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2008.10.12
赤道を探して1日旅行
エクアドルとはスペイン語で「赤道」を意味するということを以前にも書いたが、キトからバスで2時間弱離れた町に赤道記念館があるというので行ってみることにした。事前の情報で、この赤道記念館は原住民が計測して赤道があると思っていた場所に建てられた記念館で、GPSによる計測で別の場所に別の新しい赤道記念館があることもわかっていた。しかし、持っているガイドブックが古くて新しい赤道記念館がどこにあるかわからない。首尾よく新しい所も探せるのかというのが、今日の主眼でもあった。
新市街の北部を走るバスで町の東端の終点に行くとバスターミナルがある。そこで「Mitad
del Mundミッタ・デル・ムンド行きのバスはどこじゃ」と叫んでいると周囲の人が正しいバスまで連れて行ってくれて1つめの赤道記念館には問題なくたどり着けることになっていた。最初のバスの料金がUS$0.25で、2つ目のバスの料金がUS$0.15と非常に安い。ポイントは2つ目のバスの前で配られる「前のバスでUS$0.25支払いました」というカードをもらうこと。このカードがあると2つ目が安くなるのだ。
最初のバスは専用道路があるので渋滞知らずで快適に動けるのだが、2つ目のバスは牧歌的な村の中を通る普通のバス。宿を出てから最初の赤道記念館に到着するまで1時間40分かかった。
赤道記念館では入場料金一人US$2を支払うと中に入れる。広い敷地の真ん中に一際高くそびえる塔があり、その足元がビヤーッと赤い線が引かれて「こここそが赤道でございます」という感じになっている。周囲にはレストランや土産物屋が立ち並び中央の公園のベンチでくつろぐエクアドル人などがいる場所だった。
もと赤道で記念撮影。新しい赤道にも行くのかなぁ? |
私たちもここで一応記念撮影。 |
売店のアイスも赤道になっている |
園内を貫く赤道の線に強い意志を感じる |
中央の広場前に設営されたステージで何か準備をしている人がいたので聞くと午後1時過ぎからショータイムが始まるという情報。それまでに園内にあったよくわからない博物館に行ってみよう。よくわからない博物館は入り口から見て中央の通りの左側にこっそりと立っている一軒家だった。入り口でもらったチケットを見せると、おやじが「中に入れ」と手招きする。埃っぽい布をくぐって中に入ると窓のない部屋に通され、中央にはキトの町のパノラマ模型があった。
「これを見てどーしろっちゅーねん」と戸惑っていたら、やがて室内の照明が消されて真ん中のパノラマだけがオレンジ色にボーっと暗く照らされている。「な、何なんだ、これは?」と思っていたら解説がスペイン語で入った。私たちの限りなく少ないボキャブラリーを駆使して理解するに夕刻から夜明けのキトの町並みを簡単な歴史とともに解説するという場所だったのだ。
「やがて明けていくキトに朝日が当り、旧市街にそびえる広場が赤く染まります・・・」とか解説が流れているのをひたすらパノラマと一緒に見る。うーむ。浅草辺りの場末の見世物小屋のような怪しいピンクの光の中で私たちは笑っていいのかどうか決めかねていた。
やがて通常の照明が灯されて夜景ショーが終了すると、周囲の観客からまばらな拍手が起こった。エクアドル人って素朴だ。
再び埃っぽい布をくぐって部屋を出ると、エクアドル周辺の民族の伝統的な仮面やらの展示が少しあって展示物は終了。建物を出た後に思いっきり笑える場所だった。
ショータイムまで時間があったのでショーのあるステージの真上にあるレストランで昼食を食べてから広場に下りると、それまで人影の少なかった広場にはショーを待つエクアドル人がぎっしり集まっていた。今日は週末ということもあり、ここは市民の格好のエンターテイメントの場所になっているようだった。ショーが始まるまで漫談の男性が場を盛り上げる。私たちにはさっぱり理解できない話だったが、彼の話術で会場が徐々に温まっていっているのがわかった。
午後1時10分になり、漫談の終了と同時に広場の片隅から民族衣装の男女が音楽に合わせて躍り出てきた。いよいよショーの開始だ。ボリビアやペルーとも違うがどこかアンデスやガウチョのテイストが見られる衣装をまとった男女が民族音楽に合わせて踊る。音楽はアンデス調なのだが踊りが西洋っぽいのがエクアドルの特徴かもしれない。踊りの合間合間にステージでアンデス音楽グループが歌と演奏を披露する。前回の南米訪問の時、ペルーでアンデス音楽のCDを購入してかなり聞き込んでいた私たちなのでとても懐かしい気がしたのだが、ペルーのアンデス音楽と比べるとエクアドルのもっとミニマリズムというか同じ節の繰り返しが多い。1曲に起承転結があるペルーと比べると同じようなアンデス音楽でも違うという発見があった。まぁ、個人的には起承転結のあるペルーのアンデス音楽の方が好みだが、BGMとして流すならエクアドールもありかもしれない。音楽に集中して聞くのならペルーの方が好きだ。
こうして1時間ほども踊りとアンデス音楽を楽しんだら、第二幕はステージに往年の歌手というグループがあがって懐メロのような局をやり始めた。エクアドル人には大人気でステージ前では踊り始めるおばちゃんも出てくる程だったのだが、私たちから見ると田舎の温泉の歌謡ショーみたいでもう面白くない。そこで、次の「GPSによる赤道記念館」に向かうべく園内で聞き込み調査を開始したのだった。
ところが園内の土産物屋のおばちゃんもレストランのおっちゃんも口を割ったら解雇されると言わんばかりの勢いで誰も本当の赤道の場所を教えてくれない。誰もが「いや、ここが本当の赤道だから」と口を揃えて言うばかりだった。仕方がないのでいかにも外国人と思われるロンリープラネットとか小脇に抱えた旅行者をターゲットに聞き込み対象を変更。
最初の初老アメリカ人は自分たちが訪れている場所が「ニセらしい」という情報にムッとして「何をワケがわからないことを言っているんだ、このアジア人は」という侮蔑の一瞥で終了。次のヨーロッパからのカップルが「ああ、その話聞いたよ。僕たちは行かないけれど、このテーマパークを出て左方向に数百メートル離れた場所にあるんだって」と親切に教えてくれた。やった!
