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2010.07.07
ローマ観光(8)〜トラステヴェレ地区
イタリア:ローマ

 ローマ観光8日目。

 トラステヴェレ地区はテヴェレ川の左岸で庶民的なエリアと言われていて、昔ながらのレストランやバールが軒を連ねた界隈は夜とても賑わうそうだ。そう言えば、去年クロアチアで出会ったごつい体型の愉快な男性二人組はトラステヴェレのレストランでシェフをしていると言っていたっけ。明るくて人懐っこい彼らのようなイタリア人が腕をふるうトラットリアのある界隈と聞くと、妙に親しみが沸く。

 といっても私達は夜に訪れるわけではない。昼間のトラステヴェレはどうなんだろうか。ガイドブック片手に今日も観光開始だ。

 まず向かったのはマルケス劇場。トラステヴェレ地区からはテヴェレ川の中州にティベリーナ島というパリで言うシテ島のような島をはさんだ向かいにある場所だ。カエサル(シーザー)が建設を始めた円形競技場で紀元前11年頃アウグストゥスによって完成したそうだ。競技場の前にはアポロ神殿の円柱が残っていて、その近くには今は現代アートのオブジェが置いてあって奇妙なコラボレーションが面白いことになっていた。夏の間、夜はコンサートが催されているようでポスターに演目が張り出されていた。


 劇場の裏手にはポルティコ・ディ・オッタヴィアというアウグストゥス帝が妹に捧げた列柱のある建物が残っている。もっともアウグストゥスが紀元前27年から23年に建てたものは火災で損傷してその後、セッティモ・セヴェルス帝によって203年に建てかえられたものが現在残っている。しかし、もうぼろぼろ。現在は裏手に足場が組まれて修復されようとしている。ここも修復されたらマルケス劇場と併せて新たな観光名所となるだろうなぁ。ローマはこうして修復を繰り返して過去の遺産を現在によみがえらすことで、永遠に観光地として生き残っていけそうな都市だ。


 この辺りには数世紀前からユダヤ人が住み着いていることからシナゴークもある場所だった。

 シナゴークの前でいかにもユダヤ人という黒い帽子に三つ編みおさげ姿の男性達がいて快活にしゃべっている。あの三つ編みは帽子についているフェイクで地毛ではないと他の旅人から聞いていた。えええ?本当?どうにも信じられなくて気になっていた。今日は朝日がいい感じに男性たちにあたって、よく見える。うーん、本当だ。フェイクだ。ここ数ヵ月気になっていた事が解決して、ちょっと爽快。

 このユダヤ人居住区の中に取り囲まれた小さな広場にある噴水を探してみた。ピアッツァ・マッテイPiazza Matteiにあるこの亀の噴水は、ちょっとわかりづらい場所にあったのでバールのバーテンやら、道行く婦人やら色々な人に聞きながら訪ねた場所だ。多くの人に道を聞いたお陰で、この界隈に暮らす人の雰囲気が伝わってきたし、この辺りにユダヤ風イタリア料理店があることもわかったし、昔のゲットーの雰囲気が残る細い路地を通ったりしてなかなか面白かった。


 川沿いのシナゴークに戻り、脇の端を渡ってティベリーナ島へと向かった。島の川岸には野外映画場がしつらえられていたり、レストランが川沿いにオープンテラスの席を張り出していたり、イタリアの夏らしい景色になっていたが、映画もレストランンも夜だけ稼動するんだろう。やっぱりこの辺りからトラステヴェレは夜に盛り上がる場所だというのを、ここでも感じた。

 島はシテ島のようには盛り上がっていない静かな住宅のように見えたので、そのまま通過して向かいのトラステヴェレ地区へと入っていった。

 トラステヴェレ地区でまず目指したのは、ネットで見つけた在住日本人がよく通う店「Carlo Menta」。まぁ、最初の目的地への道中だからついでの下見だ。

 Via della Lungaretta通り沿いに店が見つかった。まだ朝10時過ぎなので開店前だが真っ白なテーブルクロスがびしっとかけられてやる気満々。いい感じの店だった。定食はブルスケッタ、パスタ、メインのセットで10ユーロとイタリア中をながめてもかなり安い。ということで、ここには後日行ってみたが、パスタの量が半端なく多く、とてもおいしかった。こんなに安くておいしい店はなかなかない。ネットの口コミ情報、なかなかお役立ちだ。

 Via della Lungaretta通りはトラステヴェレの中でもレストランやバールが並ぶ繁華街の中心的な通り。他にも店を物色しながらぶらぶらと歩き、サンタ・マリア・トラステヴェレ聖堂に到着。4世紀の半ばにユリウス1世によって完成された。その後、様々な改築が行われその時代時代の芸術を反映した作品が残っていた。

噴水のある広場に面した聖堂

ファサードは13世紀の「玉座の聖母子」というモザイク

12〜13世紀に活躍したコズマ一族から名前を取ったコズマーティ様式の床

内部はキンキラキンのモザイクが多く、古い時代を感じさせる

 後陣のあでやかな金色モザイクもなかなか素晴らしかったが、この聖堂で一番興味をひかれたのはコズマーティ様式の床だった。様々な色の大理石などを使って流れるように曲線の模様が美しい。この聖堂のみならず、コズマーティ―様式は様々な教会の装飾で見られてこの後も楽しめた。

