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2008.09.26
人探し、BMW、ニュンフェンブルク城、城でのコンサート
今日はまず人探しから。12年前にドイツに住んでいた時の知り合いが確かミュンヘンに引っ越したはずなんだけど、連絡が取れなくなったままだったのだ。私の記憶では彼女は確か大使館関連の仕事に就いたような・・・。
ということで、日本領事館に向かった。出発地は町の中心地にある教会から。今日はやや青空が広がり、前回見た時よりかなり美しく見える。お天気は大切だよねぇ。日本領事館ではこの道12年以上という女性がとても丁寧に対応してくれたが、「そういう方は存じ上げません」という回答だった。ふーむ、思い違いだったようだ。そこで思いついたのが日本人会。デュッセルドルフにも日本人会があったので、ここでもあるんじゃないかと思ったのだ。
領事館で日本人会の事務所の場所を聞くと徒歩圏内だったので早速行ってみた。事務所には日本の書籍や様々なお知らせの掲示板などがあって、日本人コミュニティーにとっての居心地のいい重要なセンターになっていた。一人事務所にいた女性に話をすると確信に満ちた感じで「調べてみましょう」と言ってコンピュータに向かい、すぐに彼女を発見することができたのだった。彼女の許可なく連絡先を私たちに伝えらないのでメッセージを残そうとしたら、この女性はすぐに彼女に向けてメールを打ってくれるという。何という素晴らしい対応だ。その場で詳しい状況と私たちのメールアドレスを記してメールを出してくれた。さぁ、あとは返事を待つばかり。もし会えたら実に12年ぶりの再会ということになる。またミュンヘンでの楽しみが増えた。
時計は午前11時45分。丁度いい時間だ。何が丁度いいかというと例の中心部の教会の時計台が12時からからくり人形を動かすのを見に行くのに丁度いい時間なのだ。そんなに有名だとは知らずにかる〜い気持ちで来た私たちは、広場に集まった人の多さに驚いた。そんなにいいものなんだ!
みんなが固唾を呑んで待ちわびる12時がやってきた。しかし、1分、2分・・・。何事も起こらない。楽しみにしてきたおばちゃん一団は「カプート?(壊れてる?)」とひそひそとささやき始めた12時5分、ジャーンと音楽が鳴り始めて人形たちが踊り始めたのだった。「おおおーーー」と感嘆の声はあがったのはからくり人形に感動したというよりは、ちゃんと動き始めたからに違いない。人形2段目ステージの赤い衣装で手に藁のような物を持って踊っている姿は、先日訪れたガルミッシュパルテンキルヒェンの町中の彫刻でも見かけたもので、伝統的なビール祭りの様子らしい。
いかにもドイツらしいからくり人形ではあるが、5分も見続けていたら変化の少なさに皆三々五々散り始めてしまった。30分も待っていたのにねぇ。しかし今の時代はもっとスペクタキュラーな動きが要求されているみたいだった。
さて次に地下鉄に乗って向かったのはミュンヘンがお膝もとの車メーカーBMW。行ってみると、ここにはオフィスと工場とショールームと博物館があるのだった。オフィス機能のビルは円柱を3つくっつけたような変わった形のビルだし、ショールームは宇宙船のようなシルバーのスタイリッシュな建築物で「BMWワールド」という名称で2007年10月17日にオープンしたばかりなんだそうだ。世界に名を覇す高級車のイメージを損なわないカッコいい建物で、ルードヴィッヒ2世のメルヘンのDNAはここに受け継がれているように思えた。ただし、ちゃんと利益を生み出す企業として成り立っているのが大きな進化だ。
工場見学を行いたいとショールームのフロントに行くと、4日先まで予約が一杯で今日は無理なんだって。オクトーバーフェストに絡めて人が多いからなのか常に人気なのかはわからないがこの時期はとても混んでいた。そこで今から一番近い4日後に予約を入れてツアー代金一人6ユーロを支払い、入場チケットを受け取って今日は終了。あとはショールーム内の車を見て回った。
