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2010.07.04 Vol.2
ローマ観光(7)〜ヴァティカン博物館、一本勝負(その2)
イタリア:ローマ

 ピオ・クレメンティーノ美術館の後は「大燭台のギャラリー」となった。タイトルの通り燭台が中心のギャラリーだが、合間にある彫刻には子供の可愛らしい姿が多く、魅力的だった。

 タペストリーのギャラリーではラファエッロの下絵による「キリストの一生」を描いたタペストリーが左右の壁に飾られた廊下が続いた。
 

 地図のギャラリーは左右の壁に地図が並ぶ廊下だが、天井画も緻密で見応えがある。
 

 お次はグレゴリアーノ・エトルスコ美術館。エトルリア文明ではお馴染みの黒地に白やえんじ色を使った絵が描かれた壺や皿の他になかなかユニークな鉄やブロンズの作品があって現代アートを見るような感じもした。古代彫刻のオンパレードだったので、がらっと変わって面白い。

 このギャラリーにはギリシャ時代の金の王冠やアクセサリーも展示されている。説明書きのパネルを見ると紀元前4世紀などと書かれている。

 こういうのを見ていると人間の興味や趣向はあまり変わっていないというのをつくづく感じるのだ。デザインこそ変われ、今でも貴金属のアクセサリーを身につける人は多い。「紀元前の人たちはこんな物に興味を持っていたのか」という驚きではなく、逆に不変であることに驚きを感じる。

 次の目的地へは建物の外側に作られた長い廊下を歩くことになった。今、見てきたグレゴリアーノ・エトルスコ美術館と比べるとぐっと人数が多くなってきた。

 それもそのはず、次は必ず誰もが見に行くラファエッロの間、そしてシスティーナ礼拝堂のある、いわばヴァティカン博物館のハイライト部分になるからだ。

 4室からなるラファエッロの間はユリウス2世が自分の居室にラファエッロに描かせたフレスコ画があることから、そう呼ばれている。いずれの部屋もびっしりと壁と天井に描かれたフレスコ画が圧巻なのだが、特にラファエッロ自身が完成させた第3室の「署名の間」が一番魅力を感じた。師匠と弟子では力量が違うというのが図らずもわかってしまう。

第3室「署名の間」より、チケット裏面の印刷に使われている「アテネの学堂」

第4室「火災の間」より「カール大帝の戴冠式」。

第4室「火災の間」より「ボルゴの火災」。

 「アテネの学堂」には多くの人物が描かれているが、右下の白いマントの男性の後ろにこっそりとラファエッロ本人も描き込まれているなど、解説書を片手に細かく見て楽しめる。フレスコ画は高い場所に描かれていて、光があまり入らない場所ではよく見えなかったりする。「アテネの学堂」はそんなこともなくてみやすかったが、他の絵を見る際にオペラグラスがあるとよかったなぁ。


 ヴァティカン博物館を最初から見てきて素晴らしい彫刻も堪能してきたのだが、この「ラファエッロの間」に至ってヴァティカンパワーがさく裂している感がある。天才ラファエッロを生み出した国、そしてその天才に思う存分に描かせた権力者たちがいた町。描かれた絵画も素晴らしいが、その描かれた状況と歴史が圧倒的な煌めきで観賞者に迫ってくる空間が「ラファエッロの間」だった。

 ここからウルバヌス8世の礼拝堂、ボルジアの居室などを通って順路は現代宗教美術館へと続いた。ボルジアの居室などは「天井が古い感じねぇ」なんて感想くらいだった。

 現代宗教美術なんてあんまり興味がわかないねぇと思いつつも行ってみたら、宗教画を専門に描いている画家の作品ではなく、近現代の画家の宗教がテーマの作品を集めたギャラリーで意外な画家の作品があって面白かった。行ってみるもんだねぇ。

シャガール

キリコ

ダリ

ディエゴ・リベラ(フリーダ・カーロの夫)

オロスコ

ジョージ・ブラック

 メキシコ旅行中に知ったメキシコの画家、ディエゴ・リベラやオロスコの作品にこんな所で出会うと、遠い旅先で知り合った人に別の場所で再会したような自分たちだけの共通の話題を持っているような親近感が沸いた。

 ということで、意外にも面白かった現代宗教美術館を見終えると、いよいよヴァティカンのハイライトと言えるシスティーナ礼拝堂となる。その前にカフェテリアと休憩所があったので、午後2時にしてようやく持参のサンドイッチで昼食。あまりの披露にお腹が空いていないのだが食べておかないとね。


