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2008.11.01 Vol.1
死者の祭り
私達が到着したこの時期、メキシコ・シティはハロウィンと死者の祭りで盛り上がっていた。ハロウィンはアメリカ合衆国でも大規模に行われているお祭りだが、死者の祭りというのは初めて聞く。日本のお盆と同じように先祖を偲ぶお祭りなのだそうだ。
宿から地下鉄で少し行ったソカロにお祭り会場が設置されているというので、どんなものか見に行ってきた。
ハロウィンは10月31日で死者の祭りと日が重なっているためなのか、死者の祭りもそうすることになっているのかあちこちで仮装や特殊メイクをしている人がいて、それを見るだけでも祭り気分が盛り上がってくる。天気もまぁまぁ晴れて青空をバックに荘厳なカテドラルが見えていて、その前の中央広場(ソカロ)には大小様々な催しのテントが立っていた。
催しといっても死者にまつわるもので、改造した電車の車両の中で骸骨を見たりお花と骸骨をテーマ別に展示したものなど、扱っているのは骸骨とおどろおどろしいのだがメキシコ人は骸骨に愛着を抱いているのではないかと思えてくるほのぼのとした展示ばかりだ。電車の展示に行った日本人旅行者が、「どうしてあんな出し物に行列を作るのか・・・」と頭を振っていた。どうにも素人っぽくて素朴な展示だったらしい。一番人を集めていたのは古代メキシコで行われていたという火の玉を腰で蹴る(?)、サッカーの模擬試合。あまりに人が多くて会場には入れないので、人垣の後ろでピョンピョンと飛び上がって写真を撮影するのがやっとだった。
会場を一巡していると、会場の一角にステージが設置されて何やら始まりそうな感じだったので私達はステージ前に待機していた。段々と人が増えてステージ前は始まる前から人がぎっしり。そんなに面白い事が始まるのか
期待感が高まる。
そこにほら貝の音と共に何かが行進して来る。先頭にマヤ文明のような装束の数人を置いて、あとはチベットの坊さん達が続いた一団だった。この祭りに乗じて会場の一角のステージでチベット解放を訴えるイベントが行われようとしていたのだ。それにしてもチベットの坊さんが被っている帽子、今までに見たことのないモヒカン型で、もしかしてメキシコ出張用の特別なデザイン?
ステージにあがった坊さんのリーダーが英語でご挨拶し、是非とも現在のチベットが置かれている状況を知って解放に向けて支援をお願いしたいとしめくくった後、皆さんに幸福が訪れるようにお祈りしますとチベットのお祈りが始まったのだった。最初はネパールなどを思い出す空気に懐かしいと浸っていたのだが、長い。お祈りがやたらに長い。しかもずーっと同じ節で変化がない。その上、午後の直射日光が頭に降り注いで暑いことこの上ない。何度かステージ前を離れようと試みたのだが、あまりの人の多さに断念していた。しかし、退屈かつ暑い状況に耐えかねて強行突破でステージ前を離れたのだった。
お祭り会場を離れてぶらぶらと歩きながら宿まで戻ることにしたのだが、ラテンアメリカタワーのふもとまで来た時に、そういえばこの辺りで日本のドラマDVDやアニメDVDを売っている場所があることを思い出した。ソカロからラテンアメリカタワーに向かうとタワー直前の道を左折した右側並びにあるバザール・デ・コンピュタシオーンという建物の2階だ。秋葉原が一つのビルにまとまったような場所で、中には細かい店がたくさん入っている。
特に2階は日本を中心に中国や韓国のドラマやアニメのDVDばかり置いてある店が集まっていて、メキシコのオタクたちにもれなく会える場所だった。ちょっと小太り、色白、長髪、酸っぱい臭いを発した若者をかきわけで「のだめカンタービレ」を探すと、あるある。テレビドラマ11話がDVD4枚におさまっていて一枚20ペソ(アメリカ映画は1枚5ペソから10ペソというのに)だという。1枚につきUS$1.56くらいだ。ちょっと見せてもらうと1枚に4話収録されていた。
あれ?全11話なのでDVD3枚で入るんじゃない?そう尋ねると、売り子の女の子は「そうそう、話は3枚までで4枚目はサントラのCDなのよー、CDは1枚10ペソだからね」って、さっき全部で80ペソって言ってたのにイケシャーシャーと言う。3枚確認して4枚目のサントラを聞かせてもらうとこれが「のだめ」では使われていない曲ばかり。でたらめいってんじゃない、「こんな音楽いらないから3枚の値段で売れ」といっても、えへらえへらと4枚で70ペソだというばかり。いい加減頭にきて買わずにその場を後にしたのだった。
ラテンアメリカンタワー付近には劇場があり、その先の公園には立派建築物があったりして、今あとにしてきた売り子の姉ちゃんが生息しているなんて思えない立派な町に見える。
立派な建築物から公園の中に入ると、休日をぶらぶらとするローカルが山のようにいて、食べ物や音楽CD屋台あり、大道芸ありととてもにぎやかな事になっていた。食べ物は豚の皮を油であげたチチャロンを始め、スナック類を並べた屋台、フルーツ屋台、タコス・飲み物屋台など。スナックにもフルーツにも真っ赤なチリソースを塗って食べるのがメキシコ流なのだ。音楽CDではベートーベンのシンフォニーなんてクラシックもあるのだが、ジャケットが怪しい。しかもそれは小沢征爾指揮だったから笑える。
歩いていると、突然にしておかまちゃんに遭遇。はっと振返ると何故か相手も振返って目があってしまった。するとおかまちゃんは「ね、私のことカメラで撮りたいんでしょ?」と英語でいうので思わずうなずいて撮影することになってしまった。公園のはずれには馬に乗ってソンボレロをかぶった警官。かっこいいなあと撮影したらちょっと睨まれた。メキシコなんて2回目だしもう珍しくないと思っていたが、来てみると妙な物や妙な人が多くて「メキシコってこんなに面白かったっけ?」と新しい発見が数々。いやー、来てみてよかったなぁ。
さぁ、夜はマリアッチで有名なガリバルディ広場に行ってみよう!
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