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2010.06.18
シエナからドライブ、ヴォルテッラとサン・ジミニャーノ
イタリア:ソヴィッチレ

 フィレンツェとシエナの間のやや西寄りに位置するヴォルテッラとサン・ジミミャーノを巡るドライブをしてきた。

 朝8時過ぎにキャンプ場を出てまずはヴォルテッラへと向かった。ヴォルテッラは標高の高い町で、ドライブはトスカーナ特有の丘陵地帯を上がったり下がったりしながらも徐々に高度を上げていくので、高い位置からの景色が楽しめるポイントが多かった。その都度車を停めては写真撮影して1時間半でヴォルテッラに到着した。

丘陵と耕された畑、境界線の樹木の調和が美しい。

所々に小高い丘があってトスカーナらしい風景を作り出している。

展望のための駐車スペースに停めて撮影。
ここで宿泊してしまったキャンピングカーのスペイン人カップルが
歯を磨きながらこの風景をぼーっとながめていた。

ヴォルテッラに到着。駐車場前からの景色。

 ヴォルテッラは急な斜面に家がはりつくように建っている町で、南フランスの鷹巣村を思わせる。観光の見所は丘の頂上を取り囲むように中世の城壁が残った中になる。うまい具合に城壁のすぐ外側の駐車場にすんなりと入る事ができた。見学を終えた正午には駐車場に入りたい観光客の車が列をなしていたので朝一番でヴォルテッラを訪れて良かった。



 町への入り口となるのは紀元前3〜4世紀に作られた城壁にあったエトルリア門だ。ローマ時代に修復の手が入ったものの、作られた当時の人面の彫刻などはそのまま残っているというから驚いた。第二次世界大戦時にナチスドイツが来て1時間だか1時間半以内に門を石で隠せばこの街がなかったことにして侵略しなかったことにしようという話になり、城壁内のできうる限りの石をはがして持ってきて皆で積んで破壊を免れたのだそうだ。その時の民衆の姿がレリーフになって門の右側に飾られていた。レリーフに関しての説明はなく、丁度アメリカ人高校生の団体に説明していたガイドの解説が耳に入ってわかったのだった。ドイツ軍としてもこの歴史ある門と町を壊すのはしのびなかったのだろうか。
 

 この門から坂を登ると中心部のプレオーリ宮(市庁舎)のあるプレオーリ広場に出るのだが、エトルリア門でなかなか良い解説をしていた一段が左手の小路にそれるのを見て、くっついていってみることにした。

 観光客が通らない裏路地は狭い石畳の急な坂がくねくねと続き、両側の石造りの中世のままのような家が迫ってくるように建っている。タイムトリップしそうになる瞬間に、その窓からジーンズやらTシャツの洗濯物がひらひらと干されているのが見えて現代に引き戻されるという感覚が面白い。

 高校生一段はこのまま城壁を巡っていきそうだったので、我々はここで一段から離れてドゥオーモや洗礼堂のある広場へと向かった。洗礼堂は8角形で黒と白のボーダーに石が組まれている様子がフィレンツェの洗礼堂を思い出させるが、ずっと装飾が少なくシンプルな作りだった。この洗礼堂の目の前のドゥオーモを右手に回り込んでいくとプレトーリオ宮。こちらもフィレンツェのシニョーリア広場に立つベッキオ宮を思い出させる作りだ。ベッキオ宮よりも以前に作られているのでベッキオ宮はこうした従来の宮殿の建築様式の中から生まれてきたことがわかった。で、プレトーリオ宮を見学しようとしたら、これが何と10時半の開館。遅い。
 

