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2010.07.11
ローマ郊外観光(1)〜ティボリに2つの世界遺産のヴィッラを訪ねる
イタリア:ローマ

 ローマ市内の観光も大きな見所は終了したので、今日から行き先を変えて郊外の見所に足を伸ばすことにした。

 ローマ郊外観光の第一日目となる今日は、ローマの北東30kmくらいの所にあるティボリをめざす。ローマから向かうとティボリの町に到着する手前にハドリアヌス帝の別荘だったヴィッラ・アドリアーナがあり、ティボリの町にはエステ家の別荘だったヴィッラ・デステがある。ともに世界遺産に登録されているというので、ティボリには他にもいくつか見所があるが、この2つに絞って観光することにした。

 使っているミシュランの20万分の1のロードマップにも掲載されているハドリアヌス帝のヴィッラなので行けるだろうと地図を見ながら走り、看板のある場所で右折して横道に入ったのだが、あと1kmくらいという場所で車両立ち入り禁止となってしまい近くの無料駐車場に車を停めて15分くらい歩いてヴィッラまで行くことになった。行ってみれば専用の駐車場もある。どうやら別の道を通らないと目の前までは来られないようだ。しかし、専用の駐車場は有料だったので結果としては正解だった。

 入場料金一人10ユーロを支払って中に入る。内部には全体地図があるのだが、ガイドブックでも確認していた通りとても広い場所だった。これはかなり歩く事になる。

 今日も修業のような観光となりそうだ。

 チケット売り場から250mくらい歩くと壁がそびえる場所に突き当たる。どうやらここから別荘の敷地が始まるようだ。それにしても、この壁の高さといい長さといい、今回の旅で訪れたローマ市内のサンタ・マリア・デッリ・アンジェリ教会で感じた壮大なローマ時代の雰囲気をそのまま別荘に持ち込んでいる。リップブリカ広場に面したサンタ・マリア・デッリ・アンジェリ教会はもともとローマ時代のバジリカと大浴場だった施設を教会に改築したものだが、その天井の高さや廊下の広さが後世に教会として建てられた物から考えると常識を超えた大きさで、遠い昔のローマ時代の伸びやかで壮大な息吹を感じることができたのだった。あの感じを、ここでも再び感じた。
 

 この門をくぐると、目の前には大きな池が見える。ポイキレと呼ばれるこの場所は池を中心に周りを取り囲むように小さな部屋が並んでいたそうだ。ここから左に進むと池の中に建物が浮かぶ「島のヴィッラ」が見えてくる。周囲をぐるりと巡ると美しい円柱に囲まれた池と建物が水に写りこんでいるのが印象的だった。しかし廃墟になってなおも美しいという建物を作ったローマ時代の建築家のセンスはすごいなぁ。言い忘れたが、この別荘は130年に完成したものだ。2世紀前半にしてこの建築物。いやはや驚く。ローマに来て驚いてばかりだが、ここでも驚く。

ポイキレ。とても広い。

島のヴィッラ。

島のヴィッラ。廃墟となってもさまになる。

島のヴィッラの想像図。あちこちにこういう看板があって楽しい。

 島のヴィッラの裏手には図書館跡がある。ギリシア語図書館とラテン語図書館だそうだ。廃墟を見る限り当時の建物がどんなだったか、なかなか想像できないが、ここにも平面図のパネルがあり想像を助けてくれる(私にはあまり助けにはならないが建築やっていた夫はかなりわかるようだ。)。曲面、並行でない壁、四角ではない空間。こうした一見アンバランスな物を集めて1つのバランスある空間にまとめられる技術やセンスがこの時代にあったことが平面図からわかる。20世紀、21世紀になって例えばL.Aのディズニーミュージックホールとか、ポルトガルのポルトにあるカーサ・ダ・ムジカなどはわざと均衡を破った変形の空間を作っているのだが、イタリアにはそもそもそういう感覚があったということになる。
 