ミケランジェロ作「最後の審判」
 そしていよいよシスティーナ礼拝堂に向かった。長方形の礼拝堂は天井画と祭壇奥の壁面にはミケランジェロ、南北の壁画がペルジーノ、ボッティチェッリ、ギルランダイオ、ロッセッリ、ルカ・シニョレッリとそうそうたるメンバーによってびっしりと描かれている。

 今回の旅ではフィレンツェからローマずっとルネッサンスの画家の作品をあちこちの美術館や教会で見続けてきた。自分たちの中ではすっかりおなじみになったそれらの画家の作品がここにびっしりつまっていた。「ああ、あのペルジーノか」「ああ、あのギルランダイオか」とこれまでに見た作品の記憶を二人で確認しながら礼拝堂の作品を見るのは、今までこの礼拝堂を訪れた時には感じ得なかった楽しさだった。



ペルジーノ作「キリストの洗礼」(「キリスト伝」より)

ボッティチェッリ作「キリストの誘惑」(「キリスト伝」より)

ギルランダイオ作「最初の使徒の召し出し」(「キリスト伝」より)

ロッセッリ作「紅海を渡る」(「モーゼ伝」より)

ボッティチェッリ作「コラ人ダタンとアビラムの処刑」(「モーゼ伝」より)

ルカ・シニョレッリ作「モーゼの掟」(「モーゼ伝」より)

  礼拝堂はおかしいほど観光客がぎっしりと詰まって上を見上げている。人間、上を見上げると口が開くものだが、こんなに多くの人が口を開けて上を見上げているってのもおかしな図だった。こんな正月の明治神宮みたいな場所だが、ここは次期法王を決めるコンクラーベが行われる場所でもあるというのがまた面白い。

 システィーナ礼拝堂を出るとヴァティカン図書館に来るのだが、この廊下の天井画またきらびやかだった。右手に土産物の店があり、更に奥には本来見学できる数か所があるようだが閉鎖されていた。いや、正直、ちょっとホッとした。朝から見続けてきてもうヘトヘトだったからだ。ここは天井のフレスコ画だけを堪能してちょっと休憩モードで移動。

 ヴァティカン図書館の廊下を歩いて、最後の目的地「絵画館 ピナコテーカ」に向かうと、結局入口近くに戻ってきているということになる。通りがかりにとてもいい匂いがして、ついフラフラと匂いにつられてたどりついたのは、セルフサービスレストランだった。

 ここではカットピザなども売っているのだが、このピザがたまらなくいい匂いだった。「地球の歩き方」に「味はイマイチ」という投稿があったが、このピザは悪くないんじゃないかなぁ。食べてないけど。


ジョットとその弟子たち作「ステファネスキの祭壇画」
 さてレストラン観賞の後は、本当に最後の目的地ピナコテーカ。この期に及んで最後になってもやれジョットだ、やれカラヴァッジョだと繰り出してくるヴァティカン博物館は、もはや楽しい観光地というよりは修業の場の様相を呈してくる。「ピナコテーカで最後だ、ううう」と歯をくいしばって見学してきたというのが正直な状況だった。それでも作品は素晴らしいので、なんとか最後まで持ちこたえられた。



フラ・アンジェリコ作

フラ・アンジェリコ作

メロッツォ・ダ・フォルリ作 この作品はとても人気があるようであちこちの売店で絵葉書を見た。フワーッとした感じがいいのかなぁ。

ラファエッロの作品が3つ並ぶ部屋は圧巻
  
左から「フォリーニョの聖母」、「キリストの変容」、「聖母戴冠」。描いた年代がそれぞれ異なってラファエッロの変化がみられる。

ティツィアーノ作

カラヴァッジョは貸し出し中で見られず、残念!

 ということで、いくつもの美術館の集合体であるヴァティカン博物館の見学が終了した。最後にヴァティカン市国内にあるサン・ピエトロ大聖堂内のミケランジェロ作「ピエタ」のコピーがあったので撮影。大聖堂内の方が撮影禁止の場合を考えて撮影しておいたが、本物も撮影できた。もっとも、こんなに間近で撮影できないのでここで「自分とピエタ」の記念撮影をしている人は少なくない。


 最後に見学を終えた表情をスナップ。精根尽き果てる迫力の博物館を飲み込んでげっそりの図。もう今日はこれ以上の観光は無理。ヴァティカン博物館、真剣に勝負するなら丸一日が必要だ。


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