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2010.07.12
ローマ郊外観光(2)〜アリッチャAricciaとカステル・ガンドルフォCastel Gandolfo
ローマの南東25kmの所にアルバーノ湖とネミ湖という2つの湖がある。この周辺一帯はカステッリ・ロマーニと呼ばれてすでにローマ時代から避暑地として多くの上流階級が滞在した場所だったそうだ。それら皇帝や貴族の別荘や質の良いブドウで作られるワインが有名で観光名所としていくつもの町がガイドブックに挙げられていた。
この中から比較的ローマから近くて行きやすそうな2都市を選んで訪ねてみることにした。
最初に目指したのはアリッチャという町だった。町に近づくと目の前には水道橋のようなものが見えてくる。これがピウス9世によって町の入り口にかけられたというアリッチャ橋だろう。高さ60m、全長300mもあるそうだ。
ということはアリッチャの町は今走っている所からあの橋の高さまで登るということになる。
そう思いながら走っていると橋の手前で右折して急激にぐんぐんと登り坂になっていった。橋の下には無料の市の駐車場も目の端に入ってきたのだが、この坂を登るくらいなら駐車場料金を支払った方がましだと通り過ぎたのだった。
いつものように町の中心部に向かうマーク「◎」に従って進むと、いきなり一方通行の石畳の細い道に入りこんでしまった。上り坂はなおも続く。
普通だったらこんな風に石畳になる前に駐車場が見つかって徒歩でこうした旧市街に入って行くものだが、ここの場合はいきなりこんな場所に車で突っ込んでしまった。隣の私は呑気にも「アッピア街道沿いの町でこの石畳ってことはローマ時代からずっとあった道じゃないの?」などと言っていたのだが、これからどうなるのかわからない道を突き進むハンドルを握る夫は冷や汗をかきながら運転していた。
ようやく坂道が終了する所でこの悪魔のような石畳が終わって大きな道に出た。この道がどうやらさっき下から見上げていた道のようで、道を渡った所に青空マーケットが見えてどうやらその辺りが町の中心に思えたので、道を渡るとすぐに駐車場発見。とにかく駐車して現在地を確認することにした。
周りの人に聞いたら、やっぱりここが中心らしいので券売機で1時間のチケットを買って町を見学することになった。
中心となる共和国広場には中央にベルニーニ設計の2つの噴水、その背後にS.M.デッラッスンツィオーネ教会がある。
ベルニーニ設計の噴水は、今までローマ市内で見てきたものに比べると装飾もシンプルで随分と可愛らしい。広場の規模を考えたらこんな風になるのだろうと思う一方で、あんまり予算がなかったのかなぁと思うくらいにあっさりした噴水だった。
持っている情報としてはさっき見た橋とこの広場と噴水があるということだけなので、到着して10分後くらいにはもう手探りの観光ということになった。
メインの道路を背にして広場の左手の道が奥に続いていて、人通りが多いのでそこに行ってみることにした。だいたいこの町に到着してから全く観光客らしい人の姿を見ていない。通りに入ってパチパチと撮影していると、「うわー、観光してる、写真撮ってる」という好奇の視線を感じるくらいだった。確かに何もない町だ。
しかし、平日の午前中の通りには引退した老人男性たちが杖を持ってベンチにずらりと並んで活発に何かを議論していたり、派手なお化粧と露出の多い服で乳母車を押すグラマラスな若い母親が道行く人や店の人、一人ひとりに挨拶してはちょっと話しこんでいるという光景は、この町に何代にも渡って暮らしてきた人が多いという歴史を感じさせてくれた。同時にフィレンツェやローマにはない生のイタリア人の生活ぶりが見えて、そういう意味ではイタリア映画の1シーンを見ているような気さえする。そんな人通りも50mも進むとがっくりと減り、可愛らしい教会を過ぎて行き止まる所まで歩くと眼下に広がる風景が見渡せるテラスとなって終了。メインストリートはこの150mくらいという町だった。
