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2008.09.17
やっとインスブルック観光
オーストリア:インスブルック

 キャンプサイトに到着して5日間ずっと低気圧が去らなかった。予想以上に寒い中、曇った灰色の空ばかり見てキャンプ場にこもりっきり。唯一の楽しみは近くのショッピングモールでおいしい食材を買うことと食べること。そんな5日間をすごした昨日の夕方、ふとキャンプ場の裏手に目をやると見たこともなかった美しい雪山が垣間見えていた。ここのキャンプ場、実はこんな美しい景色の中にあったのか。

 昨日美しい雪山はまたすぐに雲に消されてしまったのが、今日は何だか晴れそうな感じである。ようやくインスブルックの市内観光ができると私たちはいさんで車で町にでかけることにした。

 市場近くの地下駐車場に車を入れて地上に上がると、目の前にはいかにもオーストリアという町並みが見えていた。少し褪めて古びたようなパステルカラーの建物が並び、路面電車、観光客用の馬車が行き交う様子は数年前に訪れたウィーンを彷彿とさせる。しかし、遠くに雪山が見えているのがインスブルックらしい。昔ながらの建物に混じって近代的なショッピングモールがあるのだが、そこは何と市庁舎。市庁舎の1階部分をショッピングモールにしているのだ。こういう奇抜なアイディアはあまり日本にはないので面白い。

 インナーシュタットInnerstadtと呼ばれる中心街からアルトシュタットAltstadt(旧市街)に入ると急に建物は装飾が多くなり昔ながらの町並みになる。可愛らしい出窓のあるレストランの外壁には「1769年12月14日にレオポルド・モーツァルトが息子のウォルフガング・アマデウス・モーツァルト(13歳)と滞在した」という看板が出ているし、フリードリヒやマクシミリアンなど聞いたことのある名前が解説に出てきて、具体的に歴史を感じさせてくれた。ぶらぶらと歩いて聖ヤコブのドームまでの道のりは、ここ5日間のキャンプ生活の鬱屈を吹き飛ばしてくれる観光名所目白押しの楽しい道だった。

モーツァルト父子が滞在した家

フリードリヒ3世が1420年に建てた「Neuhof」というレジデンツで後にマクシミリアン1世が出窓を付け加えたという屋敷

ヘルブリングハウス Helblinghous

1440年に建てられた町の塔Stadttrum

チロリアンの民族衣装、高級バージョン

Dom St. Jakob

 道沿いの店には特有の壁から突き出た看板がよくある。スペック(北イタリアやインスブルックなどチロル地方に見られる生ハム)専門店やビヤホールなど古式ゆかしい看板が旧市街に趣を添えている。また各広場には様々な立派な彫刻があるのもインスブルックに限らずヨーロッパではよく見られるのだが、一つ一つの彫刻にもちろん歴史と意味がある。インスブルックの観光案内所はキャンプ場などに地図とこうした町の見所の開設を一緒にしたリーフレットを配っていてくれて、今回私たちは何らガイドブックを持ち合わせていなかったのだが、インスブルックの町中観光を十分にできるようになっているのが素晴らしかった。

 インスブルックに限らずヨーロッパの町を歩いていて楽しいのは、上記のような古めかしい建物が残りつつも最新のモダン建築も同じ町中に見られる事だ。インスブルックでも旧市街のちょっとはずれにモダンな会議場があったり、アルプスの山を背景にキュービック型のカッコいいカフェがあったりする。日本は木造建築という歴史を持っているのでなかなか難しいことなのだが、石造りの建物が基本のヨーロッパでは当たり前のように14世紀くらいからの建物と現代の建物が共存している。歴史に抱かれて町を歩いている気分になれるのがヨーロッパのいい所だなぁとここインスブルックでも再認識したのだった。

 町をぶらぶらと散策していたら、モダンな高い建物の最上階にセガフレッド(日本にもあるカフェチェーン店)を発見。あがってみると段々と晴れてきた空を背景にアルプスの山々が美しく見えるではないか。コーヒー一杯2ユーロは席料と割り切ってお茶することにした。

 本当はインスブルック市が無料で行っているハイキングに参加したかったのだが、朝8時にコングレスセンター集合ってのに間に合わなくて行けなかった。行き先はその日の天候などによって変更されるのだそうだが、午前中を使ってインスブルックの町中から山の中にハイキングに行くようだ。5日間もキャンプ場に潜伏していたので明日くらいには町を出なければならなくて、参加できないのが残念だなぁと雪山を見ながら思った。

 メインストリートのその名も「マリア・テレジアン・シュトラッセ」を南に下っていくと勝利の塔とでも訳すのだろうかTriunphpforteがある。ここまで来ると観光的なにおいもなくなり、インスブルックの普通の生活町並みになってくるのだが、この塔を過ぎた右手にフェアトレードを行っているNGOのアンテナショップがあった。アフリカや東南アジアの国々でフェアトレード(発展途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入することを通じ、立場の弱い途上国の生産者や労働者の生活改善と自立を目指す運動〜Wikipediaより)をよく耳にしたものだが、逆に先進国でどのように扱われているのかを見るのは初めてだったので、店に入ってみた。

 様々な発展途上国の現場で作っている人の写真とともに製品が紹介されているのだが、店内の内装やBGMが洒落ていて私たちがネパールの現場で見た染色と手工芸作成の現場とは随分とかけ離れているように感じられた。でもまぁ、こうでもして洒落た感覚にしないと売れないんだろうなぁ。ネパールでは先進国の製品レベルに向上しようとNGOの人々が必死に指導している。と同時にヨーロッパで人気のある染色も取り入れたりして好評のようだったがその一方で伝統的な柄が忘れ去られていく可能性も感じられた。伝統の物が必ずしもいいとは限らないわけだが世界が先進国主導の一つのテイストやトレンドになってしまったら、旅人としては面白くない。発展途上国の人が努力して経済の向上をしていくという話は好きだが、一方で私のわがままもあり、そんなジレンマを感じながらの店見学となった。

 この店の向かいのちょっと先にはJack Wolfskinというアウトドアメーカーのショップがあった。こんなに雪山に囲まれているんだから、さぞやアウトドアショップが多いだろうと思っていたインスブルックだが意外にも貧困。そうなのよねぇ、ウィーン在住の友人から聞いてもJack Wolfskinくらいしかないようだ。このメーカー、品質はいいだろうけどいかんせん高いのが問題だ。スペイン、イタリア、フランスにはDecathlonというアウトドア界のユニクロのようなチェーン店が入っているのだがオーストリアにはまだ来ていないようなのだ。Jack Wolfskinの店内を見て「やっぱりだめだなぁ」と確認して出てきた。

 こんな感じでインスブルックの町見学終了。駐車場に向かうと、市場前のオブジェや川や家並みが朝よりも大分晴れた空を背景に美しく見えていた。

 帰りがけ、今となっては行きつけとなった郊外のショッピングモールに行くと、ここからの眺めもまた素晴らしい。町中ではビルが邪魔して見られない山々もここからはくっきりと見られて、キャンプ場という町中から離れた場所に滞在しているならではの景色が楽しめた。

 天気の日は今日だけだったが、これで明日心置きなくドイツに旅立てるなぁ。


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