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2010.06.17
シエナ観光
イタリア:ソヴィッチレ

 シエナ郊外のソヴィッチレという小さな村のそのまた外れにあるキャンプ場に昨日到着した私たちは、今日さっそくシエナ観光に向かった。公共のバスでキャンプ場内に停留所を持つ路線があるって30分でシエナに行けるのでとても便利だった。

 こういう交通機関があるので車のないバックパッカーもテントを担いでこのキャンプ場にやってきている。まぁ、この時期、大半はキャンピングカーの年配者が多かったが夏休みになったら若者が押し寄せてくるかもしれない。

 ソヴィッチレからシエナに向かう道沿いには広々した小麦畑やブドウ畑の丘陵地帯が見えていい感じの景色が続く。キャンプ場でもらった近郊の地図には眺めのいい道路にマーキングしてあるのだが、このソヴィッチレからシエナに向かうバス路線沿いにもマーキングが入っていた。

 バスはシエナのマッティオッテ広場に到着する。ここからシエナで一番有名なカンポ広場にまず行ってみよう。

 最初に通るバンキ・ディ・ソプラ通りVia Banchi di Sopraに面したサリンベーニ広場がすぐに見えてくる。右手にG.ダ・マイアーノ設計のスパンノッキ宮、中央にサリンベーニ宮、左手にタントゥッチ宮と3つの宮殿に囲まれた広場だ。3つもの宮殿にぴっちりと囲まれた広場なんて、そんなにあるもんじゃない。色も装飾も特にごちゃごちゃと華やかではないのだが、すっきりと余計な物がなく美しい広場だった。

 この通りはしっとりした古い建物に挟まれた通りなのだが、1階に店が入っていて華やかな繁華街でもある。バスが到着する広場からカンポ広場に通じる道なので観光客も多いがシエナ一般市民も多く通っている。そんな中で赤いパンツと赤い革のバッグを持った男性と50代と思われるシックなファッションの女性を見かけた。

 女性のファッションは一見若いように思われるが高質なファブリックで若者には真似できない質感を出していた。もちろん、私にも真似できないが。

 次に通りかかったのが円柱の一番上にブロンズの狼の像のあるトロメイ広場。4つ足で立つブロンズの狼の胴の下には2人の子供がいて狼の乳を飲もうとしている。ってことは、これはローマの始祖と言われるロムルスとレムスの像じゃないか。それがなぜシエナにあるのか?この疑問はいまだに解けていないのだが、とにかくここにあの像があった。丁度、日本人団体観光客も訪れていて、この像をパチパチと撮影していた。きっと何かしらの説明があったのだろうが、最近はワイヤレスマイクでの解説になるのでお客さん意外にはガイドの声は届かないシステムになっている。ガイドさんの声がよその人にも聞こえる昔が懐かしいなぁ。広場に面して建つのはトロメイ宮。窓の中に飾りの柱を付けるのはもしかしてパッラーディオ的なのか?可愛らしい装飾だった。
 

 こうしてカンポ広場への道のりはしっとりした建物を使った洒落た繁華街の中を進むことになり、結構楽しかった。

 カンポ広場は扇形をしている。付け根にあたる部分に高い塔を備えた市庁舎があり、扇が市庁舎に向かって緩やかに下り傾斜して、なんとも言えない優雅な雰囲気を作りだしている広場だ。まずは市庁舎の隣に付属して立つマンジャの塔に登って上から広場を眺めることになった。

 塔と市庁舎内にある市立美術館の共通券(12ユーロ)は塔のチケット売り場(3階くらいの場所にある)でしか購入できない。チケットを購入するとそばにある無料ロッカーに荷物を入れて「はい、塔に登ってきてください」という指示をされる。先に美術館を見たい人はどうするのかという事を質問する事さえも躊躇させるような、有無を言わせぬイタリアおばちゃん3人くらいの指示に、誰もが最初に塔に登ることを余儀なくされているという情況だった。まぁ、3階くらいまで登ってきているし、ここから降りて美術館に行って再び戻ってくるのも面倒だし、誰もがおとなしく従っているのだった。