「あなたはGPSの測定による経度0度に到着」と書かれている。 |
園内を出て数十メートル歩いた場所で市バスから降りてきた住民に「赤道記念館ってどこ?」と尋ねると、今、私たちが出てきた場所を指差した。「そうじゃなくって、もう一つの方は?」と聞くと、「ああ、そっちのことかぁ。そっちなら、この道をもっとまっすぐ行くと左手にあるよ」と簡単に教えてくれた。どうやら地元の人は皆知っているらしい。果たして道を歩き続けるとそれらしき看板が出てきて、新しい方の赤道記念館にたどり着くことができた。やったー、成功だ。
こちらの入場料金は一人US$3と先ほどよりも1ドル高いのだが訪れたグループ(私たちの場合は夫婦2人につき)につき1人のガイドがついて説明してくれるというゴージャスさだ。赤道の記念とともにアマゾン地区に住む人の生活様式、伝統を教えてくれるこの場所では、赤道ならではの面白い実験を見せてくれた。一つは北半球、南半球では洗面器にためた水を真ん中の穴から流すと右向きあるいは左向きに渦を巻いて流れていくのに赤道直下では渦ができない。2つ目は赤道直下では釘の上でも生卵が立ちやすい。3つ目は赤道上で目をつぶって歩いてもぐらぐらしない。これらは全て北半球、あるいは南半球では磁力が働いていて赤道直下のみ磁力が働かないせいだということを教えてくれる。これは面白い。日本の小学校や中学校で理屈で言われても全く理解できなかっただろうことが、ここに来ると一発でわかった気になるから凄い。学校ではここの実験のビデオを見せるべきだよねぇ。
こうして実験されると誰がどう言おうとこっちが本物の赤道だと認めざるを得ない。因みにガイドさんに「もう一つの赤道記念館についてどう思いますか?」とちょっと意地悪な質問をした所、あちらは昔から人々が信じてきた赤道を祭った場所でいわばメモリアルあるいはリプリゼンタティブ(象徴としての)な赤道だという回答が即座に帰ってきた。なかなかスマートな回答で、なるほど象徴としての記念館ならいいではないかと納得できるお答えだった。
赤道の解説の後は再びアマゾンの人々の風習などについて。今は行われていないそうだが、その昔アマゾン地区では敵の部族の首を取ると、皮をうまく剥いで骨を取り去り小さな顔を作って縫合して敵の小さな頭を再生したものを勝利の記念に飾っていたそうだ。その本物がここに飾ってある。うう、恐ろしい。これは本物の人間の頭だったのだ。今はこぶしくらいの大きさになっている。
その戦いで使われて吹き矢の実践もできる。しかもアマゾンに生息する鳥の華やかな羽で作った王冠を被ってできるのだ。これはなかなか面白くて何回も挑戦してしまった。なかなか当たらないものだ。
最後に卵を釘の上に立てられた人には記念の小さな証明書が貰える。夫は成功なのでもらえた。ガイドさんはなかなかジョークがきいて面白い人だったし、英語も完璧にできる人。新しい赤道記念館には新しい人材、古い記念館には英語が話せない人が満載という新旧の比較もできて面白い。
帰りは乗った場所に来たバスに飛び乗ったらどうやら町に行かないバスのようで大騒ぎ。親切なおじさんが自分の降りた場所から違うバス停まで連れて行ってくれて、次のバスの運転手に説明までしてくれたので帰ることができたが、バス代は二重にかかってしまった。新しい赤道記念館でうかれていたので失敗してしまったようだ。
まぁ、あれこれあったが2箇所いってよかった。最初の記念館のショータイムが週末のみ行われているかどうかは要確認だが、あのショータイムを見て新しい方で赤道体験できたのはベストだったんじゃないかなぁ。
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