買った駐車場チケット1時間でも余ってしまう時間で観光が終了したので、このメインストリートで気になったポルケッタという子豚の丸焼きサンドで休憩。以前にも食べたのがとてもおいしかったのでチャンスあれば食べようという夫婦の合意なのだった。シンプルな塩味だけだけれど、ジューシーで柔らかい肉と少し入れてくれるカリッとした皮の香ばしさがアクセントになっていて、この店のもおいしかった。観光客が少ない町はご飯がおいしい傾向にあるように思う。町の人は皆がリピーターで口コミの力が強そうで、大きな町のように一回きりのお客が少ないような所でまずい物を出したらやっていけないだろうからね。
先ほど見た教会の中には17世紀のフレスコ画あるそうなので、それも見ておいた。さっぱりとした白基調の内部に古いフレスコ画が映えて美しいクラシックな空間を作り出していた。
残りの時間は駐車場前に出ている青空マーケット見学。イタリア各地でこうしたマーケットが開かれている。ある場所では週に1回、ある場所では毎日と開催日程は場所ごとに異なるが、田舎の場合は週1回というのが多いみたいだ。
野菜から始まってチーズ、ハムやサラミ、生活小物、衣料品、靴、雑貨まで様々な店がずらりと並んでいて、さっきのメインストリートよりもずっと人が多かった。こういう店を出店している人の中に必ず中国人とインド系の人たちを見かける。中国系は衣料品、インド系は雑貨が多い。国を出てイタリア語を覚えてこういうマーケット出店に食い込んでいくのは大変な事だと思う。本当にそのパワーは驚くばかりだ。
こんな見学で1時間が終了。こういう町でお昼ご飯を食べてみたかったが、そんなに長くもいられないので、次のカステル・ガンドルフォへと向かった。
アリッチャからカステル・ガンドルフォへの道路標示に従って車を走らせると幹線道路ではなく、裏道のようなワインディングロードを走らされた。
イタリアの道路標示は時々こういうのがある。こっちの道の方がドライブっぽくて楽しいでしょう!という意図なのか、幹線道路は商業用なので観光客には迂回させたいという意図なのか。裏道まで連れてきておいて、突然表示がなくなるというのもよくある。カステル・ガンドルフォへの道もそうだった。道路標示が意地悪な分、人々はとても親切なのもこれまたイタリア全土共通なようで、ここでも道を聞くと丁寧に教えてくれて無事に町に到着することができた。
無料の駐車場は町の西側の幹線道路沿いにある。そこに停車して徒歩で町に入ると、すぐにも東側の眼下に広がるアルバーノ湖が見えてくる。今朝訪れたアリッチャよりはずっと避暑地という感じのする町だった。
湖の縁の高台というだけでなく、ここには現在も使われている法王の夏の離宮があることも避暑地のイメージを高めているに違いない。
レストランや土産物屋はそろそろシエスタに入るようで店じまいの準備を始めている。ゆったりとした空気が流れるメインストリートを歩いて行くと、ベルニーニの噴水のあるリベルタ広場に到着した。広場の奥にあるのが法王の夏の離宮だ。ガイドブックに「法王の滞在中はスイス衛兵が門の前に立つ」と書かれていて、見ると、お、立っているではないか。つまり今、法王がここに来ているってことのようだった。
離宮は一般公開されていないので入口近くまで寄って衛兵を見ようとしたら、スイス衛兵に手で「これ以上近づくな」と制された。そんな派手な格好をしていながら近寄って見るなとか写真を撮るなとマサイ族のような事をおっしゃられてもねぇ。矛盾している。
同じ広場に面している教会内部を見学し、近所のお店のショーウィンドーを飾るキティちゃんの世界での躍進ぶりに感心し、ジェラートを食べたらもうやることがなくなった。
人びとが涼を求めて集まる場所だから、別に見所があるわけではない。眼下に広がるアルバーノ湖まで降りていけば湖水浴できそうで、湖岸の水の美しさにはかなり魅力があったが、町の反対側に車を停めていて行くのが難しそうだったので断念した。
午後1時にカステル・ガンドルフォを出てキャンプ場に到着したのは午後1時40分。すぐにキャンプ場のプールに飛び込んだのは言うまでもない。
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