 っつーことで、先にミヌッチ・ソライーニ宮の市立絵画美術館に向かった。ここにはフィレンツェのサンタ・マリア・ノヴェッラ教会で迫力のフレスコ画を見せてくれたギルランダイオ、ルカ・シニョレッリなどの作品があって必見だと思ってきた。撮影禁止は仕方ないとして、この美術館だけのチケットが存在していなくて、古代文明の出土品を展示したグアルナッチ・エトルリア美術館とドゥオーモ宗教博物館との共通チケット9ユーロしか存在していないのがずるいぞ、ヴォルテッラ。他の2つには興味がないのに共通券を買わされる。見学に8時間を費やしたウフィッツッィ美術館でさえ10ユーロの入場料なのに解せないなぁ。

 文句をいいながらも美術館見学。作品は素晴らしかったので仕方ない。

 市立絵画美術館の裏側に回り込むと、眼下にローマ時代の劇場跡が見える。中世の古い町並みにタイプスリップなどと言っていたが、もっと古い紀元が始まってまもないような遺産もこの町にはあるのだった。

 ここからだと全貌が見渡せるし、下まで降りたらまた上がってこなくちゃならないのは面倒だ。ってなことで劇場跡はここからの見物で終了。

 市立絵画美術館チケットと共通チケットになっているドゥオーモ宗教博物館もついでに見学しておくか。入口を入ってチケットを見せると、おしゃべりしていた二人の係員のおじさんが「行って来い」ってな感じで2階を指さして、すぐにおしゃべりに戻った。どうにもやる気が感じられない。照明がついていなくて、「まさか照明も消して見ろというのでは?」と思ったら、展示室に入った途端にセンサーが働いてバシッと照明がついたのには展示物よりも驚いた。

 展示物は12世紀、13世紀のような板絵と司教の衣装、聖歌隊が使うのかとても大きくて厚い楽譜の本などだった。楽譜は現在の楽譜とは表記方法が異なっていて読めないが、赤や青や金色などを使った美しい装飾画のついたページもあって見ていて楽しい。

 とはいえ、あまりぱっとしない展示だったので早々に切り上げて出てきた。おやじ二人はあいかわらずおしゃべり中。「アリヴェデルチ」というとその時だけ相手してくれた。

 宗教博物館を出て左に回り込むと、すぐにドゥオーモが見える。13世紀の半ばニコラ・ピサーノ作ですって。ニコラ・ピサーノといえば、昨日シエナのドゥオーモ内で立派な説教壇を見てきたばかりだ。ピサ・ロマネスク様式のファサードということで、傾斜した屋根の真ん中が一段高くなっているのは同じピサ・ロマネスク様式のピサのドゥオーモと同じだが、あちらと比べるとだいぶおとなしい感じだった。


 内部は後世に改修を加えられているそうだが、薄暗いので古いような雰囲気を出している。いくつか注目の作品を見学してきた。

内部全体

木彫りの「キリストの十字架降架」

16世紀のメディチ家紋章

M.ダ・フィエーゾレの天使の彫刻

 ドゥオーモの目の前にある八角形の洗礼堂は屋根のクーポラをかけるのにブルネッレスキの助言があったともいわれていると「地球の歩き方」に書かれていた。ブルネッレスキはフィレンツェの洗礼堂の正面扉の彫刻コンクールでギベルディに敗れ、失意を抱えてローマに旅だったのだがそこで新しい建築技術を習得し、フィレンツェのドゥオーモにクーポラをかける際にその技術力を乞われてプロジェクトに参加した人だとフィレンツェで知った。挫折しても新しく学ぶことでキャリアアップを再度図るというのは現代でも同じ事。そうして得た技術力がここヴォルテッラでも発揮されていたかもしれないと知って、「ブルネッレスキ、よかったね」と親近感を持ってクーポラを見上げた。内部には真ん中にどーんと洗礼盤が置かれていてA.サンソヴィーノの作だそうだ。

 ここからドゥオーモを回り込むと朝たどりついたプレオーリ宮のある広場に出る。ここから出ている細い路マッテオッティ通りが中世の趣があり、かつ建物の1階がお店になっているので華やかで観光客も多い楽しい通りだった。特産物を扱う店の中でもアラバスターの加工品専門店が珍しかった。アラバスターという石を彫刻にしたり、透けるまで薄く削って照明器具にしているのが美しい。こういう照明器具は日本でも見た事があるが、ここが発祥の地だったのか。