 そうそう、ヴェネツィアのサン・マルコ寺院にも使われていた。この時、コズマーティを知ったので注目することができたのだった。




 この聖堂からサン・コジマート広場までの界隈も、昔ながらの街並みにぎっしりとレストランがあって値踏みしながら歩くのが楽しい散策路だった。道が細かく複雑に入り組んでいるので地図とにらめっこしながら、少し迷いながら歩く。ふと古い壁に囲まれた狭い道に出てしまったりするのも面白い。ピッツェリアの昼の定食は12ユーロくらいの値段で出している所もいくつか見つかったし、トラットリアなども控えめの値段でいい感じ。ローマで食事するならトラステヴェレだなぁ。

レストラン見学

こんな路地もある

もの凄い植木?が家をおおっている

サン・コジマート広場の市

 たどり着いたサン・コジマート広場は地元の人のための食料品屋台が出ていて、観光客目当ての土産物屋台と化したカンポ・フィオーリ広場とは違って、本当に野菜や魚や肉などを普通に販売している青空市場だった。こういう風景も庶民地区と呼ばれるトラステヴェレにふさわしい。

 ここから程ない所にサン・フランチェスコ・ア・リーパ教会がある。あのアッシジの聖フランチェスコがここローマのこの教会に宿泊したとされているためにこの名がついたようだが、アッシジで見たちょっといじめられっ子のような顔色の悪い聖フランチェスコは本当に人気があって、至るところにサン・フランチェスコという名が付く教会があるのには驚くばかりである。シンプルで庶民的なエリアにあるこの教会をわざわざ訪れたのは、ここに何とベルニーニ80歳近い時の作品「福者ルドヴィカ・アルベルトーニ」を見るためだった。無料で見られるってのがまたすごいなぁ。


 80歳近い年齢での作品でどんなに枯れた彫刻家と思いきや、何となまめかしい彫刻だろうか。ベルニーニがこの歳にして教会におさめるのに、どうしてこんななまめかしい作品にしたのか不勉強でわからないが、教会という閉じられた空間にして、この表情の女性というのは色々な想像をかき立てる。それにしても、ベルニーニの描く人物の表情の素晴らしさには毎度のことながら驚かされる。

 教会内の礼拝堂に3方にフレスコ画、中央に彫刻というパターンは頻繁に見られて、知らなければ「ああ、礼拝堂があるなぁ」と見過ごしてしまいそうなのだが、彫刻やフレスコ画はよく見ると本当に作者によって力量が異なる。ベルニーニのような作品は本当に他では絶対に見られない。これは、あまり上手くない作品もたくさん見たからこそ実感できることだった。

 トラステヴェレでもう一つ見ておきたい教会がサンタ・チェチーリア・イン・トラステヴェレ教会だった。裕福な家の出だったチェチーリアが同じくキリスト教徒だった夫と住んでいた屋敷の敷地に建てられた教会だ。チェチーリアが殉教した後、9世紀の前半に彼女の遺骸をパスカリス1世がここに運んで教会を建てたというもの。裕福な夫妻が暮らしたお屋敷の雰囲気がそのまま残る敷地の中に教会があり、教会内にはチェチーリアが首に傷を受けて横たわる姿の彫刻が置いてある。マデルノ作だそうだ。

 「その前年(※筆者注 1599年)に聖女の墓を開けた際に、遺体は首に受けた刀の傷がはっきりと見えるほどに元のままの姿であったため、「奇跡」が起こったとローマ中が沸いたと伝えられている。」(「地球の歩き方」より)

 とまぁ、その時の奇跡の姿を彫刻にしているというわけだそうだ。ガイドブックを読み解くと9世紀にはすでに墓に入って久しいのに、1599年に遺体がそのまま残っているというのなら本当に「奇跡」だ。聖人伝説にはこういうのが多い。

 ということで、トラステヴェレにある主要な観光名所を見学して、、トラステヴェレの西側に上がったジャニコロの丘にバスで登って行こうということになった。バスが拾えそうなテヴェレ川まで出て、川沿いの道端に腰掛けて持参のおにぎりと途中のスーパーで見つけたおいしそうなパンと牛乳で昼食。今日見たトラステヴェレのトラットリアで食べたかったけど、おにぎり持ってきちゃったからねぇ、それはまた次回のお楽しみだ。

 ジャニコロの丘はガイドブックには特に解説がない場所だったが行ってみた。ガリバルディ広場の中央にはガリバルディ記念碑が建っていて、夜だけ開きそうな洒落たカフェがある。ここからの景色は、今日の天気が曇っていることもあってあまり面白くもない。日曜日に来ると散歩しているローマ市民がいたりメリーゴーランドや人形劇が出てお祭りの様で楽しいそうだが、平日の今日は何もなく割と静かだった。再びバスで丘の途中まで行き、パオラの泉を見学。この泉はまぁまぁゴージャス。更にバスに乗って丘を下り、根性で歩いて「真実の口」のあるサンタ・マリア・イン・コスメディン教会に到着すると、「真実の口」に手を入れてみたい人が列をなしていてにぎやかだった。

 とにかく、今日も歩きまわって体力を使い果たした私達は、列に並ぶ気力もない。教会前に出ている露店の水とジェラートの値段の高さに辟易し、質の悪いジェラートはやめて水だけ買って休憩。

 それでもクラクラするので、真実の口広場の真ん中の緑地に設置されたベンチに横たわって昼寝までしてしまった。あー、くたびれた。

 「真実の口」には以前、手を入れたことがあるので今回はパス。

 ということで、今日はこれにて限界を感じて終了。トラステヴェレで見つけたレストランとベルニーニの晩年の彫刻を見たのが今日の収穫だった。


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