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2010.06.11
フィレンツェ観光(8)〜ウフィッツィ美術館8時間1本勝負
イタリア:フィレンツェ

 フィレンツェ観光8日目の今日は満を持してウフィッツィ美術館(一人10ユーロ)、以上。という一日だった。

 朝7時30分にキャンプ場を出て8時20分に開館して待ち時間なしで美術館に入り、出てきたのが午後4時30分。昼食抜きだったので疲労困憊して中華商店でビールを飲んで力をつけてようよう歩いてキャンプ場に戻ってきたのが午後5時35分。ウフィッツィ訪問4度目にして初めて本気で観賞し、心の底からこの美術館はすごいと思った一日。

 さて、詳細は・・・。

 ガイドブックには「ウフィッツィ美術館がとても混雑している」という情報がさんざん書かれている。実際に下見に行った時も予約なしの行列は100人を下らない状態だったし、予約している人も時間通り入れてはいないようだった。どうせ時間通り入れないなら予約金4ユーロ支払って時間を拘束される意味がない。ということで、朝一番に予約なしの列に並んで入ってみようという作戦に出た。

 朝7時半にキャンプ場を出てウフィッツィ美術館到着が7時53分。8時15分開館の美術館の予約なしの入り口には既に10人くらいが並んでいたが、思ったよりは少ない。

 前に並んでいる息子と娘を連れたフランス人のお母さんがおしゃべり好きですぐに話に花が咲いた。「今日は朝6時に起きたのよ、中央駅近くのホテルからここまでは歩いて30分もかかるからね。そうそう、近くにコムナーレ劇場があるような閑静な場所で3人で40ユーロっていうとても安いホテルなんだけど、朝ごはんも付くしとってもいいのよ。私、名刺を持っているから差し上げましょうか?あら、キャンプ場なの、じゃぁ必要ないわね。ところで、娘はコロンビア人なんだけど養女にしたのよ。息子は今パリに住んでいて大学生なの。カラバッジョも勉強しているから、今日は中に入ったら私、色々質問して息子を試験しちゃうわ」ってな具合で、次から次へと話題が変わって話がつきない。話の主導権はもっぱらお母さんで私はほとんど聞いているばかりだったような気がする。それで時間はどんどんと過ぎていった。本当は待っている間にメディチ家のおさらいでもしようとメディチ家の歴史の本を持ってきていたのだが、1ページも開くことなく開館時間となったのだった。それでも、とってもフレッシュな生身のフランス人と話ができて面白かった。

 開館と同時にざらざらっと中に入ってチケットを購入。今はカラバッジョの特別展も行っている
ので一人10ユーロだった。その時点でガイドブックを持ってくるのを忘れた事に気付いた。膨大な作品をガイドなしに見る事はできない。どうせ今回は腰を据えて見学するつもりでもあったし、ええいと気合いを入れて全館日本語解説書(写真付)16ユーロをバーンと買った。

 全作品収録と書いてあって、たしかにリストは全作品だったが中でも注目すべき作品を取り上げて解説している。このガイドブックを読みながら1つ1つ作品を見ていった。

 実は学生時代の時に最初に訪れてから今回でウフィッツィ美術館を訪れるのは4度目なのだが、毎回、超大物のしかも見覚えのある作品だけ確認のように「はいはい、これが実物ね」と見てさっさと出るのが常だった。これでは全く知識も広がらないし、確かに素晴らしい作品だとは思うが肝まで落ちるような感動まではなかった。

 ところが、今回ガイドブックを読み進めながら体系的に作品を見て、また解説を読みながら何がポイントなのかを注目しながら見ていくと15世紀のルネッサンスがいかにそれまでと隔絶して変化を遂げた作品を生み出し、その後の美術の躍進へとつながったかというのがよくわかる。解説されている作品とそうでない作品を見比べていると確かに良いとされる作品には登場人物の顔に気品があったり表情が豊かだったりしている事がわかり、絵画を見る目も同時に養われていく。

 途中でお腹が空いちゃったので廊下のベンチでクッキーをかじっていたら係員に飲食禁止だと注意されてしまった。途中にはカフェテリアがあるのだが高くておいしくもなさそうなので、結局お昼ご飯抜きということになってしまった。

 で、全部見終わって時計を見たらほぼ8時間ぶっ通しで見ていた事になっていた。ひえー、すごい。でもガイドブックを見ながらの8時間は作品を見るのも楽しく、また自分の中で知識が体系立っていく楽しさや絵画をみる目が肥えていく楽しさをじっくりと実感もできるので時間を忘れてみる事ができた。例えば面白いテレビ番組シリーズの10回連続物なんて夢中になって見てしまうことがあるが、あんなノリで、いや知的満足感からいったらもっともっと充実して夢中になれてしまった。これはいい。とても大変だったけれど終わってみたらこの充実感。何かに似ているなぁと思ったらトレッキングに似ている。初めてネパールのアンナプルナ・ベース・キャンプへの8日間のトレッキングを終えた時の充足感を思い出す。

 ヨーロッパはこれだな。若いころはやれ高級ホテルだ、レストランだ、ショッピングだでも良かったが年をとってきたら知的トレッキング。これがいいのだと思う。もちろん実際にトレッキングできるアルプスもあるが、同様に知的なアルプスがヨーロッパにはたくさんある。近くで言えばローマのバチカン博物館、パリにルーブル、マドリッドにプラド。いやー、歩くべき道はたくさんあってやりがいがありそうだ。

 今日はもちろん他に観光する気力はない。とにかく栄養を手っ取り早く入れようと、先日見つけた中華ショップにビールを飲みに行って栄養補給。「ビールはメディスンだ!」とフランス人の若い女の子に言って失笑をかっていた日本人のおっちゃんに会った事があるが、彼は正しい、本当に百薬の長だと実感した。

 店員のおばちゃんに「今日はねぇ、ウフィッツィを見に行ったんだけど8時間もいたんだよぉ!」と報告すると「それはすごいねぇ」と相槌を打ってくれた。この店に来るのは今日で3回目。最初は無愛想に見えたおばちゃんもすっかり顔なじみになって店を平気でバール代わりに使う私たちを珍しそうに面白がっているようだった。アジア人同士はなんだかいいねぇ。

 頭が飽和状態だったのでキャンプ場まで何も考えずに体を使うのは丁度気持ちがいい。本日はこれにて終了。


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