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2010.08.07
カサーレの古代ローマの別荘とアグリジェント神殿の谷
イタリア:アグリジェント

 ドミニカ共和国で出会った旅行代理店勤務のイタリア人女性は最近までシチリア島支店に勤務していたと言った。彼女のシチリア島でのお勧めは「アグリジェント」。今、アグリジェントの人気があがりつつあるというのだ。そこでアグリジェント郊外のシチリア南部の海岸沿いのキャンプ地に昨日移動してきた。

 昨日のうちにアグリジェントの町に行ってみたのだが、ジャコモ・セルポッタの作品があるサント・スピリト教会は午前中しか開館しておらず、町はシエスタで死んだように静かで見るべきものも何もないという所だった。
 

※サント・スピリト教会の開館時間
月・木 9:00-13:00
火・金 15:30-19:30

 キャンプ場の目の前には広大なビーチが続いており、少し沖に石を置いて波を防ぎ海水浴できるようにしてあるのだが、昨日までいた北側のパレルモ近郊の町、イソラ・デッレ・フェミーナと比べると肝心の海の水が美しくない。

 到着した昨日は風も強くて全く水に入る気も起らなかった。

 ということで、海辺のキャンプ場を拠点にアグリジェントに滞在するのはさして面白くなさそうな感じだったので、今日と明日くらいで観光してさっさと東海岸側へと移動することに決定。

 思えばドミニカ共和国で会ったイタリア人女性はアグリジェントでのアグリツーリズモを勧めていたっけ。アグリジェントが魅力的なのは海辺ではなく内陸の丘陵地帯なのかもしれない。

 今日はその内陸を通ってアグリジェントから130kmも離れたピアッツァ・アルメリーナの郊外にあるカサーレの古代ローマの別荘を訪ねる。

 130kmも離れた場所に観光をしに行くというのは私達にとっては初めてのことだ。しかし、この内陸部の見所付近にはキャンプ場がない。キャンピングカーで移動しているならアグリジェントからカターニアへの移動途中で観光していくという選択肢もあるだろうが、荷物を満載した普通車では途中で観光するというわけにはいかなかった。というのも、「車の中の目に見える場所に荷物を置いて車を離れるのは自殺行為」という鉄則があるからだ。ピアッツァ・アルメリーナのような田舎でも車上荒らしがある可能性は捨てきれなかった。

 ということでお弁当を作って朝9時15分に出発し、別荘に到着したのが午前11時24分。2時間と9分かかった。しかし、この2時間あまりのドライブはシチリアの起伏に富んだ内陸部の中を走るシーニックなもので決して退屈ではなかった。内陸部は緩やかに上り下りとカーブを繰り返す道で両脇には小麦畑が広がり丘の中腹に緑の木立を配した農家が点在している。この風景はトスカーナ地方を思い出させる。ああ、それでかとイタリア人女性が言っていたアグリツーリズモの話がピンとくるのだった。この豊かな丘陵地帯に囲まれて農家のスローフードに舌鼓を打つなら、それは魅力的なアグリジェント滞在とういことになるだろう。

 なるほどねぇ。人気が出てきているというのは、このスタイルで滞在してこそであって、海辺のしょぼいキャンプ場に突っ込んで行くのは方向性が間違っていたようだ。ま、あのキャンプ場も素朴で愛想のいいおっちゃんがやっていて、週末のレストランでは地元民がカラオケ大会をやっているという意味ではスローライフだが洒落てはいない。決して。

 さて、カサーレの古代ローマの別荘だ。広大な駐車場に案内されて駐車料金1ユーロを払って車を降りた。チケットは駐車場の向かいの階段を下りた事務所で買う。一人5ユーロだった。昨日のアグリジェントのサント・スピリト教会で失敗したので、今日はキャンプ場から別荘事務所に電話してもらってちゃんと開館時間を確認してきていた。今日、ここが閉まっていたら笑えないもんね。事務所に貼りだされていた別荘の開館時間は以下の通りだった。

2010年9月30日までは
月〜金 3PM-8PM
土・日・祝日 9AM-8PM

 うわー、確認してきてよかった。そして偶然にも今日が土曜日でよかった。シチリア島の観光名所はよく時間を確認しないと本当に危ない。この開館時間のお知らせもA4の紙に印刷されたものをフェンスに貼り付けてあるだけで「いつでも変更しちゃうもんね」という移り気な態度が見えていたから信用ならない。行くなら直前に事務所に電話で確認すべきだ。

 もう一度階段を上ってお土産物屋の並ぶ参道のような道を500mくらいぶらぶらと歩いた先に別荘がある。保護のためにガラスの建物で覆われる作業といまだに発掘が続いているようでクレーンが建っていて、工事現場に来たような感じだった。この時点で既に11時半になっていたので、とにかく腹ごしらえだと入口脇の階段でお弁当を広げた。反対側の階段でも持参のサンドイッチをぱくつくドイツ人家族がいてピクニックな雰囲気になっていた。