 期待していたカンポ広場は塔の一番上からよりも途中からの眺めの方が印象的だった。目の高さに向かいの建物の上階が来る頃、広場の傾斜がよく感じられ、下にいる小さな人間が美しく縁取られた広場に散っている。

 何もかもが統一された色調の中に埋まりこんでいるように見えた。

 午前中は陽の光が市庁舎前の建物に当たっているのも、景色を美しく見せているのに一役買っている。もっとも夕景は夕景で美しいのかもしれないが、カンポ広場に絞って言えば午前中に登って良かったといえる。

 くるくると塔を四角に回ってひぃひぃと息があがってきた頃に頂上に到着する。ここからは真下の広場よりも箱庭のようにきっちりと家が詰まっている町並みに目を奪われた。360度景色が楽しめるけれどドゥオーモを向いた景色が一番良かったなぁ。

 マンジャの塔からの景色を存分に楽しんだ後は、市立美術館を見学だ。美術館内撮影禁止のために写真に何も残せなかった。アンブロージョ・ロレンツェッティ作の「善政の効果」「悪政の効果」という1つの部屋の向きあう壁に描かれた一対のフレスコ画があり、タイトル通り一方は幸せそうな民衆、もう一方は悪魔が支配する不幸せな民衆の絵が描かれている。あまりに道徳的でわかりやすいので笑ってしまう。ドゥッチョ作の「グイドリッチョ・ダ・フォリアーノの騎馬肖像」は美術館的に一押し作品なのか美術館付属のショップでTシャツを始めさまざまなグッズが売られていた。馬にかけられた布と騎士の衣装がお揃いなのがポイントだ。


 最後に、付属展として地下でポップな絵画の展示を行っているようだったので、そちらにも足を運んだ。アーティストの名前を見るとなんと日本人だった。

 明るい色合いとインドとも日本ともヨーロッパともつかない抽象具象の模様や人物が描かれた、とても楽しい絵画だ。ASAKO IMAMURAさんという人が描いているようだが、どんな人だろうなぁと思いながら見ていたら、奥の机に座っている女性が突然日本語で「日本人ですか?」と声をかけてきたのでビックリした。



 聞けばASAKOさんその人だという。シエナに暮らしてもう18年になるのだそうだが、その前はインド、アフリカを含む世界を旅していたのだそうだ。なるほど、絵から受ける印象と合致する体験をされている。作品を見るだけでなく、描いた本人を知るとますます作品が面白く見えてくるのものだ。

 私達は旅人生なのでこうした絵を買うということができないのは残念なことでもある。先日タイのバンコクの週末市場チャット・チャックを訪れた時もアーティストが自分の作品を展示販売するブースが集まった場所があった。アーティストと話をして直接本人から作品を買って家に飾るというのは楽しいだろうなぁ。ASAKOさんと話をしながらそんな事を考えていた。

 そろそろお腹が空いてきたのでASAKOさんの元をお暇して昼食探し。カンポ広場を取り囲む建物の1階はほとんどがレストランでぐるっと見て歩いたのだが、どうにもツーリスティックでピザもフィレンツェのピッティ宮の前で食べたGUSTOPIZZAに遠く及ばなくて食指が動かなかった。結局、広場を離れてドゥオーモに向かう途中の裏通り、全く観光客がいない店で薄いピザ生地の間にハムとチーズをはさんでオーブン焼きした物を買ったのだが一切れ1.5ユーロという安さながら、これがもの凄くおいしかった。今日のお昼は当たり!

