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2010.07.21
カゼルタでブルボン家の王宮と庭園見学
昨日、カゼルタ行きに失敗したので今日は再びカゼルタ詣でだ。カゼルタの駅前駐車場に車を入れて、駅を通りぬけたらその向こうに王宮がある。
王宮はナポリ公国が大きな権力を振るっていた頃にカルロス3世が着工し1780年に完成したという宮殿だ。19世紀にはブルボン家の貴族たちが春と夏の離宮として利用したのだそうだ。
王宮までの前庭も大変に広いが、こちらは入場料を取らない場所なので乳母車を押したお母さんが散歩していたり、自転車で通りぬける市民の姿が見られる。離宮といっても昨日訪れた王宮よりも大きいんじゃないだろうか。こちらの方が本宅のように見えた。
チケットは建物内で販売。宮殿内見学と庭園見学とそのコンビネーションの3種にわかれているが、私達はコンビネーションチケット一人9ユーロで両方見て回ることにした。
宮殿の見学コースはまず大きな階段を上る。昨日の王宮と同じく、いやそれよりも更に壮麗な階段と壁と天井は一度踊場があってそこから折れ曲がって上に続いていた。とにかく階段の場所を豪華にするというのがブルボン家の意向だったのだろうか。不動産屋さんがベンツに乗るというのに似ている。最初に迎えたお客様に信頼と尊敬の念を与えたいと考えていたのだろうか。
最初に訪れた公式の行事が行われそうな数々の広間は、天井画とそれに続く細かいテラコッタの装飾、大理石の床装飾ととてもゴージャスな感じで、かつ色使いが今まで見てきたイタリアではなくフレンチテイストの色合いだった。どこがどうと細かく言えないが全体の印象がフランスの貴族趣味という感じがした。
それが天蓋付ベッドなどのある居室部分に至ると、床や壁布などはフランス風だが天井画がポンペイ風になっているのがナポリな感じで面白い。椅子やテーブルなど素敵な装飾品が多かったが、中にエジプト風の置物があり衣類の真ん中の金色部分が良く見ると妙な絵になっている。エジプトな感じを出そうとしたのだろうが、現代の我々から見るとヘタウママンガのように見えた。
宮殿は真ん中から見学が始まって、まず右手方向に公の広間群を見て、右奥の居室群を見学後再び広間群を通って真ん中の部屋に戻ってくる。次に左側に順路が進むようになっていた。左側の部屋の用途はわからないが、ここから先は天井画が美しい部屋が多いという印象を持った。
この左側の一角には図書室もあった。18世紀以降というとハードカバーの印刷物がもう普通に出回っているようで、クラシック・イタリア全集のような本が並んでいる。クラシック・イタリアというと何だろうかと見てみると、ダンテ、ボッカチオ、ヴァザーリ、マキアヴェッリ、ガリレオ・ガリレイという名前が見て取れた。
他には美しい彩色を施した鳥類図鑑なども展示されていた。
最後の方に展示されていて圧巻だったのはプレゼービオと呼ばれる18世紀にナポリで作られた人形の並ぶ模型の町だった。こういうのは風俗史としてとても貴重だと思う。しかも一般市民の衣装や生活用具のみならず当時の庶民の表情までもが残されているのが非常に面白かった。美術館の肖像画などで描かれている上流階級とはまた異なる階級の人びとの文化も見えてくる。
さて、宮殿の観光を終えて今度は庭園観光。宮殿の後ろに細長く伸びる庭園はずーっと先の大きな滝の下まで続いている。なんと3kmもあるそうだ。見所は滝の麓の右手にあるイギリス式庭園と滝から細長く伸びる人工の川の所々にある噴水だ。
往復6kmはきついとは誰もが考える事。ここでは庭園から滝の麓まで往復1ユーロでバスが走っている。
私たちは行きにバスを利用してゆるゆると歩きながら戻ることにした。
山から落ちてくる滝はなかなか壮観だった。特にカラッと晴れて強いひざしのような夏の今日は滝から吹き下りてくる風が気持ちよかった。野趣あふれるしつらえにしているが、滝壺となる場所には彫刻が置かれ優雅さも演出されていた。滝を背に振り返るとなだらかに下る庭園のずっと先に王宮が見える。何とも貴族的な優雅な眺めだった。
ここで珍しく日本人のご夫婦に出会った。ナポリから車を借りてシチリアに向かい、シチリアのパレルモから日本に帰るという計画だそうだ。定年退職されたというから60代と思われる。「イタリアで車を借りて旅をするのは初めてなのでドキドキです」と仰っていたが、その緊張感も旅の高揚につなげて楽しんでいるように見受けられた。私達もいずれパレルモに向かうので道中の情報交換なども少しできた。実はこういう出会いがもっとあったらいいと常々思っている。ヨーロッパのキャンプ場ではオランダ人、フランス人、ドイツ人がたくさんいて各国の人びとは見知らぬ同士でもすぐに打ち解けて情報交換したりしてとても楽しそうなのだ。日本人ももっと時間を取ってゆっくりと自由旅をする人が増えてくれば楽しいのにと、いつも思っていた。だから今日、こういう人たちに出会えたのは新しい流れが来ている感じがしてとても嬉しかった。
互いの旅の安全を願って二人と別れてから、私達はイギリス庭園へと向かった。
イギリス庭園は古代遺跡を模した神殿を置いてみたり、水藻のある池があったりする小道を散策するような場所でビシッと整備されたフランス式庭園の一角にこうした自然に近い形のイギリス式庭園を置くのがヴェルサイユ風だと感じられる。ブルボン家はやはりフランスの香りを持っている。
イギリス庭園から再び滝の流れの部分に戻って王宮まで散策。途中にはいくつか噴水があって目を楽しませてくれた。
離れて見ると大滝はかなり急斜面 |
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途中かなりの段差がある。 |
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口から水を吹き出しそうな彫刻達 |
魚も泳ぐ美しい水 |
イルカの滝 |
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大養魚場には今は白鳥などが浮かんでいる |
大養魚場の鳩のエサはやっぱりパスタだった! |
今日はカゼルタのレストランでご飯でも食べようとお弁当を持たずに来てしまった。宮殿も庭園も思いのほか見学に時間がかかり、両方の見学が終了したのは午後1時半近く。3時間半かかったなぁ。
見学を終えてカゼルタの町に出てみたのだが、すでにシエスタに入って人通りが少ない。目星をつけていたレストランはお任せに近い2〜3種類しかメニューがなく、あまり興味を引かなかった。他にレストランらしいものもなく、空腹を抱えたままカゼルタの町を離れることになった。
今日はついでに食材調達もしようと、カゼルタ郊外の大きなカルフールに立ち寄って買い物をしているうちに空腹感もなくなってしまったのでとうとう昼食抜きとなった。とはいえ、キャンプ場に戻って一息ついたら再び空腹。そこで午後4時から前菜などをつまみながらゆっくりと夕食を取った。
これでナポリとその近郊の観光は終了。明日はポンペイに向けて出発だ。
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