 無理やり美術館や博物館に入らなくとも、この通りを歩いているだけで十分満足できる。ヴォルテッラは町自体が観光に値する場所だった。

 とはいえ、ここまで来たらプレオーリ宮内も見ておこうと内部に入るとフレスコ画のある一部屋があって入場料金1ユーロ、撮影禁止。現在は会議室にもなっているようで椅子がたくさん並んだ部屋のフレスコ画は無理してみなくてもよかったかもしれない。1ユーロと聞いて踵を返す観光客の姿も見られた。

 ヴォルテッラはもっと東にも細長く伸びた町で、東の方にエトルリア博物館と現在刑務所の町で一番高い場所にある元城塞があったが、それは行かなかった。

 さっきマッテオッティ通りを歩いていて目をつけていたカットピザ屋で昼食。昨日もシエナで食べたトルタ・ディ・セチというガルバンゾ―の粉を使ったパイ生地に今日はハムとチーズをはさんでオーブン焼きした物を食べた。今日も旨かった。

 夫はマルゲリータ。こちらはまずくはないが、生地が厚くてあまり好みではなかった。


 さてヴォルテッラを離れて、今度はサン・ジミニャーノへとドライブ。今度は高度はあまり上がらないので高台からの眺めではなく、丘陵地帯に入り込んでののどかなワインディングロードを楽しむドライブだ。

 車通りもそんなになくて急いでいる地元イタリア人は勝手に追い越していくので、ゆっくりと車を走らせて50分でサン・ジミニャーノに到着した。

 こちらの町も城壁に囲まれた町で9〜12世紀に交通の要所として発展したそうだ。城壁内は半径600mくらいにおさまってしまうような小さな場所で最南端のサン・ジョヴァンニ門のすぐ西側にある駐車場に停車。有料駐車場で1時間ごとに2ユーロで出る時にお会計するシステムだ。

 まずはサン・ジョヴァンニ門をくぐって城壁の中に入る。フラスコを逆さまにしたような形のサン・ジミニャーノの中心地まではサン・ジョヴァンニ通りという繁華街をぶらぶらと散策することになる。

 ヴォルテッラと同様、この町も中世の街並みを残しており、サン・ジョヴァンニ通りはヴォルテッラでいうとマッテオッティ通りのような通りだということになる。しかし、こちらの方が道幅が広く明るい感じだ。さっき見てきたばかりなのでどうしても比べてしまうのだが、両脇に建物が迫っているマッテオッティ通りの方がより中世の雰囲気があって面白いと感じた。ただ、こちらだけしか見ていなければ十分に中世的だと思っただろう。

観光客でにぎわうメインストリート、サン・ジョヴァンニ通り

土産物のお面の中にはギリシャ時代の演劇で使う面も。これは後にローマ時代や果てはルネッサンスまで絵画の中に登場している。

ガイドブックに説明のない教会だがファサードが素敵だ。

中世の壁の中にキティーちゃん発見!大活躍だ。

 サン・ジョヴァンニ通りが行きつく先がチステルナ広場なのだが、広場に入る手前が本当に中世の町という感じでかっこいい。。9〜12世紀に発展したこの町は当時の金持ちが資産家のシンボルとして競って塔を建てたというその塔の1つが背後に見える。

 広場には13世紀の井戸(チステルナ)跡があり、周囲はチステルナと同時代かそれ以前の古い建物が多いとがいどぶっくに書かれていたが、本当に古くさい建物が多かった。外装をメンテナンスしていないので即座に古いとわかるのだ。これが何ともいえないいい味を出している、と書きたい所だがもうちょっときれいにしてもいーんじゃないかと思うのだ。世界遺産だから改修しちゃいけないのかもしれない。
 