 島のヴィッラから始まって、図書館、食堂、病院と続き一番奥の黄金広場までが「皇帝の宮殿」と呼ばれる建物群だそうだ。宮殿の敷地を出て、養魚池、エクセドラのある建物までの写真。

ホスピタリアの床に残るモザイク。これが敷き詰められたらとても美しい光景だったろう。

図書館の奥にある皇帝の食堂。私としては何を食べていたかの方が気になる。

食堂の奥にある「テムペーのテラス」からの眺め。

朽ちた柱頭が時間を感じさせる

ドーリス式付柱の間

ドーリス式付柱

黄金広場の平面図と、広場の奥にあった八角形の建物の完成想像図

黄金広場。かつては60本の柱が広場を取り囲んでいたというが、今はその付け根だけ残っている。

黄金広場の奥の八角形の建物跡

Heliocaminusと解説パネルに書かれていた図書館とポイキレの間部分は風呂だそうだ。かつての下水道跡が残っている。ちゃんとしてるよねぇ。

Heliocaminusに残る浴場。階段式の縁を降りて浴槽に入るようだ。

養魚池。食べるためだったのだろうか。それにしても池の周囲を優雅な柱が取り巻いて中庭のような雰囲気になっているのが洒落ている。

3つのエクセドラ(Tre Esedre)の平面図

エクセドラの1つ。エクセドラってのは、「建築物における半円形の部分で、その上部は半ドームになっていることが多く、一般に建物の正面にある。ギリシア語で「ドアの外の座席」を意味し、柱廊に面した部屋で湾曲した背もたれの高い石造りのベンチに取り囲まれていて、哲学的会話に最適な場所だった。また、列柱の途中の湾曲した部分をエクセドラということもあり、半円形の座席が置かれていることもある。 」(Wikiペディアより)

 エクセドラのある場所を超えると、小浴場、大浴場と続く。大浴場は建物の屋根部分の芸術的な残り方が絵になる場所で、私のみならず多くの人が上を見上げて写真を撮影している場所だった。現在は夏の間だけ何かのコンサートが行われるようでステージと席が作られていた。
 

 別荘の一番奥にあるのがカノプスと呼ばれる池とその奥のニンフェニウム(セラーピスの神殿)だ。細長いカノプスの片側には彫刻が並び優雅な姿を池に写していた。カノプスの縁を歩いて神殿に到着。カノプスが始まる場所から見ているよりもかなり大きな建物で、あらためてカノプスの長さも感じるのだった。神殿は上に上がれるようになっていて、高い目線でカノプスを見下ろせた。

カノプスに並ぶ彫刻が池に写りこんで美しい

セラーピスの神殿

カノプス撮影に夢中な夫の図

神殿の上から見たカノプス

 カノプスの近くにあるちょっとした博物館にはカノプスの手前に置かれた彫刻のオリジナル(ワニの彫刻と男の彫刻)などを見る事ができる。それにここは屋根の下なので涼しいしトイレもあるのでちょっとした休憩になるのだ。博物館まで見終わったら大方の見学は終了したことになる。最初に見たポイキレまで戻り、最後に少し離れた場所にあるヴィーナスの神殿とギリシア劇場の見学だ。ヴィーナスの神殿は円柱のみが残っていてそれも修復が激しいのだが、優雅に曲線を描いて立つ列柱がよく頑張ってここまで残ったものだと感心できる場所。ギリシア劇場はあまりにも崩壊が激しくて、そう言われなければ石ころの多い原っぱとしか見えない。ここにもいずれ修復の手が入るのかもしれない。

少し変わった彫刻がある博物館

最初に見たポイキレに戻ってきた

出口までの道のりの途中でちょっと立ち寄るヴィーナスの神殿

ヴィーナスの神殿の先にあるギリシア劇場

 こうして主要な遺跡を全て見学し終わって時計を見たらチケットを買ってから約3時間くらい経過していた。じっくり見るにはこれくらいの時間が必要な場所だ。オーディオガイドなんか借りた日にゃぁ1日仕事になるかもしれない、とても広い場所だった。