このショールームは無料で、最新技術の解説あり、新車展示あり、ドライブゲームあり、カフェあり。上の階ではお酒の飲めるラウンジや、この建物他建築関連の書籍やBMWグッズの買えるお店まであってなかなか楽しい。新車で驚いたのはXシリーズ。遠目には普通車の形なのだが近寄ると馬鹿でかい車だった。小さなトラックくらいの車幅がありでも乗用車の体裁をしているので巨人の国に迷い込んだ気分になる。スピードメーターは260kmまであり、こんな巨大な車がアウトバーンを疾走したらさぞや迫力があると思われた。日本車がもっと経済的にもっとエコロジーにをめざしているのに大して、ここではもっとラグジュアスにもっと速くを追求しているように見えた。世の中の流れには反しているけど、ラグジュアス志向の人にはたまらないブランドだ。私たちも言うだけはタダでございますから「これは普通の移動用にいいねぇ」「これは夏のバカンス用ね」と勝手に上客になったつもりで闊歩。
しかし、本気で購入を考えている人しか入れないフロアーもある。庶民は上から見てるだけー。このフロアーでは担当者がつきっきりで車の説明をして予算を出し、お客さんは試乗にでかけることもできる。庶民は上からみーてるーだけーーーなのである。これもBMWらしい持つ人にラグジュアスな感じを持たせる演出なんだろうなぁ。
ショールーム館内 |
新しいXシリーズ |
ライダー気分 |
購入する本気の人だけのフロアーを見下ろす |
ショールームからブリッジで道路を乗り越えた向こうに博物館があるのだが、こちらは入場料が「やめた!」と即決できるほど高かった。ええっとぉ、確か12ユーロだったかな。この時は1ユーロ180円くらいだったので2000円以上になる。2000円以上出すほどファンではない私たちは入り口から下の階をのぞくだけで入らずに終了。次回は4日後の工場見学だ。楽しみ、楽しみ。
ここから地下鉄と路面電車を乗り継いでやってきたのは市の西郊外にあるニュンフェンブルク城Nymphenburg
。ババーリアン王朝の夏の宮殿として建てられたお城で、かのルードヴィッヒ2世もここで誕生しているというお城だ。私たちがここを訪れたのは、今夜ここのサロンで行われるクラシックコンサートの下見のため。夜になって迷うことがないよう下見に来たのだった。
お城は別荘ということもありシンプルでこじんまりした作りだった。下見が目的なので中の見学は行わなかったがルードヴィッヒ2世が誕生した部屋やそのおじいちゃんで美人好きだったルードヴィッヒ1世が美人を描かせた絵画コレクション「美人画の部屋」などが有名だそうだ。庭は広かった。平面的でシンメトリーで遠くに池のある風景はやはりヴェルサイユ宮殿を思い出させる。金色のライオンの足付きってのがいかにもヨーロッパ。この建物を出る時、日本人旅行者の団体が訪れて「いやー、お城に来ちゃったわねぇ」と大興奮している。日本からやってきてテンション高いのはわかるが、正直、そんなにハイテンションになるほどのお城でもないぞよ。
今日のコンサートの会場は城の右側にある離れのような場所だった。既に楽器を運びこみ始めた若い奏者らしい人もいて、今夜への期待が高まった。
一度町中に戻って簡単に夕食を済ませ、午後6時半近くに再び城に戻ってきた。
夕刻6時半近くのお城はもう見学者の姿もなくひっそりとしていたが、夕日がお城の前の池に映りこんで昼間よりも素敵に見えた。
会場にはボツボツと人が集まり始めていた。チケットを見せて中に入ると昼間とは違ってバーカウンターやチケットカウンターが設営されて華やかな雰囲気になっていた。私たちは帰りの寒さを予想して中綿ジャケットやウィンドブレーカーを着込んで着膨れアウトドアの格好をしていたのだが、そんな私たちを見て一人の会場支配人風の男性が近寄ってきて、「クロークはあちらですから」と右手を指差した。クロークに行くと荷物の預け代金が一つにつき2ユーロ。今の私たちにとっては400円もかかることになる。じゃぁ預けないで会場に持ち入ろうとクロークを出ると、先ほどの支配人風が慌てて近寄ってきて「クローゼットに預けてください」とまた言う。だって有料だから会場に持ち入りたいというと、それは許されないと言う。でも会場が寒いかもしれないから一部は持ち入りたいといってもそれも許さないという。
この男の意図が全く理解できない。この会場内を素敵なドレスやスーツでで埋め尽くしたいのか、クローゼット代金を稼ぎたいのか。寒い会場で風邪を引いたらどういう責任を取るつもりなのだろうか。