 チステルナ広場の北西の角からドゥオーモのあるドゥオーモ広場に入れる。西側に参事会教会、東側にポデスタ宮、南側がポポロ広場、北側にサルヴィッチの塔と360度絵になる建物が広場を取り囲んで「これぞ中世世界!」みたいになっているのに加えて北側と東側にニョキニョキと塔が建っているのがサン・ジミニャーノらしい風景だった。

 ポデスタ宮の建物右半分は2階分吹き抜けになった広い空間で車庫のようにぽっかりと開いている。そこにはパイプ椅子が前方の参事会教会を向いて並べられていて、観光客が自由に座って休めるようになっていた。「自慢の広場をどうぞご鑑賞ください」という市の計らいだろうか、みんな計らい通り椅子に座って飲んだり食べたりぼーっとしたり、それぞれのサン・ジミニャーノを楽しんでいるようだった。建物の下なのでここはとても涼しいし、気持ちが良かった。
 

 さて、私達も小休止したら参事会教会とポポロ宮(市立美術館)を立て続けに見学。参事会教会(一人3.5ユーロ)にはギルランダイオの「聖女フィーナの生涯」、B・ゴッツォリの「聖セバスティアーノの殉教」など、ポポロ宮(一人5ユーロ)にはフィリッピーノ・リッピの2枚のトンド「受胎告知」、ゴッツォリの「聖母子」など見応えのある作品が多く感心しきりだった。フィレンツェの美術館や教会で知った画家たちの作品は「ああ、あそこであれを見たな」と思い起こしながら見ると親しみがわく。撮影禁止なので入場チケットくらいしか紹介できないのが残念だ。
 

 市立美術館のチケットには付属の塔にのぼれるという特典付きだったので、最後に塔にものぼってみた。これがまた素晴らしい景色。街中にニョキニョキと建つ塔と古い建物がトスカーナの丘陵にぐるりと囲まれているのが全て見渡せた。

 こうしてドゥオーモ広場付近の見所を堪能し、最後の目的地サンタゴスティーノ教会に向けて通ったのがサン・マッテオ通り。最初に通ったサン・ジョヴァンニ通りよりも幅が狭く、途中に左右の家が2階でつながってアーチを作っている趣のある場所などもある通りだった。

 お土産物屋さんも多く、ここを通るとサン・ジミニャーノのお土産がよくわかる。


 行きついたサンタゴスティーノ教会は入場料金をとらない素晴らしい場所だったが撮影は禁止。B・ゴッツォリの「聖アウグスティヌスの生涯」、B・ダ・マイアーノの大理石の祭壇など、ここでも素晴らしい作品が見られた。

 サンタゴスティーノ教会から近いジェラート屋で休憩。ドゥオーモ広場などから離れているせいか、ここのジェラート(一番小さいので1.7ユーロ)は盛りがよくて味も旨い!ツーリスティックすぎる場所を避けたのが良かった。

 再びサン・マッテオ通りを通って帰途につく。土産物の中でサン・ジミニャーノ産の白ワインというのが気になり、値段も安いものからあったので4ユーロのを買ってみた。後で飲んでみて恐らくピノ・グリというぶとうを使っているじゃないかと思われた。ピノ・グリは私たちの好みの味でフランスやアルゼンチンでも注目するのだが、ピノ・ブランや他のぶとうを使った白ワインよりはいつも高い。なのにサン・ジミニャーノのワインはそんなに高くない。これはお買い得だったなぁ。

 こうして今日は中世の町を2つ巡るドライブを楽しんだ。どちらも趣があって面白い町だったがどちらか1つだけと言われたらサン・ジミニャーノになるだろう。というのも町だけをとったらどちらも中世の味わいが楽しいのだが、サン・ジミニャーノには大物画家の作品がたくさんあり、高い塔からの眺めがヴォルテッラの町からの眺めよりも気持ち良かったからだ。観光客の数はどちらも多いので、やっぱりサン・ジミニャーノに軍配があがるかな。


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