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2010.09.11
トリノ散策
ピエモンテ州の州都トリノにやってきた。ミラノから車を返却するフランスのニースまでは1日で移動しようと思えば行けない距離ではないが、そういえばトリノって町に行ったことがなかったと思い、今回立ち寄って見ることにしたのだ。
手持ちの「地球の歩き方」にはトリノは世界遺産の事しか既述されていないし、ロンリープラネットを見てもどうにもピンとくる観光名所が見当たらないという町なんだけど、どんな所なんだろうか。
今滞在しているキャンプ場はトリノの市街地から急な坂をのぼった丘の中腹にある。もと貴族の屋敷だったような感じの場所で、屋敷の建物には役所がテナントとしてオフィスを置き、庭園にあたる部分がキャンプ場になっているという二毛作的な所だ。
このキャンプ場からトリノの市街地と向こうに雪山が見える。見ている方角はスイスとフランスとイタリアの国境がぶつかるあたりだろうか。朝晩にすっと気温が下がって薄手のフリースをはおらないといけないあのも当たり前だよなぁと雪山を見て思う。1ヵ月前にはイタリアの踵部分にいた事を思うと随分北上してきたのものだと感慨深かった。
キャンプ場の丘を下るとトリノの市街地を取り囲む幹線道路沿いにポー川が流れている。川のこちら側は違う町、川の向こう側がトリノだ。川沿いは緑の生い茂る公園が連なって気持ちのいい散歩道になっていた。道沿いにトリノへ渡るいくつかの橋の中でも一番大きそうな橋を渡り、トリノの中心地であり世界遺産に指定されているサヴォイア王家住居のある広場へと向かった。
橋を渡った広場から王家住居のある広場までは両脇にずっとアーケードが続く、まさにメインストリートという場所だが、店ばかりではなく途中にサンティッシマ・アヌンツィアータ教会などもあった。中に入ると割と新しくてとても立派な教会だった。この教会はそもそも16世紀に建てられたのだが20世紀に改築されたそうだ。しかも、十字架から降ろされた直後のキリストの体を包んでいたという布、聖骸布が飾ってある。この聖骸布があるのはトリノの聖ヨハネ大聖堂のはずだから、これはコピーだろう。
朝9時台のアーケードはシャッターも閉まっていて静かだった。 |
教会内部の美しい装飾。 |
全体としてはこんな建物らしいが、アーケードの入り口から入ると外観が全くわからない。 |
聖骸布のコピーと思われる布は真ん中右側に頭頂を左にした人の顔型が見える。ちょっと怖いなぁ。 |
結局、キャンプ場からサヴォイ家住居のある宮殿の広場まで1時間もかかったことになる。途中、教会を見たりしていたとしてもやっぱり4km近くあったってことなんだろうなぁ。広場の中央には要塞のような建物(マダーマ宮殿)があって、現在は博物館になっている。手前にはオペラやクラシックコンサートを行う劇場、向かい側にサン・ロレンツォ教会、右手が王宮だ。
美術館となっている要塞 |
王家住居の敷地への門 |
門越しに撮影した宮殿 |
宮殿の全体像 |
王宮はまだ開いていなかったが、王宮から続く建物で他の観光客が吸い込まれていく場所があったので私達も中に入って見る事にした。王宮の左手にあるサン・ロレンツォ教会だ。外観の明るいレモンイエローとは一転して内部はとてもシックで豪華な造りになっていた。ここで見学者の注目を集めたのが主祭壇ある場所とは別の小さな部屋。ここに又しても聖骸布のコピーが飾ってあったのだ。本物はドゥオーモに保管されていて時々一般公開されるそうだ。ちなみに2010年4月に10年振りに公開されたそうだから当分は公開はないだろう。
へえー、これがねぇ。とコピーとはいえ若者はじーーーーっと近寄って見守り、年配者は遠くから十字を切って祈っていた。
トリノの町は王宮がある広場と同じ角度で碁盤の目上に道が並んでいる。王宮のある広場のサン・ロレンツォ教会の左側の道路と、それと直角に王宮から離れて行く道路が店が並ぶ繁華街に見えたので、散策してみた。途中から右に折れてまっすぐに行くと市場もあり、多くの人がお買いもの。だから繁華街が空いていたのかと思うほど盛況だった。
広々とした通りは歩行者天国の繁華街 |
途中にある教会もなかなか豪華だ。 |
青空マーケット |
グリッシーニはトリノが発祥地だそうな。巨大グリッシーニを発見。 |
屋内市場 |
とうとうチンギアーレ(猪)の季節到来のようで、たくさん出ていた。
1kg6.99ユーロってかなり安いなぁ。 |
王宮の広場に戻って、今度は王宮を背にして大通りを歩くと、今日は日曜日のスポーツイベントで道路は封鎖されて様々なスポーツ大会が行われていた。これ、先週ミラノでもやってたやつだなぁ。ミラノとトリノは車で1時間半ほどの距離なので、こうしたスポーツイベントやクラシック音楽イベントも共同で行っていることが多いようだ。このとおりには大手チェーン展開のアパレルショップからルイ・ヴィトンなどの高級ショップまでが並ぶ通りで、広々としたアーケードが優雅な町並みを作っていた。一通り町を見てお昼になったので、ポー川から王宮広場までの繁華街で目を付けていたグリルチキン屋に向かった。王宮から川に向かう通りも昔ながらのシックなカフェやちょっとしたガレリアがあって素敵だった。
広々としたアーケードはH&Mさえも豪華ショップに見せる。 |
スポーツイベントの1つ |
昔ながらのカフェには昔からの常連客の姿。これがまた絵になる。 |
ちょっとしたガレリアだが可愛らしい |
さて、ここまで来て王宮も見てないし博物館も見ていない。これで終わるのも何なので来る時に気になった建物に向かった。奇妙な形のこの建物は国立映画博物館。王宮もいいが、たまにはこういう博物館もいいんじゃない?ってことでトリノではここにお金を使う事にした。博物館の見学代金が9ユーロ、プラス2ユーロで塔の上までエレベーターで上がれるというので展望台セットチケットで一人11ユーロを支払った。映画の科学的なしくみ、パラパラ漫画のようなものから現代の映画ができるまでの歴史、映画の音声、視覚効果などのビデオ解説、往年の名画名場面を流しているコーナーなどイタリア映画に限らず様々な映画についての事を扱った博物館だった。私たちは2時間くらいの見学で引き揚げたが、ここで流されている名場面だけでも全部みていったら5時間や6時間はかかるんじゃないだろうか。特殊メイクや特撮など現代の技術よりももっと古い事が多いってのがイタリア的だと思った。博物館を見終わってエレベーターで上まで行ったのだが、薄々予想していた通りにたいした景色は見えず、展望台はいらなかったなぁという感想。館内にレストランもあり。
変わった形のビル |
自分が映像の中に入ったりするインタラクティブな装置もある |
5フロアーくらいとかなり見るべき所がある。 |
とまぁ、トリノはこんな具合に町散策と映画博物館見学で終了した。イタリア最後の王家サヴォイア家が住み、19世紀イタリア統一後の首都だったトリノは、今を栄華と生きるミラノから来ると少し取り残されたような古都だった。数日訪れて観光地を巡るというよりは、ここに住んで歴史に彩られた町並みを歩いたり、休みの日に文化的な遺産を見るという過し方が似合う町だった。
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