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2008.09.19
ついにノイシュバンシュタイン観光
どうして「ついに」なのかっていうとですね。私たちは1990年代の後半、デュッセルドルフというドイツ北西部の町に2年近く住んでいたわけですよ。にもかかわらず、この超世界的有名なルードヴィッヒ2世のお城に行っていなかったのでした。で、12年も経過した今回まで行く機会も気持ちもおこらずに「ついに」今回はミュンヘンに行く道中にあたったので行ってみようかということになったのでした。
ということで12年ぶりにノイシュバンシュタイン城に向かう。キャンプ地のムルナウからは西方向のフュッセンをめざして手前の小さな村に城があるということが手持ちの地図でわかった。
今回オーストリアとドイツはガイドブックを持ち合わせていないので、とにかくわかる所だけ行ってみるつもりで道を走っていると途中から街道沿いに「ロマンチック街道」とドイツ語と日本語で書かれた看板が出てくるようになった。これがかの有名なロマンチック街道。しかも英語ではなく日本語のみの外国語表記がしてあるのに驚いた。よっぽど多くの日本人が来ているようだ。
ローマに向かう道という意味でロマンチック街道と呼ばれる街道だが、日本の旅行代理店の描き方は「夢溢れるロマンス」のロマンチックの意味合いも言外に含んでいるポスターなどが多い。しかし、今日の曇り空からはそういうロマンチックな感じは全く考えられず、晴れていたら気持ちがいいだろうなぁと想像ばかりが膨らむのどかな緑の中の道を走るのだった。フュッセンに行くには途中からやや細い道に左折して入る。左折する場所にあった小さなカフェに車を停めて有料トイレを使わせてもらっていると、ドイツ人男性1人女性2人の旅行者に出会った。彼らは自転車3台を普通自動車に積んで気軽に車である場所に行っては、車を停車してちょっとサイクリングして楽しむという休暇を送っているんだそうだ。年齢は60代後半と思われる3人は学生のようにワイワイと楽しそうに自転車を積み降ろしていた。こういう光景っていかにもドイツらしい。この人たちは本当にサイクリングや歩いたりするのが好きで、年齢にかかわらずやっているってのがすごいなぁ。
左折して細い道にはいってしばらく行くとWieskircheという表示が出てきた。地図には教会マークが書いてある。ガイドブックがないのだがせっかくなので立ち寄ってみるかと更に細い道に入り込んだ。おいおい、どこまで行くんだろうかと細い道をたどっていくと果たして道の終わりに教会が見えてくる。しかも教会前の駐車場には大型バスや乗用車がたくさん停車していて、大変な人気の場所だった。
一体どういう場所なんだろうかと車を停車して近寄ってみると、何とここは世界遺産に指定されている教会なのだった。内部は、そのシンプルな外観からは想像もつかないほど明るく手の込んだ装飾が施され、大半はドイツ人のお年寄りなのだが感心しきってバンバンと柱をたたいたり天井を見上げている。今まで見てきた教会でこんなに派手というかかわいらしい色合いの教会はあまりなかった。ドイツは外の天気が悪くて薄暗いからせめて教会内だけは明るくしようという配慮なのだろうか。
全く知らなかった場所だったが、行ってみてよかった。周囲のお土産物屋さんにはこの教会やこれから向かうノイシュバンシュタイン城の日本語で説明されたガイドブックが販売されている所を見ると、ここも日本人観光客にはおなじみの場所だったようだ。
教会見学を終えてもとのロマンチック街道に戻り再びフュッセンに戻る。途中から再び幹線道路をはずれて田舎の畑の中を走る舗装道路に入り込んで走ると、畑の向こうの森の中の丘の上に霞に隠れつつもノイシュバンシュタインが見える場所になってきた。このマイナーな道を選んだ観光客は思い思いの場所で車を停めて、城の姿をカメラにおさめている。もっと晴れてりゃぁいい写真になるだろうに、全く残念なことだ。しかし、幽玄な霞に見え隠れする城もルードヴィッヒ2世の無念な思いとかを勝手に掻き立ててくれると解釈すれば悪くない、うん、悪くないぞ。
城の麓の町シュバンガウに車を駐車して観光を開始。土産物屋には最高のノイシュバンシュタイン城の写真が何枚も土産物として販売されている。これを見ると最高と思われるのは紅葉と雪山が一緒に見られる秋ということで、今回はまだちょっと早かったかもしれない。
シュバンガウの町はレストラン、土産物屋、ホテルなど城があるからできたような印象の街。町の一角の小高い丘の上にはルードヴィッヒ2世のお父さんが建ててルードヴィッヒ2世も幼少を過ごしたシュバンガウ城が見える。
