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2010.06.22
アッシジ、ペルージャへのドライブ
イタリア:パッシニャーノ

 シエナ近郊のキャンプ場からトスカーナ州とウンブリア州の境にあるトラジメーノ湖のパッシニャーノに移動してきたらちょっとした嵐になった。昨日はどこにも行かずにキャンプ地でゆっくり過ごした。明けて今日、キャンプ場のご主人が嵐が過ぎ去ったようだというので、アッシジとペルージャへのドライブに行ってみることにした。

 朝キャンプ場を出る時は陽がさしてきていい感じだったのに、アッシジに向かうにつれ厚い雲が空を覆ってきた。丘の上の方にあるアッシジのふもとに到着した時は、見上げるアッシジの村は厚い雲を背景に暗くたたずむという景色で、やれやれもう一日待てばよかったかと思い始めてきた。

 こんな天気にもかかわらず小さなアッシジに不釣り合いな立派な駐車場には大型バスがどんどんと乗りこんで、もりもりと観光客を降ろしている。

 アッシジは城壁に囲まれた中世の雰囲気の残る町で、町へはいくつかある門の1つから入ることになる。駐車場に近いサン・ピエトロ門から入るとすぐにバラ窓が美しいサン・ピエトロ教会が見える。この教会を背にして立つと左のサン・ピエトロ門から入った道は180度向きを変えてヘアピンカーブをなして右方向に登っていく。この坂道がサン・フランチェスコ聖堂へと通じている。

 サン・フランチェスコ、つまり聖人であるフランチェスコをたたえて建てられた聖堂には今でも彼を慕って巡礼に訪れる人が多いそうだ。聖フランチェスコはときの法王インノケンティウス3世に「何かを所有すれば、それを守る力が必要となりましょう」と言ったというガイドブックの解説を読んで、なぜ彼の教えが今でも多くの人の心をとらえるかがわかる気がする。きっぱりと所有する欲望をなくすという宣言は時にはとても魅力的だ。

 そしてこの聖堂内部に描かれたジョット作「サン・フランチェスコの生涯」というフレスコ画が一般観光客の足をもこの聖堂に向かわせている。つまり、アッシジを訪れた人はすべからくこの聖堂に向かうだろうと思われる。

いきなり中世の街並みが出現するアッシジの町

バラ窓が美しいサン・ピエトロ教会

サン・ピエトロ門からヘアピンカーブで聖堂に向かう坂道

坂道の途中にみられる風景

 そこでまずアッシジ観光の一発目はサン・フランチェスコ聖堂に行ってみよう!ってなことになった。坂道の途中には土産物やが多く並んでいる。ショーウィンドーを飾っているのは聖フランチェスコや彼を支持した聖女キアーラを描いたフレスコ画や聖フランチェスコグッズなどが目立つ。聖フランチェスコは若く顔色が悪くやせ型で少し悲しそうな顔をしているのが定番だ。クラスにいたらむしろ目立たないようなタイプのこの人が世界中に多くの信者を持っている。そうなのかぁ、この人がねぇ。とまじまじとショーウィンドーの中のフレスコ画を見いってしまった。

左が「小鳥に説教する聖フランチェスコ」、右が「聖フランチェスコ」

聖フランチェスコの信者となった聖女キアーラ

 坂道の行き着く先は傾斜のある前庭の奥に堂々と建つサン・フランチェスコ聖堂になる。

 傾斜する前庭の両脇にアーチのある廊下が付いていてアクセントになっていた。この上方に傾斜する先にある聖堂という構図がとても美しく、尊敬の念を抱いてここを訪れた信者の心をきっと満足させるだろうと思われる効果がある。イタリアはローマ帝国時代から様々な建築物を創造してきたわけだが、こういう所に長年の蓄積をふと感じさせる所がすごいと思うのだ。

 この傾斜を登り切った所から内部に入ると通常の教会などよりはずっと暗い内部にちょっと驚く。この聖堂は少し変わっていて、下部聖堂と上部聖堂という2階建になっているので下部聖堂には光があまり入らない構造になっているせいだった。

 下部聖堂ではジョットとその弟子によるフレスコ画とロレンツェッティ、チマブーエ、シモーネ・マルティーニといった画家の手によるフレスコ画が壁面を埋めていて、暗い中にも豪華な雰囲気を出していた。この下部聖堂の中に上にあがる階段があって、そこから聖堂の外に一旦出ると併設の修道院の中庭とアッシジの町からの見下ろしの風景が楽しめる。

 ここから更に別の階段をあがると上部聖堂に通じるようになっていた。上部聖堂は対照的に太陽の光がさしこむ明るい作り。ここに有名なジョットによる「聖フランチェスコの生涯」を描いた28枚のフレスコ画があるのだ。以前ツアーでここを訪れた時は、ガイドさんの解説が気分を盛り上げてくれたのと短期の旅行で舞い上がっていたのとが相まって「ジョット、素晴らしい!」と勝手に盛り上がっていたのだが、今回フィレンツェでじっくりと他の画家の作品を見た目であらためてジョットの作品を見ると、たいしてうまくは見えない。

 ルネッサンスに出てきた画家の絵の方がよっぽども写実性や臨場感に富んでいる。しかしジョットがこれらの作品をルネッサンスにさきがけて13世紀に作成していたという事を考えると、それまでの画家の作品よりもずっと描かれている人物に顔や手ぶり身ぶりの表情がある。そういう意味ではやはりジョットの功績は大きいというような見方であらためて素晴らしいと感じた。

