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2010.07.30
美しい海の町、トロペア
ソレントからシチリア島に向けての大移動を開始した。距離が長いので途中で1日区切りたいと考え、ガイドブックを見るとあまり見所もない。一番興味を引いたのが道中の距離バランスから言うとかなりシチリア寄りになってしまうトロペアという町だった。
断崖絶壁の上に建つ町トロペアは高速道路からも距離があって、それ故に孤立していて海もきれいなんだろうと思われる場所にある。しかし、先の行程を考えるとトロペアに行くには時間的ロスが大きい。そこでトロペアの40kmくらい北、イタリアが一番細くくびれた西海岸側にあり高速出口からも近いピッツォという町のキャンプ場に滞在して、そこから1日トロペア観光してシチリアに向かうことにした。
昨日のソレントからピッツォの移動は距離はあるもののずっと主要高速道路が走っているので朝9時に出れば午後2時半には着くだろうという予想でソレントを出た。しかし、40kmにも及ぶ高速道路の大工事中でまさかの渋滞が何度も起こり、キャンプ場に到着したのは午後4時過ぎになっていた。お陰でカラーブリア州の景色を高速からゆっくりと見物する羽目になったのだっが、カラーブリアにはほとんど平野が存在しなかった。州の面積の9%にも満たないのだそうだ。それ故に道は曲がりくねったりトンネルがあったりして、高速道路と言えども早く走れない。そんな理由からかカラーブリア州はイタリアで一番平均所得が低い貧しい州なのだそうだ。現在の大工事は従来の曲がりくねった高速道路ではなく、もっとまっすぐで幅広い道を作ろうとしているようだ。物資がスピーディーに運べるようになればカラーブリアももう少し潤うんじゃないだろうか。
到着したキャンプ場はとても広大な松林の夏のキャンプ場としては理想的な場所だった。にもかかわず、テントを張っている人が2組くらいしかいない。私達がテントを張った長方形の広いエリアなんかだーれもいなくて私達だけ。7月末なのにこんなゴーストタウンのようなキャンプ場って大丈夫なのか?とかなり不安になった。しかし、到着したのが午後4時過ぎ。付近に別の選択肢も知らないのでここに宿泊することになった。
目の前の海は左右にまっすぐにどこまでも海岸線が続く砂浜で、水はかなり透明で美しかった。キャンプ場に人はいないもののキャンプ場目の前のビーチから右手には多くの人が寝そべったりしている。つまりピッツォがゴーストタウンなんじゃなくて、うちのキャンプ場がゴーストキャンプ場ってことらしかった。
ゴーストキャンプ場でもトイレ棟はきれいに掃除されているし、食器洗い場も洗濯場もあるし問題ないかと思っていたが、シャワーを浴びようとシャワー棟に行くと電灯がつかない。しかも水シャワーだ。この季節、日の入りが午後8時と遅いし暑いので実際にはあまり問題ないが、なんだか貧しい感じがする。それなのに一泊30ユーロとナポリ界隈並みの値段を設定しているからお客さんが来ないのかもしれない。
そんな事をつらつらと考えながら一夜明けた今日、ともかくも予定していたトロペアに向かって朝8時49分にキャンプ場を出発、トロペアまでは1時間20分のドライブだった。
高速道路に背を向けて海に向かう道になると時間が後退したような牧歌的な風景になった。ヤギ飼いが大量のヤギを引き連れて道路を占拠しても車は静かに待つ。それがここのルールらしかった。
トロペアの町の路上有料駐車場に車を停めて町に出てみた。南イタリアの強い日差しに色あせたような建物が並ぶ田舎町だが、意外に観光客の姿は多く人気の町らしかった。日干しの唐辛子の真っ赤な束が下がる土産物屋があり、海の用品を売る店があり、レストランやカフェもある。観光客の大半はここまで来るとイタリア語の人ばかりで、肩肘を張らないリラックスした海辺の町だった。
この辺りはちょっとした半島になっていて、海岸線から40mも壁が立ちあがったような地形になっている。トロペアはその半島の一番海に突き出た崖の上にある町だった。一番海よりの展望台からのぞいてみると、眼下にとても美しい海が見えて嬉しくなった。いやー、来てよかったなぁ。
展望台から左手には岬が突き出していて、その左がよく見えないのでもっと左側の見えるポイントを探して町を歩いて行くと、坂道を少し下って教会があり教会脇から下の海岸に下りていく道がみつかった。
左側は右側よりも緩やかに大きく湾曲する湾になっていて、ずっと先まで断崖が続いているのが見えた。面白い地形の場所だ。
とにかく海がきれいなので来るまで下まで移動して海水浴を楽しもう。下に向かって行く道がとてもわかりにくかったのだが、何とか岬の麓にある駐車場にたどり着いた。ここは上の町の駐車場よりも安くて1時間1ユーロ。あらかじめ時間を決めて自動販売機で駐車券を買うシステムだがコインしか受け付けない。近くのバールに両替を頼むとあまり嬉しそうではないがコインに替えてくれた。
上から見ていた岬の右側に行ってみた。とても美しい。イタリア本土で見た中では一番の美しい水質のビーチだった。岸壁の上に町が建っている風景も面白いし、小さな湾になっているので波もなくプールのように穏やかで景色も退屈ではない。こういうのがイタリア人好みだとしたら、かなり私の好みと一致する。ここでは貸出ビーチベッドもパラソルもなく皆自前で持ってきているし、ご飯もお弁当持参の人が多かった。とても家族的でいい雰囲気の場所だった。
昨日から長距離を運転してきてやっとここに到着。嬉しい! |
少し残念なのは、午後1時くらいになるとどこからともなくゴミが海流に乗って左方向からやってきたことだった。プラスチック系のゴミや細かい木切れが流れてくる。午後3時には緩やかに右に流れて行くのだが、それでも到着した時間に比べると全体的にゴミが浮いた感じが消えない。海流の関係で一日中海が美しいというわけにはいかないようだった。
この岬の左側にはキャンプ場がある。もちろん、この時期は一番のハイシーズンだから一泊40ユーロや45ユーロは取られそうだが、今いるピッツォに比べたらそれだけ支払ってもいる価値があると思った。
私たちは少しずつ場所を変えながらたっぷり3時間、水に浸かったり日光浴したりして楽しんでから帰途に着いたのだった。途中の町の郊外に大型ショッピングセンターを見つけていたので食材も調達。なかなか有意義なトロペア観光だった。
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