町の観光案内所で城への行き方を聞いてみると、まず町の中にあるチケットブースでチケットを購入してからバスに乗って山に上がり、そこから少し歩いて城に到着して見学するのだそうだ。チケット販売所に行ってみると城は完全ツアー制になっていてチケット購入時にツアーに参加する時間を決めることになっていた。下からバスに乗って、城の近くにある橋から城の姿を眺めるなどの時間を考えると麓を出発して1時間後くらいから始まるツアーに参加した方がいいらしい。
ところでこのチケット販売の姉さんたちは世界中から押し寄せてくる有象無象の観光客にうんざりしているという態度をあらわにする人々だった。こんなに田舎にいながら世界中の人を見学できるなんて悪くない仕事だと思うのに、彼女たちはなぜかとても不満そう。給料が安いのかなぁ。チケット売り場での私の関心は専ら彼女たちの無愛想さに集中した。
無愛想なお姉さんたちはバス乗り場への案内も不十分で、人に3回くらい聞きながらバス乗り場に到着してみると、世界中からのお客さんで長蛇の列ができていた。ここから先はVIP旅行者といえども自前の車では行かれず、バス、馬車あるいは徒歩で城に向かうことになっているから、このバスも混雑しているようだった。
バスを下りて右手にいくと城が見える橋、左手に行くと城に向かう。私たちはツアー開始まで随分時間があったので橋から城を見ることにした。橋にあった解説によればルードヴィッヒ2世が幼少の頃にこの橋で遊んだとか書かれている。
橋から城をバックに記念撮影するってのが大人気でこの写真を撮るのにもちょっと待たなければならなかった。世界中の人は大抵自分が大好きだ。せっかくのお城と自分。やっと来たノイシュバンシュタイン城。この思い入れが、人に撮影してもらった自分の写真はなかなか気に入らず何度も何度も取り直すという行為になる。だから、この橋はなかなか場所が空かない。
気持ちの中の城を取り去って実物をよく見れば、ようやく少し晴れた青い空に修復中の足場が組まれた城はそんなに素敵か?と思う姿なのだが、ここに来るまでに心の中の城がどんどんと大きくなっている人ばかりが詰め掛けているので、そんな現実とはお構いなしに撮影大会が行われているのだ。それはそれで面白い光景だった。
ここからブラブラと20分くらい歩くと城に到着する。まだまだ時間のある我々は城の中庭に階段に座って持参したサンドイッチを頬張った。中庭には駅の改札のような機械がおいてあり、その先には電光掲示板で数字が表示されている。
購入したチケットに表示された番号が掲示板に表示されると、改札口にチケットを差し込んで中に入れるようになっている。麓のチケット販売所から始まって、色々な事があまりにシステマチックで近代的でドイツ的になされているのが驚きだった。私のイメージの中では、メルヘン思想の王ルードヴィッヒ2世やら彼が囲っていたワーグナーなどが大きな位置を占めていたので、この近代的な状況は思ってもみなかった。そうだよねぇ、21世紀なんだから当たり前だよねぇと思いつつも何だかがっかりする気持ちは否めなかった。
さてさて、時間になって掲示板に番号が表示されたので中に入った。チケットを買う時に「何語のツアーに参加ですか?」と聞かれて日本語と答えたのだが一緒に入ったメンバーに日本人と思われる人は数人しかいない。どういうことかと思っていたら受付で「日本語」にセットされたオーディオガイドを渡されるのだった。だから様々な言語の旅行者と一緒のグループなのだ。
オーディオガイドなので各自自由に解説を聞くのだが、基本的に一緒に行動しなければならない。一定区域を見終わると全員次のエリアに移動して元には戻れない。それでも解説が自国言語でかなり詳細に渡っているので戻りたいという気分にはならない。フランスのルイ14世にも憧れていたルードヴィッヒ2世のお城はヴェルサイユに比べるとだいぶ小規模で、日本での知名度の割りには見学は1時間ほどで終わっちゃうし、ちょっと貧弱だ。特に私たちは何となく12年間も期待を持ち続けてしまっただけに、なーんだ、こんなものかという気持ちが強かった。
最後に城内のカフェでお茶。ルイ14世の気分「フッフッフ、俺には追いつけまい」という表情で。
ルードヴィッヒ2世の建てたもう一つきらびやかなお城がキャンプ場に帰ってくる途中にあったようなのだが、時間切れで見ずに戻ってきてしまった。それはまた次回のお楽しみということで。
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