 こうしてサン・フランチェスコ聖堂の見学を終えて出てきてしばらくたつと、突然にして青空が広がってきた。ようやく嵐が過ぎ去ったらしい。いくぶん雲が残るものの青空を背景にしたサン・フランチェスコ聖堂をカメラにおさめることができた。

 アッシジの町はほぼ東西に長く伸びた形をしている。サン・フランチェスコ聖堂は一番西に位置するのでぶらぶらと東に向かって町を散策することにした。

 聖堂から町の真ん中を突っ切って東に伸びるメインストリートはその名もサン・フランチェスコ通りという。聖堂に向かう人、聖堂から町に出る人が往来して一番にぎやかな通りだ。ここでは参詣を終えた黒人の尼僧の後ろをしばらく歩いた。アメリカ人らしく、聖堂を訪れた喜びにあふれて大きな声で快活に友人としゃべりながら闊歩していく姿が面白い。メインストリート沿いの建物は聖堂の雰囲気を壊さない中世の趣の建物が続いていて、斜面に建つ町らしく左手をみると細い上り坂が見え、右手を見ると細い下り坂の向こうに広がるウンブリアの丘や山の緑が垣間見える。起伏に富んだ町は移した視線の先が常に変わった風景を見せてくれてとても楽しい。聖堂だけでなく、こうした散策の楽しさもアッシジの魅力だった。

背の高い黒人尼僧の後姿がかっこいい

メインストリートの建物はみんなこんな色合い

左手に上り坂、右手に下り坂

サン・フランチェスコ通りの最後は城壁をくぐるアーチになっていた

 メインストリートの東西の真ん中辺にあるのがコムーネ広場だった。広場の北側はローマ時代のミネルバ神殿、この神殿を一部に取り込んで建てられた教会、そして教会脇に建てられているポポロの塔という14世紀初頭の建物がある。長い歴史の積み重ねがこの景色を作りだしている場所だ。南側は現在市庁舎になっているプリオーリ宮。広場の東端は道が二手にわかれて間に噴水が配されている。この噴水のある場所の階段は旅行者には丁度いい休憩場所となっていて、多くの人が座り込んで一段とにぎやかなことになっていた。

東端からコムーネ広場をのぞむ

北側に残るミネルバ神殿

市庁舎になっているプリオーリ宮

左右に道がわかれる間の噴水

 散策しながら手頃な値段のカットピザ屋も物色して、まだお昼には早いのでサンタ・キアーラ教会を見に行く。聖女キアーラをまつる聖堂で淡いピンク色と白い大理石のボーダーで作られた可愛いらしい教会だった。可愛らしいといってもサイズはビッグで、特に左側にガーンと張り出した梁のような部分が強烈なアクセントになっている。

 教会内部には聖女キアーラを描いたフレスコ画が残されている。今朝、お土産物屋さんで撮影したのとはまた別のフレスコ画だったが同じく切れ長の目で美しい女性だった。

 アッシジの真ん中にあるコムーネ広場から北方面への斜面をのぼった先に大城塞と呼ばれる場所があり、当然見晴らしがいいのだが、この後にペルージャも控えているためにカットピザで昼食を摂り、アッシジ観光は終了することとした。

 アッシジからペルージャまでは40分のドライブだった。アッシジに比べるとはるかに都会のペルージャは街中に近づくのにやや苦労した。何となくたどりついた駐車場はバスターミナルのあるパルティジャーに広場だった。ここは斜面に建つペルージャの町の下の方。歴史的な観光の見所は上の方にある。やれやれ、歩いて上まで行くのかと思いきや、中世の建物の遺構を使った地下道が上まで通っていて、途中にエスカレーターがあり、するすると上の方まで楽に行けるようになっていた。これはガイドブックに書かれていなかったので思わぬ喜びと発見だった。
 

 地下道から地上に出た場所は県庁のある場所だった。ここからメインストリートで県庁からほぼまっすぐ北に延びるヴァンヌッチ通りを進んでまずは市庁舎内にある国立ウンブリア美術館をめざした。大きな町なのだが古い建物も多く残り、しっとりとした雰囲気が漂う。メインストリートが突き当たる場所が現在市庁舎で国立ウンブリア美術館も入っているプレエオーリ宮のある広場となる。
 

 この美術館、入場料金は一人6.5ユーロと割と高めだがドウゥッチョ、G.ダ・ファブリアーノ、、フラ・アンジェリコ、ピエロ・デッラ・フランチェスカ、ペルジーノと有名どころの作品が実は目白押しでなかなかコスト・パフォーマンスのいい美術館なのだった。ペルージャといえば日本のサッカー界から中田選手が住んでいたというくらいの印象しかなかったのだが、この美術館で一気にこの町の歴史的重みを感じることができたのだった。

ピエロ・デッラ・フランチェスカ作「受胎告知」

 この美術館だけに1時間半を費やしてしまったので、あとはぶらぶらと町を散策してペルージャを終了とすることにした。

国立ウンブリア美術館と同じ広場に面する大聖堂

プリオーリ宮

高低差のある道が交差してアーチが見えるアッピア通り

隊長の館の2階の飾り柱が優雅

前庭の緑の芝生が古めかしいサン・ベルナルディーノ教会を
引き立てる。
 
坂道と細い路地が作りだす独特の雰囲気

 隊長の館の裏手に回り込むとちょっとした市場になっていて、その奥が展望台のあるカフェになっていた。ここからの町の傾斜する様子と遠くまで広がるウンブリアののどかな風景が楽しめる。美術館も充実しているし、町の雰囲気もいい、そして展望も楽しめるペルージャは期待して以上に素敵な町だった。
 

 こうしてトラジメーノ湖からアッシジとペルージャを巡るドライブを終了。なかなか充実した一日だった。


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