> 北米目次 > 詳細内容
東アジア
中国
ヨーロッパ
スペイン
フランス
イタリア
オーストリア
ドイツ
アメリカ大陸
エクアドル
メキシコ
チリ
アルゼンチン
ヨーロッパ2
スペイン
ポルトガル
ヨーロッパ3
クロアチア
ドイツ
東南アジア
タイ
マレーシア
ラオス
アメリカ大陸2
メキシコ
ドミニカ共和国
ヨーロッパ2010
フランス
イタリア
アジア2010
タイ
マレーシア
アジア2011
タイ
北米・カリブ海2011
メキシコ
キューバ
ヨーロッパ2011
フランス
イギリス
フランス2
2008.11.04
熱い夜、ルチャリブレ
メキシコ:メキシコ・シティ

 宿泊している宿に熱烈なルチャリブレのファンが数人いた。中でも日本から1ヶ月という期限で訪れている女性は浴衣を着て応援に行ったりとダントツの熱烈ぶりだった。そんな彼女に触発されたというわけではないが、彼女が一緒に連れて行ってくれるということもあり二度と行くこともないだろうと思っていたルチャリブレの再訪が実現した。あ、説明が遅れたがルチャリブレというのはメキシコのプロレスの事である。


チケットを購入
 今回のメンバーはリーダーのIさん他日本人9名。前回もルチャファンではないが南米で働いていた五十嵐さんという夫妻の同行があり、会場に行くのもチケットを買うのも全てお任せで大変に助かった。タクシー3台に分乗した一行が会場に到着したのは午後6時48分。今日はファン感謝デーなので全席30ペソ(US$2.34)という破格の値段設定なのだが前の方の席はダフ屋に買い占められてその限りではない。会場のアレナ・メヒコ前にいたダフ屋に聞くと一人120ペソで前の方の席を売ってあげようという。我々を含む半数は30ペソでいいやと逃げ腰になっていたその時、Iさんが携帯電話を取り出して知り合いのダフ屋に電話をかけはじめた。最初に声をかけたダフ屋は120ペソを下るわけがないと英語でぶつぶつ文句をいっていたが、やってきた知り合いのダフ屋は9枚買うなら一人80ペソにしようと申し出た。我々は顔を見合わせて、せっかくなので前の席を買っちゃおう!ということに決定。最初のダフ屋は敗北してすごすごと去っていったのだった。

 しょっぱなからIさんのパワーを見せられた私達は「もう、どこにでもついていきます」という気分。試合が始まるまでに選手が来るのを裏口で待つというIさんについて行くことにした。日本の芸能人に対してすらそんなことしたことないのに、と妙な展開に私達はウキウキしてきた。アレナ・メヒコの数々の従業員に「あら、どーも、お疲れ様です」と挨拶しながら裏口に向かう。私達は会場の入り口の手荷物チェックでカメラを没収(入り口預かりで後にちゃんと返却してくれる)されたので、ちょっと写真不足なのはご了承願いたい。

 選手入り口で待っていると、やって来た、選手がやって来た。

 選手って自分で運転してくるんですねぇ、しかも覆面被って。隣には彼女、妻、愛人のいずれかを必ず乗せているのも皆一緒だ。覆面被って後ろ向きながらバックで駐車場に車を入れる姿がかなり笑えた。今日は感謝デーのせいかいつもよりも愛想よくファンとの記念撮影に応じているわ、とIさん。お決まりのガッツポーズで写真におさまっていく選手の覆面に見える目はメキシコ人らしくクリッとして睫が長くかなり可愛らしい。この可愛い顔にマッチョな体。少年だけでなく若い女性もクラクラとするのは理解できる。

 選手の入りを堪能した私達は試合開始直前の午後9時26分に会場入りした。前から10列目なので肉眼で選手の顔も見られる距離だ。いやー、こっちにして良かった。リングの脇の大きなスクリーン前にある階段から選手が降りてくるとファンの嬌声があがる。試合は3対3の団体戦で3セット先取したチームの勝ちなのかな?まぁ、よくわからないけどそんな感じ。1セットが終了するごとになまめかしい女性がプラカードを持ってクネクネと歩き回るのも面白い。私達の隣に座っているおっちゃんはある選手の熱烈なファンらしく、それまでずっと沈黙を保っていたのに、その先取が出てからは人が変わったように声援を送るのだった。