 午後からはまずドゥオーモの見学。いかにもゴシックという感じのもの凄い装飾のついたファサードのドゥオーモは真ん中の一番上に極めつけのように金地の絵がはめられて、その下に美しいバラ窓、一番下には3つの扉があって何層にも飾りが回っている。それら装飾の多くはコピーで本物は付属美術館にあるそうだが、コピーだとしても全体の壮麗さに大差ないだろうなぁ。いやー、すごい。
 

 3ユーロでチケットを買って内部に入るとまず目に入ってくるのが足元の見事な床面装飾、そして目をあげると白と黒のボーダーの柱がスタイリッシュな全体像が目に飛び込んでくる。側廊の各礼拝堂の天井や壁のフレスコ画が素晴らしいとかニッチの彫像が素敵という聖堂はこれまでも見てきたが、床面と柱にインパクトがあるってのは珍しい。
 

 床面の装飾で特に優れたものは8月の2週間のみ公開ということだが、公開されているものだけでもかなり見応えがあった。

 床面装飾を見ながら中央に進んでいくと見事な彫刻の入った説教壇が見えてくる。ピサーノ親子や弟子らによるもので、キリストの生涯を彫り込んだレリーフということだ。登場人物が複雑に入り組んで細かい画面なのに人物の細部まできっちりと彫り込まれていていい加減な所がない。これだけの物を作るのに要した時間、労力、積み重ねられた技術が作品全体からうわーっとこちらに押し寄せてくる迫力があった。
 

 左側の真ん中あたりにはピッコローミニ家の祭壇がある。これもゴージャスで彫刻にはミケランジェロも参加して作っているそうだ。祭壇の隣にはこれまたゴージャスなピッコロ―ミニ家の図書室というのがあり、ピッコロ―ミニ家がこのドゥオーモの主たるスポンサーだったんだろうと思っていたら、ふと隅の方にメディチ家の紋章が目に入った。フィレンツェでは至る所にメディチ家の香りが漂っていたが、ここシエナにもその力が及んでいるのがわかる。

ピッコロ―ミニ家の祭壇

どこだか忘れちゃったが上の方にメディチ家の紋章

 それで、このドゥオーモの中で一番圧巻だったのはピッコロ―ミニ家の図書室。入るなり誰もがほぉーっとため息をつくような部屋だ。というのも周囲の壁から天井まで全面に金色を各所に使ったピントゥリッキオのフレスコ画で埋めつくされているからだ。豪華絢爛の一言につきる。スポンサーのピッコロ―ミニ家のF.ピッコロ―ミニ枢機卿(後のピウス3世)が叔父のピウス2世の生涯を題材に描かせたというフレスコ画だそうだから、どうにも政治的な臭いがプンプンしてくるが、ピウス2世はさぞやこの部屋に満足しただろうと思われる出来栄えだ。

 普通のガイドブック片手に1つ1つ作品を見てまわるだけで小一時間かかった。もっと詳しい解説書をもとに回ったらもっと楽しめるだろうという場所だ。最後に正面から出て左にまわりこみ鐘楼の根本にある扉上部の半月型の部分にあるドナテッロ作「聖母子像」を見学してドゥオーモの見学を終了とした。




 シエナには美術品を鑑賞できる場所として、他にもドゥオーモうらての洗礼堂(左写真)、ドゥオーモ付属美術館、国立絵画館があるが、朝から美術品づけでもう満腹状態になってしまった。もう、無理。一日に美術館は2ヶ所が限界だなぁ。

 ということで、あとは町をぶらぶらと散策して帰る事にした。



カンポ広場からドゥオーモに抜ける道

色鮮やかな果物屋さん

キージ・サラチーニ宮だったと思う

サン・ドメニコ教会、谷の向こうにドゥオーモ

相変わらず中華商店をバール代わりに

名物アーモンドクッキーはバカ高くて買わず

 途中曇り空で雨が降り出しそうになったが、帰る直前の一瞬の晴れ間を狙って、午後の陽光を浴びるカンポ広場の市庁舎を撮影。

 シエナ観光はじっくり見ようと思ったら2日、主要な美術品と町の外観なら1の日かかる町だった。しっとりとした色合いの建物が箱庭のようにぎっしりつまった町をさまようのは、フィレンツェとはまた違った楽しさだ。


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