しかし、それ以上言い争っても埒が明かないようなので、私は脱いでいる中綿パンツをはきかえてコンサート用にもう少し見栄えのするパンツに履き替えてからクローゼットに荷物を預けようとトイレに向かった。すると支配人風の男は「何度言ったらわかるんだ、荷物を預けろと言っているんだ!」と叱りつけるように言うではないか。「預けるけど着替えたいから先にトイレに行こうとしているんだ」と言うと、あまり複雑な英語は通じないのか頭を振りながら「とにかくクローゼットに預けて来い」とクローゼットを指差した。そのあまりに傲慢な振る舞いにかなり頭にきて、そのまま帰ろうかと思ったくらいだった。
「あいつ、絶対にレイシスト(人種差別主義者)だわ!」と私は夫におおいに文句を言った。ドイツではたまにこういう人に出会う。こちらの素性も考えずにアジア人と見ると居丈高に振舞う人。あー腹が立つ。更にこの男の音楽に対するレベルの低さも感じた。先日訪れた北イタリアのボルツァーノの国際ピアノコンクール、ブソーニ国際音楽祭のフィナーレコンサートは地元の人々も愛するコンサートで、セーターにジーンズなどの気軽な格好で会場を訪れる地元民がこのコンサートでいかに素晴らしい青年たちの演奏を聴けるかという熱弁を聞いた。こういうのが本当の音楽好きだと思うのだが、今日のコンサートは主催者がこんなんだから、集まる人々も音楽を楽しむというよりは、音楽に名を冠した社交が目的で音楽は二の次なんじゃないかと思われた。そういう観客に迎合している所もこの男はレベルが低い。ウィーンでは音楽を勉強する学生も多いので学生には立ち見という安価なチケットを販売してドレスコードもない。金持ちの社交場としてクラシックを利用しているミュンヘンでは音楽を学ぶ人の裾野が広がらないだろう。
支配人風の男は入り口を入る人全てにクローゼットに行けと指示しているが、私の時のように居丈高ではない。私がドイツ語じゃなくて英語で話していたというのもあるかもしれない。この男一人だけで判断できないが、ババーリアンはドイツの他の地域に比べると自分たちの文化にとても誇りを持っていて、そのあまりの自慢ぶりはお笑いネタになっているくらいだ。英語であーだこーだとうるさく言う東洋人にむかっ腹を立てたのはある意味ババーリアンらしい反応だったのかもしれない。けっ、田舎者め!
あらゆる角度から支配人風の男のキャラクターを分析して批判して文句をはきだして、やっと私は平常心に戻った。
さて、コンサート、コンサート。今日のコンサートはミュンヘン国際音楽コンクールというドイツ公共放送連盟(ARD)の主催で毎年行われているコンサートの入賞者によるお披露目コンサート。後から調べると2008年で第57回目を迎える歴史と伝統のあるコンサートで難易度も高く1位入賞者を出さないことも多々あるそうだ。今ベルリンフィルの首席ヴィオラを務める清水直子さんが1997年になんと21年ぶりに1位を獲得して話題になったコンクールでもあるそうだ。げげー、レベルが低いどころか、超有名コンクールだったのか。むむむ。レイシストだの音楽レベルが低いだのあの支配人風の男のイメージだけで決め付けていたけど、コンサートは立派なものだったのね。
確かに演奏は面白かった。ピアノとオーボエのデュオ、パーカッション、ピアノとヴァイオリンとオーボエのトリオなど室内楽ばかりなのだが、若い音楽家の瑞々しい演奏は入賞の喜びに満ちているだけに益々楽しげで、演奏している姿を見るのも楽しかった。
特にパーカッションのマリンバを使った現代音楽は難易度が高い動きで雨だれを表現したりして、いつも現代音楽は苦手じゃと思う私たちでも楽しめる曲だった。
特に私は左端のロシア人イケメンオーボエ奏者が気に入り、夫は真ん中の頑張っていたピアノ奏者が気に入った。ということで2時間くらいのコンサートを楽しんで、バスと地下鉄を乗り継いでキャンプ場に戻ったのだった。
しかし、思った通りにコンサート会場は薄寒くて風邪を引きそうになったのは確か。いくら有名でも、いくら伝統があっても、あの支配人風の男の仕打ちは到底許されないのだ。プンプン!
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