 ここに来るまでに既に足元に動物模様のモザイクタイルがある。建物の中に入ると全体の見取り図があり、ローマ時代の貴族の別荘ということだがなかなかどうして広々として立派でかなり高位の貴族だったと思われた。

 広大な見取り図を見て見学に時間がかかるのかと思いきや、公開されているのは驚くほど狭いエリアでこれだけ?という感じの場所だった。これからどんどん発掘、修復していく予定なのかもしれない。見られるエリアは狭いのだが、モザイクの密度は高かった。こんなにどの部屋にも凝ったデザインのモザイクが続いて残っている家は見た事がない。そういう意味でははるばるやって来た甲斐がある場所だった。

保護のためのガラスの建物の骨組みがモザイクに影を落として見辛いのが難点。

しかし近づいて良く見ると、非常に凝ったデザインと色調のモザイクが見える。

足が蛇の男

下に部分拡大


可愛くない天使たち

「大狩猟の廊下」を見下ろす

「大狩猟の廊下」より

「大狩猟の廊下」より

「大狩猟の廊下」より

「大狩猟の廊下」より

「大狩猟の廊下」より

 そして人気なのがこちらの「10人の娘の間」。この頃に既にビキニがあったというのが面白い。

 そして最後が動物の顔の並んだ廊下だった。

 肉眼で見るモザイクはここに掲載した色調整済みの写真よりも色が薄く見える。太陽の光が強すぎるのかもしれない。現地で見ていた時よりも、この記事をかくために調整して浮かび上がってきたモザイクを見ている今の方がこの別荘の良さをよく理解できる。

 帰りの道すがら土産物屋をのぞいてみたのだが、ここで売られている絵葉書も同様にかなり色を出した写真になっていた。それにしても私達が見ていないモザイクの絵葉書がたくさんある。これらは一体どこにあるのだろうか。そしてなぜ見られなかったのだろうか。疑問を残しつつ別荘を後にした。

 アグリジェントに戻ってきたのは午後3時半。別荘が思っていたよりも見るエリアが狭かったので早く帰ってこられたのだ。時間も体力もまだ残っているので、本当は明日見学しようと思っていた神殿の谷を今日中に見てしまおうってなことになった。

 アグリジェントの町から海に向かって数キロ進んだ場所に紀元前5-6世紀に建てられたギリシャ神殿がいくつも残っている場所があり、現在は「神殿の谷」と呼ばれて観光名所になっている。チケットはこの谷への入場と1km離れた場所にある州立考古学博物館に入れて一人10ユーロだった。

 アグリジェントの青い空に映えて2500年に渡る時を経て建つ神殿の数々はそもそもの装飾がなくなって違う形になっているだろうが、それ故の美しさを見せてくれた。

チケットの写真は意外にも神殿じゃなく円形劇場だった。

ディオスクロイ神殿

ジュビター神殿には、かつて神殿を支える柱の一部だったと考えられるテラモーネ(人型の柱)のレプリカが横たわっている。

エルコレ(ヘラクレス)神殿

石の道に深いワダチがこの町の歴史を感じさせる。

ギリシャ神殿と現代アートの組み合わせが面白い。

コンコルディア神殿。一番保存状態がいいのはキリスト教時代に教会として転用利用されていたため。本来は柱に鮮やかな漆喰が塗られていたというが、今の状態の方がかっこいいなぁ。

コンコルディア神殿付近からの見下ろしの風景。

ジュノーネ・ラチニア(ヘラ)神殿

ジュノーネ・ラチニア(ヘラ)神殿

 それにしても疲れた。ここに入ってきてもう2kmは歩いている。イタリアの他の観光名所のように手を洗ったりできる蛇口があるのだが、「飲料水ではありません」という注意書きがしてあって飲めなくてそれもフラストレーションがたまる原因だった。最初、夫はうっかり飲んでしまったのだが・・・。

 神殿の谷を見学し終わったら、1km歩いて考古学博物館。博物館への道のりは上り坂で「帰りは下りだから、帰りは下りだから」と念仏のように唱えながら歩いた。真夏のシチリアの強烈なひざしの下で遺跡を観光するのは大変だ。

ジュピター神殿にあったテラモーネのオリジナル

気持ちの良い中庭のある博物館

雨樋ライオン

ジュピター神殿の柱の想像彫刻

アルカイックスマイルの魅惑的な女性。

水浴するヴィーナス

アグリジェントの青年像

 途中で考古学博物館の敷地内にある遺跡を見渡せる所もあるが、正直、あまり形をなしていない遺跡なので、何かよくわからなかった。

 博物館の一番の目玉展示物はやはりジュピター神殿の柱だった人間像テラモーネだろう。テラモーネのモチーフは今でもミラノの建物に見られるくらい後世に影響を与えている。



 考古学博物館の見学を終えて駐車場に戻ると午後6時近くにもかかわらず、今から遺跡に向かう人が大勢いた。どうやら夕焼けの遺跡を見たいということらしかった。遺跡の楽しみ方もいろいろだ。


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