 今日の試合は相手チームから覆面をはがされる選手が続出している。公衆の面前で素顔をさらすのは大変な不名誉とされているのではがされた選手は両手で顔を押さえてしまう。そこを攻撃、攻撃、攻撃。まぁ、あまり正当な試合には見えない。しかし、会場のファンからリングに投げられた覆面をつけて復活すると大声援があがったりするなど、今日はファン感謝デー的に試合を展開しているようだ。ルチャは大抵の筋書きが決まっていて、観客もそれとは知りながら盛り上がることになっている。今日は今日の筋書きがあるのだろう。

 数試合が終了して、いよいよ本日最後にしてメインイベントの1対1の試合が始まる。最後の対戦のメインを呼ぶアナウンスが会場に響き渡った。

 「ブルーーーーパンテーーーーーー!!!」

 え?パンテーって「青いパンツ」って選手がメインなの?しかもはいているパンツは白だ。と思って今日の取り組み表を見るとBlue Panther、ブルーパンサーではないか。パンサーがスペイン語読みだとパンテーになるのだった。ブルーパンテーは覆面を被っていない。最近の覆面奪取試合(覆面を取られたら負け)ではがされてしまったので以降は素顔で対戦しているのだそうだ。そんな彼だが今日の試合は芸暦25周年記念の試合。長い間ルチャ界に貢献してきた彼を讃える試合でもある。当然、ブルーパンテーの勝ちだとはわかっていても相手もなかなか強くて肉薄した試合展開に誰もが「もしや?」と思ってしまう。いやー、ルチャの選手もなかなか演技派だ。今日の試合の中では素人の私が見ても一番真面目な技の掛け合いがあり、四の字固めというのだろうか互いの足を組み合わせた技は地味な見た目ながら痛みがこちらに伝わるような緊迫感だった。

 やがて試合終了。レフリーに片腕を上げられたのはブルーパンテー。リングの4つの支柱からパーッと紙ふぶきがあがった。リング上でテレビ番組だろうかブルーパンテーがインタビューを受ける姿が大写しされている。芸暦25年というだけあって、かなりおっさんだ。

 さーて、試合も終了。帰ろうかと腰を上げるとIさんが「私は選手の出待ちするけどどうする?」と聞いてくれた。もちろん行きます。

 帰ろうとする雑踏を逆方向に歩き(正直どこをどう歩いているのかさっぱりわからない。だたただIさんについていった)、選手が出てくる場所に到着。私達以外にも熱烈なメキシコ人ファンが選手が出てくるのを待っている。そんな群集とともに待つこと約30分。ようやく選手たちがぞろぞろと出てきて記念撮影をしてくれた。本当はカメラ持込禁止のはずなのにどうやって持ち入ったのかカメラ持参の人も多い。ま、今日はファン感謝デーということで。

 私達は入り口で預けてあったカメラを無事に取り返し宿に戻ろうとタクシーに乗り込んだのはかれこれ午後11時だった。帰りのタクシーのメーターは来た時よりも初乗り運賃が倍くらいになっている。おかしいじゃないか、これ。と指摘すると深夜料金だからと言われて引き下がるしかなかった。メーターはしかもクルクルと早周りして、結局来る時は20ペソだったのに帰りは倍の40ペソになってしまった。釈然としないが時間も時間だからこんなものかと私達は宿に入ったのだった。

 それからだいぶ時間が経過して後続が戻ってきた。随分遅かったと思ったらタクシー代金で運転手とトラぶって、その上運転手が道を間違えて大変だったという話。全く別の人が別の日にアレナ・メヒコから帰ってくるタクシーでは100ペソ要求されたという話もあり、ルチャから帰るのも一筋縄ではいかないようだ。前回は全員メキシコ素人だったが、選手の出待ちをしていなかったので地下鉄に乗れた。慣れない人たちで動く場合は地下鉄を利用する方が安全みたいだ。

 ということで2回目のルチャリブレも無事に終了。いやー、試合以外でも毎回ドキドキするアレナ・メヒコへの訪問なのだ。因みに歯科医の高根先生にルチャに行くと話をすると、先生の患者さんにルチャの選手はたくさんいるが先生は一度も見に行ったことがないのだそうだ。メキシコのハイソサエティーはルチャに行かないって本当らしい。


Copyright (C) 2008 World Mover All rights reserved