にやってくるインスルヘンテス駅行きに乗った。他の路線と交差する大きな駅なので、ここで先に行くバスを待つつもりだった。ところがインスルヘンテスではバスは予定していたプラットフォームでは停車せずに、巨大ロータリーを半周した反対方向、つまり来た方向に向かうプラットフォームでしか停車しない。やれやれ、巨大ローターリーを突っ切って戻らなくっちゃとため息をついたまではよかったが、乗り継ぎの改札なんてものがなく、一旦改札を出て再度チケットを買いなおさなくてはならないシステムになっているのだ。どうりで1つ前で多くの人が降りたと思った。メキシコ人も知らなくて「なぜもう一度チケットを買わなくてはいけないのか」と文句を言っている人がいたが、係員は肩をすくめて「そういうシステムだから」と言うのみ。さすがメキシコだ。
そういえば、このプリペイドカードも希望金額をチャージするのでなくて機械に入れたお金を丸ごとチャージするようになっている。知らない人は多額の紙幣をチャージしてから青くなるシステムになっている。これも日本人から見ると尺足らずなサービスに思えるが釣銭を出すのが面倒なんだろうなぁ。
そんなわけで、今日は忍耐強くバスを待つ覚悟だったがそんな時には早くやってくるものだ。
週末といっても土曜日だったせいか予想に反してバスは相変わらず混んでいたが、さすがに大学近くになると人も減って座ることができた。メトロブスの駅から進行方向に歩くこと10分くらいで左手にめざす建物が見えてくる。
そう、今日見に来た壁画は大学の中央図書館の建物4面に描かれた世界最大規模の超巨大壁画なのだ。オルゴマンによるモザイク壁画は4面それぞれテーマに沿って描かれていて、特にアステカ文明がテーマの北側が奇妙奇天烈なモチーフで面白いのだが、なにぶん北側なので逆光でうまく撮影できなかったのが残念。図書館の建物内には誰でも入れてしまい、みなさん御勉学に励んでアカデミックな雰囲気が漂っていた。図書館を抜けて南側に出ると明るい芝生の庭が広がる場所で、振り返ると今度は順光に照らされたスペイン植民地時代の圧制というテーマの壁画がよく見える。こちらを南側にしたのはやはり意図があることなのだろう。
気持ちのいい芝生は近隣住民のペットの運動場所と化していて、様々な犬が来ていた。この芝生を囲むように他にもビルに突然壁画のような物がバルコニーよろしく突き出ていたり、大胆な構図の壁がある。これらはガイドブックには記載されていなかった事なので、嬉しい驚きだった。
この先には壁画の大家シケイロスの作品もある。ガイドブックの写真からは想像をしていなかった大きさで、今日のようによく晴れて強いひざしに照らされた時の迫力は来てみないとわからないものだ。排気ガスの多い市内を離れて、空気が良くてせいせいした場所は本当に気持ちがよかった。お弁当、持ってくればよかった。学食を期待していたのだが、セマナサンタ(イースター)がこの週末から始まるということでお休み。人はたくさんいるのにお弁当屋さんも出ていない。
残念だがお腹が空いてきてしまったので、向かいのオリンピック競技場のディエゴ・リベラの壁画作品を見ながら帰ることにした。
これも立体感がある作品だった。子供の絵みたいに素朴なタッチなのに力強さが感じられるってのがやっぱり大物の作品なんだよねぇ、きっと。オリンピックの際にはこの壁画の映像も世界中に配信されてメキシコ人も誇り高かったんだろうなぁ。週末の昼近くのかつてのオリンピック競技場は人っ子一人いない静かな場所だったが、そこにワイワイと7-8人のメキシコ人の若者男女がやってきて、壁画を背景にポーズを取って写真撮影していた。
メトロブスに乗ろうと歩いていると、木陰で屋台を開いているおばちゃんがいて、人が群がっている。見るとなかなかおいしそうな牛肉シチューのような物をトルティーヤに包んで出していたので、私達もこれでお昼ご飯にした。他の人に渡しているよりも明らかに少ない肉の量にクレームして「もっと頂戴よ!」というと倍増してくれたのだが、料金も倍取られた。イチゲンサンには厳しいおばちゃんのようだった。
次の目的地のサンアンヘルまではブラブラと徒歩で30分くらいで到着した。目的地はカルメン博物館の道路をはさんで目の前の「文化会館Casa
de Cultura」の横の公園。ここでアートフリーマーケットが行われているというのだ。
「文化会館Casa de Cultura」もステージがあってアーティストがパフォーマンスする予定だそうだが、時間が合わなかったので隣の公園へ向かった。確かにこの公園にはたくさんのプロとアマチュアの画家が作品を並べている。作風も画家の年齢も様々で、買いに来ているお客さんと談笑している姿があちこちで見られた。
サンアンヘルは確かに高級住宅街としても有名なのでこんな事も行われているのだろうが、それにしても、土曜日の昼下がりに公園のアートフリマで家に飾る絵を選ぶなんて、なんて優雅な週末の過ごし方だろうか。
この場所を紹介してくれたのは、同じ宿に宿泊している若きアーティストの女性だった。彼女は同じ日にカルメン博物館もこの公園も訪れてメキシコ美術の奥の深さに感動して宿に戻って「いやー、メキシコ凄い、本当にすごいです」と繰り返し言っていた。彼女のような感受性がないのか、私達にとってはこの公園の美術は今一つピンとこなかったので、ここから200m奥のサンハシント公園Plaza
San Jacintoに向かうことにした。こちらの公園では美術品のみならず民芸品も出ているということで、もうちょっと敷居が低い気がしたからだ。
サンハシント公園には予想以上に大勢の人がいて驚いた。公園にしつらえられたステージでは次から次へとアマチュアバンドが出てきて、ステージ前の座席は休憩を兼ねた人々で埋まっている。公園の周辺には絵画と民芸品の屋台が出ていて外国人観光客も多く訪れているようだった。素敵なレストラン(お値段も素敵だったが)もいくつかあって、普段私達がいる界隈の下町とは別の国かと思うほど雰囲気が洒落ている。
公園を取り巻く建物の中でレンガ色の美しく目を引く2階建の建物があった。中に入ると中庭を取り囲むようにお店が入っているのだが、置いている品物がアーティスティックな香りの高いものばかりで、これまた面白い。販売している人もいかにも芸術家の風貌のメキシコ人やら住みついてしまった白人系外国人など様々でそちらの観察もまた一興だった。
この建物を出た先には民芸品ばかり集めた屋台群があった。これまでの旅先で見たことのあるチアパス州やオアハカ州から持ってきた民芸品の店もあれば、民芸タッチのアクセサリー屋台もある。値段を聞くとやはりチアパス州で買うのが一番安く、私が買ったのとほぼ同じブラウスが3倍の値段で売られているのを見た時は小さくガッツポーズ。この中で1軒だけ帽子専門店があった。メキシコ・シティーに来てからヨーロッパでも被れるような麦わら帽子が欲しいと思っていたのだが帽子専門店がなかなかみつからなかったのだ。思えばメキシコ・シティーで帽子を被っている女性をあまり見かけなかった。しかしサンアンヘルでは帽子姿の女性が多い。帽子はハイソサエティーの証なのかもしれない。気に入った帽子はそれでも2500円くらい。ただし作りがしっかりしすぎて重いので買うのを断念した。
今日のメインテーマはメキシコ国立自治大学だったはずだが、振り返ればサンアンヘルの屋台のウィンドーショッピングにより長い時間を割いてしまった。こんな洒落たスポットがメキシコにあるのが楽しい発見だった。
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