 車まで15分くらい歩いて戻り、駐車場の木陰で持参したお弁当を立ち食いして、次なる目的地ヴィッラ・デステへと急いだのだった。

 ヴィッラ・デステはティボリの街中にある。ティボリの町はなかなかしっとりと美しい通りがあり、遺跡を歩きまわって体が火照っている私達はヴィッラ・デステを見る前にまずジェラートだとジェラテリアに駆け込んだ。

 いやー、こういう時のジェラートはまた格別においしい。

 自分たちが車を駐車した場所が地図のどこにあたるのかさっぱり見当がつかなかったので、とにかく道行く人に聞きながらヴィッラ・デステをめざした。

 16世紀の半ばに枢機卿になったイッポーリト・デステが失脚してティボリに引退してから修道院を改築したというヴィッラ・デステに何とか到着。邸宅が面した広場にはモダンな噴水が飾られていて、古めかしい邸宅のたたずまいと面白い対象をなしていた。
 

 入場料金一人10ユーロで中に入ると、まず建物内の見学から始まった。左の案内図の上部真ん中にあるオレンジ色の部分が建物になる。

 あとは庭園が続いているのだが、ここの特徴は噴水。実に様々な噴水があって夏の暑い日の観光には最適の場所だった。

 館内見学で最初に中庭を通るのだが、修道院らしい中庭を取り囲む廊下のある造りをそのまま残している。順路に沿って歩くと、すぐに目に入るのが館の外の眺めだ。途中何ヶ所からか建物の外に出られるのだが、眼下には水音も涼しげな噴水が見えて、遠方には山と町並みが見えた。
 

 建物の中の天井や壁の装飾は、頑張っているのだがここ2週間くらい豪勢で秀逸な天上や壁ばかり見てきた目には少々物足らない。ローマ市内で見てきた邸宅は法王の物だったことと別荘ではなく本宅だったことを併せ考えれば、こちらの邸宅の内装が少々見劣りするのも当然だろう。どうしたって噴水の方に興味がいき、館内の見学はそこそこにして庭園を見に行くことになったのだった。
 

 噴水は素晴らしかった。様々な趣向を凝らした噴水がバランス良く配置されているので「次は何だろうか?」と興味を持ちながらどんどんと散策が進む。オルガンの噴水から見下ろす段差のある噴水の眺めが、この時はよほど気持ち良かったのだろう。激しい枚数で撮影してある。今落ち着いて見返すとあまり使えない水柱のアップが多い。

邸宅の真ん中にあるテラスの直下にあるシェル型のオブジェ。

古いローマの町並みのミニチュアのある噴水。

100の噴水が並ぶ小道

小道の終わりの排水溝にある顔の彫

階段の手すりを水が流れる。

記念撮影人気スポットの楕円の噴水。

オルガンの噴水から下の池を見下ろす。

池からオルガンの噴水を見上げる。

下の池でオルガン演奏を見ようと待機していたのだが、下からは小さくて見えない。演奏が始まってから再びオルガンの噴水までの坂をかけあがり体力消耗。オルガンの演奏は目の前で待つべきだった。かなりちゃんとした曲なので聞く価値あり。

苔むした岩がいい感じの小さな噴水。

胸が乳房だらけの豊穣の女神をローマ市内の博物館で見た時から、うすうすそんな想像はするのだが、まさか本当にこんな噴水作っちゃうとは・・・。かなり笑った。

2.5mはあろうかという苔モコモコの岩の表面をダラダラと水が垂れる噴水はファンタジックだった。

 とまぁ、館見学にはあまり時間がかからなかったものの噴水に魅了されてここでも2時間近く見学にかかった。時間と体力が残っていたらティボリの他の見所にも行ってみようかとも考えていたが、やはり予定通り2つのヴィッラでへとへと。時間も午後3時を少し回った頃で帰るのに丁度いい。これにて見学終了となった。

 夏の暑い日の観光としては、今日の順番にしてよかった。午後からあの日陰の少ないヴィッラ・アドリアーナではもっと体力を消耗していただろう。


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